ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第7話 コア・ファイター脱出せよじゃない Aパート

「そう、このバルブが一本やられているわけだから」

「ああ、それで出力に8パーセントの影響が出るんですね」

 

 ホワイトベースのブリッジ、航法を担当するミライはエンジニアたちと大気圏外への脱出の可能性を模索していた。

 オペレーター席のマーカーを振り仰ぎ、

 

「出力12パーセント減で計算してみてください」

 

 とシミュレートを依頼する。

 

「了解」

 

 そうして航法コンピュータにより計算されるが、

 

「無理ですね、衛星軌道には到底乗れません」

 

 という結果になる。

 ホワイトベースは損傷を受けすぎている。

 ミノフスキークラフトのおかげでブースター無しで大気圏外に脱出できるという破格の性能を持つホワイトベースだったが、それもさすがに万全の状態でないと無理ということであった。

 一方、アムロはというと、

 

「そっちの回路と接続できるんでしょ?」

「ああ」

「カタパルトの強度は?」

「ああ、そりゃあ大丈夫だ。中央カタパルトはもともとガンペリー用だ、コア・ファイターならもつよ」

「よかった」

 

 と、エンジニアのオムルと何やら検討を重ねている。

 そしてこの艦のトップであるリード中尉とブライトは、

 

「そんな、我々は軍人です。民間人を守る義務があります」

「だ、だからこそだよ。百人以上いる避難民をホワイトベースから降ろせばだな、我々は衛星軌道に戻って体勢を」

「ここはジオンが占領している所なんですよ。子供や老人たちを……」

 

 と、避難民の扱いについて話し合っていた。

 その言い合いを耳にしたフラウ・ボゥは不安そうに、

 

「避難民を降ろすの?」

 

 とつぶやくが、それにはカイがシニカルに、おどけた調子で答える。

 

「いや、ブライトさんはいつまでも逃げるつもりよ」

「そんなことは言っていない」

 

 気色ばむブライト。

 

「へえ、悪かったかい? でもよ、食料はどうするんだい? 戦闘できない人たちが百人もいるんだぜ」

「カイ」

 

 カイを嗜めようとするブライトだったが、リード中尉の言葉がそれを押しとどめる。

 

「今の少年の言うとおりじゃないか、え?」

 

 そんな彼らの様子を……

 ミヤビは静かに眺めていた。

 まるでそこに置かれた人形のように。

 

 そんな彼女に妹のミライが問う。

 

「姉さんはどう思うの?」

 

 と。

 ミヤビはそれこそスイッチが入れられた自動人形のように二度、三度と瞳を瞬かせ、そして口を開く。

 

「避難民はここで降ろすべきでしょ」

 

 と。

 

「なっ!?」

 

 信じられないと驚くブライトに、ミヤビは説明する。

 

「実際、いつ墜ちるか分からない艦に乗せているよりマシでしょう。ジオン軍に一時休戦と保護を求めてもいい」

「本気で言ってるんですか、ミヤビさん!」

「ザビ家独裁でイメージが悪いジオンだけど「自分たちは地球連邦の圧政を排除し独立するんだ!」って理想に燃えている軍人たちの規律って、負けが込んで自暴自棄になっている連邦兵よりかなりマシだし」

 

 実際、地球連邦軍って腐敗軍人やチンピラ兵士が多いしなぁ、とミヤビは内心嘆息する。

 

「そんな! 地球にコロニーを落とすような連中ですよ」

「地球連邦軍本部のあるジャブローに向けての純粋な軍事施設への攻撃よ? 地球連邦軍がジャブローを守るためだったら他に被害が出てもいいよね、って判断してそらしたからシドニーが無くなったりしたんでしょう?」

 

 その言葉に息をのむ周囲を見回して、

 

「と、ジオンの兵士は考えてるわ」

 

 と続ける。

 そもそも南極条約が締結されるまで様々な大量破壊兵器に対する禁止条約が存在しなかったのだって、地球連邦がジオンを独立国家と認めていなかったから。

 地球連邦という単一の国家しか存在しない、としたために国と国との約束である条約が結べなかったからというある意味自業自得というか間抜けなお話なんだし。

 アニメやマンガにもなった小説『銀河英雄伝説』において「全人類の支配者にして全宇宙の統治者、天界を統べる秩序と法則の保護者、神聖にして不可侵なる銀河帝国皇帝」を擁するため敵対する自由惑星同盟を国家として認められず反乱軍としか呼べない、という銀河帝国と同じレベルのことをやっていたわけである。

 

「どうして自らが生活する大地であるコロニーを地球に落とすことができたのか、って地球のマスコミは騒ぎ立てたけど、それこそ宇宙市民、スペースノイドの感情を理解していない、しようともしない……」

「姉さん」

 

 ミヤビの言葉を止めたのは、妹のミライの声。

 それでミヤビは我に返る。

 ああ、話がずれたなぁ、と。

 だから一呼吸置いて、現実面に話を戻す。

 

