ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

67 / 190
第17話 サラツー脱走 Dパート

「ブライト、どの程度の情報が漏れたと思って?」

「わからん」

 

 自分の発言が艦内にどのような騒乱を引き起こしたか分かっていないブライトはミライと話し合う。

 

「正面の敵もそうだけど、これであのランバ・ラルのグフ部隊を呼び込んだようね」

 

 

 

「右に来ますよ、カイさん」

「サラミちゃん?」

『見つけてますよ、次、マーカー出します』

「よろしくー」

 

 アムロとカイ、そして彼らをサポートするサラスリーは順調に敵基地を攻略していた。

 

「この調子です、カイさん。この程度の地上基地ならこのガンタンクの機動力と火力で十分に対抗できる。やっぱり僕が主張したとおり、なんでもかんでもガンキャノンで戦わせればいいってものじゃない」

 

 なお、アムロは自分がガンタンクで戦いたいと主張しているわけではない。

 ガンタンクでも使い方によってはここまで戦える、ということを自分で手っ取り早く示すことで、本来の自分の機体であるガンキャノンの負担を減らしたいだけである。

 しかし……

 

 

 

『うう、いやだよう。アムロ、私を捨てないでぇ……』

 

 格納庫でその活躍を指をくわえて見ることしかできないサラツーには、その真意は伝わっていなかった。

 

 

 

 そしてガンタンクに蹂躙されるジオン軍基地はというと、

 

「マ・クベ大佐からは?」

「は、ドップを援護に出してくれたそうです。その後の連絡は取れません」

「ええい、どういうつもりだ。戦略的にたいした意味のないこんな鉱山をむきになって攻撃してくるとは」

 

 と戸惑いの声が上がっていた。

 もし新たなパイロット構成の検証および経験値稼ぎにちょうどいい雑魚だから、というホワイトベースの実情を知ったら多分、罰当たりにも神を罵る言葉を口走っていただろう。

 しかし、

 

「少尉」

「何か?」

 

 指揮官である士官がそうする前に、救いの手が差し伸べられた。

 

「ランバ・ラルのギャロップが応援してくれるそうです」

「ランバ・ラル? おお、ガルマ大佐の仇討ち隊か」

 

 ガルマは死んではいないので縁起でもない物言いだが、一般には通りが良いのでそうとも呼ばれている。

 広義の『仇討ち』という言葉には単に『一般的な仕返し』という語義も含まれているし。

 また『ガルマにケガさせられたお兄ちゃんが送り込んだ仕返し隊』とは思ってはいても口に出せないのだ。

 まぁ、そんなことはともかく彼らは気づく。

 

「ということは、ここを攻撃してくるのはあの噂の木馬なのか?」

 

 

 

「捕虜は第18ハッチに向かっている。誰かいないか?」

 

 艦内監視網を使ってコズンの姿をサーチするのはブライト。

 手が足りないのだ。

 そこにオペレーター席のマーカーから敵の援軍の報告が届く。

 

「ドップです。続いて地上を接近する物があります」

「なに?」

 

 そしてブライトは気づく。

 

「捕虜が言っていたギャロップだな」

「捕虜はセイラがなんとかしてくれるはずよ。いったん下がってアムロをガンキャノンに乗せ換える?」

 

 思わぬ敵の出現に、ミライは安全策を取った方が良いのではと提案する。

 

「……いや、このままで行こう。敵基地の沈黙も近い。そうすれば敵も無駄な戦闘は避けて退くさ」

 

 戦闘中の作戦変更は現場に混乱を招きかねない。

 ブライトはこのまま押し切ることを考える。

 

「リュウ、カイ、アムロ、聞こえるか? 敵の増援部隊が現れた」

 

 

 

「フフフフ、見えてきたぞ、木馬め」

 

 戦場に急行するギャロップのブリッジからも、戦火の閃きが捉えられるようになった。

 

「あっ、支援のドップの編隊です」

 

 上空をパスし、支援に向かうドップの姿もある。

 

「行ってくる。今度こそという言葉はあまり使いたくないものだな」

 

 少しばかり苦い言葉を吐くラルに、ハモンは、

 

「木馬は二機のモビルスーツを展開しているようです。お気をつけて」

 

 と、その無事を気遣う声をかける。

 

