ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第19話 ランバ・ラル特攻! Aパート

 太陽の下、サバイバルブランケットをまとうようにして砂漠をさすらうコズン。

 その前に現地民のテントが現れた。

 

「キャンプか」

 

 コズンは座り込んでいる老人に話しかける。

 

「水を飲ませてもらえないだろうか?」

「余分はないな。すぐ街だ。そこで買え」

 

 当たり前だが砂漠で水は貴重。

 そもそもミヤビの前世、西暦の時代の日本のように外食でタダの水が出てくる、飲むことのできる水が豊富な国は珍しいものなのだ。

 

「そうですか。ありがとう」

 

 風体に似合わず丁寧に礼を言うコズン。

 ランバ・ラル隊はゲリラ屋の集まり。

 そういった部隊には現地民との円滑なコミュニケーションは欠かせないものなのだ。

 

「街、か。あの嬢ちゃんのおかげで助かったが……」

 

 コズンは昨晩の顛末を思い起こす。

 

 

 

「な、なんじゃこりゃあー!!」

 

 ようやくたどり着いた鉱山基地が悲惨な状態になっているのを見たコズンは、その場でパタリと倒れ込んだ。

 兵士たちも撤退を完了しており、彼を助けてくれる者は居ない。

 

 そしてどの程度、呆然自失としていたのか、

 

「大丈夫?」

 

 心配そうな女性の声に顔を上げれば、いつの間に忍び寄ったのか、赤いミドルモビルスーツ、ドラケンE改の姿が。

 

【挿絵表示】

 

 元々動力源が燃料電池と静かなのに加え、軍用や法執行機関向けのドラケンE改は隠密行動のためにアクチュエーターやローラーダッシュを制御するVVVFインバータ等に無音化処理が施されており、他者に気付かれないよう忍び寄ることも可能。

 それでもコズンがここまで接近を許したのは、傷つき疲れ果てた上、放心状態だったからだろう。

 そしてドラケンE改のフェイス、胴体部のコクピットハッチが開き、ヘルメット付属のバイザー型HMD(ヘッド・マウント・ディスプレイ)を跳ね上げた女性パイロット、ミヤビが顔を見せた時点で、

 

「ひいいいっ!」

 

 甦る、甦る、甦る、あつあつおでんー、その恐怖!

 ミヤビがやったわけではないが、彼女との関わりが妹のミライの変なスイッチを押してしまい、酷い目に遭ったのは確か。

 反射的に後ずさったコズンの足に、非常に嫌な感触が伝わった。

 

 カチッ

 

『あーっ! トラップを踏み抜きましたねっ! せっかくここまで気を付けてそろそろと歩いてきたのに!』

 

 姿が見えない少女の声、サポートAIのサラの悲鳴。

 そしてミヤビの、

 

「それどころじゃないでしょ!」

 

 という言葉と共に、ドラケンE改の左腕マニピュレーターがコズンに伸ばされ、

 

「掴まって! 脱出します!!」

 

 まずいものを踏んだと理解しているコズンは、とっさに飛び付いた。

 ミヤビはドラケンE改のかかとに内蔵されたインホイール・モーターとランフラット・タイヤを左右逆転。

 超信地旋回で背を向けることでコズンを庇う!

 直後、コズンが後にした足元、砂の中から跳ね上がった缶状の跳躍地雷が空中で爆発した。

 

『S-マイン!』

 

 ドラケンの背面装甲が、地中から1.2mほどの高さの空中へ飛び出して炸裂した空中炸裂型地雷がばらまく金属球を跳ね返す。

 周囲にいる者にも被害をおよぼすため、踏んだ直後に爆発するのではなく、足を離した後に起動するようになっていたのがコズンを救ったのだった。

 しかし、

 

『今ので周りのトラップが起動しま……』

「緊急離脱するわよ!」

 

 ミヤビはコクピットハッチを閉める暇も無くスロットルを踏み込み、ローラーダッシュで緊急発進。

 ドラケンE改のマニピュレーターにコズンを抱えたまま走り出す。

 その周囲で連鎖的に爆発するトラップたち。

 

『砲弾やあり合せの爆発物と起爆装置から作られた即席爆発装置(Improvised Explosive Device, IED)ですね。爆発までタイムラグがありますからこのまま走り抜ければ!』

 

 走り抜けることでトラップを回避ってマンガじゃないんだから、とミヤビは思うがそれどころではない。

 辺りに爆発が走る中、必死にドラケンE改を走らせる。

 

(いきなりクライマックスは止めて!)

