ガンダム世界でスコープドッグを作ってたらKMF紅蓮に魔改造されてしまった件   作:勇樹のぞみ

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第23話 シーマ隊救出作戦 Cパート

「セイラさん」

「なに?」

「レビル将軍から今、暗号通信が入りました。コンピュータで解析したので映します」

 

 キャプテンシートに就くセイラに、フラウが慣れない手つきで通信機材を操作しながら報告。

 

「どうぞ」

 

 居住まいを正し、通信モニターに正対するセイラ。

 

『レビルだ。連絡が遅くなってすまなかった。補給物資はシーマ隊に送らせた。修理がすみ次第オデッサ作戦に参加しなければならん』

「はい」

 

 暗号通信ゆえ、情報量に制限があるのかモノクロで映し出されたレビル将軍から直接の指示を受ける。

 

『なお、新型のモビルスーツも届ける。新戦力として十分使えると思う。パイロットの諸君にも健闘を望む次第だ』

 

 そして通信が切れ、慌てるフラウ。

 

「これだけ? オデッサ作戦がいつ始まるのかわかんないし」

 

 そう言いつつ、トラブルで通信が途切れたのかとコンソールを操作するが、セイラは特に気にせず言う。

 

「具体的な事はシーマさんが知らせてくれるでしょう」

 

 そして視線を前方、艦橋の外の空へと据えてつぶやく。

 

「新型モビルスーツってどんな機体かしら? 少しでも私たちが楽になるものならいいんだけれど」

 

 

 

「十一時の方向に編隊キャッチしました」

「あと一息というところで。ジオンの部隊かい?」

「はっ」

 

 五機のミデア輸送機に、護衛のミデア改造ガンシップで編隊を組むシーマ隊だったが、途中でジオンの部隊に捕捉されてしまう。

 

「しかし妙ですぜ、シーマ様。我々の行動を知る者がそんなに居るとも思えんのですが」

 

 副長を務める海賊男、デトローフ・コッセルが顔をしかめる。

 

「フン、連邦軍の中にネズミでも居るんだろうさ」

 

 シーマはそう言い捨てると矢継ぎ早に指示を出す。

 

「各機、対空戦闘用意。このままの戦闘隊形を崩すな! 一応、レビル将軍にはSOS信号を」

「はっ」

 

 

 

「よーし、捕まえたぞ。荷物で足の遅くなった輸送機なぞいちころだぜ」

 

 ド・ダイYSのコクピット。

 マ・クベの指示を受けてシーマ隊を追うクリンク中尉の方でも、ミデアの編隊をキャッチ。

 攻撃態勢に入る。

 

 

 

「ミデア輸送隊からのSOSをキャッチしました」

 

 ホワイトベースブリッジ、オペレーター席のオスカがセイラに報告する。

 

「ミデアから? 距離は?」

「北西180キロ」

 

(どうするべき? 補給が受けられないとホワイトベースは動けない。ミデアが来てくれなければ)

 

『セイラさん、補給部隊を助けましょう!』

 

 モビルスーツデッキから、アムロが通信を繋げてくる。

 

『新しい戦い方を試してみます。カイさんはガンペリーでガンキャノンとドラケンを運んでくだい。リュウさんとハヤトはコア・ファイターで先行して時間稼ぎを』

「分かったわ、頼みます」

 

 そして、キャプテンシートに身を沈めるセイラ。

 

「確かにミヤビさんに艦長代理をお願いされた時に言われたとおり。アムロもみんなも助けてくれる。そしてこれが最善手でもある。でも……」

 

 目をつぶりながら呟く。

 

「すべての戦力を投入したら動けないホワイトベースは裸同然。その隙に敵に襲われたらひとたまりもない」

 

 いずれにせよ自分のところに貧乏くじが来るのでは、と溜息をつく。

 

「アムロ、カイ、ハヤト、リュウ、そしてミヤビさん、発進してください。他の人は全員、対空警戒を」

 

 

 

『リュウさん、各計器正常。コンディション、オールグリーン。発進準備OKです』

「分かった。コア・ファイター緊急発進するぞ!」

 

 予備機だった機体を割り当てられたリュウが、サポートAI、サラシックスのフォローを受けながら発進する。

 

 

 

『ハヤトさん、こちらの機体も問題なしです』

「ハヤト機、出ます!」

 

 続いてサラナインとハヤトのコア・ファイターが発進。

 先行するリュウの機体と二機編隊、ロッテを組み加速する。

 

 

 