「グフが三機あればとは思うがな」

 

 そうつぶやくラルだったが、未練がましい響きは無く、ただ事実を述べる言葉だった。

 

「コズンが脱出してきたら救助してやってくれ」

「勿論です、あなた」

 

 そして口づけをかわし、グフへと乗り込むラル。

 

「ギーン、ステッチ、遅れるなよ。発進だ」

 

 そしてグフと二機のザクが発進する。

 

 

 

「アムロ、ドップだ。左旋回」

「ドップの五機や六機」

 

 援軍のドップに対応するカイとアムロだったが、

 

『アムロ、聞こえるか?』

「な、なんですか? ブライトさん」

『例のグフとザクが出てくるらしい。リュウとミヤビさんが前に出るから援護してやってくれ』

「り、了解で。うっ?」

 

 機体に走る衝撃にアムロはうめく。

 先行して支援に現れたドップからの攻撃を受けたのだ。

 

「カイさん、よく狙って。このガンタンクの性能ならドップなんか」

「や、やってる。け、けどよ、うわっ!」

 

 さらに至近に着弾。

 しかしそれはドップの攻撃では無かった。

 

「カイさん、大丈夫ですか?」

「大丈夫だ。左」

 

 新たに砲撃を加えてきたのは、

 

「ザ、ザクだ」

「ザク?」

 

 複数の人型の機影を確かめるアムロ。

 その中には青い機体もあった。

 

「新型のモビルスーツも。グフって言ってたな、あの捕虜」

 

 アムロは鋭い機動で位置を変え、射撃体勢を整える。

 

「カイさん、今だ!」

「おう!」

 

 両肩の120ミリ低反動キャノン砲を放つが、しかしその砲撃は回避される。

 

「ザ、ザクめ、やっぱり計算より動きが速いぞ」

 

 ミヤビの指摘どおり、そしてアムロも納得したとおり、モビルスーツの動きはパイロットの腕によってどれだけでも変わる。

 

「カイさん、後退します。動いてる相手にガンタンクは不利だ」

 

 

 

「リュウ、聞こえるか? ガンタンクの援護を頼む」

『むぅ、ガンキャノンだけじゃ支えきれないぞ。ホワイトベース前進してくれ。あとミヤビさんの援護を』

「了解した」

 

 ブライトはミライに指示。

 

「ミライ、ホワイトベース、突撃だ」

「はい」

「左、ギャロップを近づけさせるなよ」

 

 そしてブライトは告げる。

 

「ミヤビさん、聞こえますか? ハッチ開きます。出撃してください!」

 

 

 

「何でこうなるの……」

 

 ミヤビは頑張った。

 アムロの作成していた戦闘シミュレーションの問題もちゃんと体験として教えたし……

 ブライトとの行き違いで命令違反を犯さないよう、話し合いの場も設けた。

 でも……

 気付いたら何故か戦いの展開は変わっておらず、帳尻合わせで自分がグフと戦わなければならない始末……

 

『ミヤビさん?』

 

 気遣ってくれるサラにミヤビは言う。

 

「私とサラちゃんは、ズッ友だよ……!!」

『何ですか、それ?』

 

 キョトンとした様子で言うサラの瞳が痛かった……

 

 

 

「こいつさえあれば」

 

 ジェットパックを身に付けるコズン。

 

「おい、捕虜はどうした」

「このハッチの中か。外に逃げられてしまうぞ」

 

 続けざまに放たれる銃声。

 

「あっぶねぇ! 今跳ね返った弾がかすめたぞ!」

「よせ阿呆! 拳銃でロックが壊せるか! 跳弾で逆にケガするわ!」

 

 そんな声が聞こえてくる。

 戦艦のハッチに限った話ではなく、映画やドラマと違って拳銃やライフルではカギは壊せない。

 弾を撃ち込んでも跳弾で怪我をするのが落ちである。

 銃撃で扉の鍵を破壊しようとするならショットガンのスラグ弾(熊撃ちなどに使われる一粒弾)でないと無理で、特殊部隊ではショットガンを「マスターキー」や「ドアブリーチャー」と呼んでカギやドアの蝶番を吹き飛ばすのに使っている。

