ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第21話 さよなら、リュウさん…… Aパート

 オデッサに置かれた基地。

 ここは地球で最大の鉱物資源をおさえているマ・クベ大佐の本拠地である。

 地球連邦軍は、この基地を叩くオデッサ作戦の準備を着々と進めていた。

 ホワイトベースはこの作戦に参加すべく西へと進んでいたが、ランバ・ラル隊の攻撃はまだ終わってはいない。

 

「使い古したザクが一機とマゼラアタックの砲塔が四門だけとは」

 

 嘆息するハモン。

 人員については副隊長のクランプこそギャロップからの脱出時にハモンを庇って負傷したためしばしの療養を要しているものの、大半は無事だ。

 だがしかし、兵を生かすための兵器が心もとない。

 

 マ・クベに補給を掛け合ったタチ中尉も、

 

「明らかにマ・クベ大佐は協力的ではありませんでした」

 

 と無念そうに報告する。

 しかしハモンはそれでも、

 

「あてにしますよ、タチ中尉。なんとしてでもラルの仇を討ちたいのです」

 

 と、タチに代わらぬ決意を告げる。

 だからタチも、

 

「我々とて同じ思いです、ハモン様」

 

 そう答えるのだった。

 

 

 

 少ない兵器をより活用できるよう作業が進む中、ハモンはカーゴで禊を済ませるかのようにシャワーを浴び、自らノーマルスーツに身を包む。

 そこにノック。

 

「誰か?」

「タチ中尉であります。偵察に出た者が帰ってまいりました」

 

 タチは戦闘準備と並行して、偵察にも兵を出していたのだ。

 

「入れ」

「失礼します」

 

 コンソールに映し出された地形図を前に、兵の報告を受ける。

 

「木馬は山を背中にしております」

「そこに付け入る隙があるな」

 

 思案するタチ。

 ハモンは、

 

「木馬の損害は?」

 

 と確認するが、

 

「必死で修理をしておりますが、人数が極端に少ないようです」

 

 ということ。

 味方も苦しいが敵も苦しいということだ。

 それゆえ機を逃さず戦う必要がある。

 

「急ぎましょう、準備を」

「はっ、ハモン様」

 

 

 

「かなりひでえな」

 

 ガンタンクを利用してホワイトベースの修理作業を進めるカイ。

 周囲にはサポートAIであるサラに自動制御されるドラケンE改が共に作業を手伝ってはいたが、

 

「この調子であちこちやられ続けたらたまんないぜ」

 

 そうぼやく。

 頭部の車長兼砲手向けコクピットで作業に協力するハヤトも、

 

「……部品も底をついてきた。武器も乏しいし、どっかで補給を考えませんとね」

 

 とちらりと通信モニターに視線を向ける。

 それを受け、ブリッジで作業を監督するブライトは、

 

『ぼやくなハヤト。前線では何が起きるかわからんのだ。知恵と工夫で切りぬけてくれ』

 

 と告げるが……

 物事には限度というものがある。

『知恵と工夫』というのは要するに人に依存したその場しのぎの応急対策である。

 必要なことに必要なだけ、きちんと投資して行われる恒久対策と違い、人に頼るからには人間がミスを犯せばトラブルや事故を起こし損失を受けることになる。

 さらにこんな具合に無理に無理を重ねた状態では、人間はミスを犯しやすくなるものだから、さらに危険性は上がる。

 

 まぁ、ミヤビの前世でもこのような無茶を言う企業は総じてブラックだった。

 そもそも商売というのは投資をするからその分大きなリターン、収益が得られるのだ。

 逆に言えば必要な投資をケチるからブラック企業はいつまで経っても収益が上がらずブラックなままなのだ、とも言える。

 

 だからハヤトも、

 

「知恵と工夫ですか。それならアムロを……」

 

 独房で遊ばせてる余裕なんて無いでしょう、と言いかけるが、

 

「それを言うな」

 

 ブライトはまだ、アムロを許すことに難色を示していた。

 

 

 

「具合、どう?」

「ええ、処置も終わって命に別状は無いとサンマロも言ってくれてるけど」

 

 昏睡状態が続くラルの元に顔を出したミヤビだが、看護についているセイラの表情は思わしくない。

 ミヤビもまた、

 

(早く目を覚ましてくれないとハモンさんたちの説得が…… って言うかコズンさーん、どこで何やってるのー!?)