「ガンペリー、出るぜぇ」

『頑張ってね、カイ。シーマ輸送隊は救援物資を持ってきてくれるんだから』

「へいへい、では、おだてのセイラさん、行きますよ」

 

 セイラから直接の声援を受けつつも、カイはジョブ・ジョンをコ・パイロットに、ガンキャノンとドラケンE改を載せたガンペリーを発進させる。

 

 

 

「シーマ様、低すぎでは」

「いいんだよ」

 

 グフからの攻撃を避けるため、超低空で飛ぶシーマ隊のミデア。

 思わずといった様子でパイロットから声がかかるが、シーマは気にも留めない。

 

 

 

「ふん、ただの輸送機が、無駄な抵抗を」

 

 鼻で笑うクリンクだったが、しかしミデアが取ったのは実際有用な戦術だった。

 クリンクも、僚機であるド・ダイYSの各パイロットもモビルスーツを乗せたまま、あそこまで低空で飛ぶ自信はない。

 接近できなければグフのヒートロッドは振るえないし、ド・ダイYSは本来、要撃爆撃機であり8連装ミサイルランチャーは主に対地攻撃用で空対空戦闘能力はほとんど持たない。

 つまり現状で使えるのはグフのフィンガー・マシンガンだが、これもド・ダイYSの上に乗っている以上、下に向けての射界は完全にではないが制限される。

 そして、

 

「例の軽戦闘機!?」

 

 リュウとハヤトのコア・ファイターが迫っていた。

 

 

 

『ハヤト、俺にぴったりついて来るんだ。バラバラだと敵の数に飲まれてしまうぞ!』

「了解です、リュウさん!」

 

 ハヤトのコア・ファイターはリュウの機体に続いてドップの編隊とドッグファイトを始める。

 互いにフォローしあうロッテ戦術でドップを撃ち落としていくものの、

 

『ダメです、ハヤトさん。後ろにつかれました!』

 

 サラナインからの接近警報。

 ド・ダイYSに乗ったグフのフィンガー・マシンガンがハヤトのコア・ファイターを狙う!

 

「うわーっ!」

 

 放たれる弾幕、四条の火線に悲鳴を上げるハヤト。

 ミヤビの前世の記憶にある史実でもそうだったが、この部隊ではスペース的に厳しく整備性などに難があった親指の砲門をオミットし、代わりに連続射撃時間の増加を図っているのだ。

 しかし不意に閃光が走りド・ダイYSを破壊。

 グフを空中へと放り出す。

 

 

 

「大丈夫か、ハヤト!」

 

 ハヤトの危機を救ったのは高空、側面ハッチを開けた飛行中のガンペリーの上からガンキャノンのビームライフルで撃ち下し、狙撃したアムロからの援護だった。

 ミヤビの前世の記憶上でも、マンガ『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』の大西洋上の戦闘でアムロのガンダムがやっていた戦法である。

 また『機動戦士ガンダムUC』ではヨンム・カークス少佐が駆るザクⅠ・スナイパータイプが輸送機ファットアンクル改に乗り上空からの狙撃で戦果を上げていたこともある。

 しかし、続けて落下していくグフを身を乗り出し追撃するも外してしまう。

 

「カイさんダメだ! 機体が揺れて当たらない!!」

『おまえが揺らしてんだよっ!! 落ちるだろーがっ!!』

 

 さすがに素人考えのぶっつけ本番では上手く行かない。

 

「落ちろ! 落ちろ落ちろ!」

『落ちる! 落ちる落ちる!』

 

 ビームライフルを連射するアムロと、ガンキャノンが姿勢を変え撃つたびに悲鳴を上げるカイ。

 それでもようやくのことでグフを墜とす。

 

「グフ、一つ。次は?」

 

 

 

「五時の方向に敵機キャッチ。データにない奴です」

 

 クリンクのド・ダイYSでも、コ・パイロットからの報告があり、

 

「馬鹿言え、木馬関係のデータは入れてあるだろう」

「あ、わかりました、中割れです」

「中割れだと? ガ、ガンキャノンとかいうモビルスーツを運ぶ奴だぞ、そりゃ」

 

 ガンペリーを捕捉。

 機上に載っているグフに対し、

 

「エイブ、ミデアの攻撃は中止だ、中割れに対処する」

『中割れ? なんだいそれ? モビルスーツでも出てくんのか?』

「そういうことだ。残りのドップには戦闘機を追いかけさせろ」

 

 そうしてクリンクのド・ダイYSはターン。

 ガンペリーの機上から撃ってくるガンキャノンへと向かう。

 

