上里空は勇者になり、魔道士でもある!   作:水甲

11 / 65
10 始まるために

荒れ狂う海上でフェイトはバルディッシュを構えて竜巻に突っ込もうとするが、弾かれてしまった。これで何度目なのか既に魔力がつきかけていた。

 

それでも諦めきれずにいた中、

 

「!?」

 

なのはと僕と僕に抱えられた珠子がフェイトのもとに来た。するとどこからともなくアルフがやってきて

 

「フェイトの邪魔するなァアア!!」

 

僕たちに襲いかかろうとしたが、寸前のところで魔法陣を展開させたユーノに止められた。

 

「待ってくれ!僕達は戦いにきたんじゃない!」

 

「えっ!?」

 

「今はジュエルシードの封印を!」

 

ユーノが鎖で竜巻を縛り上げていく。僕らはというと

 

「珠子!手伝うぞ!」

 

「切り札発動!!輪入道!」

 

珠子は切り札を発動させ、大きくなった旋刃盤を竜巻の周りを囲んでいった。

 

「一箇所にまとめて……珠子!戻せ」

 

「わかった」

 

珠子は旋刃盤の上に乗り、なのはたちに指示を出した。

 

「二人共!今だ!」

 

「フェイトちゃん!二人でジュエルシードを止めよう!」

 

レイジングハートはバルディッシュに魔力を送った。

 

一箇所に集まった竜巻をユーノとアルフの二人で竜巻を抑える。

 

「ユーノ君とアルフさんが止めてる今のうちに!二人でせーの!で一気に封印するよ!ディバインバスター、フルパワー!」

 

『All right,my master』

 

なのはの足下に巨大な桜色の魔法陣が展開された。フェイトもバルディッシュを構えて巨大な金色の魔法陣を展開する。

 

「せーの!」

 

「サンダー…」

 

「ディバイン…」

 

二人はデバイスを構え、

 

「レイジー!!!」

 

巨大な雷が竜巻に向かって放たれた。

 

「バスター!!!」

 

二人の砲撃を喰らい、竜巻はそのまま消えていきジュエルシードが現れた。

 

「えっと…半分こ…で良いよね?」

 

「…………」

 

二人はジュエルシードを封印し、その場にあった6つのジュエルシードを二人で分け合った。

フェイトは何も言わずにアルフと一緒にどこかへ消えるのであった。

 

「フェイトちゃん……」

 

「とりあえず戻るか」

 

「……はい」

 

僕らはそのままアースラへと戻るのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

戻ってすぐに僕らはアースラの会議室の呼び出された。どうにも何かがわかったみたいだ

 

「まったく。勝手にジュエルシードを半分ずつ分けて…」

 

壁に寄り掛かりながらクロノがため息をついた。

 

「す…すみません」

 

「クロノ、良いじゃないか」

 

「空さん、貴方も……」

 

「クロノ、やめなさい」

 

「はい……」

 

リンディさんに怒られるクロノ。とりあえず何があったのか知りたいんだけど……

 

「何かわかったのか?」

 

「えぇ、今回の事件の首謀者についてよ」

 

「エイミィ、映像を」

 

「はいはい」

 

エイミィが操作し、僕らの前のモニターに映し出されたのは一人の女性だった。

 

「あら」

 

その女性を見て、何故か千景だけは悲しそうな顔をしていた。あいつは知っていたみたいだな。とりあえず事情はあとでも聞けるから話を進めるか。

 

「この人は?」

 

「僕らと同じミッドチルダ出身の魔導師。プレシア・テスタロッサだ。専門は次元航行エネルギーの開発。偉大な大魔導師だったが、違法研究と事故によって放逐された人物です」

 

「テスタロッサって……」

 

「あのフェイトという少女はおそらく」

 

「プレシアの娘…ね」

 

リンディさんが険しい表情で呟いた。なのははプレシアの映像を見つめた

 

「この人がフェイトちゃんのお母さん…」

 

「プレシア・テスタロッサは、違法な素材を使った実験を行い失敗。中規模次元震を起こした事で中央を追放され、それからしばらくの内に行方不明となる。今わかってる事はこれくらいです」

 

「ご苦労様。貴方達は一休みした方がいいわね」

 

リンディさんは僕らの方を見てそう言ってきた。たしかにここ最近大変だったな。

 

「特になのはさんは、長く学校休みっぱなしにするのはよくないでしょう。一時帰宅を許可します。ご家族と学校に少し顔を見せた方がいいでしょう」

 

「は、はい」

 

「とりあえずみんな、ゆっくり体を休めろ。訓練をするのもいいけど無理はしない程度にな」

 

僕はみんなに、特に若葉の方を見てそういった。

 

「空、どうして私の方を見て……」

 

「お前が一番危ないからだ」

 

