ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第23話 シーマ隊救出作戦 Aパート

 オデッサ作戦を前にホワイトベースは善戦むなしく大破、不時着した。

 一度は引き上げたジオン軍の攻撃隊ではあったが、またいつ襲撃してくるかわからなかった。

 ホワイトベースのクルーたちは修理に勤しんではいたが、損害はあまりに大きく。

 ミヤビに艦長代理を振られたセイラが艦の周囲を見回るも、手すきの者が地べたに座り込みカード遊びに興じるなど諦め、そして弛緩した空気が漂う。

 

『あれ?』

 

 セイラの肩に乗っていた手のひらサイズの歩行型ミニドローン。

 モビルドールサラのつぶやきにセイラが顔を上げると、晴れた空に白いものが過る。

 

「鳥…… いえ、紙飛行機?」

 

 なぜ紙飛行機なんかがこんなところに、と疑問に思うセイラの耳に、サラのつぶやきが届く。

 

『カイさん……』

 

 それでセイラは理解し、サラはしまったと義体を硬直させる。

 

『あああ、あの、セイラさん? 暴力はダメですよ。カイさんも悪いけど「エイイッ、軟弱、軟弱ゥ!!」ってぶつのはさすがに……』

 

 おろおろとセイラを止めようとするサラだったが、慌てているのかセイラのイメージがおかしなことになっている。

 しかしセイラは気にした様子も無くほほ笑むとこう言った。

 

「仕方ないのよ、カイには「わからせ」が必要なんだから」

『ひぅっ!?』

 

 今度は恐怖にフリーズするサラ。

 

 

 

『その右のやつがそうのはずだけど』

「……駄目だな」

『第二エンジンのコードを使えないかな?』

「スケールが違うと思うけど」

『だよねぇ』

 

 ミヤビが持ち込んでいたスマートグラスをかけ、その片隅に映される、艦内ネットワーク越しにサポートしてくれるサラツーのフォローを受けながらホワイトベースのエンジンの損害を調べているアムロ。

 史実ではクリップボードにはさまれた紙の資料をハヤトが持ち、実際の作業はアムロが担当と分担していたが、このスマートグラスのサポートのおかげで省力化が成され一人だけで済んでいる。

 

 ミヤビの前世でも技術系企業でウェアラブルデバイスが期待されていたのはこういった使い方だった。

 タブレット等だと手が塞がるし作業で油などで汚れた手では操作できないが、スマートグラスなら両手が空くし音声入力に対応できれば作業手順書のページ送り等も可能。

 必要なら内蔵カメラの映像を見て遠隔地から指示を出す、などといった活用が考えられる。

 

 もっとも問題もあって、一般に普及している製品では防爆仕様になっていないため、可燃性のガス・蒸気・粉塵等が発生する可能性のあるエネルギープラントや工場内の危険場所では使えないこと。

 また備えているカメラのレンズが小さいため得られる画像が暗い、専門用語で言うところのF値が大きいということがあった。

 オフィスなど一般的な明るい環境とは違い、工場や工事の現場は十分な光量が無い場合が多い。

 暗い場所に暗いレンズ。

 写真ならシャッタースピードを遅くすれば撮影できるが、頭に身に着けて使うスマートグラスでは、動きを止めてじっとしていないとろくに画像が映らない、つまり使い物にならないということになる。

 そんなわけで実用に耐えるソリューションは少なく、昔ながらの紙の資料、手順書に取って代わるほどには普及していなかった。

 ミヤビが用意したのは、そういった問題点を解決したものなのでこうして使えるのだが。

 

 一方カイは、それを横目に不要になった紙の手順書で紙飛行機を折って外壁に空いた大穴、破損口から外へと飛ばす。

 

「早くしてくれよなー。もう紙がなくなっちまうぜ」

 

 などと言いつつ。

 

「カイさん、また誰かさんに軟弱者って言われますよ」

 

 こちらもスマートグラスを付けてサラナインのサポートを受けつつ作業を行っているハヤトに注意を受けるが、カイは取り合わない。

 

「ハハハハッ……」

 

 笑いながら再び紙飛行機を外に飛ばして、

 

 デンドンデンドンデンドンデンドンデンドンデンドンデンドンデンドン……

 デッデデーデデデデーデデデデー デッデデーデーデーデデデデーデー

 

