ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第19話 ランバ・ラル特攻! Bパート

「グフを見たのか? 敵のモビルスーツを?」

「ええ。大型トレーラー二台に積んでいるらしいの」

「アムロには会ったのかい?」

「ええ。同じソドンの町で会ったわ」

「ほっ、アムロのやつ、ジオンに知らせたんだぜ、ホワイトベースのことをよ」

「カイ、いいかげんにしないか。我々を追っている部隊が目の前にいるんだぞ」

 

 史実そのままのブライトたち、そしてフラウの会話に脱力しかけるミヤビ。

 しかし気力を振り絞り、

 

「すぐに作業を中止して迎撃態勢を取った方がいいわ」

 

 史実だと妹のミライが行った提案を自らする。

 ブライトに近づいて、耳打ち。

 

「ランバ・ラル隊は不正規戦に長けた部隊。フラウは確実につけられていますよ」

 

 だからフラウが抜け出さないよう目を配ってくれと彼女の友人であるハヤトに頼んだのだが、彼はフラウに言いくるめられたのかバツが悪そうに頭を掻いている。

 

「なんですって!?」

「そのためにあえて見逃されたのよ」

 

 ミヤビの知る史実での、捕まったフラウを前にして、

 

「しかし、こいつの着ているのは連邦軍の制服です」

「そうかな? ちょっと違うぞ」

 

 というように交わされた会話の後の解放だ。

 まぁ、ちょっとどころじゃなく違うので、史実でもあまり不自然とはならなかった会話だが。

 何しろタイツ穿いてない…… 露出狂と思われても仕方がないファッションなので、フラウは。

 これを地球連邦軍の正規兵と考える方が難しいのだ。

 

「フラウ・ボゥ、気持ちはわかるけどこれからは勝手に抜け出したら駄目よ」

 

 ミライがフラウに言い聞かせる声を聴きながら、ミヤビは考える。

 史実どおりアムロはランバ・ラルと接触。

 この辺に街はソドンしかないので必然と言えば必然か。

 一方、様子から見てコズンはまだ帰還できていないということだ。

 

(上手く行かないものね。あるいは歴史の修正力じみた、あの死神の力でも働いているのかしら?)

 

 自分をこの宇宙世紀世界に転生させた『機動戦士ガンダム MSイグルー2 重力戦線』登場の超常的存在、死神の姿を思い出し、ため息をつくミヤビだった。

 

 

 

「ふが?」

 

 疲れ果てていたコズンの眠りは深かった。

 一階のレストランにラルたちが来ていたことにも気づかないほどに……

 

 

 

「ドラケンE改、出ます!」

 

 カタパルトから射出、背面ロケットエンジンを吹かしてホワイトベースを隠していた岩山の上に出たミヤビだったが、

 

「こんな近くに!?」

 

 グフの目の前に出てしまったことに驚く。

 

「バァルカン!!」

 

 と『機動武闘伝Gガンダム』の主人公ドモン・カッシュのごとく叫びつつトリガーを引き絞るミヤビ。

 

【挿絵表示】

 

 サポートAIであるサラはRXシリーズの教育型コンピュータのように、操縦者のやりたいことを察してフォローしてくれる機能を持つ。

 つまり感情もあらわに叫ぶとAIの読み取り精度が上がり、機体制御が向上するのであり……

 バルカンもまた命中精度が上がり、結果として与えるダメージが上昇するのだ。

 

 しかし、ラルのグフはドラケンE改の右ひじハードポイントに接続された60ミリバルカンポッドからの射撃をシールドで弾いて見せ、

 

「っ!?」

 

 ヒートロッドですかさず反撃。

 ミヤビはたまらず岩山から転げ落ちるようにして回避する。

 そこに、

 

 

 

「好きにさせるかよーっ!」

「ミヤビさん、離れて!」

 

 カイとセイラのガンタンクの砲撃が割り込む。

 また、

 

 

 

「リュウさん、ホワイトベースから離れてください」

「おう」

 

 ハヤトとリュウのコア・ファイターも迎撃に出た。

 

「来た!」

 

 空に上がったことで、グフの僚機であるザクの脚部、外付けされた三連装のミサイルポッドから放たれるミサイルを察知する。

 

 

 

「急速発進」

「はい」

 

 ブライトの指示、ミライの操艦でホワイトベースも緊急発進。

 迫るミサイルを何とか回避する。

 

 

 

 ガンタンクからの射撃を丘陵に隠れ回避するザク、そしてグフ。

 

『ステッチ、俺が跳び出す。その間にタンクをやれ』

「は、はい。ラル大尉」

 

 ラルのグフは背面ロケットエンジンで遮蔽から躍り出るとジャンプ飛行に入る。

 ガンタンク目掛け、左指に仕込まれたフィンガーマシンガンでドラケンE改のお株を奪う、上空からのトップアタックを仕掛ける。

 