「うぐっ……」

 

若葉は落ち込み、みんなが笑う中、僕と友奈は悲しそうにしている千景を心配していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時の庭園

 

フェイトとアルフはプレシアにこれまでの事を報告しにきた。プレシアは玉座に座り、フェイトは部屋の中心に立っていた。

 

「…ジュエルシードを、全ては回収できませんでした」

 

フェイトはひどく怯えていた。

 

「…回収したジュエルシードの数は…全部で九つ……」

 

「ご…ごめんなさい、母さん……」

 

「フェイト……貴方は休みなさい。残ったジュエルシードは後で全て回収しなさい」

 

「えっ……はい」

 

フェイトは何がなんだか分からずただその部屋から出ていった。残ったプレシアは口元を抑えながら咳き込み、血を吐いていた。

 

「私には…もう時間がないわ………短い間でも優しくしようと思ったけど……無理みたいね……」

 

プレシアはある人物を思い浮かべた。自分が間違っていたことを気づかせてくれた少女のことを……

 

「ごめんなさい……千景……私はフェイトのいい母親になれないわ……こんな私を許して……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

近くの公園で僕はアネモネに話しかけていた。

 

「アネモネ……お前はなにか知ってるのか?」

 

『それはどういうことでしょうか?』

 

「お前はなのはが持っているレイジングハートみたいなインテリジェントデバイスだと思えない……はっきりとした心みたいなものがあるんだ」

 

『さすがはマスターですね。そこに気がつくとは……』

 

何となく思っていたけど、やっぱりか……

 

「お前の目的は?」

 

『それについてはまだお話できません。ただこれだけは言えます。マスター、貴方は他の勇者たちとは違う……運命を変える力を持っています』

 

「運命を変える……」

 

『いずれ分かることです』

 

アネモネはそのまま黙り込むのであった。本当にこいつは……

 

「あれ?空君、こんなところでどうしたの?」

 

すると友奈となのはの二人が僕のところに駆け寄ってきた。

 

「どうしたんだ?二人共」

 

「ちょっと散歩をしに」

 

「若葉さんたちはうどん屋に行っていて……」

 

「そっか……」

 

僕は立ち上がり、なのはを見つめた

 

「なのは、もしまたフェイトと会うことがあったら……今度は本気の戦いになるかもしれない……」

 

「はい……」

 

なのはの目を見る限り覚悟しているって感じだな。それだったら心配しなくてもいいな

 

「きっと私達は始まってなかったんです。だからこそ……」

 

「そっか、頑張れよ」

 

「はい!」

 

なのはは笑顔で力強く答えた。

 

「何だか空くんとなのはちゃんって兄妹みたいだね」

 

「そうか?」

 

「あはは」

 

「何だかいいなって……」

 

「いや、友奈、お前はなのはのお姉ちゃんだろ」

 

「そうかな?」

 

「そうだよ」

 

友奈は何故か嬉しそうにしているけど、なのはは苦笑いを浮かべていた。

 

「私お兄ちゃんとお姉ちゃんいるんだけどな……」

 

そういえばそうだったな……

 

「そういえば友奈、千景は……」

 

「うん、何だか元気がないの……悩んでるみたいで」

 

「そっか……」

 

あいつはやっぱり何かを隠してるけど、一人で抱え込んでほしくないな。

 

「友奈、お前は千景のそばに居てやれ」

 

「うん……空君」

 

「ん?」

 

「私がぐんちゃんみたいに悩んでたらどうするの?」

 

「もちろん、力になるよ。友奈だからってわけじゃない、みんなが悩んでいたら僕は力になる」

 

「そっか……空君はそうだもんね」

 

友奈は嬉しそうに笑うのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数日後 海鳴臨海公園

 

なのはと僕ら勇者組はある人物たちを待っていた。

 

「ここなら…いいよ」

 

なのはがそうつぶやいた瞬間、どこからともなくフェイトとアルフの二人が姿を現した

 

「………」

 

フェイトは千景、珠子、杏の三人を見つめた。千景は前に出て

 

「大丈夫。邪魔はしないから……」

 

千景の言葉を聞いてフェイトは頷くと、なのははレイジングハートを構えた。

 

「ただ捨てればいいってわけじゃないよね?逃げればいいってわけでもない」

 

なのはは真っ直ぐフェイトのことを見つめた。

 

「きっかけはジュエルシード…だから賭けよう。お互いが持ってる全部のジュエルシードを!」

 

レイジングハートとバルディッシュからこれまで集めてきたジュエルシードが周囲に集まった。

 

「それからだよ。全部それから、私達の全てはまだ始まってすらいない…だから、本当の自分を始めるために…始めよう。最初で最後の本気の勝負!」

 

二人の魔導師が戦いを始めるのであった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。