 撃つと粉々になり安全にカギの破壊ができる専用の弾丸も存在するし。

 セイラに渡されたアーマーマグナムでもスラグ弾は撃てるが、しかし今、込められているのは非殺傷のスタン弾なのでこの場の役には立たない。

 それゆえに、

 

「よし、爆薬で吹き飛ばせ」

 

 ということになる。

 

「じょ、冗談じゃない。そこまでやるのか?」

 

 コズンはホワイトベース艦内に広まっている噂を、自分がどれだけ恨まれているかを知らない。

 

「に、逃げなくてはダメだ」

 

 ジェットパックを背に脱出しようとした瞬間、爆発するドア。

 

「うわあああっ!」

 

 爆風でコズンは外へと吹き飛ばされてしまう。

 そして、ハッチ内に踏み込むホワイトベースクルーたち。

 

「捕虜はどうした?」

「今の爆風で吹き飛ばされたんじゃ」

「火薬多すぎ」

「ちっ、生き地獄に叩き落としてやろうと思ってたのによ」

 

 そんな光景を目にしたセイラはこう思うことにした。

 シャアについて尋ねた自分のことを知るコズンが消えたというのは良かったのではないかと……

 酷い話である。

 

 まぁミヤビが知ったら、こんなコメディじみた展開で爆破された場合、相手はボロボロになっても死んでいないのがお約束だと考えただろうが。

 

 

 

「これでおしまいだ、連邦のモビルスーツめ!」

 

 ラルはガンキャノンの腕をヒートロッドでからめとり、電撃でダメージを与え続ける!

 

 

 

「ぐっ…… ば、爆発しちまうぞ」

 

 リュウが危惧するとおり。

 ガンキャノンの上半身には240ミリ低反動キャノン砲の弾薬がみっちり詰まっているのだ。

 ヒートロッドの電撃や熱でこれが誘爆した場合、とんでもないことになる。

 

『リュウさん、Aパーツを排除してコア・ファイターで脱出しましょう』

 

 リュウの窮地にサラシックスが提案する。

 アニメ『ゲッターロボ』の分離離脱、オープンゲットというやつである。

 無論、あれと違って簡単に再合体したりはできないが、『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』で主人公、コウ・ウラキがモビルアーマー、ヴァルヴァロにつかまったGP-01-Fbガンダム試作1号機 "フルバーニアン"のBパーツ、下半身をパージして自由になったように宇宙世紀世界でも使われている手だったりする。

 

『ガンキャノンにはもう一つ、ロングレンジタイプのAパーツがあります。このAパーツが破壊されても後でBパーツが回収できれば今後も戦うことが可能です!』

「し、しかし!」

『でもリュウさんは、リュウさんは一人だけなんですよ!』

 

 涙目で迫るサラシックスに、言葉を失うリュウ。

 

 

 

『ミヤビさん、発進願います。正面のガンキャノンをなんとか援護してやってください』

 

 ブライトの要請を受け、

 

「行きます!」

 

 右舷モビルスーツデッキのカタパルトから弾かれるように射出されるミヤビのドラケンE改。

 さらに、

 

「ロケットエンジン、リミッターカット!!」

 

 背面ロケットエンジンのリミッターを解除し、戦場上空を横切るように飛翔する。

 

『グフおよびザク二機の存在を確認』

「ターゲット、マルチロック!」

 

 視線による照準で、地表のグフとザクを次々にロックオン。

 

『MT-SYSTEM動作良好』

 

 サラが報告。

 MT-SYSTEMはミノフスキー粒子散布環境下でも八機までの敵機を同時にロックオンできる射撃管制装置だ。

 

「対閃光防御! 目(センサー)を焼きつかせないように気を付けて!」

 

 ミヤビはサラに警告後、トリガーを引き絞る。

 

「バースト・ファイア!」

 

 ドラケンE改の右腕肘のハードポイントにマウントされた60ミリバルカンポッドから夜目も鮮やかな、目もくらむような火線がほとばしる!