 

 

「二番機、四番機も持ちません、先に行ってください」

 

 アムロたちが手間取る間にも、シーマ隊の損害は増えていく。

 

「四番機には例の新型が入ってる。編隊を着陸させな」

「し、しかし、二機だけでも敵を振り切って」

「さすがにアレを捨てるわけには行かないんだよ」

 

 

 

「ち、着陸したのか? まずいぞ」

 

 ミデアの編隊が降りたことに焦りを感じるアムロ。

 しかし、

 

『アムロ、それは無理矢理空中で戦おうとするからよ。逆に考えましょう、『足を止めて戦った方がいいさ』と考えるのよ』

 

 同乗している、というか揺れるガンペリーにドラケンE改をしがみつかせているミヤビからの通信。

 それを受けてアムロは、

 

「そうか!」

 

 とガンペリーからガンキャノンを飛び降りさせる。

 ミヤビの助言で、今の体勢だとガンキャノンは十分な援護ができないから足を止めた方がいいと気づいたのだ。

 だが、

 

『のわっ、アムロ、てめぇっ!!』

 

 急にガンキャノンの機体重量、約70トンが消失したために機体バランスを一気に崩すガンペリー。

 

『降りるなら一言言ってからにしやがれー!!』

 

 カイの悲鳴交じりの怒声を背に、アムロはすれ違いざまにド・ダイYSからグフを蹴り落とし、地上へと降下する。

 ついでに転げ落ちてしまったミヤビのドラケンE改と共に。

 

 

 

「やりやがったな!」

 

 ド・ダイYSから蹴り落とされ地上へ降下したグフはガンキャノンへ突進!

 

「これだけ近づけば!」

 

 あえてヒートロッドの間合いよりさらに詰めることでガンキャノンの火力を封じる策に出る。

 

 

 

「来るか、だがっ!」

 

 アムロも着地と共に体勢を整え、左のストレートパンチで迎撃を図る。

 対して左肩から半身になって突っ込んでくるグフは、肘打ち、もしくは手刀でも振るおうというのか左腕を身体に巻き付けるかのように引いて、右肩の辺りまで掲げている。

 

『大丈夫、こっちが早い!』

 

 サラツーが予測したとおり、先に当たるのはガンキャノンのパンチだ。

 攻撃が『加速』しなければ、グフに勝ち目はない!!!

 

 しかし!

 

 不意の射撃音、そして先に当たったのはグフの左腕の薙ぎ払いだ!

 さすがにマシンガンを内蔵した手のひらを打撃に使うのは避けたか、下腕部を使った打撃だった。

 少林寺拳法で言う『外腕刀打ち』、腕の外側、手首から肘にかけての尺骨を使った腕刀、打ち手である。

 モビルスーツのマニピュレータでは特に装甲が厚く頑丈な部分であるからこの打撃は有効だ。

 

 

 

 アムロたちの戦いを離れた場所から俯瞰して見ることができたサラには、かろうじて今の一撃の仕組みが理解できた。

 

『「加速」…… マニピュレータによる薙ぎ払いの速度を上げるために、引きつけ、後ろに向けていたフィンガー・マシンガンを発砲、その反動、リコイルを利用したんですね』

 

 そうサラが言うとおり。

 打撃直前の射撃音は、四つの発射音が一つとなった、つまり四門の75ミリ砲の同時斉射によるもの。

 その射撃の反動を利用して腕の振りを加速したのだ!

 さらに、

 

 

 

「イヤーッ!」

 

 左腕フィンガーマシンガン貫手!

 揃えて突き出された指先がガンキャノン頭部カメラバイザーを粉砕!!

 

 

 

「ウワーッ!」

 

 その衝撃に叫ぶアムロ。

 

 

 

「ハッハーッ!」

 

 さらに容赦なく発砲!

 人間なら即死の一撃!

 

 

 

『目がーっ!』

 

 ガンキャノンの機体からのフィードバックに目を押さえながら悲鳴を上げてのけ反るサラツー。

 

 

 

 さらにグフは射撃反動を利用して一回転。

 旋回式バックブローを叩き込み、ガンキャノンの反撃を粉砕!

 

 

 

(な、なにが起きたの……?)

 

 ミヤビは呆然とするほかない。

 最初に砕かれたガンキャノンのカメラバイザーの破片が未だ空中である。

 実際それは一瞬の出来事であった。

 

 

 

 グフはカラテの演武を終えたかのように、

 

「フー……」

 

 残身!

