ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第12話 ジオン脅威のメカニズム Aパート

 人類のすべてをみずからの独裁の手に収めようとするザビ家のジオン公国は、月の向こうに浮かぶ巨大な宇宙都市国家である。

 デギン・ザビ公王はその実権を長男のギレン・ザビに譲り渡して開戦に踏み切った。

 万全の準備をして戦いを挑んできたジオン軍の前に地球連邦軍はなすすべもなかった。

 

 ジオンの攻撃を避けてサイド7を脱出したホワイトベースは、少年たちの手によって地球へ降りたった。

 そしてザビ家の末弟ガルマ・ザビを退け今、太平洋上にある。

 

 

 

『二ヶ月ほどの内に一度ジオンに帰ります。ですが父上、その前に必ず一つ大戦果を上げてご覧にいれますよ。親の七光りで将校だ元帥だなどと国民に笑われたくはありませんからね。では、お目にかかる日を楽しみにしております』

 

 以前に受け取っていた、ガルマからの過去のビデオレターを再生していたポータブル再生機がメディアを吐き出し、そしてそれを見ていた公王デギン・ザビも深々とため息をつく。

 そして、そこに入ってきたのはキシリア。

 

「まだこんな所にいらっしゃったのですか」

 

 デギンは答えない。

 キシリアは、彼女にしては珍しく和らげた声で父に語り掛ける。

 

「閣下のお気持ちはお察しいたしますが、公王としてのお立場ゆえ、お役目だけは果たしていただき……」

「わかっておる」

 

 デギンは声を荒げたりはしなかったが、それでもキシリアの言葉を遮るように言う。

 そして重い腰を上げ、ガルマの結婚発表の会場へと向かうのだった。

 

 おとーさん、いい加減割り切ろうよ……

 

 と、キシリアは言わなかったが、内心はそんなものである。

 

 

 

 入場してくるザビ家の面々に、詰めかけた国民の声が、歓声がこだまする。

 

「ザービ、ザービ、ザービ、ザービ……」

 

 ガルマにふさわしい結婚式と披露宴を、と意気込んだドズルだったが、当のガルマは地球で入院中のため当たり前だがそれは断念せざるを得なかった。

 そのため結婚発表を盛大に行い、式自体は後日改めて、という形になった。

 会場にはモニターに大写しになったガルマの映像が飾られている。

 後で、彼からのビデオレターも再生される予定だ。

 

 なお……

 ふたりの馴れ初めから結婚に至るまでの経緯だが、ガルマが入院中のためもう一方の当事者、イセリナから聞き取った結果、某ネトゲに登場の安珍清姫伝説を元にしたヤンデレストーカー、清姫を他キャラが評して言った言葉、

 

「一目ぼれ癖…… はまあ良いとして、一言も話していないのに脳内では相思相愛。脳内シミュレートの果てに、結婚を前提とした仲にまで進展」

 

 そのものの妄想が垂れ流されたという。

 聞き取りを行った担当者は、

 

(俺たちは一体なにを聞かされそうになっているんだ)

 

 と戦慄し、そしてその耳に流し込まれる甘々なラブ話により糖死寸前まで追い詰められたところをブラックコーヒーをがぶ飲みして乗り切った模様。

 

 彼らが飲む地球のコーヒーは苦い。

 

 ちなみにミヤビだったら、

 

「事実と違う! 誇大な表現! JAROを呼べ!」

 

 と叫ぶところの内容だったが、お坊ちゃん育ちで人のいいガルマはこの話を聞いて、

 

「そこまで愛してくれていたのか」

 

 と、彼女の情熱的な告白に感動していたという。

 

 シャアはそんな彼を見て、

 

「やはりコイツ、結婚したせいで頭のネジがまとめて吹っ飛んでいるだろう。いや、彼女による洗脳かッ!?」

 

 と、恐怖したらしい。

 

 一方、文字に起こされた原稿を渡されたザビ家の面々は、

 

「ブホッ、こ、こいつは……」

 

 と吹き出し、顔を引きつらせるドズル。

 

「これを書いたのは誰です」

 

