リクトに対抗できる力。それを発動するためにキスをしなければいけない。だから僕らはキスが出来るようにとはやてに言われたのだけど……
「………」
「あの、樹……」
「なんですか……」
樹がめちゃくちゃ怒ってる……これどうすればいいんだよ……
園子SIDE
「いっつん、めちゃくちゃ怒ってるね~」
「まぁ樹が怒ってる理由はわかるけど……」
私とフーミン先輩で尾行をしていたけど、いっつんが怒っている理由は……
『園子さん、そっちの様子はどうや?』
「はやちゃん、ちょっと厳しいかな?いっつん、怒ってるんよ~」
『あぁ、もしかして無茶したからかな?』
「それかもしれないね~フーミン先輩的には?」
「樹が怒ってる理由はそんなところね。何というか夜空は本気で無茶しまくりだから……というかこれって血筋なの?」
「上里の人間は無茶しやすいからね~」
『そっちでどうにか仲直りできそうには?』
「そうだね~」
「ここは見守るべきね。今回のことは二人がどうにかするしかないと思うし」
『そやね』
はやちゃんから通信が切れると、フーミン先輩は呆れた顔をしていた。
「何というか……はやては部隊長よね」
「そうだよ」
「尾行してて良いのかしら?」
「まぁはやちゃんは見守りたいからじゃないかな?」
「あとでリインたちに怒られなければいいけど……」
夜空SIDE
二人で歩いているだけとは、ずっと樹が口を利いてくれない……本当にどうすれば……
いや、どうすればいいのかは決まっている。
僕は前を歩く樹の腕を掴んだ
「……夜空さん?」
「樹……ごめん」
「……」
「僕は……お前に心配掛けたよな。死なないようにって約束したけど……それでもお前からしてみれば……心配でしょうがなかったよな……だからごめん……」
「………」
樹はずっと黙ったままだった。謝って済むことじゃないのは分かってるけど……
「夜空さん……謝らないでください」
「樹……」
樹は僕の手を掴み、強い目で僕のことを見つめた。
「夜空さんが傷だらけになりながらも頑張ってることは……心配ですけど、そうしないといけないことだって分かっています」
「樹……」
「ただ……私は自分に怒ってるんです」
「自分に?」
「夜空さんが頑張ってる。それもずっと一人で……私は夜空さんに守られているだけ……何もできない自分に怒っています。私はこれから夜空さんと一緒に戦いたいです。夜空さんを守りたい、力になりたい……」
樹は涙を流しながらそう告げた。そうか……僕は樹のことは何も知らなかったな……大好きな人なのに……
僕はそっと樹のことを抱きしめた。
「ありがとうな。樹」
「夜空さん……」
「一緒に戦ってくれ……お前は僕が守るから……お前は僕を守ってくれ……」
「はい」
互いの気持ちをしっかり伝えられてよかったかもしれない。何というかはやてはこのことを分かっていて、デートとか言い出したのか?
「あの……夜空さん」
「何だ?」
「はやてさんから聞いたんですけど……強くなるためにき、キスをしないと駄目って……」
「あ、うん」
いや、正直これで終わりじゃ駄目なのか?
「その……私とキスしてください」
「………樹、無理はしてないか?」
「してません……でも、恥ずかしいですけど……小学生のえみるちゃんが頑張っていたんですから……私も頑張らないと」
頑張るとこ間違ってる気がするけど……このまま嫌がっていたら駄目だよな
樹は目を閉じ、僕は樹にキスをした。
「ふあ……」
キスが終わると樹はそのまま座り込んでしまった。
「だ、大丈夫か?」
「何だかキスって……すごいですね……力が抜けちゃって……でも心がすごく暖かいです……」
「樹……」
園子SIDE
「キスしちゃったね~」
「何というか妹に先を越されたわ……全く夜空はちゃんと樹のことを大切にしなさいよね」
「フーミン先輩はぶれないね~」
『そっちどうや?』
「はやちゃん、こっちは成功みたいだよ」
『そうか……それは良かった……』
「そっちは?」
『えっと……普通にデートはしてたんだけど……何故か模擬戦に……』
「はい?」
ミナトSIDE
スカリエッティにレガオンを見せることになったけど……
「なるほど、この武器はオーバーテクノロジーだね」
「まぁ俺からしてみれば、そっちの技術がオーバーテクノロジーだと思うけど……」
「世界の違いというものだね……」
「そういえば聞きたかったことがあるのだけど……お前は何であいつらと話をしたかったんだ?」
いろいろと話しを聞かされる中、気になったことをスカリエッティに聞いてみた。スカリエッティは手を止め、俺の方を見た。
「彼らの勇者の力と魔法の力について調べてみたくってね」
「科学者としての血が騒いだんだな」
「それもあるが……気になるのは彼らに協力している天の神についてだ」
「まともな方がどうしたんだ?」
「リクトと戦うために協力しているみたいだが、気になったのは彼女がどこの時間軸で来たかだ」
「空とかの話だと全部終わった後だって……」
「なるほど……ならば例の開発は今回の件が終わってからでいいな」
「開発?」
「私もね。天の神と会ったのだよ。そして伝えられた……彼らが私と戦う際に、私が道を開くものを作って欲しいとね。最初は何の話かと思っていたが……」
「今回の戦いじゃなくって、その後の戦いの事を言ってるみたいだな……」
「まぁまずは今回の戦いに集中しようじゃないか」