ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第20話 死闘! ホワイト・ベース Aパート

「ラル大尉、ドズル閣下からの電文です。マ・クベ閣下から中継していただきました」

 

 ラルは副官のクランプから出力された電文を受け取る。

 そう、電文一つとってもマ・クベを介さないと届かない。

 これだからミヤビはコズンにメッセンジャーを頼んだのだ。

 そしてまだコズンはランバ・ラル隊との合流を果たしていない……

 

「ハモン、いいニュースだ。陸上タイプのモビルスーツ、ドムを三機、まわしてくれるそうだ」

 

 ラルは顔をほころばせ、笑う。

 

「ドム? 噂の、あの重モビルスーツ?」

 

 ラルは命じる。

 

「ハモン、移動するぞ。ドムを受け取ったら我々はただちに木馬に攻撃を掛ける」

 

 

 

 モビルスーツトレーラー、サムソン三台に積まれ、基地に到着する重モビルスーツ、ドム。

 キシリア旗下のマ・クベ大佐の部隊は、地球で最大の鉱物資源をおさえていた。

 ここは、そのマ・クベの本拠地である。

 

「ランバ・ラルはこの辺りの私の鉱山を知りすぎた。キシリア様がジオンを支配する時にこの鉱山は役立つ。実態はギレン様にも知らせる訳にはいかんのだ」

 

 マ・クベは副官のウラガンにその酷薄な目を向ける。

 

「次の手はわかってるな?」

「はっ」

 

 

 

 一方ホワイトベースでは、少年たちは一致団結して生き抜こうとしていたが、わがままと苛立ちがお互いの仲を気まずいものにしていた。

 しかし敵の攻撃はそんな少年たちとは関係なく迫りつつあった――

 

(はずなんだけど……)

 

 首をひねるミヤビ。

 サラツーの脱走。

 彼女はAIであり、その存在、命など人間に比べれば軽くたやすいもの。

 だから史実どおりアムロが自分の意思で脱走した、そう偽装しなければならなかった。

 

(つまり今度は自分勝手な思いで脱走し、しかし許されるアムロに反発したカイ、ハヤト、ハワド、マクシミリアンがあてつけにホワイトベースを降りようとする)

 

 そのはずなのだが、

 

『カイさん、凄かったです。戦車ってキャタピラが片方切れても動けるんですね?』

「んん? ああ、履帯が切れても転輪はフリーのままだからな」

『岩に角をぶつけることで旋回してみせるし、やっぱり大型特殊の免許持ってる人は違いますね』

 

 ミヤビの前世、旧21世紀の日本なら戦車は道路交通法で分類すると大型特殊車両。

 大型特殊自動車免許があれば戦車が運転できた。

 まぁ自衛隊だと大型特殊免許の中の「大型特殊免許(カタピラ限定)」という限定免許を取るのが普通だったが。

 

「おだてても何も出ないぜぇ、サラミちゃん」

『……私、おつまみですか? カイさんに美味しく頂かれちゃうんですか?』

「いいっ!?」

『あの、その…… いいですよ、私、カイさんになら』

「ちょっ、ちょいタンマ、待ってくれ!」

『……なぁんて、びっくりしましたか?』

「おいおい」

『ふふっ、ちゃんと私の名前を呼んでくれない罰ですよ』

 

 ガンタンクの腹部コクピットで和気あいあいと会話に花を咲かせるカイとサラスリー。

 

「まったく、気楽に言ってくれるよ。直す方の身にもなってくれってんだ」

『ハワドさん、気持ちは分かりますけど私もお手伝いしますから』

 

 ガンタンクの履帯を修理するメカニック担当の少年、ハワドと、両腕を重い荷物を扱うためのパワーローダータイプに換装して手伝うドラケンE改のサラ。

 ガンタンクほどの巨大さになると履帯一枚、転輪一個とってみても重すぎて人力では修理できないのだ。

 地球連邦軍の主力戦車 (MBT) である61式でも、かなり難しいくらいだし。

 それより巨大なガンタンク、ジオン軍ならマゼラアタックなども重機なしには修理できない。

 戦場で履帯が切れても転輪が外れても、乗員の手では修理できないのだ。

 