 と詰め寄るキシリア…… は、内容を気に入った模様。

 割と乙女ですね、おねーちゃん。

 

「確かに民衆はドラマを求めるものだが、少し脚色が過ぎるのではないか」

 

 と担当官を鋭く一瞥するギレン。

 

 そして冷や汗をかいた担当官はこう答えるのだ。

 

「イセリナ様のご発言をそのまま起こしたものです。脚色など一切の手を加えてはおりません」

 

 そう『原文そのまま』です、と……

 

 

 

「ガルマ、グフって要らないんじゃないのか?」

「何を言うんだシャア!」

 

 軍病院に入院中のガルマと一日一度はそれを見舞うシャアは今日も絶好調。

 ようやく生産が始まった新型モビルスーツ、グフのスペックデータを前に話し込む。

 

(ガルマは私の意見に反対か。少しは視野も広がったかと思ったが買いかぶりだったか……)

 

 とシャアは冷笑しようとして、

 

「君のために赤く塗った機体も用意しているのに」

「そういう理由か!」

 

 まさかのシャア専用グフ爆誕である。

 ミヤビの前世の記憶にもあったが、あれは児童向け絵本でのこと。

 

「アムロ…… またじゃまがはいった…… けっちゃくはいずれつけよう!」

 

 とか言って飛び去っていくやつ。

 なおこの邪魔とは、手を出すなとシャアに命じられているのにそれを無視してガンダムに襲い掛かったズゴックのこと。

『シャア、命令を無視され過ぎ問題』は絵本の中でも健在だった……

 

「ちなみにロールアウトしたばかりの新型だから君のザクみたいに一般機の3割増しの性能などというのは無理で、せいぜい3パーセント程度……」

「いや、それでも構わないが」

「落ちるんだ」

「そっちの方向か!」

 

 オチが付いた!

 

「グフの装甲は塗装が持つ表面保護や防錆、着色などの機能を一体化した、つまり塗装を必要としないものが試されているんだ」

「ほう?」

 

 これはミヤビの前世の記憶でもそういった記述のある書籍があった。

 つまりグフが青いのは塗装以前にその色が付いているからということである。

 まぁ、こういう新技術を使った特殊仕様は一部ロットで試したけど問題があって以降は通常の塗装に戻された、などということもありうるのだが。

 

「だから色を塗ったりすると重量がかさんだり、放熱が妨げられたりで性能が下がるんだ」

 

 航空機には重量を軽減し燃費を節約するため塗装をしないベアメタルと呼ばれる機体もある。

 大型貨物のジェット機など、それだけで百キロ前後の重量軽減になるという……

 

 

 

 大気圏に突入するのは、二機のコムサイと最新鋭機動巡洋艦ザンジバル。

 ガルマのためにとシャアに続きドズル中将が派遣した人材その二、ランバ・ラル大尉とその配下の部隊だ。

 

「面白い物とはなんだ?」

 

 そのザンジバルのブリッジで、ラルは副隊長のクランプ中尉から報告を受けていた。

 

「は、我が軍の識別表にない戦艦をキャッチしたのであります」

「ほう、見せろ」

 

 モニターに映し出された予想される艦形は、まぎれもなく、

 

「例の木馬だと思われます」

「うん」

 

 うなずくラルに、彼の愛人である美女、ハモンが問う。

 

「ガルマ様を負傷させた敵を討つチャンスという訳ですか」

 

 愛人なんて居ていいのか、という話だが……

 ゲリラ屋であり、その出自故、ちょいワルおじさんなところのあるラルと彼の隊だから、有力な民間協力者が同乗している、ということで済んでいる。

 

 まぁ連邦軍でも相手の好意をいいことに現地妻、民間人の少女ゲリラを囲っていた……

 しかも本人は本命のヒロイン一途で見向きもしない、という鬼畜外道な主人公シロー・アマダが居たりするが(ヒドイ言いがかり)

 

「そう急ぐな、ハモン。奴の地点は我々の基地からはかなりの距離だ。航続距離を計算に入れなければな」

 

 と、ラル。

 クランプも同意する。

 

「このザンジバルなら問題ありませんが、ほかのはただの大気圏突入カプセルですから」

 

