空SIDE
ヘリでなのはたちの今の本拠地である機動六課にやってきた僕ら。なのはの話ではすでに僕らの部屋の準備はできているらしい。何というか早すぎだろ……
「今日の午後の訓練はお休みね」
「ゆっくり休んで、明日に備えてね」
「はい!」
なのはとフェイトの言葉に、新人のスバル達は声を揃えて応えた。みんなが隊舎に戻っていく中、新人の一人、ティアナが足を止めていた。
「スバル。私これからちょっと一人で練習してくるから…」
「自主練?私も付き合うよ」
「じゃあ僕も」
「私も」
全員がティアナの練習に付き合おうとしていたが、ティアナは……
「ゆっくりしてねって言われたでしょ?アンタ達はゆっくりしてなさい。それにスバルも…悪いけど一人でやりたいから」
「…う…うん…」
何だかあのティアナって奴……どうにも思いつめてるな……
「ねぇ、空だっけ?」
すると神世紀の勇者の一人、夏凜が僕に声をかけてきた。
「何だ?」
「あんたって、あの上里空でいいのよね」
「あぁ」
「なのはの教導の基盤になっていて、300年後の勇者育成のトレーニングメニューを手がけた」
「待て、僕のって未来でそんな事になってるのか!?」
僕は近くにいた夜空の方を見た。夜空は僕の視線に気がつき、頷いていた。
「まぁその未来でのことは夜空から聞いたりしたら?私としては、教導官として今のティアナの事をどう思う?」
教導官としてか……今のティアナはどうにも見えていない気がするな
「自分のことが見えなくなっている。というか周りがすごいから余計にな」
「やっぱり……」
夏凜は何かを納得し、すぐにどこかへ行くのであった。
「何というか未来でかなりの影響を与えてるんだな……僕って……」
「そこがお兄ちゃんの凄いところだと思いますよ」
ひなたが笑顔でそう言うけど……僕としてはそんな偉大なことをしていたつもりはない……
「あぁそうだ……ひなた、先に部屋に戻っておいてくれないか?ちょっとなのはに聞きたいことがあるんだ」
「えぇ……」
どうにもなのはに関してある違和感を覚えた僕はすぐになのはに会いに行くのであった。
「というかなのはの居場所……フェイトあたりに聞いておけばよかったな……」
隊舎内を回ってみても、なのはの姿を見つけることが出来なかった。しょうがない、戻ろう
そう思った瞬間、近くの部屋から人の気配を感じ、僕はすぐにその部屋に入った。
「あれ?部屋教えたっけ?」
どうやらここはなのはの部屋……というより部屋のものを見る限り、なのはとフェイトの部屋みたいだな。
「いや、ちょっとお前に聞きたいことがあって……」
「聞きたいこと?」
「どうにも再会してから気になってたんだけど、お前、どこか怪我したりしてるのか?」
「!?」
なのはは驚いた顔をしていた。やっぱりか……
「怪我しているというよりかは……前に大怪我をしたことがあるなって言ったほうが良いな」
「……どうしてわかったの?」
「お前の仕草とか見ていてな……こう見えて、若葉たちの訓練の教導官だからな。ちょっとしたことでも気がつけるようにしてるんだよ」
無理をしていないかとか怪我をしているのに隠しているとか……
「どうにも怪我したところを無意識にかばってる感じがするし、フェイトとかの表情もちょっと心配そうにしている感じがしてな」
「あ、あはは、空さんってすごいね……」
「それでどうなんだ?」
「うん、空さんの言うとおりだよ」
なのはは僕に話した。ジュエルシード事件と闇の書事件での度重なる無茶と負担で、11歳の頃、ちょっとした反応の遅れで大怪我をしたことを。
その大怪我でもう二度と空を飛べないと言われて、つらい思いをしたことを……
「だからかな。自分の生徒たちには無茶をしてほしくないんだよね……それで空さんがくれた訓練書を読み返して……空さんも無茶をしてほしくないって思ってたんだね」
「まぁ最初の頃は若葉と友奈以外には文句を言われてたけどな」
「あはは……」
「今はどうなんだ?」
「うん、無理をしない程度には動けるよ」
「そっか、とりあえず無理だけはするなよな」
「空さんもね」
「あぁ」
お互い笑い合うのであった。とりあえずなのはは大丈夫そうだな。
夏凜SIDE
「はぁ、はぁ……」