「今だ!」

 

 ステッチのザクも丘陵の陰から飛び出し、脚部ミサイルポッドを発射。

 ガンタンクの右側キャタピラの破壊に成功する。

 

「ハハハ、隊長やりました、タンクをやりましたよ。こいつにとどめを」

『なにを寝ぼけておるか、ステッチ。木馬だ、木馬を討ち取らねば我々の、我々の戦いの意味はない』

「……そ、そうでありました」

 

 

 

 動けなくなったガンタンクを置いてホワイトベースに向かうグフとザク。

 それを見て頭部の車長兼砲手席につくセイラは決断する。

 

「カイ、ガンタンクの上半身を強制排除します。あなたはコア・ファイターでアムロを呼びに行って」

「強制排除だって? あ、あんたはどうすんだよ。動けないぞ」

「弾丸は十分残っているから砲台になればいいことよ。戦力は無駄にはできないわ。いいわね、カイ」

「いいわけねぇだろーっ!!」

 

 皆まで聞かずアクセルを踏み込むカイ。

 無事な方、左側の履帯、キャタピラが回転。

 損傷した右側も転輪が回るので曲がりながらも前進する。

 

「こうだ!」

 

 そして車体の右角を岩にぶつけ、それを支点として回頭した。

 それによりガンタンクを無視して通り過ぎたグフとザクを射界に入れる。

 

「アムロのことなんかハヤトやリュウに任せろ。こんなところに動けなくなったタンクを残して行けるはずがねぇだろ」

「カイ、あなた……」

 

 

 

『リュウさん、アムロを迎えに行ってください。ここは僕が残ります』

 

 リュウをうながすハヤト。

 

「よ、よしわかった。お前の言うとおりかもしれん、行かせてもらうぞ!」

 

 リュウは戦場を離脱し、フラウが語ったアムロと別れた地点へと飛行する。

 

 

 

「いいぞ、真後ろからミサイルぶっこみゃいくら木馬だって」

 

 ホワイトベースの後背に回り込み、脚部三連装ミサイルポッドを構えるザク。

 

 

 

「いや、させないから」

 

 攻撃に気を取られているザクに、ミヤビのドラケンE改はジェットローラーダッシュで急速接近。

 短距離ミサイルを撃ち込もうとするが、

 

『危険です!』

 

 不意にサラにコントロールを奪われ、転がるように急停止。

 そこにホワイトベースのロケット噴射が全力で放たれる。

 

(ああ、そう言えばこの戦闘って史実じゃあ、ミライ無双だったんだっけ、前半戦は)

 

 哀れ! 真後ろに回ったがゆえに、モロに噴射を浴びたザクは爆発四散!

 ……いや、史実とは違って四肢も頭も吹き飛んだが、胴部だけは辛うじて残ったか。

 そしてミヤビのドラケンE改もまた余波に巻き込まれ、

 

『ンアーッ!』

 

 悲鳴を上げるサラと共に吹っ飛ばされるのだった。

 

 

 

「ええい、迂闊な奴だ」

 

 ステッチのザクを撃破され、苛立つラル。

 背面ロケットエンジンを吹かし、ホワイトベース艦上に特攻を仕掛ける。

 

 

 

「……こ、こいつ」

 

 ホワイトベースに飛び乗り、エンジン部をヒートロッドで痛めつけるグフに、カイはガンタンク両腕の40ミリ4連装ボップ・ミサイル・ランチャーを向けようとするが、

 

「だ、ダメだ。位置が悪い。ここからじゃホワイトベースにも当たっちまう!」

 

 断念する。

 キャタピラがやられているので位置を変えようにも難しいのだ。

 だがそこにバルカンによる射撃がグフを襲い、さらにミライが艦を傾けたことでグフは地上に落下する。

 

 

 

「先ほどの射撃、ドラケンが生きていたのか?」

 

 グフにバルカンで攻撃したのは、

 

「黒いモビルスーツ!? い、いや、ガンキャノンというやつか? ど、どこに隠れていたのだ?」

 

 突如のガンキャノンの乱入に、ラルは目を見張る。

 

 

 

「グフめ」

 

 弾切れを起こしたバルカンに代わり、両肩の240ミリ低反動キャノン砲を撃つガンキャノン。

 しかしグフはその場を一歩も動かずに、わずかに機体をそらし、かがめるだけでそれを回避して見せる。

 

「こ、こいつ」

 

 

 

「せ、正確な射撃だ。それゆえコンピューターには予想しやすい」

 

 ラルはアムロの射撃を称賛するが、しかし彼が言うとおり正確であること、つまり最適解の予測はコンピュータ、そしてAIの得意とするところ。

 そしてジオンのモビルスーツ、グフにも戦術支援のサポートAIは搭載されているのだ。

 サラシリーズと違って人格も感情も無い、もちろん顔だって無い存在だが。

 

 

 

「よ、よけもしないのか?」

 

 アムロはあっさりとキャノン砲をかわすグフを見て、砲撃戦では倒せないと判断。

 

「ええい、どうせあと一回ぐらいしか撃てないんだ」

 

 腰後ろのラッチに装備されていた折り畳み式ヒートナイフを抜く。

 

『ヒートナイフ、装備!』

 

 柄から展開した刃が加熱され、プラズマ化する!