「北米大陸のジオン軍を率いているのは地球方面軍司令官ガルマ・ザビ大佐。ザビ家の四男の、育ちのいいお坊ちゃんで、軍規の維持に成功するのみならず、現地の住民とも友好的な関係を築いているわ」

 

 そこで言葉を切って、

 

「まぁ、彼の人の好いところに付け込んで利用させてもらいましょう、ってこと」

「お詳しいんですね」

 

 と言うブライトにうなずいて、

 

「知らない仲でもないし、交渉するなら仲介してもいいわ」

 

 と言い残し、ミヤビはブリッジを立ち去る。

 

「この戦争が始まる前、姉さんは……」

 

 ミライが自分のことを話している声が背中越しに聞こえた。

 

 

 

 墜落する、飛行機……

 逃れられない死の瞬間、■■■は見た。

 

 

『重力に囚われし者たちよ。

 この奈落の底で蠢き、その野蛮なる雄叫びが枯れ果てるまで。

 その想いが尽きるまで戦い続けるがいい……』

 

 

 死神を。

 

 

 というわけで宇宙世紀公式のオカルト的存在『機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線』登場の死神(CV:井上喜久子)の手によってファースト・ガンダムの世界に男性から女性へとTS転生してしまったミヤビ。

 理系脳で技術バカなミヤビだったが、転生してそれなりに悩んだのだ。

 いずれ起こる一年戦争、その悲劇を防ぐために自分でもできることがあるんじゃないの、と。

 そこで企画したのが父親が持つコロニー建設も請け負うヤシマ重工を利用した『コロニーリフレッシュプロジェクト』だった。

 

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が経っていた。

 地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった……

 

 というのは『機動戦士ガンダム』の冒頭ナレーションだが、都合半世紀以上も過ぎれば初期に建てられたスペースコロニーも古くなる。

 『機動戦士ガンダムΖΖ』の序盤の舞台、サイド1の1バンチ、シャングリラは自転速度のコントロールに遅れが生じたままであったり気象コントロールがほとんどできず何ヶ月も雨を降らすことができなかったりという酷いものだった。

 経済状況悪化のため、ということだったが、逆に言えば金をかけてメンテナンスを行わなければそうなるほど老朽化しているということだ。

 

 ミヤビは古いコロニーに対し大規模なリフレッシュ工事を行うことでこれを解消しようとした。

 最新技術を使って生活環境を改善すると同時に、その後の維持、メンテナンス費用も大幅に削減し長い目で見ればお得となるものだ。

 また新たにコロニー建設するよりはるかにお財布に優しいですよ、というもの。

 まぁ、住宅リフォームのコロニー版といったところだ。

 

 対象はサイド3、ジオンのコロニーだ。

 ミヤビがガルマと面識があるように、ヤシマ重工は割とジオンには伝手がある。

 コロニー関係の工事があれば入札、受注するし、『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』登場のMS-03ブグや、プロトタイプグフが使用していたマシンガンはヤシマ重工製だった。

 これはガンキャノン機動試験型、局地型ガンダムにも使われ、後に改良されたプロダクションモデルYHI YF-MG100、100ミリマシンガンが陸戦型ガンダム等で使用されることになるのだが。

 この世界はORIGIN準拠ではないようだったが、それでも類似した関わりはある。

 まぁ、そういった関係を利用したのだ。

 

 そして『コロニーリフレッシュプロジェクト』をジオンに対して行う目的は、

 

・ジオンに金と資源を吐き出させ、戦争準備に回されないようにする。

 

・生活環境の改善によりスペースノイドの不満を和らげる。

 

・大規模公共事業の実施により経済が活性化するため、これもまた民衆の不満を和らげることができる。

 

・経済の活性化で恩恵を被るのは非軍事産業、つまりジオンの中でも戦争を忌避するハト派であり、ザビ家など急進的なタカ派に対し歯止めが期待できる。

 

・金が動くということはその経済活動により恩恵を受ける企業がジオン、連邦双方に生じるということ。戦争をしない方が得、ということを示すことができればそれだけで平和への後押しになる。

 

 などというものだ。

 そして失敗した。

 ジオンの利益になることはとにかく反対、という者たちによって。

 その中にはジオンの台頭に危機感を抱いた地球連邦軍の武断派…… レビル将軍の姿もあった。

 ミヤビは、

 

「某北の首領様への人道支援みたいにその分軍事に回されるとかそういうのじゃないから。ジオンの金と資源でやるんだよ。逆に戦争準備に回される分が減るでしょうが」

 

 と懇切丁寧に説明したが理解は得られなかった。

 そういった人々は最初から話を聞く気など無かったのだ。

 最後にミヤビはシドニーに置かれる地球連邦オセアニア州議会でこの計画に対する賛成宣言採択決議案を住民の直接投票にかけてもらい……

 圧倒的多数で否決されたことであきらめた。

 