 

 

 

「ス、スゴイ……」

 

 武道に関しては少々かじってはいても、常人の域に居るミヤビに達人の動きは追えるはずもない。

 だが、

 

「暗黒武道ピストルカラテ……」

 

 ミヤビはこの格闘技を知っていた。

 ピストルカラテとはミヤビの前世において有名だったサイバーパンク・ニンジャ活劇小説『ニンジャスレイヤー』に登場するカラテの一種、あるいは一派。

 両手に構えた拳銃を単に射撃に使うだけではなく、鈍器やウェイトとし、更に射撃の反動までもを利用してトリッキーかつ強烈な攻撃を放つ恐ろしい戦闘術だ。

 

『ああ、ミヤビさんがツヴァークの格闘技ライブラリに登録したアレですか』

 

 ぱん、と両手を合わせて納得するサラ。

 ミヤビが開発したプチモビルスーツ『ツヴァーク』は腕に3連装11mm機銃を内蔵することができる。

 それを利用したバトリングにおける技としてミヤビが冗談で格闘技ライブラリに登録したのが『暗黒武道ピストルカラテ』なのである。

 Play Station 2のゲーム『装甲騎兵ボトムズ』でもそうだったように、火薬の爆発力で腕を伸縮させるアームパンチが装備できないツヴァークが近接戦闘で勝つには、機体そのものを旋回させてパンチを放つ格闘動作で戦うしかない。

 それを強化する手段として、ネタ枠で入れたものだ。

 まさか実用レベルで使えるまで技を磨く者が居ようとは、ミヤビも思ってもみなかったのだが。

 

 

 

「たかがメインカメラをやられただけだ!」

 

 サブカメラからの映像で戦闘を継続させようとするアムロ。

 ミヤビの知る史実でガンダムがジオングに頭ごと吹き飛ばされた時とは違う。

 カメラを潰されただけで頭部は残っていたが、しかし!

 

「射撃反動を次の打撃技へのエネルギーに利用してるのか! 速い!」

 

 竜巻のように回転し肘打ち、回し蹴りが放たれ、

 

 

 

「イヤーッ!」

 

 フィンガー・マシンガンの射撃反動を利用し再び振るわれる左腕の薙ぎ払い!

 

 

 

「それはもう知っている!」

 

 アムロはかろうじてガード!

 ……だが、

 

「フェイントか!?」

 

 受け止めた左腕の下にはガンキャノンに向け揃えて向けられた右手の五指!

 

 発砲音!

 

「ウワーッ!」

 

 ミヤビの前世の記憶でもそうだったが、この追撃戦に使用されたグフの機体は、両手にフィンガーマシンガンを備えた特殊機体だったのだ!

 

 

 

「まずいわね」

 

 ミヤビはつぶやく。

 

「暗黒武道ピストルカラテは両手に構えた拳銃を利用した格闘技。つまり……」

 

 その言葉にサラも気づく。

 

『さっきまで左腕のフィンガー・マシンガンしか使っていなかったのは、手を抜かれていたってことですか!?』

 

 ということに。

 

『な、なんとかしたいですけど、射撃反動を打撃技に上乗せするためフィンガー・マシンガンをあっちこっちに撃ちまくっているから近づけませんよ!』

 

 多彩かつ広範囲をフォローできるカラテ攻撃に銃撃による攻撃を合わせ持つため、一体多の戦闘も得意とするのがピストルカラテなのだ。

 そしてミヤビはドラケンE改をくるりと反転させてその場から逃げ出してしまう。

 

『み、ミヤビさん!?』

「サラツーの愛がアムロを救うと信じて……!」

『そんなふざけたこと言ってないで、もっと真剣に考えて……』

「真剣に考えてどうするの? このままじっと待ってるの?」

『うぐっ!?』

 

 ミヤビは常に変わらない真顔でこう答える。

 

「今は彼らを信じて、私たちは私たちにできることをやるべき時よ」

 

 具体的には他の敵への対処だ。

 

 

 

「急いで新型の入ってるコンテナを降ろせ。もう爆発するぞ」

 

 不時着した四番機から新型モビルスーツが入れられているというコンテナ車を降ろすべく指示を出しているのは、

 

「何であんたがここに居るんだい! テム・レイ博士!!」

 

 シーマが思わず叫んでしまったとおり、テム・レイ博士。

 どうやら密航してついて来てしまったらしい。

 そこにドップの機銃掃射が走り、その場の全員が地面に伏せる。

 シーマは、

 

「対空砲火は気を抜くな! 敵の下駄履きのモビルスーツだってまだ一機残っているんだよ!!」

 

 と指示。

 そしてまさにその時、グフを載せたド・ダイYSが現れるが、

 

 

 

「何だっ!! このカトンボども!! モビルスーツに軽戦闘機で挑むとは笑止千万!!」

 

 懸命にシーマたちを守ろうとするリュウとハヤトのコア・ファイターを五月蠅そうにヒートロッドで追い払うグフ。

 

「時間稼ぎのつもりかそれでもっ!!」

 

 追撃のフィンガーマシンガン!