 そう、コムサイの足は短いのだ。

 

「では、このまま見過ごすおつもりですか?」

 

 挑発とも取れる言葉でハモンは問うが、ラルは、

 

「フフフフ、私の任務は動けぬガルマ様に代わっての木馬討伐だ。ドズル中将からじきじきの命令をなんでやり過ごすものかよ」

 

 そう言って笑う。

 

「でも、只今は大気圏に突入している途中です。ご無理を……」

「しかし手出しをせずに行き過ぎる男なぞ、お前は嫌いなはずだったな」

 

 いつの間にかハモンの方が止めるような会話になっている。

 青い巨星、ランバ・ラル。

 彼は実直な武人であると同時に、一癖も二癖もある油断のならない漢だった。

 

 

 

「おはよう、今日もいい天気ね」

 

 ベッドから起き上がるミヤビ。

 

「朝ごはんを食べよう」

 

 今朝は和食。

 

 パクパク モグモグ パクパク モグモグ

 

 パクパク モグモグ

 

 

 

「メインエンジンの3番ノズルが表示より2パーセント推力不足ですけど」

 

 フラウと交代してブリッジのオペレーター業務を行っていたセイラの報告に、ブライトは顔をしかめた。

 2パーセントと言うと大したことが無いようにも聞こえるが、

 

「実数値にしてどの程度だ?」

「およそ40トン」

 

 スケールが大きいと、このようにわずかな性能低下でも影響は大きいのだ。

 そんなわけで性能管理は大事なことである。

 予期せぬ性能低下はどこかに不具合があるということだし、民間だとそれに燃費の問題が絡む(いや、軍でも問題だが)

 ミヤビの前世でも、2パーセントも性能が落ちれば燃費の悪化で一日に数百万円の損失を発生させるようなプラントが実際にあった。

 

「なんでそんなになるまで放っておいたんだ?」

 

 と、ブライトは憤慨する……

 もちろんそれは正しいことだし、前述のミヤビの前世のプラントなら責任者が声を荒げるほどの大問題だが、

 

「碌に整備する暇も取れないのを無理して……」

 

 とミライが言うとおり、現状ではどうしようもないことなのだ。

 だからこそブライトがイラつくのではあるが。

 そして間が悪いことに、

 

「わあーい」

 

 と子供たち、カツ、レツ、キッカが歓声を上げてブリッジに入って来る。

 

「ここは遊び場じゃないんだぞ。出て行け!」

 

 そう、ブライトが反射的に怒鳴ってしまうのも無理はない。

 しかし、

 

「ブライトさん」

 

 一緒に居たフラウがとがめるように声をかけ……

 キッカは涙をためて、

 

「遊んでんじゃないやい。遊んでんじゃない……」

 

 とつぶやく。

 それで頭に血を登らせていたブライトも気付く。

 子供たちは掃除機や清掃用具を運んでおり、彼らなりに掃除をやってくれているのだということを。

 ブライトは意識して声を抑え、

 

「……3番ノズルをチェックしてくれ。少しいいな? ミライ」

「え? ええ」

 

 ブライトは身をかがめてキッカと視線を合わせると、

 

「すまなかった。掃除続けてくれ」

 

 その頭を不器用に、しかし優しくなでて言う。

 

「頼むな」

 

 そう言ってブリッジを後にする。

 彼の気持ちもわかるが…… しかし幼い子供たちにそれを理解しろと言うのも酷だろう。

 だから、

 

「ベーだ」

 

 とキッカはブライトの背に向かって思いっきり舌を出した。

 

 

 

 自室でブライトは詰襟のホックを外し、上着のファスナーを大きく開けてソファーに身を沈め休む。

 そこにノック。

 

「どうぞ」

 

 ファスナーを見苦しくならない程度に上げながら答える。

 きっちりと上げ切らなかったのは、それだけ疲れているのか。

 

 入ってきたのはオッパイ……

 つまりミライだった。

 

「なんだい?」

 

 参っているのか、ミライに対し気を許しているのか、それともその両方か、素の、19歳の青年の顔で問うブライト。

 

「別に」

 