 

 と焦っているのだが、いつもの変わらぬ鉄面皮なのでセイラには伝わらない。

 そして黙り込んだミヤビに何を感じたか、

 

「ブライトさんがまたアムロを独房に入れたそうね」

 

 そう話を振るセイラ。

 

「ええ」

 

 それもミヤビには頭の痛いことだった。

 この非常時にアムロのような有能な人材を遊ばせておく余裕なんて無い。

 サラたちの癒しにより他のクルーたちの反発も無いからいいんじゃないの、と思うのだが。

 

(もしかしてサラたちの癒しが無いからブライトさんだけが神経をとがらせている? 彼もサラにフォローさせた方がいいのかしら? サラのドローン義体を渡してサポートさせる?)

 

 モビルドールサラを肩に乗せて指揮を執るブライト……

 いいかもしれない。

 

(いや、でも彼にはミライが、史実よりマシマシな癒しの母性があるはずなんだけど)

 

 ブライトの定位置、キャプテンシートから舵を握るミライを見る、その斜め後ろからのアングルでも分かるほどの巨乳である。

 

「アムロが突っぱねているの?」

 

 セイラの言葉がミヤビを妄想…… オッパイの世界から現実へと引き戻す。

 無言だったミヤビにセイラは勝手に納得して、

 

「ブライトさんね……」

 

 と嘆息する。

 まぁ、そうなのだが。

 

 

 

 一方そのころコズンは……

 

 食う者と食われる者、そのおこぼれを狙う者。

 牙を持たぬ者は生きて行かれぬ暴力の街。

 あらゆる悪徳が武装する、ここは戦争が産み落としたソドムの市。

 コズンの体に染みついた硝煙の臭いに引かれて危険な奴らが集まってくる。

 

「夕べ脱走したやつらはほとんどやられちまったらしい」

 

 人間狩りの暴力集団から脱走したコズンは、闇商人に拾われていた。

 

「生き残りを始末するためにファミリーのやつら、そしてやつらとグルになってる治安部隊とが躍起になっとる。あそこから逃げ出すとは大したやつだよ、おめぇは」

「あれを…… 俺にくれないか?」

 

 コズンがガツガツと飯を食いながら目を付けていたのは、この闇商人の商品。

 全高3メートルにも満たない人型マシン、ヤシマ重工製のプチ・モビルスーツ『ツヴァーク』、

 

「ポンコツだぞ」

 

 ……のスクラップたち。

 だがコズンは意に介さない。

 

「ここを出る。修理道具も借りたい」

 

 そして黙々と修理を始めるコズン。

 

 次回『反撃』

 コズンが飲む、地球のコーヒーは苦い。

 

 

 

 なお、このプチ・モビルスーツ『ツヴァーク』はミヤビがミドルモビルスーツに続いてプチモビ、ジュニアモビルスーツの市場を先行して掌握するべく開発したものだった。

 ミヤビの前世の記憶にあった『機動戦士Zガンダム』にてウォンさんたちが乗り、ハイパービーム砲でハイザックの頭を吹き飛ばしていたジュニアモビルスーツ。

 それを参考にコクピットをオープンタイプからクローズタイプに変更し設計した結果、

 

「んん? どこかで見たことがあると思ったら、これボトムズのライト級AT、ツヴァークそのものじゃない」

 

 とミヤビは気づくことになる。

 ツヴァークはアニメ『装甲騎兵ボトムズ』後半にわらわらと大量に出てきた秘密結社製のアーマードトルーパー。

 作中唯一の軽量級、ライト級に属する機体だった。

『機動戦士ガンダムΖΖ』に登場しヤザンやジュドー、ブライトが乗ったプチモビと同じプラスティックのボディだし、参考にするにはちょうど良いとツヴァークの外見、仕様を流用し、完成させたのがこれ。

 

「おおー、直線主体のジュニアモビルスーツと違って、卵型の曲線を描く脚部って強度を高めつつ内部スペースを確保できるのが素晴らしい」

 