 腕を組んで仁王立ちしながら高所作業台のデッキに乗ってせり上がってくる……

 アニメ制作会社『ガイナックス』のお家芸『ガイナ立ち』で現れたセイラに、その表情が凍り付く。

 なお背後に流れるBGMはもちろんモビルドールサラの提供。

 彼女自身は、

 

『あー、あー、私は何も見てません。私は何も聞いてません……』

 

 などと言って背を向け耳を塞ぎ、しゃがみ込んでいたが。

 見かねたアムロに、

 

「だ、大丈夫だよサラ。セイラさんだってそんなすぐに暴力に訴えたりしないって」

 

 と言われ、

 

『ほ、本当に?』

 

 と恐る恐る振り向くと、

 

「この、軟弱者っ!」

「ぶべら!!!」

 

 セイラからフルスイングのビンタを受け吹っ飛ぶカイ!

 

「すぐに暴力に訴えた!」

「色々と台無しだ!」

 

 呆れるアムロとハヤト。

 そして、

 

『ひぅっ……』

 

 びくんと身体をすくめたサラの瞳にみるみる涙が盛り上がり……

 

『あ、アムロさんの嘘つきーっ!』

「ええっ、今のって僕が悪いのか?」

 

 とんだとばっちりである。

 

 そんなコントじみたドタバタもあったが、床に沈むカイを養豚場のブタでもみるかのように冷たい目で、

 

「かわいそうだけど、明日の朝にはお肉屋さんの店先にならぶ運命なのね」

 

 ってかんじの残酷な目で見下ろしながら、セイラはアムロたちに聞く。

 

「どう? ほかの部品で間に合いそう?」

「……駄目ですね。いろいろやってみましたが無理です」

「そう。こんな時、敵に襲われたら」

 

 考え込むセイラ。

 

「補給は来てくれるんでしょ?」

 

 ハヤトの問いには、

 

「……ええ、レビル将軍に頼んではあります」

 

 そう答えるが。

 

 

 

「ブライト、何か?」

 

 ブライトに呼ばれ、病室に顔を出したミライは、

 

「み、ミヤビさんっ! だめですそんなっ。うあああぁっ」

「そんなこと言って、身体は正直よ」

 

 ベッドの上でくんずほぐれつするブライトとミヤビ。

 

「何やってるの姉さんっ!!」

 

 叫ぶミライだったが、ミヤビは真顔でこう答える。

 

「何ってマッサージ」

 

 要するに疲労がたまって倒れたのだから、リラックスできるよう身体を揉み解しているのだ。

 以前にもアムロにもやっていたもの。

 

 だがベッドに押し倒され、馬乗りになったミヤビの小さな、しかし信じられないように滑らかな指先で身体をまさぐられるブライトは、下半身を反応させないようにすることでいっぱいいっぱい。

 ストレスが溜まっている、もちろん欲求不満も溜まっている男性に、これは拷問である。

 まぁ、仮にブライトの身体の一部がミヤビの女性に反応したとしても、この自分の性的魅力に無自覚なヤシマの人形姫は単なる生理現象、

 

(うーん。たまってる、ってやつなのかな? 疲れ○○ってやつ? まぁ、こんな生活だとそりゃあ欲求不満にもなるわよねぇ)

 

「しょうがないにゃあ…… いいよ」とばかりに元男性ならではの理解を示すだけで、自分が原因だとはつゆほども思わないだろうが。

 

「姉さん……」

 

 いつもどおり、安定のミヤビクオリティに脱力してしまうミライだった。

 

 

 

 同じ頃、ホワイトベースから補給の要請を受けていた地球連邦軍のレビル将軍はヨーロッパ前線基地に到着していた。

 キシリア将軍が本格的に援軍をマ・クベの基地に送る前にオデッサ作戦を行うためであった。

 そして、その作戦を前に、

 

「たとえ戦艦一隻の攻撃といえども、後ろから掛かられればマ・クベとて慌てはしよう」

 

 ホワイトベースを後方攪乱に使う、レビル将軍はそう考えていた。

 移動司令基地として運用される巨大陸戦艇ビッグ・トレーの戦闘指揮所で、ディスプレイに映し出された戦略図を前に自分の構想を示す。

 

「しかし既にマ・クベ隊の攻撃を受けて大破していると」

 

 異を唱えるのはエルラン中将。

 だがレビル将軍は考えを変えない。

 咥えた葉巻から紫煙をくゆらせながらこう答える。

 

