夜空SIDE
ティアナの一件から一週間が過ぎた。空さんの方も切り札・改の後遺症で倒れたけど、復活できて良かった。良かったのだけど………
『………』
「とりあえず今日の訓練は終了で良いのかな?」
「そうだね。みんな、お疲れ様」
スバルたちの訓練に参加することになった僕ら勇者部の面々と西暦組のみんな……ただ教導官に空さんが混じっていた。
「これが……原点なのね……結構きつい……」
「私達のときも似たようなことをしましたけど、それ以上だったわ……」
「時の流れで多少加減してたんだね~」
「多少と言うか大幅に加減してるだろ……」
倒れている夏凜、東郷、園子、僕らは訓練の経験者だったけど……それでもこれはかなりきつい
ただ気になるのは……
「あの空さん……」
「何だ?」
「何で友奈、先輩、樹の三人とメニューが違うんだ?」
三人だけただの走り込みだけで終わった。なんだかちょっとずるい気がするんだけど……
「三人は訓練を受けずに勇者になったんだろ。それだったらいきなりハードメニューよりかは少しずつ体を慣らしていったほうが良いと思ってな」
確かに最初からハードメニューはきついだろうけど……西暦組は流石というべきか……
「何というかあっちは本当に大変みたいだね」
「こっちも結構厳しいけど……」
「お前ら言っておくけど、基礎練関係は今後空にやってもらうことになってるからな」
ヴィータの言葉を聞いて、スバルたちが顔を青くしていた。うん、何というかご愁傷様と言うべきか……
なのはから連絡事項として、スバルたちの今回の訓練は第二段階へのステップアップのためのものだったらしい。そのため、この後はスバルたちは休日となった。
「それと空さんたちも休んで大丈夫だよ」
「僕らも?」
「ここに来てから大変だったからね。少しでもね」
「そっか、ありがとうな。なのは」
休日か……僕はチラッと樹の方を見た。樹は僕の視線に気が付き……恥ずかしそうにしていた。
「まぁいい機会だから行ってきたら良いんじゃないのか?デート」
空さんがニヤニヤしながらそう言ってきた。この人は……
「空さんはいいんですか?」
「僕は行くよ」
何でこう恥ずかしげもなく言えるんだよ……この人は……
千景SIDE
「それじゃぐんちゃん、行ってくるね」
「えぇ、楽しんできてね。高嶋さん。上里くん、ちゃんと高嶋さんのことを」
「分かってる」
私は二人を見送るとアリシアが私の服を引っ張ってきた。
「何?」
「千景姉は出かけないの?」
「別に出かける用はないから……」
「こういう時に千景姉の彼氏さんも来てればいいのにね」
「アリシア……」
何でこうあの人のこと話し出すのかしら……でもあの人がこっちに来ていたら……
「駄目よ。あの人は今、忙しいって言ってたわ」
「何だっけ?勇者と魔導師とは違う力を扱えるようにするシステムを作っているんだっけ?」
「えぇ、未来では防人と言われているけど、その防人の原型というべきものを作ってるわ」
確か名前は………守人だったかしら……
夜空SIDE
僕と樹は一緒に街を見て回っていたけど……全く会話がなかった。いやだって……初デートなんだぞ。これ……
「あ、あの」
「な、何だ?樹」
「なんだか話したいことがたくさんあるのに……いざっていう時って話せないんですね」
「あぁ……」
さっきから樹が僕の手を握ろうとしているけど、恥ずかしいのかなかなか手を繋げずにいた。
僕は樹の手を握った。
「夜空さん……」
「痛かったか?」
「いえ」
なんだか手を握るだけでもかなり恥ずかしいんだけど……
「夜空くんと樹ちゃん、楽しそうだね」
「本当にね」
「初々しいよ~手を握るだけでこうなんだもん~」
「というか何で尾行なんかしてるのよ……私は若葉とシグナムと模擬戦をしようとしてたのに……」
「夏凜、何を言ってるのよ。あの二人が健全な付き合いをしているかどうかしっかり確認しないと」
「でも夜空くんは大丈夫だと思うけど」
「うんうん、フーミン先輩は心配性だね~」
「ほら、付き合いが長い二人がそういうんだから、信用しなさいよ」
空SIDE
海岸沿いの公園で二人で特に何もすることもなくただ話していた。
「そういえば夜空くんと樹ちゃんは初デート何だっけ?」
「そうみたいだな。まぁあの二人は結構大変だったみたいだからな」
「満開の後遺症……散華……」
供物を与えるということだよな。でも今は元に戻ってるけど……
「どういう原理なのかは気になるけどな……」
「でも神樹様は私達のことを見守ってくれてるから……ちゃんと返してくれたんだよ」
「そうだな……」
すると急に友奈が怒った顔をして、僕の額にデコピンをしてきた。
「友奈?」
「難しい顔をしてるよ。空くん、今日は楽しまないと」
そうだったな。今日ぐらいは楽しまないと……
「難しい顔をしてごめんな。友奈」
「ううん」
お互い笑顔になるけど、友奈は目を閉じ始めた。僕はそっと友奈にキスをしようとしたが……
『空さん、今……ごめんなさい』
突然なのはから連絡が来たのだけど、間が悪かったな……
「すまん、なのは……」
「えっと、どうかしたの?」
『実はエリオとキャロの二人がレリックの入ったケースを持った少女を救助したみたい。もしかしたら……』
「他にもレリックがあるっていうのか……」
『場所はアネモネに送るから、すぐに向かって』
「にしてもここはどこだ?」
「教官、やっぱり私達みたいだけですね」
「あわわわわ、どうするのこれから?こんな暗い場所を進んでくの?メブ」
「とりあえず外へと出ません?いつまでもこんな薄暗い所にいるのは私としては……」
「……なにか引きずってきた跡がある」
「教官、どうします?」
「そうだな……とりあえず外へと出る道を探しつつ、この跡に何があるか調べるか。そっちの三人もそれでいいか?」
「こっちはOKよ。にしてもなんだか慣れてるわね」
「こういった状況はよくあることなのか?」
「まさか。まぁ前に似たようなことがあっただけだよ。それで亜弥と夕空の方はあんたに任せて良いのか?」
「えぇ勿論。こう見えて多少戦える力を持っていますから」