 などという効果もあったり。

 ミヤビの前世、旧21世紀ではエスティマ等の乗用車で車内を広く、同時に耐衝撃性を高めるために利用されていたデザインだ。

 

 こうしてできあがった機体は名称もツヴァークと、そのまま名付けられて売り出された。

 ボトムズ登場のものと違うのは、

 

・人工筋肉、マッスルシリンダーとポリマーリンゲル液に代わってドラケンE改と同じく燃料電池とジオンの流体パルス・システム近い…… というより小型機体に合わせ特化した油圧ダンパー駆動方式を採用。

 

・両腕に内装されていた11ミリ3連装機関銃はモジュール化して交換できるように変更、民間向けにはトーチや精密作業用マニピュレータを搭載した作業用モジュールや、先端にフックを取り付けたワイヤーを電磁誘導方式で射出するワイヤーウインチモジュール等を供給。

 

・オプションで外付け式だったローラーダッシュ機構を、内装式に変更。

 

・腰のいわゆるふんどし部分に二基の可動ノズルによる推力偏向制御ロケットエンジンを装備、機体に合わせチューニングされたAMBAC(active mass balance auto control。能動的質量移動による自動姿勢制御)と合わせ宇宙空間活動や1G重力下でのジャンプ、ジェットローラーダッシュ等を可能としている(ただしロケット噴射は尻から出る)

 

 などなど。

 

 他にもスコープドッグの独自改良品という別の機体の企画もあったりするのだが、それはまた別の話。

 

 

 

 戦闘の準備を終えたランバ・ラル隊の生き残り、そしてハモンを前に、タチは説明する。

 

「カーゴにはマゼラトップを装備しました。ギャロップの予備のエンジンでかなり高速移動ができます」

 

 ドーム状のカーゴの左右に二基ずつのジェットエンジンを設置。

 補給で受領できたマゼラトップ四機のうち三機を搭載、即席の砲台とする。

 マゼラトップはマゼラアタックの砲塔であるが旋回ができず(もっともマンガ『機動戦士ガンダム ギレン暗殺計画』では砲塔が旋回できる車両が登場していたが)、このカーゴに設置したものもそう。

 それでは敵を狙えないのでは、という話もあるが、実際にはこの手の砲は駆逐戦車や突撃砲などの砲塔を持たない戦車と同じく、限られた範囲ではあるが左右に砲身を振ることができるのだ。

 それゆえ三機のマゼラトップはそれぞれの射界を考えて極力死角が生まれないよう配置されている。

 

「ザクにはマゼラトップの主砲を持たせます。それとサムソンの二機です」

 

 つまりはミヤビの知る史実どおりということ。

 ハモンは皆を見回して言う。

 

「よく準備をしてくれました。

 ガルマ様を負傷させた木馬の討伐部隊として地球に降り立ったものの、我々はまだ任務を終わっておりません。

 一見小さな作戦ではありますが、敵は連邦軍の最新鋭戦艦とモビルスーツです。

 ジオンの国民は我々の戦果に期待しております」

 

 ここまではこの戦いの大義。

 そして、

 

「ランバ・ラルは私にもったいないくらい実直な男性だった。

 あんな心を寄せてくれた人の為によしんば、砂漠で散るのも後悔はない。

 この作戦に不服がある者は参加しなくとも、ランバ・ラルは怒りはしません、私もです」

 

 これは私情。

 しかしまぎれも無い想いでもある。

 だからタチも言う。

 

「その心配はございません、ハモン様。全員、退かぬ覚悟であります」

 

 その心意気にハモンはただ、

 

「ありがとう」

 

 そう言う。

 

「トルガン、頼みます」

「はっ、ハモン様」

 

 一人一人に握手を交わしていく。

 

「ミサキも頼みます」

「はい、ハモン様」

 

 これが、彼らの感じる最後の女性のぬくもり、そうなるのかもしれない。

 

「イリューシ、頑張ってください」

「はい、必ず仇を」

 

 だからハモンも、そして兵たちも万感の思いを込めて握手を、そして言葉を交わしていくのだ。

 

 

 

 コア・ファイターのコクピット、サポートAIのサラシックスを助手に点検作業を行うリュウ。

 

「アムロのことだがな……」

『アムロさんですか?』

 