 そうやって戦いつつ、指示を出す。

 

「俺がこいつらを引き受ける!! ド・ダイはミサイルでミデアをやれっ!!」

 

 

 

 ド・ダイYSの機首に並んだ8連装ミサイル・ランチャーがシーマたちに向け放たれ、

 

「やば……」

 

 その時である!

 

「輻射波動っ!」

 

 不意に射線上に割り込む赤い機体ッ!

 大きく開いたクローの中心、甲壱型腕ビームサーベルの先端が赤く輝き、輻射障壁と呼ばれる直径5メートル弱のフィールドがミサイルを撃ち落とす!

 

【挿絵表示】

 

 だが!

 

「ミヤビ君!?」

 

 テム・レイ博士が叫ぶ。

 風が吹き、爆炎が消えたそこには、対地攻撃向けを主とし、非常に高い爆発力を持つド・ダイYSのミサイルを至近で撃ち落としたがために、グシャグシャになったドラケンE改の姿があった。

 

「姫さんだって!?」

 

 駆け寄るシーマ。

 

「姫さん、あんたなのかいっ? 早く脱出しな。なんて無茶をするんだい!!」

「そ…… その声は、シーマさん?」

 

 か細い、しかしシーマの無事を知って心の底から嬉しそうにするミヤビの声。

 

「この機体、爆発します。爆炎と煙を利用して…… 早くこの場から逃げて」

「バカをお言いでないよ!! 姫さん!!」

「……は、ダメです。もう…… 目…… も……」

「姫さん!」

「シーマ様!!」

 

 機体に取りすがろうとするシーマを部下たちが無理やりに引きはがす。

 彼らが安全な距離を取ることができた、その時に、

 

「ごめん、ね……」

 

 擱座したドラケンE改が爆発!

 シーマは見た。

 はじけ飛ぶコクピットハッチ。

 歪んだそれが、大地を転がる様を。

 

「ばか…… な……」

 

 シーマの脳裏を過るのは『コロニーリフレッシュプロジェクト』が頓挫した時にミヤビが見せた儚い涙。

 彼女はシーマたちに妙に好意的だった。

 ジオンと連邦の戦争を避けるために尽力し、そして挫折したものの、それでもシーマたちマハルの者を少しでも救うことができた。

 彼女の精神を安定させるための代償行為だったのかもしれない。

 だからこそ、こうやって最後までシーマたちのことを守ろうとしたのかもしれない。

 でも、

 

「そんなの関係ないんだよ! 私は嬉しかったから恩を返す、ただそれだけだったのに……」

 

 シーマの唇から、そんなつぶやきが漏れた。

 

 

 

「ぬ! あのミドルモビルスーツ、爆発と共に熱煙幕を撒いたかっ!!」

 

 熱煙幕は通常視野だけでなく赤外線センサーも阻害するもの。

 それによりジオンの攻撃部隊は一時的にシーマたちを見失っていた。

 

 

 

『ミヤビさんのドラケンの反応が…… 消えた……?』

「嘘だ嘘だ嘘だ! ミヤビさんが死んだなんて、そんなの嘘だ!」

 

 アムロは通信機をいじり、全周波数を使ってミヤビを呼ぶ。

 しかし、

 

『うるせーよ、ガキ。遊びでやってんじゃねーんだぞ』

 

 アムロの通信を拾ったのだろう、目の前に立ちふさがるグフのパイロットから蔑みの言葉が投げかけられる。

 

「なにをっ!」

『モビルスーツの性能のおかげで活躍できたせいでお前、自分が無敵のヒーローかなにかと勘違いしてんじゃねーのか?』

 

 再び、グフのフィンガーマシンガンの射撃反動を利用した攻撃がガンキャノンを襲う!

