ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

9 / 78
第3話 敵の補給艦を叩いて砕く Bパート

「よくもこんなくたびれた船が現役でいられるものだな」

 

 シャアは旧式のパプア級補給艦を見てそうつぶやく。

 ジオンにも余裕がないことが、この艦を見ただけで分かった。

 

「映像回線を開け」

「はい」

 

 そしてつながった通信モニター上に姿を見せたのは一人の老兵。

 パプアの艦長であるガデム大尉だった。

 

『赤い彗星が補給を欲しがるとはな。ドジをやったのか?』

「ガデム、敵は目の前だ。一刻を争う」

 

 シャアはからかいの言葉を口にするガデムに取り合わずに要求する。

 しかしガデムもそのあたりは心得ている。

 

『わかっているよ。わしがそんなにのろまかね? 歳の割には素早いはずだ』

 

 シャアは部下に命じる。

 

「ハッチ開け。コンベアパイプドッキング急がせ」

 

 こうしてシャアのムサイはパプアからの補給を開始した。

 

 

 

 敵からの発見を回避するため小惑星ルナ2に対し高度を下げていたアムロたち。

 フラウが発艦時に告げた「敵に対して稜線から侵入のため降下」とは、山陰に隠れて敵に接近するという意味だ。

 また、地球より月よりはるかに小さなルナ2ではそもそも地平線までの距離自体が短く、低空を飛べば地平線の向こうに隠れての接近が可能なのだ。

 

 そしてリュウは攻撃に備えムサイ発見のためコア・ファイターの高度を上げようとするが、

 

「リュウのやつ、軍人のくせに」

 

 アムロはそれに続かずに、ガンキャノンの身振り手振りで高度を下げるように指示する。

 

 

 

「上がるなだと? 敵は目の前だぞ」

 

 リュウは疑問を覚えるが、アムロのガンキャノンが指さす先、引き続き高度を下げたままのミヤビのドラケンE改を見て何か理由があるのだと再び高度を下げた。

 

 

 

「このまま突っ込んだら逆光線で戦わなくっちゃならないことに気付かないのか? まわり込むんだ」

 

 アムロはそうつぶやき、進路を変更する。

 

「まったく、ミヤビさんだって分かっているって言うのに」

 

 そうぼやくが、それは買いかぶりすぎというものだった。

 ミヤビが高度を上げなかったのは敵に見つかるのが嫌だったからだし、今こうやってアムロたちと共に迂回しているのも、アムロが進路を変えたから、単にそれに合わせているだけで深い考えなどない。

 しかし、

 

 

 

「おっ、見えたぞ。アムロのやつ、素人のくせによく気がつく。太陽を背にして攻撃しようっていう訳か」

 

 ムサイを発見し関心の声を上げるリュウだったが、同行するドラケンE改を見て首を振る。

 

「いや、本当にすごいのはミヤビさんか。アムロは彼女の意図を敏感に読み取ったんだな」

 

 という具合にミヤビは誤解されていたのだった。

 

 

 

「よーし、捉まえたぞ、シャア」

 

 アムロはガンキャノンの両肩に装備された240ミリキャノン砲二門をムサイに補給中の艦に向ける。

 

「当たれぇ!」

 

 

 

 唐突に走った衝撃に、ガデムは奇襲を受けたことを知る。

 

「コンベアーパイプをやられた、船をムサイから離せ」

 

 素早く指示を出す。

 シャアからは、

 

『ガデム、運んできたザクを放出しろ』

 

 という要請。

 

「ああ、なんとかしよう」

 

 そううなずくが、そこに次の砲撃が命中する。

 しかしそれでもガデムは必死に状況を立て直すべく奔走する。

 

「ザクをシャアに渡さにゃならんのだ」

 

 

 

 シャアのムサイでも対応が急がれていた。

 

「マチュウ、フィックス、船の外でザクに乗り移る支度をしておけ。私は先にモビルスーツで出撃する」

 

 そう指示して自ら格納庫に走るシャア。

 副官であるドレンが代わって艦の指揮を執る。

 

「あるだけのコーダミサイルを水平撃ちするんだ」

 

 迎撃ミサイルが矢継ぎ早に放たれるが、敵、アムロたちに当たった様子は無かった。

 

 

 

 シャアは自分の機体、赤く彩られたザクIIS型で艦を出る。

 