 分かりやすく、ぎくっと表情を変えるサラシックス。

 サラツーを守るため泥をかぶってもらっている。

 サラシックス自身もホワイトベースとRXシリーズのログの改ざん、隠蔽工作に加わっていたのだからそれも当然である。

 

 しかしコア・ファイターの計器に目を落としチェックしていたリュウはそれに気づかず話を続ける。

 

「ブライトにな、独房から出すように言ったんだが」

『出すわけにはいかない、と?』

「ああ、「俺たちが期待する態度を見せれば、あいつはまだまだ自惚れる」そう言って逃げている」

『逃げる、ですか?』

 

 良く分からず首を傾げるサラシックスに、ようやくリュウは顔を上げてモニター上に映し出された彼女と視線を合わせる。

 

「人間にはな、言葉があるんだ。だがブライトはアムロとゆっくり話し合ったことなんて無い」

『でも…… こんな状況ですからブライトさんが忙しくてクルー一人一人とゆっくり対話する暇なんて無いのも仕方がないことなのかも』

 

 気配りのできるサラシックスは、ブライトの立場も考えてうつむき加減にそう答える。

 

「それも分かる。アムロが自分でわかるのを待つ、そういう導き方もあるってことも分かる」

 

 リュウはうなずいて、

 

「だがな、今のブライトはそれを逃げの言葉として使っているだけだ」

『………』

「ブライトは言っていた「野生の虎でも檻に入れておけば自分の立場がわかってくる」、つまりあいつはアムロのことを恐れてるんだ。当人は認めんがな」

 

 ため息をつくリュウ。

 

「アムロは凄い奴だよ。俺たちじゃあ止められなかったランバ・ラル隊も、あいつなら退けることができる」

『それは!』

 

 前回、いいところの無かった戦闘を思い出し、サラシックスは弾かれるように顔を上げた。

 

『それは私の能力不足です! 私がふがいなかったから、私がダメなAIだからリュウさんたちを危険な目に遭わせてしまっただけで!』

 

 そう言い募るサラシックスに、リュウは優しい目を向けて首を振る。

 

「俺たちはパートナーだろう?」

『は、はい。それはもちろん』

「なら、原因は俺たち二人に等分にある」

『リュウさん……』

 

 サラシックスは瞳を潤ませ、泣きそうな表情をする。

 

「さ、サラシックス?」

 

 心配そうな顔をするリュウに、サラシックスは目をこすってこう答える。

 

『リュウさん、私はやっぱりダメなAIです』

 

 その言葉にリュウは否定しようとするが、サラシックスが、彼女が心の底から嬉しそうにする泣き笑いのような、とてもきれいな表情に息を飲む。

 

『だってマスターであるリュウさんをサポートしきれていないことを反省しなきゃならないはずなのに、「パートナー」だって言ってくれたことが、そして「俺たち二人」って、人と同じに扱ってくれることが嬉しくて、ただ嬉しくて』

 

 だから……

 

『は、はしたない女だなんて思わないでくださいね。こんな、こんな気持ちになるのはリュウさんが初めて、リュウさんにだけなんですから』

 

 そう恥ずかしげに言うサラシックスに、リュウは何も言えなくなってしまう。

 

 実際、アムロは凄い奴で、その能力は畏怖されるようなものだし、それが自分の制御を外れて勝手に動くことを恐れるのも分かる。

 だが、だからと言って理由を付けて正面から向き合うことを避け続けても、互いのためにならない。

 

 リュウはそう話を繋げようとしていたのだが、それどころではなくなっていた。

 罪作りな存在である、サラシックスは……

 

 

 

 なお、前回の出撃ではガンキャノンLにハヤトも同乗していたのだが。

 二人の世界を作っていたリュウとサラシックスはそれを完全に忘れていた……

 




 史実どおりハモンたちが攻撃準備をする中、着々とフラグを積み上げるリュウとサラシックス。
 一方そのころコズンは…… ってシリーズ化してませんかね、これ。

 そして以前のあとがきにも書いていたツヴァークがここで登場。
 レギュラーメカ化するのかは未定。
 1/60のプラモも作ってるんですが、完成するのは当分先……
 古いキットですから、素組でそれなりのものができる現代のガンプラみたいには行かないんですよね。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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