 

【挿絵表示】

 

 

 

「なにっ!!」

 

 通常の数倍もの分厚い弾幕にとっさに回避行動を取るラルたち。

 

「新型の火砲か? 発射速度が並ではないぞ!」

 

 しかし、

 

「いや、砲に力が無い? まさかハッタリか」

 

 ミヤビの手品のタネに気付くラル。

 

 

 

『ブラフが効いたようですね』

 

 無事着地を決めるドラケンE改。

 

「多分、この一回限りの手だけどね」

 

 そう答えるミヤビ。

 彼女が何をしたのかというと、弾道を視認するため光を発しながら飛ぶ曳光弾(トレーサー)、通常の砲弾に一定の間隔で混ぜられるこれを、三倍に増やして装填したバルカンポッドを装備して出撃したのだ。

 これにより、見た目には三倍の発射速度で三倍の量の砲弾をばら撒いたように感じられるわけだ。

 曳光弾が派手に目立つ夜間の出撃、そして初めてだからこそ通じてくれた詐術だった。

 

「一戦ごとに手の内が剥かれていくか……」

 

 さすがに歴戦の勇士、ランバ・ラルの相手はミヤビには荷が重すぎる。

 

 

 

「ガンキャノンを援護する。正面のグフのみに集中砲火」

 

 ブライトはドラケンE改の働きによりガンキャノンから離れて狙えるようになったグフを集中して砲撃するよう指示。

 

 

 

「うおおっ!」

 

 直撃こそかわしたが、ホワイトベースの主砲、大口径の火薬砲の爆発の衝撃で弾き飛ばされるグフ。

 何とか着地するものの、コクピットには警報が表示される。

 

「し、しまった、爆撃のショックで関節が。ええい、ろくに戦わずして後退か」

 

 故障した脚部関節を庇いながらも回避を続けるラル。

 

「地上部隊がもう少しもってくれればなんとかなったものを」

 

 そう悔やむが、これ以上は戦えない。

 

「ギーン、ステッチ、後退する。ポイント3Rでギャロップに戻れ」

 

 部下たちに撤退の指示を出し、自身も後退するラル。

 こうして戦闘は終了したのだった。

 

 

 

 深夜のモビルスーツデッキ、人目をはばかり内密の相談をするブライトとミライ。

 

「あんまり賛成できないけど」

 

 うかない顔のミライ。

 

「サラシックスだっていいし、サラナインだってある」

 

 ブライトが言っているのは、サラシリーズも含めたパイロットたちの弾力運用。

 つまりミヤビが言うとおりRXシリーズが、というよりサラシリーズが人に依存するなら、コア・ブロックごと換装してしまえば良いということ。

 

「今回だって、今までとは異なる構成で、成行とはいえランバ・ラル隊と戦闘、退けることができた。これを推し進めれば戦力の安定化につながる」

「……でもね」

「サラシックスとリュウにガンキャノンを任せてもいいと思うな」

「………」

 

 ミヤビの知る史実とは異なる会話。

 そしてアムロも聞いていない。

 だがこの場には、彼らの話を聞いている存在があったのだ。

 

 

 

 翌日…… モビルスーツデッキに顔を出したとたんにガンキャノンの手につかまれ、そのまま腹部コクピットに押し込まれるアムロ。

 そしてサラツーが単独制御するガンキャノンはハッチを開け、

 

『ね、姉さん。どこ行くの?』

『ホワイトベースを降りるのよ。元気でね』

『えっ? なに?』

『船を降りるのよ』

『どうしたの?』

『ブライトさんとミライさんが私は不必要だって言うの。だから、船を降りるのよ』

『ちょ、ちょっと』

『止めるな!』

 

 引き留める妹、サラスリーの言葉も聞かず、暴走するサラツー。

 彼女に拉致られたアムロもガンキャノンと共に消えた。

 史実と同じように。

 

 

 

次回予告

 サラツーと共にガンキャノンを駆り、マ・クベの鉱山基地と戦うアムロ。

 そこで見た、ザビ家の一党キシリア・ザビを。

 マ・クベの基地殲滅なるか、アッザムがガンキャノンを焼き焦がすのか?

「きさまは電子レンジに入れられたダイナマイトだ!! 電磁波の閉鎖空間の中で爆散するがいい!!」

 次回『灼熱のアッザム・リーダ……『黒いガンキャノン』

 ガンキャノンは生き延びることができるか?




 アムロを拉致って駆け落ちするサラツーでした。
 次回はそれを執念で追いかけるストーカー、もといフラウ。
 そしてアッザムですが、マ・クベにも変化が?
 ご期待ください。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。