時の庭園
「ハァ…ハァ…次元魔法は…もう体が耐えられないわね……」
プレシアは苦痛で顔を歪ませていた。既に管理局の武装局員がこっちに向かってきている
「フェイト…よくここまで戦ったわね……こんな母さんの為に……今まで、よく頑張ったわね…」
フェイトのことを思う中、プレシアは泣きながら自分に訴えかけてきた少女のことを思い出していた。
「ごめんなさい。千景……貴方との約束は守れそうにないわ……だから全てを終わらせる」
アースラに戻った僕らはモニターで状況を見守っていた。そしてフェイトも同じように……
『総員、玉座の間に進入。目標発見』
武装局員がプレシアのいる部屋に突入していた。
『プレシア・テスタロッサ。時空管理法違反の容疑で逮捕します』
『速やかに武装を解除してください』
プレシアは何も言わずただ動じずに玉座に座っていた。すると局員が玉座の後ろに回り込んだ瞬間、プレシアは睨みつけていた。
「だ……め……」
千景が小さな声で何かをつぶやいていた。一体何があるんだ?
局員が玉座の後ろにある隠し通路を見つけた瞬間、千景が叫んだ
「映さないで!!」
千景が叫んだ瞬間、モニターに映し出されたのはフラスコに入ったフェイトそっくりな少女だった。
千景以外の僕らはただただ驚きを隠せないでいた。
『ぐわぁああ!!』
局員がプレシアによって弾き飛ばされていった。
『私のアリシアに近づかないで!!』
プレシアが局員たちを吹き飛ばしていき、リンディさんは撤退命令を下していった。
「アリ……シア……」
フェイトはモニターに映し出された少女を見つめていた。フェイトは知らなかったのか……
『もうダメね…時間がないわ…たった九つのジュエルシードで、アルハザードに辿り着けるかわからないけど………フェイト。そこにいるんでしょ?』
プレシアに名前を呼ばれてフェイトは体を小さく震わせた。
『貴女はね…アリシアの代わりにしようと…私が造ったアリシアのクローンなのよ……』
クローンって……それに代わりって……なんなんだよそれ……
「…プレシアは最初の事故の時に、実の娘のアリシア・テスタロッサを亡くしているの。『フェイト』と言う名は、当時の彼女の研究につけられてた開発コードです」
エイミィが険しい表情でみんなに話した。
『よく調べたわね……フェイト。正直に言うわ……私ね…貴女を造りだした時から、貴女を好きになれなかったの……貴方は私のことを母さんと呼ぶということ、魔法の才能も……全部受け入れられなかった』
さっきまで険しい顔をしていたプレシアは優しく微笑んだ。
『でもねある人が……そこにいるでしょ千景』
プレシアの口から千景の名前が呼ばれ、僕らは全員千景のことを見た
『貴方は言ってくれたわね。子供のことを愛さない人を許さないって……そしてアリシアのことを知った貴方はこう答えたは……』
プレシアと千景の二人は同時にある言葉を言った。
「『代わりなんかじゃなくって、フェイトとして愛してあげて……』」
千景は涙を流していた。僕は千景の家の事情についてはある程度知っている……だからこそ千景はフェイトに自分みたいに家族の愛ということを知らないでいてほしくなかったんだ
『これからはフェイトを愛してあげてって約束したけど……ごめんなさい。もう間に合わないわ……アルフ。貴女もいるんでしょ?』
プレシアは涙を流しながらアルフに声をかけた。
『こんな私が頼めた義理じゃないけど……これからもフェイトをお願い…』
「プレシア…」
するとアラームが鳴り響いてきた。
「大変!屋敷内に魔力反応多数!」
「何だ!?何が起こってる!?」
屋敷の床から様々な形をした無数の傀儡兵が現れる。
「庭園敷地内に魔力反応!しかも50、80と数を増やしていきます!!」
「プレシア・テスタロッサ!一体何をするつもり!?」
『フェイト……貴方を愛しているわ……管理局局員、フェイトは私に操られていただけ……彼女には罪はないわ』
プレシアがそう告げた瞬間、アースラが……というより空間が揺れ始めた。
そしてジュエルシードからまばゆい光が溢れ始めていた。
「次元震です!中規模以上!!」
「振動防御!ディストーション・シールドを!」
「ジュエルシード九個発動!次元震、更に強くなります!」
「転送可の距離を維持したまま、影響の薄い空域に移動!!」
「了解!」
「規模は更に拡大!このままでは『次元断層』が!!」
「次元断層?クロノ、何だそれは?」
「次元断層……いくつもの並行世界を壊滅させる程の災害だ。このままだと三十分足らずで起きてしまう」
「おまけにあの庭園の駆動炉も、ジュエルシードと同型のロストロギアでそれを発動させて、足りない出力を補ってる」
要するにかなりまずい状況だっていうのか。フェイトは泣き崩れ、千景も泣きじゃくっていた。このまま見ているだけってわけには……いかないよな
「クロノ、行くんだろ」
「あぁ、まさか君たちも……」
「当たり前だ。僕らは勇者だからな」
「あの、私も行きます。フェイトちゃんのお母さん助けたいです」
「僕も、駆動炉のエンジンを封印出来るはずだ」
今だ泣きじゃくる千景、すると友奈が千景の手を握りしめた。
「ぐんちゃん、泣いてちゃダメだよ。泣いてるだけじゃ助けられないから……」
「高嶋さん……」
「助けよう!みんなで!」
友奈が笑顔でそう告げた瞬間、千景は涙を拭き立ち上がった。そしてフェイトに手を差し伸べた
「このまま終わりにしたら駄目だと思ってるの?」
フェイトは顔を上げ、首を横に振った。
「それだったら何をするの?」
「私は……母さんを助けたい……」
「それだったら行きましょう……貴方のお母さんを助けるために」
「はい!」
フェイトは千景の手を掴み、立ち上がりバリアジャケットに着替えた。
「それじゃ勇者と魔導師……力を合わせていくぞ!!」
『オォ!!』