 ミヤビは半ば自分を納得させるためにそうしたのだが、実際に一年戦争が始まって人類の半数が死に至り、コロニー落としでシドニーが地図上から消え、巨大なクレーター、シドニー湾になってしまうにあたり、ミヤビは死の預言者と恐れられることになった。

 何しろある意味、シドニー市民に自ら死への選択の投票をさせたようなものだったから。

 無論、ミヤビの『コロニーリフレッシュプロジェクト』が実施されたからといって未来が変わった保証はない。

 もっと酷くなった可能性だってあるが、それでもあの時、別の選択をしていたらと人は考えてしまうものだ。

 『ヤシマの人形姫』の異名が畏怖交じりにつぶやかれるのは、ミヤビの外見からくるだけのものではない。

 死神が憑りついている、としか思えないこういった過去の行いが彼女を恐れさせているのだ。

 

 ……ということにミヤビはまったく気づいていなかったが。

 やっぱり凡人の自分が無理しても歴史は変えられないよね、と納得しただけである。

 

 それに単に失敗しただけではなく、得られるものもあった。

 それゆえに精神的に救われた面がある。

 だから引きずらずに居られたとも言える。

 

 そしてミヤビは自分をこの世界に転生させた死神について考える。

 もしかして歴史の修正力みたいなオカルトな力を持っていて、それでミヤビが何をしようとも頑固なまでに歴史が変わらないのではないかと。

『機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線』でも死神を見た登場人物たちはみな運命に抗い、戦闘自体には勝利するものの、結局は悲劇的な結末を迎えていたし。

 実際、これまでのところ史実に大きな変化は無いし、ホワイトベースのたどる遍歴もまたミヤビという異分子とガンダムがなぜか搭載されていない、という違いがあるにもかかわらず大筋では変化が無い。

 予定調和みたいな運命が決まっていて、そこから外れることはできないのでは、とミヤビが疑うのも無理はないとも言える。

 

 一応、科学的に死神の存在を考察することもできるのだが。

『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』で登場したサイコフレームは人の意思を力に変え、物理法則すら捻じ曲げた。

 後に『機動戦士ガンダムUC』にてフル・フロンタルにシャアの残留思念の一部がとりついていたように、死者の念が現実に対し干渉できるようにする力もある。

 死神とはそういう存在なのでは、とミヤビは考えている。

 この辺については『機動戦士ガンダムNT』の脚本を担当した福井晴敏氏がインタビューで語っている内容が参考になった。

 

 そして例えば……

 なぜリード中尉は大気圏突入時にあそこまで錯乱したのか?

 どうしてミヤビの知る史実と同じくホワイトベースは北米大陸に降下してしまったのか?

 偶然にしては出来過ぎではないだろうか?

 

 それは、サイコフレームのような力がリード中尉の意思に干渉したせいではないだろうか?

 

 もちろんこの時点ではサイコフレームはまだ開発されていないわけだが、同等かそれ以上のオーバーテクノロジーをもたらす存在が宇宙世紀の世界にはあった。

 『∀ガンダム』で登場した異星人が造ったと言われるターンX。

 それがいつ地球圏に到達し、人類に発見されたのか明らかにはなってはいない。

 そしてターンXがサイコフレームか、それに相当するものをもたらし死神と言われる存在を生み出した……

 そう考えれば説明も付く。

 異星人が造ったものが地球圏に到達している以上、ワープ航法や時空間跳躍などといった技術はあるはず。

 とすれば異世界、または並行世界の存在と思われる前世のミヤビの記憶を時空を超えてこの世界にもたらすなどといったことも可能だろうし。

 

 まぁ、これらもしょせんはミヤビの想像。

 確かめるすべはない。

 ミヤビがへっぽこで運も足りないから史実を変えられないんだよ、という身も蓋も無いオチだってあり得るのだから。

 

 

 

 一方、ミヤビが降ろすべき、とした避難民、徴兵の対象とならなかった老人たちを主にした人々はこのような話をしていた。

 

「無理やり宇宙移民をさせられた我々が二度と帰る事のないと思っとった地球へ帰れたのじゃ、着陸もできずに終わったら死に切れんというものじゃ。そうは思わんか? 皆さん」

 

 古い世代の宇宙移民の意識とはこういうものだ。

 ダ・カーポの「地球へ…Coming Home To Terra」を聞かせたら彼らは確実に号泣するし、カラオケで歌わせたら涙ながらに絶唱するだろう。

 というか実際ミヤビが迂闊に年配者の前で口ずさんだら大泣きされたという過去がある。

 

「そこで、わしに考えがある」




 ここにきてようやく出すことのできたミヤビの転生とこれまでの経緯についてのお話でした。
 そして失敗するべくして失敗したミヤビの『コロニーリフレッシュプロジェクト』ですが、これにはまだ語っていない部分があって今後のお話に影響してくる予定です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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