 

 凍り付いたように変わらない表情の下、内心絶叫するミヤビ。

 いったんホワイトベースと合流し、改めて鉱山基地跡の調査に来たわけだが、こんな歓迎を受けるとは思わなかった。

 背面ロケットエンジンで一気に脱出という手は、コズンを抱えているのとコクピットハッチが開いていることでできない。

 走っている間は風圧でコクピットハッチが閉じられないのだ。

 

 しかし、そんなミヤビは奇妙な既視感を覚え、

 

(あ、これスコープドッグの腕にフィアナを抱えてキリコが脱出するシーンだ)

 

 アニメ『装甲騎兵ボトムズ』で主人公、キリコ・キュービィーがヒロインのフィアナと共に爆発の中を駆け抜ける場面の再現だ。

 ……ドラケンE改が抱えているのはおっさん兵士、コズンだったが。

 

 

 

「し、死ぬかと思った。よくあの地雷原の奥まで歩いて行ったもんだな、俺は」

 

 死のトラップ地帯を抜け、ようやく息をつくコズン。

 

「あそこに至るまでは対車両トラップばかりだったんでしょうね」

 

 と、ミヤビ。

 対車両用の起爆装置は通常、人間の体重では起動しない。

 コズンは渋い顔をして、

 

「案外、トラップ地帯のど真ん中まで敵をおびき寄せる手だったりするのかもな」

 

 そうため息交じりにこぼす。

 

 先行する歩兵がトラップ地帯の最奥で対人地雷に倒れる。

 救助側はそれまで歩兵が歩いた部分にはトラップは無いと見て救助のため車両を乗り入れさせる。

 そして対車両用の即席爆発装置で吹っ飛ばされる。

 そういう手だ。

 即席爆発装置の作動にタイムラグがあったのも、最初の一台だけではなく、踏み込んできたものをまとめて一網打尽に吹き飛ばすための仕掛けだったのかもしれない。

 まぁ、そのおかげで助かったのではあるが。

 

 鉱山基地の兵士たちは徹底した遅滞工作を行った上で撤退したらしい。

 

「で、俺は虜囚に逆戻りって訳か……」

 

 そうこぼすコズンだったが、

 

「それなんですけど、取引しませんか?」

 

 というミヤビの言葉に瞳を見開くのだった。

 

 

 

 ホワイトベースはアムロの脱走(実際はサラツーによる拉致)のため岩場の影に身を隠して停泊していたが、その機会を利用して修理作業を行っていた。

 ミヤビの前世でも、動かし続けることが必要な、止められないプラントは週末や夜間…… 大規模なものなら盆、正月、ゴールデンウィークなどの停止時を狙って補修作業をぶち込むものだったが。

 ガンタンクの下半身、車体後部に備えられた板状のアウトリガーを展開、運搬作業用のキャリアーとして使ったり、マニピュレーターを足場の代わりに用い……

 

「せめて安全帯を付けなさい!」

 

 ……ようとして、落下防止、作業安全対策がなってないとミヤビに叱られたり。

 もちろん作業用重機が前身であるドラケンE改は予備機も含め補助AI、サラの自動制御で八面六臂の大活躍をしていた。

 この辺の作業はメーカーの技術者であるミヤビと、彼女が使うドラケンE改のおかげで史実よりかなりマシになっていると言って良いだろう。

 

 そんな作業状況を監督しながらブライトはリュウと相談する。

 

「リュウ、お前もみんなと意見は同じなのか?」

 

 リュウはガス溶接器を止めると、目を保護するためのゴーグルを上げ振り向く。

 

「アムロのことか?」

「ああ」

「アムロのことをガンキャノンと別に考えるのか?」

 

 ブライトは、リュウに非難されている……

 いや違う、リュウに自分も含め心配されていることが分かり、

 

「……まあ、ガンキャノンが戻ってからの話になるがな、アムロのことは」

 

 と言葉を濁す。

 リュウはその煮え切らない態度に、

 

「ならやめとけ。その時のアムロ次第だからな」

 

 そう返す。

 自分がコントロールできないものに対し、あれこれ悩んでも消耗するだけだ。

 そして同時に、穏当に事を済ませたい彼にしても、ただ甘やかすだけではだめと感じているのだ。

 この辺、やはり彼は気配りの人だった。

 

 

 

「食事、できるか?」

 

 街のレストランに入り、ようやく水と食事にありつくコズン。

 昨晩、ミヤビと別れた際にドラケンE改に備え付けのサバイバルキットと水、食料を受け取ってはいたが、やはりそれだけでは心もとなかったのだ。

 渡された水も、妙な味がしたし……

 サラとかいうサポートAIが、

 

『き、きれいな水ですから!』

 

 と強く主張していたのが気になるコズンだった。

 

「それにしても傭兵団、それもジオン外注の独立重駆逐部隊へのお誘いねぇ……」

 