『ドレン、パプアをカバーするんだ。この攻撃はモビルスーツだ、戦艦じゃあない』

「了解です」

 

 シャアの指示を受け、ドレンは艦を動かす。

 

「180度回頭急げ。残りのミサイルのあるブロックは、全弾太陽に向かってぶち込め」

 

 パプアを守る位置に移動しながら迎撃用の小型ミサイルを連射。

 しかし、

 

「メガ砲のエネルギー充填にどのくらいかかるか?」

「5分20秒」

「ええーい、遅いわ。メインエンジンのパワーを落としすぎた」

 

 戦艦のメガ粒子砲はメインエンジンである核融合炉から直のエネルギー供給を必要とするから、その出力を落とした状態ではすぐには撃てなかった。

 そして戦艦に使うような大型の核融合炉の出力上昇には時間がかかるゆえの、タイムラグだった。

 ではメインエンジンの出力を上げておいたらという話だが、これもまた難しい。

 そのエネルギーをどこに使うのさ、捨てるの?

 という問題が発生するからだ。

 

 アニメ『機動戦士ガンダムSEED』の世界ようにモビルスーツの駆動にも使えるような高性能バッテリーなどといった蓄電技術が発達している世界ならともかく、ボールに燃料電池を使っているような宇宙世紀では余分なエネルギーを貯めておくこともできない。

 燃料電池は化学反応で電力を引き出すため高効率と思われがちだが、燃料の製造、改質などを含めた総合的なエネルギー効率は実際にはそれほど高くない。

 旧21世紀の日本で燃料電池車ミライが開発され、宇宙世紀でもボールに燃料電池が採用されているのは充電式バッテリーに貯めておけるエネルギー密度が低い、つまり電池切れが早いからだ。

 そのため航続距離や稼働時間を延ばすことができる燃料電池を使っているだけなのだ。

 

 そして大容量の蓄電技術が無ければ結局、旧21世紀と変わらない同時同量、使う電気と作る電気が常に同じである必要に縛られるわけだった。

 

 

 

 ガンキャノンの第三射がパプア本体に命中。

 

「これ以上やらせるかぁ!」

 

 シャアはザクにマシンガンを構えさせ、太陽を睨む。

 

「ん?」

 

 近づいてくる機影、そしてそれが放ったミサイル。

 シャアはすかさずザクマシンガンを撃ちミサイルの迎撃に成功する。

 そのまま小型戦闘機、リュウのコア・ファイターと交錯するが、

 

「モビルスーツは向こうか」

 

 シャアはコア・ファイターを無視し、より脅威度の高いパプアに砲撃を加えている敵モビルスーツの排除を優先することにする。

 

「モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではないということを教えてやる!」

 

 

 

 コア・ファイターの2連装30ミリバルカン砲2門…… つまり4基のガトリング砲の機銃掃射を受け、パプアに衝撃が走る。

 補給艦、しかも老朽艦であるパプアにはそれに耐えられる装甲は無いし貧弱な対空砲火も沈黙させられる。

 30ミリバルカンというと、あのアメリカ軍の攻撃機A-10サンダーボルトIIに搭載され、地上掃射であらゆるものを粉砕するガトリング砲、GAU-8アヴェンジャーと同口径である。

 そんなものを小型戦闘機の機首に4基も詰め込んでしまえるのだから連邦軍驚異のメカニズムと言うほかないし、威力もまた高い。

 ここに至って、ガデムは決断する。

 

「低く飛べ、補給物資はルナ2に放出する」

 

 

 

 宇宙空間で交錯する二機のモビルスーツ。

 シャアはまず母艦であるムサイとパプアに対する脅威となる砲撃戦仕様のモビルスーツを排除することにしていた。

 

「不慣れなパイロットめ、いくぞ」

 

 シャアのザクから繰り出されるパンチをアムロのガンキャノンはかろうじてガードするが、続くザクマシンガンの銃床による直打撃、離れたところに銃撃を受ける。

 ミヤビが見たら「格闘ゲームのコンボを現実で、しかもモビルスーツでやる人間が居たのか」と呆れるほどの連撃だった。

 ガンダムに比べ、ガンキャノンはパワーはあるが運動性は低い。

 このような接近戦、ドッグファイトには分が悪かった。

 しかし、

 