 と、ミライは答える。

 何も言わないのは彼女の優しさ、そしてブライトへの信頼だ。

 しかし余裕の無いブライトは、

 

「わかっているよ、言いたいことは」

 

 と、口に出さずにはいられない。

 だからミライもこう答える。

 

「でしょうね。あなたが中心になる以外ないし、みんな頼りにしているんだから」

 

 それを伝えたくて来たのだ。

 ミライは『基本的に甘やかしてなんぼ』な姉、ミヤビに育てられたようなもの。

 だから他者に対しても、尊敬する姉と同じように接する。

 

 ブライトは、

 

「とも思えんが」

 

 と弱音を吐くが、それでもミライの想いは伝わっているのだろう、先ほどよりはマシな顔になっていた。

 しかし、そこにブリッジからの通信が入る。

 

「なんだ?」

 

 モニターに映し出されたのはセイラと交代したフラウ。

 

「ジオンです。大気圏突入用のカプセルのようですが、大きすぎるようです」

 

 ブライトは即座に、

 

「今行く」

 

 と回答するが、彼は気づいていない。

 

 男性の部屋、密室に上着の胸元を開けた男と、その背後に写るオッパイ、じゃなくて性的魅力にあふれる女性というヤベー絵面がモニター越しにフラウの目に飛び込んでいることに。

 そしてアムロとの仲がうまく行っていない彼女が、それを見てどう感じるか、ということに。

 

 黒いオーラをふつふつと貯めるフラウだった……

 

 

 

 祝砲が上げられ、式典の準備が整う。

 壇上に並ぶザビ家の面々。

 キシリアは、

 

「例のシャアはどうしました?」

 

 と、ドズルに問うが、彼は答えようともせず顔をそむける。

 

 子供か!

 

 そんな妹と弟のやり取りに、ギレンは苦笑して、

 

「ふるさとにでも帰ったんだろう。な、ドズル」

 

 と取りなす。

 ともすれば人の情を解さぬ冷血漢、と思われるギレンだったが、こうしていると普通のお兄ちゃんのようにも見える。

 

「そう……」

 

 そしてキシリアが背後に並ぶ将校の一人に視線を走らせると、その将校がすかさず近寄り彼女の指示を受ける。

 

「は、早速」

 

 そう言って下がる将校。

 

 なおドズルはこの式典の準備と渋る父の説得のため、シャアのことなどすっかり忘れていた模様。

 しかし正直にそれを言うとまた呆れられた目でキシリアに見られるだろうとそっぽを向いていただけである。

 

(シャアのことなど、どうでも良いわ!)

 

 内心吐き捨てるドズル。

 一応、公王である父デギンからは「左遷させておけ」という言葉を受けていたはずなのだが、それも忘れ去られていた。

 

 そして……

 ミヤビの前世でもあったことだが組織の偉い人にこんな風に思われていると、期間限定で他部署に貸し出されたはずの人員がいつまで経っても戻って来れない、という状況を引き起こす。

 通常の企業だと割と早いサイクルでその組織の偉い人が異動したりするので数年我慢すれば島流しから帰って来ることができるが、これが一つの家族、もしくは親族が実質的な支配権を持って会社や組織を経営している一族経営の企業では、その偉い人の入れ替わりが少ないため場合によっては終生遠島にもなりかねない。

 そしてジオン軍はザビ家による一族経営そのものな組織で、そのザビ家の人間である上司ドズルにそのように思われているシャアは……

 彼、シャア・アズナブルがイセリナの恐怖から解放される日は遠そうだった。




 ……おや!? ミヤビのようすが……!
 直接の出番が無くとも話題をかっさらっていくイセリナはさすがですね。
 なお、ガルマとシャアの『グフ要るか要らないか論議』は次回以降が本番です。
 シャア専用グフ爆誕は掴みのギャグってだけで。


>「グフの装甲は塗装が持つ表面保護や防錆、着色などの機能を一体化した、つまり塗装を必要としないものが試されているんだ」

 書籍『機動戦士ガンダム一年戦争全史 U.C.0079-0080 (上)』の記述にあるものですね。


 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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