 戦車は火力のほかに装甲でも戦う存在。

 重ければ重いほど高火力重装甲にできるが、運用が大変になる。

 主力戦車 (MBT) はその辺のバランスを取ったものであるが、逆に言うと運用のためのインフラから逆算して大きさの限界が決まってしまう。

 一方、ジオンはモビルスーツという規格外の陸戦兵器を投入するために、従来以上の大型兵器を扱えるインフラを用意していた。

 だからマゼラアタックのような超大型戦車を投入することができたのだ。

 

 この辺、旧日本帝国陸軍の戦車チハが当時のアジアの港のクレーンや道路、鉄道、橋に合わせて非常に軽く作られたが、揚陸艦など自前のインフラを用意して運ばれたアメリカ軍のM4シャーマンにまったく歯が立たなかったという過去の事例の再現でもある。

 マゼラアタックの戦術は簡単。

 ミノフスキー粒子環境下での敵兵力のアウトレンジアタックである。

 背が高く発見されやすい、とされるが、それはマゼラアタック側からも早期に発見できるということでもある。

 アニメ『ガールズ&パンツァー』にも登場したM3リー中戦車がそうであったように。

 つまり有視界戦闘での交戦開始距離が通常型戦車より伸びるのだ。

 そして61式戦車より高火力重装甲なマゼラアタックは遠距離からでも61式戦車を撃破できるが、61式戦車はもっと近づかないとマゼラアタックの装甲を貫くことができない。

 接近するまで一方的に叩かれることになるわけだった。

 

 まぁ、そんなことを思い浮かべるミヤビだったが、話はメカニックの少年、ハワドとそれを手伝うサラである。

 

「そうだよな、俺たちメカニックの気持ちを分かってくれるのはサラちゃんだけだよ」

『そんなことないですよ、みなさん感謝してますよ。みんなが戦えるのも、メカニックマンの方々の不断の努力があればこそって。もちろん私も……』

「そ、そうかい?」

 

 照れくさそうに笑うハワド。

 

 そしてコア・ファイターではハヤトとサラナインが整備を進めながら会話を交わしている。

 

『ハヤトさん、格好良かったですよ。「リュウさん、アムロを迎えに行ってください。ここは僕が残ります」って』

「い、いや、そんな褒められることじゃないよ」

『いいえ、みんなのことを思って、今自分にできる一番のことを考えて、そして実行する。なかなかできることじゃないと思います』

「……よく、僕のこと見てくれているんだね」

『ハヤトさんが私のこと見てくれるから、私もハヤトさんのことを見ているだけですよ』

 

 ミヤビはその会話を背にエンジンブロックへと向かうが、そこでもエンジン整備担当の少年、マクシミリアンがサラに自動制御されるドラケンE改を助手にエンジン修理を行っていて、

 

【挿絵表示】

 

「ストーップ。OK、本当助かるよ、サラちゃん」

『そうですか? お役に立てて嬉しいです』

「サラちゃんはかわいいなぁ」

『あ、ありがとうございます、マクシミリアンさん』

 

 などと会話を交わしている。

 いや、いいんだけどね。

 

 無性に、泥のように苦いコーヒーを飲みたいと思いながらミヤビは考える。

 

(人格を持った少女型AIって戦場のストレスを和らげ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を防ぐような効果がある、とは言われていたけど本当だったのねぇ)

 

 と。

 アニマルセラピー、セラピー犬との触れ合いがPTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を緩和するという話があったが、それと同様の効果があるらしい。

 

 

 

 ドラケンE改が地球連邦軍に制式採用されるにあたって問題になったのがサポートAIのサラの存在である。

 