「ええい、連邦軍のモビルスーツは化け物か? これだけの攻撃でも」

 

 一方的に攻撃を加えていながら、焦っているのはシャアの方だった。

 ガンキャノンは単純に硬く、しかもパプアに大ダメージを与えるような攻撃力を持っている。

 第二次世界大戦中のソビエト連邦軍の重戦車KV-2ギガントのようなもので、居座られると味方に甚大な被害を招きかねないが、排除するのもおそろしく困難という代物だ。

 厄介すぎる。

 しかも、

 

『シャア少佐、敵の新型艦の木馬が攻撃を掛けてきます』

 

 ムサイからは救援の要請。

 

「なに? 私が行くまでなんとか持ちこたえろ」

 

 そう言って反転しようとするがガンキャノンに追いすがられる。

 運動性が低く鈍重なイメージのあるガンキャノンだが、実際には魔法の装甲材、超硬合金ルナ・チタニウムのおかげもあってその重量はザクよりも軽い。

 しかもロケットエンジンの総推力も、ザクIIF型の3割増しと言われるシャアのS型をわずかながらだが上回っている。

 つまり推力比がそのまま差となってしまう直線スピードでは、

 

「私が遅い?」

 

 私がスロウリィ!? とでも言うかのようにシャアを驚かせる結果になる。

 

「どういうことだ、今日に限ってこのS型ザクがやけに遅く感じる。ロケットエンジンのどれかが止まっているのではないのか!?」

 

 ガンキャノンを突き放すべく、シャアは攻撃を仕掛けるしか無かった。

 

 

 

 シャアのザクに殴られ、蹴られるガンキャノン。

 アムロは衝撃に激しくその身を苛まれながらも、

 

「そうだシャア。もっとだ、もっと殴って来い!」

 

 笑って、いた……

 出撃前の短いブリーフィング、ミヤビはこう言っていた。

 この作戦はいくつかの段階に分けられると。

 

 

フェーズ1

 まずは先行するモビルスーツが密かに接近、攻撃に有利なポジションを確保。

 

フェーズ2

 攻撃を開始。

 奇襲効果があるうちに、防御力の弱い補給艦を徹底的に叩く。

 シャアのザクが出てくるまでが勝負だ。

 

フェーズ3

 シャアのザクをアムロのガンキャノンが惹きつける間に、コア・ファイターとドラケンE改が引き続き攻撃を続行。

 

フェーズ4

 ホワイトベースの艦砲射撃による攻撃を追加。

 

フェーズ5

 安全のため、あまり前には出られないホワイトベースに代わってガンタンクが発進。

 前進の上、稜線に隠れながら射撃。

 

フェーズ6

 戦果の有り無しに関わらず、敵の迎撃体制が整い本格的な反撃を受ける前に撤退。

 

 

「主役はアムロ君ね」

 

 ミヤビはそう断言した。

 

「中距離砲撃用のガンキャノンの火力ならフェーズ2で十分な戦果を上げることは難しくないし、そうしたらフェーズ3以降、撃破されない限りはシャアはガンキャノンを無視できなくなる」

 

 そして、

 

「ガンキャノンの装甲なら、ザクの大抵の攻撃に耐えられるわ」

 

 まぁ、装甲厚い方が生存確率上がるよね。

 ということでミヤビは時間も無いし、最高機密である存在を自分が知っているのもまずいので、喉元まで出た「ところでガンダムはどうしたの?」という言葉を飲み込んでいたのだが、アムロたちがそれを知る由も無かった。

 

「つまり僕がシャアの攻撃を耐え続ければ……」

 

 アムロが至った答えに、ミヤビの口元が緩んだ。

 その場に居た者たちは目を奪われるが、ミヤビはすぐにそれを引っ込め、いつもの人形じみた無表情に戻ってしまう。

 あれはミヤビの笑ったところが見てみたいという自分の願望が作った錯覚だったのでは、と思えてしまうような一瞬だけの、幻のような笑顔だった。

 

「そう、アムロ君はシャアを拘束し続けられれば勝ちというわけ」

「それだけで?」

「それだけなんかじゃないわ」

 

 ミヤビは言う。

 

「あなたにしかできない、この作戦で一番重要な役割よ」

 

 と……

 

 