 

 

 

 砲撃戦に見切りをつけ、接近戦を挑もうとするガンキャノンに、ラルは、

 

「ほう、思いきりのいいパイロットだな、手ごわい」

 

 そうつぶやく。

 

「しかし!」

 

 振るわれるヒートロッド!

 

 

 

「速い!」

 

 ムチの先は人間が繰り出したとしても簡単に音速を超える。

 

「うっ、すごいパワーだ!」

 

 それにヒートナイフの刃を合わせられるアムロもアムロだったが……

 

 

 

「バシイって、あの、何考えてるの。まずいわよ、アムロ」

 

 正面からナイフでヒートロッドと打ち合ったガンキャノンに、擱座したドラケンE改からミッションディスクを抜いて脱出したミヤビが漏らしたとおり!

 

 

 

 ムチというものは避けにくいものだ。

 ナイフで弾こうとしても、そこを支点として曲がった先がガンキャノンの右手に絡みつく!

 

「はははっ! 絡め取ったが最後!!」

 

 流し込まれる電流と熱!

 

「取ったぞ、連邦のモビルスーツ!!」

 

 

 

「退いてーっ、アムロ!!」

 

 叫ぶ、ミヤビ。

 

 

 

 ヒートロッドがガンキャノンを焼く!

 

『ひぐぅッ!? くっ、くひぃぃぃッ!!』

 

 機体からのフィードバックに悲鳴を上げるサラツー。

 

「サラツー!? ガンキャノンとの同調率を下げるんだ、早く!」

『くっ、で、でも私は大丈夫でもガンキャノンがぁ……』

 

 ガンキャノンの指からもヒートナイフが零れ落ちる。

 右腕がもう持たない!

 しかし、

 

「まだだ!」

 

 アムロは地面に向かって落下するそれを左手でキャッチ。

 その脳裏に、以前、ミヤビからもらったアドバイスが過る。

 

 

「どんなに操縦が上手くても物理法則は超えられないのだから、使いどころさえ見極めれば正確な敵のデータは有力な武器になるわ」

 

 

 そして気づくアムロ。

 

「そうか! サラツー! 足底をフラットに!!」

 

 ガンキャノンに限らず、モビルスーツの足はつま先とかかとが別パーツになっている。

 そうでないと走れないからで、ミヤビの前世の記憶でも後年になってリファインされたデザイン、そして発売されたプラモデルでは皆そうなっていた。

 それをあえて平らにさせたのは接地面積を増やすため。

 

 砂漠の砂地に限らず不整地での歩行においては、靴底は地面に対してフラットでないといけない。

 地面に着く靴底の面積が広いほど安定してグリップするからだ。

 登山靴がごつく硬いのも、柔らかい靴だとどうしても爪先が曲がり接地面積が少なくなり滑りやすくなるから。

 その点、硬い靴だと曲がりにくいから靴底全体が地面に密着しやすく滑りにくくなるというわけだ。

 険しい場所ほど硬い靴の方が安定性が高くなる。

 

 そうしてアムロはグリップを稼ぐと、右腕をぐいと引く。

 

 

 

「む? おおおっ!?」

 

 ガンキャノンに引かれ、体勢を崩しそうになるグフ。

 ラルは両足を踏ん張らせるが、足が滑って行くのを止められない!

 

 

 

 グフより3割以上高い出力に、トルク重視のセッティングが生み出す力。

 

「これが正真正銘のガンキャノンのパワーだっ!!」

 

 叫ぶ、アムロ。

 そう、ミヤビの言うとおり、どんなに操縦が上手くても物理法則は超えられないのだから、力勝負にしてしまえばガンキャノンは負けないのだ!

 

 

 

「ぬわっ!」

 

 振り回され、吹っ飛ばされる前にヒートロッドによる拘束を解き、何とか体勢を整えるラル。

 

「な、何というパワーだ。このグフを単純に力だけでねじ伏せるとは!」




 戦闘開始です。
 ミヤビに過去習ったことをヒントに逆転するアムロとか、格闘マンガのノリですね。
 いや、この場合はGガンダムか……
 次回はグフとの死闘に決着の予定です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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