「非実在ロリなんかに税金使ってるんじゃないわよ!」

 

 とか、

 

「非実在ロリにうつつを抜かしているぐらいなら、現実の女性を口説いて未来の社会を支える子供を作らなきゃ!」

 

 などというフラウのようなめんどくさい意見を持つ人種も居たが、技術者サイドからは、

 

「モビルスーツにサポートAIを搭載するのは必然だけど、操縦サポートと音声アシストだけでよくて、UI(ユーザインタフェース)としてのアバターはいらなくね?」

 

 という意見があった。

 前回の戦闘でラルをサポートしたグフの戦術コンピュータ、ああいう機能特化でシンプルなものが良い。

 

「アバター見ているヒマがあるなら、外部監視しているわ!」

 

 ということ。

 ドラケンE改は開戦前、ジオンがミノフスキー粒子をレーダー妨害に使用する以前に採用されたわけだが、ステルス性が高い機体。

 レーダー波を発すると所在がばれるので光学センサーなどパッシブ型の索敵手段を取ることを想定していたため、有視界戦闘になりやすいと考えられていた。

 それもあってパイロットの視界を遮るようなことは極力したくない、ということである。

 

 ただ……

 実際には、サラは戦闘時にはアイコンのように画面隅に最小化表示されるようになっているため、視界を邪魔するようなことは無い。

 パソコンのデスクトップやタスクバーに表示されるものはアイコンであろうとも極力最小限にとどめ、注意が散らないようにするのが良い、とも言うが、それなら戦闘時だけ非表示にすればいい話だ。

 

 技術者がアバターを否定するのは、根本的にはコンピュータのリソースを食われたく無いからだ。

 ミヤビだってコンピュータや端末に不要なサービスや機能、プログラムが走っていることを徹底的に嫌っているから気持ちは分かる。

 前世では古い話だと「MS officeのイルカ」は真っ先に消したし、その後の話ではWindowsの音声認識機能付きのアシスタント機能『Cortana(コルタナ)』も無効化した。

 

 しかし、である。

 ミヤビはそれは自分の好み、嗜好であって絶対の正解だとは思わない。

 古い話の例に「MS officeのイルカ」を挙げたが、もっと長い目で考えればまた見方が変化する。

 マイクロソフトのWindowsが登場した際、多くのパソコンマニアはこう考えた。

 

「Macの真似してMS-DOSにGUI(グラフィカルユーザインタフェース)のガワを被せただけじゃん。メモリは食うし重くなるし遅くなるし安定しないし、使い物になんねーよ」

 

「だいたいMacってメモリ食い過ぎ。メモリ載せまくらないと重いしすぐ爆弾マーク(システムエラー)で使い物になんねーし、大金使ってメモリ載せても(当時はメモリが高かった)やっぱり爆弾マークだし」

 

「やっぱGUI(グラフィカルユーザインタフェース)なんて無駄なんだよ。DOSにランチャーとファイラーで十分だろ」

 

 と。

 しかしその後、Windowsは普及し、GUI(グラフィカルユーザインタフェース)は当たり前になった。

 

 またWindowsの音声認識機能付きのアシスタント機能『Cortana(コルタナ)』を無効化する者はミヤビ以外にも多数居た。

 しかし音声入力そのものは「ヘイSiri」や「オーケーGoogle」などという具合に活用されていたし、アーリーアダプターと呼ばれる先駆的な初期採用層は音声入力で文章作成を行っていた。

 

 ミヤビはサポートAIのアバターもそんなものと捉えている。

 従来のシステムを知る者ほど過去の経験から使い物にならないと判断するが、いずれ技術が進歩し製品が洗練されれば一般化する。

 