 だからアムロはシャアに攻撃を受け続けながらも笑みを絶やさないのだ。

 自分が攻撃を受けている間は、シャアの手を塞ぎ続けることができる。

 ルウム戦役で一人で5隻の戦艦を沈めたというエースパイロット、赤い彗星のシャアを釘付けにすることができているという証拠なのだから。

 そしてアムロは他にもミヤビからアドバイスを受けていた。

 

「来たっ!」

 

 ガンキャノンで一番弱そうな場所、つまり顔のメインカメラをザクマシンガンの銃床で狙ってくるシャアのザク。

 しかし、その攻撃はミヤビに予測されていた。

 

 

「シャアはメインカメラを狙ってくるかもしれないわ。そこだけは攻撃が通じるだろうから」

「じゃあ、腕でカバーすれば」

「あまりお勧めできないわね。自分の視界も塞ぐことになるから。両腕を顔の前で揃えるボクシングのスタイルは、常に敵を正面に置くことと、蹴りが無いことを前提としたポーズだから」

 

 ミヤビは、逆に利用することを提案した。

 人間と違って、ガンキャノンの頭部の両脇には240ミリキャノン砲がある。

 それが邪魔をするからメインカメラを狙っての攻撃は真正面からしか行えないということ。

 そして……

 

 

「そこだっ!」

 

 ガンキャノンの頭部には60ミリバルカン砲がある。

 正面から攻撃をしかけるということは、バルカン砲の射線に相手が自分から飛び込んでくれるということ!

 

「やったか!?」

 

 バルカン砲の射撃を浴び、のけ反りながら吹っ飛ぶシャアのザク。

 しかし、

 

「し、シールドで防いだのか。あの一瞬で……」

 

 無傷で体勢を立て直し、再び襲ってくる。

 

「こうなったら、あの手しかない!」

 

 もう一つ、ミヤビから受けたアドバイス!

 アムロはガンキャノンにビームライフルを投げ捨てさせる。

 

「かかって来い、シャア! 銃なんか捨ててやったぞ!」

 

 ついでに自由に打ち込んで来いとばかりに防御も捨てる。

 それでもガンキャノンの装甲はザクの攻撃に耐えてくれるから。

 

 そして滅多打ちにされても壊れないガンキャノンに、シャアの攻撃は次第に威力を重視した重いものに変わっていく。

 重い攻撃はその分、引きが遅くなる。

 

 そこを捕まえるのだ!

 

 いくらシャアの操縦が巧みであっても、組み付かれてグダグダのもみあいになってはその技を生かすことはできない。

 そして、そこで有効なのは単純な力という名の暴力だ。

 柔道をやっているハヤト少年なら「相手がいくら大きい人でも、腰を引いた瞬間とかバランスを崩した時なら倒せるものです」と言うかもしれないが、そもそも筋力差のある相手の体勢を崩すのは困難であるからこそ、柔道の試合は重量制なのだ。

 

 そしてガンキャノンはシャアのザクよりジェネレーター出力が高く、各関節を動かすフィールドモーターはトルク重視のセッティング。

 掴んでさえしまえばテクニックなど関係なくパワー戦で押し切ることができる!

 

「もっとだ! もっと強くぶってくれ、シャア!」

 

 コクピットに走る振動にも耐え、アムロは瞳を爛々と輝かせながらシャアを誘う。

 

 

 

「なんだ、この異様なプレッシャーは!」

 

 ニュータイプの片鱗か、シャアは今まで感じたことのない異質な圧力を放つガンキャノンに底知れぬ何かを感じ取っていた。

 

「こんな不慣れなパイロットに私が気圧されているだと?」

 

 シャアの背筋を未知の悪寒が走り抜けていった。

 

 

 

 そして……

 ガンキャノンの教育型コンピュータの片隅でサポートAI、サラツーが恐怖でしゃがみ込み、その身を抱きしめながらガタガタと震えていた。

 

『あ、アムロが変態になっちゃった……』

 

 と。




 おかしい。
 みなさんからいただいたご感想を参考に、現時点のアムロがガンキャノンでシャアに対抗できる手段のうち、確実で手堅く実現性が高いものを選んでお話を書いたのですが、どうしてこうなった。
 なお、次回はかわいそうな目に遭っているサラツー、彼女たちサラシリーズの生い立ちとその個性について。
 そして史実とは違うガンタンク組のお話をお届けする予定です。
 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

 ▲ページの一番上に飛ぶ
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。