 昨晩のミヤビの提案を思い出す。

 

 

 

「ランバ・ラル大尉へのメッセンジャーになってもらいたくて」

 

 そうミヤビは言った。

 

「何だと?」

「自己紹介が遅れましたね。私はミヤビ・ヤシマ。ヤシマ財閥令嬢と言うのが一番通りが良いかしら? 同時にヤシマ重工の技術者で軍に出向中の身ではあるけれども、純粋な軍人でもまたない」

「なっ、『ヤシマの人形姫』だと!?」

 

 その硬質な美貌に思い当たるコズン。

 例の『コロニーリフレッシュプロジェクト』を通じてミヤビはジオンにコネクションを作っており、その容貌も割と知られている。

 

「ええ、ラルさんとも面識があるわ」

 

 そうミヤビが言うとおりヤシマ重工からのジオンのモビルスーツ開発に対する100ミリマシンガンの提供などもあって、ランバ・ラルとも結構親しい間柄なのだ。

 

「それで、とあるプロジェクトにランバ・ラル隊をスカウトしたくて」

「何だって?」

「傭兵団、それもジオン外注の独立重駆逐部隊…… 地球連邦軍の試作型モビルスーツ運用艦を密かに乗っ取り、RX-78ガンダムと呼ばれる最新鋭モビルスーツたちを運用する極秘の教導部隊」

「は?」

 

 教導部隊、つまり仮想敵機部隊のことで、いわゆるアグレッサー部隊だが、それを極秘、しかも外注の傭兵団でというのが分からない。

 しかし、

 

「ドズル中将にも根回し済み。ただし極秘と言ったとおり通信で伝えられるような内容じゃないから、命令書と辞令はここに」

 

 と、ミヤビは厳重に封緘された記録媒体を渡す。

 

「ジオン軍、宇宙攻撃軍独自規格の最高強度の暗号化がされていると聞いています。定められた手順以外ではデータが自壊しますからそのつもりで」

「な、なんでそんなものをあんたが……」

「もちろん私以外にも伝令は出されていますが、ここ、マ・クベ大佐の…… もっと言うとキシリア様の支配下の領域でしょう? その目を掻い潜ってあなた方の部隊に接触するのは難しくて」

 

 それでシーマの補給部隊が接触が可能なら、と持ってきてくれたものだ。

 ミヤビはラルに面識、コネがあるし、最悪ホワイトベースを墜とされ捕虜となって接触、という事態も考えられるし。

 

「危うい話だな。裏が何枚あることか」

 

 そうコズンが言うと、わずかにミヤビの目が細められ、

 

「何枚でも」

 

 と返される。

 

「私が推測できる範囲でもダブルブッキング、トリプルブッキングどころじゃない話になってます。ステークホルダー、利害関係者の数とその肩書もシャレにならないことになってますからね」

 

 その内の一人がドズル中将というあたりでお察しである。

 バカバカしすぎて呆れる他ないのだが、それぞれの利害が奇妙に噛み合ってこのプロジェクトは成り立っていた。

 ミヤビもミヤビパパも、そしてヤシマ重工を筆頭とするヤシマ財閥関連企業も協力はしているがそれだけで中枢には関わっていない。

 そのため少々他人事っぽくなってしまうが、真剣に考えると話が込み入りすぎていて頭がフットーしそうになる代物だから、あえて考えないようにしているとも言える。

 確実に言えるのは、厄ネタ案件で間違いないということ。

 

「だからランバ・ラル大尉とその配下の部隊ぐらいの強さとしたたかさが無いと任せられないんです」

 

 そういうことだった。

 しかし、

 

「なぜ、俺に?」

 

 こんな大事な連絡役を頼むのかといぶかしむコズンに、ミヤビはこう答えた。

 

「あなたのことを私が気に入ったからなんだけど、理由にならないかしら?」

 

 と……

 ハモン女史のまねっこである。

 

 

 

「お客さん、寝るなら部屋を取ってくださいよ」

「ん、ああ……」

 

 気付けば夢うつつで舟をこいでいたコズン。

 一息ついたところで限界が来たらしい。

 ミヤビから渡された資金もあることだし、モーテルも兼ねているというこの食堂の二階に部屋を取り、一寝入りすることにする。




 とうとうRX-78ガンダムの名が本編でも出てきましたね。
 ミヤビがメッセンジャーになっているこの件、無茶苦茶複雑なので、彼女も呆れ気味。
 まぁ黒幕は別なので他人事っぽくなっちゃうんですがね。

 最後のコズンは寝過ごしすれ違いフラグ……
 なので次回からはランバ・ラル隊との戦闘です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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