「いや、そう思われていてこの作戦もうまく行くのではないのかな? エルラン中将」

 

 宇宙世紀でも嗜好品たるタバコは死滅していないのだ。

 別にレビル将軍が特権階級のアースノイドだからというわけでもなく『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』でもテリー・サンダースJr.軍曹がタバコを持っていたり、『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』ではハーディ・シュタイナー大尉が吸っていた。

 

 そしてレビル将軍はその場に同席しているヤシマグループの民間軍事会社『ヤシマ・ファイアアンドセキュリティ』の部隊長、

 

「シーマ君、あとは君の隊がホワイトベースのエンジンを直せるかどうかにかかっている訳だ」

 

 シーマに語りかける。

 

「はい、レビル将軍。たとえどれほどの傷であろうと」

 

 表面上はそう答えつつも、シーマは内心では、

 

(この白髪頭の似非サンタクロースが。私らが姫さんたちを見捨てられないって分かっていて言うんだからねぇ。とんだタヌキじじぃだよ)

 

 と、毒づいている。

 もちろん、顔にはまったく出さないが。

 

「うむ。それともうひとつホワイトベースに届けて欲しいものがある。連中はまたモルモットにされるのかと怒るだろうがな」

 

 レビル将軍は好々爺じみた風体で柔らかく言うから騙されそうになるが、口にした内容は結構酷い。

 

「テム・レイ大尉の開発した新型モビルスーツのテストを連中にやらせる」

「テム・レイ博士の?」

「これがその目録だ」

 

 ファイリングされた資料がシーマに手渡される。

 

「レビル大将、部隊編成の決まっていない部隊になぜそんなにまで肩入れをなさるんです?」

 

 我慢しきれない様子でエルラン中将が口をはさむが、レビル将軍は動じない。

 

「正規軍をテスト台に使えるかね? それにこれは参謀本部の決定でもある」

 

 その言葉が決め手となり、エルラン中将は口をつぐんだ。

 

 

 

「これがテム・レイ大尉の開発したモビルスーツ、つまりはRXシリーズの新型か」

 

 エルラン中将の部下であり情報部員のジュダックは、取り急ぎ現場に急行しシーマ隊のミデア輸送機に搬入されるコンテナを確認するが、

 

「ま…… まて! まてよ、まてまて! こいつはモビルスーツトレーラーじゃない。ただのコンテナ車なんだぞ!」

 

 そう戸惑う。

 

「中身はモビルスーツってことは無いだろう。し…… しかしテム・レイ大尉は居たぞ? ……」

 

 テム・レイ博士の指示でこのコンテナ車が運び込まれたのは彼も自分の目で見ている。

 

「う…… うう…… だ、だが仮に入っているとしてだ、どうやって収納してるんだ。このサイズじゃどんなモビルスーツとて入らないぞ!」

 

 だから結局……

 

 

 

「よく知らせてくれた。で、その新型モビルスーツの性能は具体的にはわからんのか?」

 

 エルラン中将の部下にして、彼が内通しているジオン軍マ・クベ大佐への連絡員……

 実体はダブルスパイであるジュダックは、本当の飼い主であるマ・クベに分かる範囲で知らせることしかできない。

 

『残念ながら、エルラン中将もチェックする間もなくホワイトベースに』

 

 暗号通信での知らせに満足したマ・クベは、

 

「わかった。エルランに言っておけ、オデッサ作戦の攻撃は程々にな、と」

 

 と命じて通信を切る。

 

「フフ、連邦軍め、しびれを切らしたな。この戦い、先に動いた方が負ける」

 

 そして控えていた部下に指示。

 

「クリンク、グフ三機、ド・ダイYS三機でミデア輸送隊を叩け」

「はっ」

「護衛戦闘機もつけてな」

 

 そうしてド・ダイYSの機上に搭載されたグフが、護衛のドップ戦闘機と共に出撃する。




 ホワイトベースで繰り広げられるコントをよそに動き出す両軍。
 そしてテム・レイ博士の開発した新型とは……
 なお次回はサブフライトシステムの走り、ド・ダイYSとグフが登場したので、ガルマとシャアのモビルスーツ談義、

「シャア、グフカスタムのフィンガー・マシンガンを排して代わりに用意された3連装35mmガトリング砲って要らないんじゃないのか?」
「何を言うんだガルマ!」

 をお届けする予定です。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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