 

『ボクはつよーい。ボクはまけなーい。仲間だってまもってみせるんだー。ってか? ぽっと出のガキが笑わせんじゃねぇっ!!』

「ぐっ、だ、だったら、僕がガキだったらお前は何だって言うんだっ!」

 

 アムロの言葉に、グフのパイロットはこう答える。

 

『俺は命懸けで戦ってこの技を身に着けたんだ。貴様とは違う、俺こそ本物のヒーローだ……」

 

 抜き手、射撃、射撃反動を利用した肘打ち、回し蹴り!

 一方的に攻めまくるグフ。

 

『お前みたいなガキのお遊び、インチキヒーローとは訳が違うんだよぉ!!』

「がぁっ!」

 

 倒れ伏す、ガンキャノン。

 

『アムロっ!』

 

 悲鳴交じりに名を呼ぶサラツー。

 

「サラツー…… ごめんよ、かっこ悪くて」

 

 受けた衝撃でダメージが大きいアムロは、力なく答えることしかできない。

 そこにグフのパイロットからの通信が割り込む。

 

「なんだ彼女連れかよ。お嬢ちゃん、俺の方がカッコイイだろ? そんなヤツ見捨てて俺の女にならないか?」

 

 無論、サラツーの答えは、

 

「やだっ!」

 

 即答。

 

「アムロは私のヒーローなのよ! ヒーローはカッコイイのよ! 強いのよ! あんたみたいな戦争とただの暴力を取り違えてる悪者なんかに負けないのよ! 今はやられてても、絶対最後は勝つのよ! あんたみたいなチンピラ兵士に、私のアムロが負けるわけがない!」

 

 アムロは必ず勝つのだという、サラツーの意固地なまでの意志が込められた言葉。

 その純粋な熱い想いに触れたアムロの瞳に力がよみがえる。

 

「サラツー、ありがとう。力を、貸してくれ」

 

 アムロの言葉に、滲んでいた涙をぬぐってサラツーはうなずく。

 

『うん!』

 

 再び立ち上がる、ガンキャノン。

 

「うおおおおおおおおっ!!」

『うるせえっ! 吠えりゃあ強くなんのかよ!』

 

 せせら笑うグフのパイロットだが、

 

『なるに決まってんでしょう!!』

 

 サラツーの言葉と共に、グフの胴体に叩き込まれるガンキャノンのパンチ。

 

『がふっ!?』

 

 RXシリーズに搭載された教育型コンピュータはパイロットの言葉や所作から意思を推測して、その操作を補足する機能を持つ。

 要するにパイロットの考えや、やりたいことを察してフォローしてくれるのだ。

 この機能はパイロットの挙動をサンプリングすることでより精度を増し、技量の高くないパイロットにも熟練兵の操縦を可能とする。

 そうやってパイロットを教え、導きながら、同時に自らも成長していくという意味で教育型と名付けられているという。

 

 そしてまさに人格を持ち、人間を、人の心を理解し、パイロットのために尽くす存在がサポートAIサラシリーズなのであり、彼女たちの存在があるがゆえに、教育型コンピュータはミヤビの知る史実を超えてパイロットのやりたいことを先回りしたり補足したりして助け、機体を自由に制御できるのだ。

 

 そしてパイロットに対するサポートAIの理解の深度は、パイロット側の要因にも左右される。

 つまり感情もあらわに叫ぶとAIの読み取り精度が上がり、機体制御が向上するのだ!




 熱すぎる戦闘回でした。
 なお登場したグフのフィンガー・マシンガンが非常に特殊になっていますが、これは私の独自設定ではなく『機動戦士ガンダム』第23話を忠実に再現したものです。
 実際、

> ミヤビの前世の記憶でもそうだったが、この追撃戦に使用されたグフの機体は、両手にフィンガーマシンガンを備えた特殊機体だったのだ!

 これを再現するため『ROBOT魂 〈SIDE MS〉 ド・ダイYS & グフ オプションセット ver. A.N.I.M.E.』にはフィンガーマシンガンを備えた右手が付属しています。
 さらにフィンガー・マシンガンの射撃エフェクトパーツは、

> 放たれる弾幕、四条の火線に悲鳴を上げるハヤト。
> ミヤビの前世の記憶にある史実でもそうだったが、この部隊ではスペース的に厳しく整備性などに難があった親指の砲門をオミットし、代わりに連続射撃時間の増加を図っているのだ。

 これを再現していて、親指分が無しになっているのです。

 こんな具合に、立体物でも再現されているものですしね。

 そして次回はいよいよ主役機交代イベントです。
 ご期待ください。

 みなさまのご意見、ご感想等をお待ちしております。
 今後の展開の参考にさせていただきますので。

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