 人は自分の過去の経験や属している文化等の観点から少しでも逸脱した情報を示されると、相手の意見に耳を傾けるのを苦痛に感じるものだ。

 従来の価値観を一新するイノベーションの話にいたっては耳を塞ぐ…… それどころか相手を攻撃することで安心を求める者も居る。

 たとえ聞いても、自分の望む形に話を歪めてはめ込もうとする。

 これはいわゆる現状維持バイアスというもので、変化に伴うメリットよりリスクを過大に評価する心理作用からくるものだ。

 

 もっともミヤビは、それが悪いとも思わなかったが。

 人である以上、心理的な問題を無視することはできないからだ。

 そしてこれは嗜好、好悪の問題だから、正しい答えを導くことには意味がない。

 議論しようと討論しようと相手を論破しようと、相手の嗜好が変わるわけではないので無意味なのだ。

 人は自分を変えることができても、他人を変えることはできない。

 

 そして多様性は尊重されるべきであり、様々な意見や価値観があることは望ましい。

 だから個人の中で決まっている答えを戦わせる『議論』や『討論』ではなく、お互いに、まだ見えていない答えをブレインストーミングのように意見を出し合い話し合いながら探していく『対話』こそが重要になって来るのだ。

 ミヤビはそう考えている。

 

 ただ確実に言えることは……

 技術のトレンドは過去から未来に移り変わっていき、対応できない企業は淘汰される。

 それゆえ技術者、そして企業人であるならば、古いものへの愛着は個人の嗜好に留めておいた方が良いのだろう。

 

「時代を逆行させることは誰にもできない。思い出は懐かしむだけにしておくことだ……」

 

 ゴルゴ某もそう言っているし、ミヤビもまた二重の意味で古い人間なので気を付けるようにしている……

 

 

 

 まぁ、そもそもドラケンE改にインストールされたサラはRXシリーズの教育型コンピュータと同じくパイロットの言葉や所作から意思を推測して、その操作を補足する機能を持つ。

 要するにパイロットの考えや、やりたいことを察して先回りしたり補足したりしてフォローしてくれるのだ。

 この機能はパイロットの挙動をサンプリングすることでより精度を増し、技量の高くないパイロットにも熟練者の操縦を可能とする。

 

 そしてパイロット側もまたAIに対し心を開き、言葉や表情を偽ったり飾ったりしなくなることで、サポートAIの理解の深度、読み取りの精度は深まることになる。

 パイロットに心を開かせるのに、AIが機械的だったり高圧的だったり威圧的だったりするのは逆効果というもの。

 そういう意味で少女の姿と人格を持つサラは最適であり、アバターは必要となるのだった。

 

 

 

(そう主張して、さらに医師に依頼して『人格を持った少女型AIは戦場のストレスを和らげ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を防ぐ効果がある』って研究結果を出してもらったんだけど)

 

 この辺はよくある話。

 チョコレートが身体にいいという研究には製菓会社が出資する、コーヒーが身体にいいという研究にはコーヒー製造業界の会社が出資する、みたいなもの。

 別に嘘をついてもらうわけではないので消費者を騙すわけではないが、自社に有利な研究にだけ金を出すということで消費マインドの誘導はする。

 

「この分だと本当にすごい効果がありそう。いや、年若い少年たちばかりだから特に効果がある?」

 

 ミヤビは思索にふけるが、ともかく彼らの精神が安定していることにほっとする。

 しかし……

 

 

 

「サラ! サラ! サラ! 誰も彼もサラ! どうして! どうしてAIなんかを認めてこのあたしを認めないのよ!!」

 

 そうつぶやきながら深い闇を形成するフラウについては、ミヤビも含め誰も気づいていなかった。




 いつの間にかホワイトベースクルーに馴染みきっているサラたち。
 いいことなのでしょうけど、おかげでフラウが大変なことに。
 なおサラたちの存在は今後、技術的にも物語的にも重要な鍵になる予定です。

 次回はランバ・ラルの元にグフに代わる新戦力が届き、戦いが始まることになります。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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