「4時間もぶっ続けで……よくやるわね」
「夏凜……」
帰ってから訓練を続けるティアナに私はタオルを渡した。
「あんた、どうしてそこまで頑張るの?」
「………………私には……スバル達みたいな才能もないし…キャロみたいなレアスキルもない…だから私は…少しぐらい無理をしないと、強くなれないんです!!」
「あんた………はぁ」
私はため息を付いた。何というか馬鹿らしい考えだ。
「無理をしないとね……本当にそれで強くなれると思ってる?」
「夏凜は才能が……」
「才能とかそんなの関係ないわよ。特に私はそれを知ってるから……それにあいつも……」
「あいつ?」
「今のあんたには話せないわね……それじゃ」
私をそう言い残してその場から去った。才能がないとか……無理をして強くなるとか……何というか三ノ輪銀の言葉を思い出すな……
「無理をして強くなることはない。才能がないとか思わない……か。何だか空の奴が教えてそうな言葉ね……」
夜空SIDE
ホテルでの一件から数日が経った。特に大きな事件もなかったのだけど……
それはスバルたち、スターズの模擬戦を見ていた時だった。
「遅れてごめん」
「フェイト、忙しそうだな」
「色々とあってね」
遅れてやってきたフェイトとそんな話をする中、フェイトは何故か心配そうな顔をしていた。
「本当はスターズは私がやろうと思ってたのに……」
「あいつ最近無理しすぎだ。少し休ませねぇと」
まぁ確かになのはの奴、頑張り過ぎな気がするけど……フェイトとヴィータが心配すぎっていうのが気になるな……
「………」
それに空さんの訓練を見つめる姿が何だか怖いんだけど……
さっきからスバルがなのはに突っ込んでいってる。普通ならティアナの魔法で幻術を作って意識をそらしたりするのに……
「スバル駄目だよ!そんな危ない軌道!」
「すみません!でもちゃんと避けますから!」
スバルが別のウイングロードでなのはから離れる。ティアナの姿が見当たらないので探すと、ビルの向こうで砲撃を放とうとしていた
「ティアナが……砲撃!?」
スバルはなのはのアクセルシューターを避けながら突っ込む
「でりゃあぁぁぁ!」
スバルが攻撃するがなのはの防御魔法に阻まれる。その瞬間ティアナの姿が消えた
「あれは幻術!?」
「じゃあ本物は!?」
ティアナはウイングロードを走り、カートリッジを消費しながら魔力刃を出しなのはに突っ込んでいった
「一撃必殺!でえぇぇぇぇぇい!」
ティアナが突っ込んでいき、あたりが煙に包まれた。そして煙が晴れると……
「………」
さっきまで一緒に訓練を見ていた空さんがいつの間にかなのはの近くにいて、ティアナの魔力刃を素手で受け止めていた。
「さっきから見ていて思ったけど……何だお前ら?」
その言葉から感じたの怒りだった。空さんは動揺するティアナとスバルの二人を睨みつけた。
「空さん……あの……」
「なぁなのは、お前の教導っていうのはこんな無茶と無理をやらせることなのか?」
「……ううん」
「そっか……なぁお前ら……練習でこんなことをやって、本番でうまくいくと思ってるのか?なのはの教えは間違ってると思うのか?」
ティアナは空さんから離れ、カートリッジロードした。
「私は!傷つけたくないから!もう無くしたくないから!」
ティアナが泣き叫ぶ
「だから強くなりたいんです!」
「………なら見せてやるよ……お前がいつか辿るかもしれない未来っていうのを!!カートリッジロード!!切り札・改!!」
まばゆい光に包まれた空さんの姿は真っ黒な7本の尻尾に、真っ黒な勇者の槍、真っ黒なアネモネを手にしていた。
「お兄ちゃん!?その姿は!?」
「あいつ……」
ひなたさんと若葉さんの二人が驚きを隠せないでいた。いや、西暦組の勇者全員が驚いていた。あの姿が何なのか知ってるのか?
「フェイト、すぐに動ける準備しておいたほうが良いかもしれないよ」
「アリシア?」
「空のあの姿……結構やばいから……」
「やばいって……」
「おいおい、普通に切り札を使ってるんじゃ……」
「あれはね。空が無理やり魔力を暴走させながら切り札を発動させた……敵を殲滅させることだけを考えた姿……切り札・改『黒狐』だよ」
「すぐに理解させてやる!」