「さて、全力で良いんだな」
「うん」
僕らは互いに勇者に変身し、向かい合っていた。何でこんな事になったのかは数十分前……
友奈とデートをしていたのだが、特に何事もなくただ普段どおりに話すだけだった。
「……空くん」
「ん?」
「そのはやてちゃんから聞いたよ」
もしかしてキスの件をか?だとしたら……
「何というか……こういうのは正直大切にしたいよな。お互い……その……」
初めてだからって言いたいけど、結構恥ずかしいな……
「うん、いざっていうときはその……ね」
何というかお互い一歩踏み出せないな。こういう時のためにミナトに参考に聞いたけど……
『戦いのときに咄嗟に必要だと思ってな……』
あいつのは参考にならない……というか咄嗟に必要になるってどういう時だったんだよ……
「ねぇ空くん、模擬戦やらない?」
「模擬戦?」
「うん、空くんが勝ったら……キスしていいよ」
「お前が勝ったら?」
「私のは勝ったら言うよ。あと全力でお願いね」
全力でか……仕方ないな。
僕らは隊舎に戻り、なのはから訓練場を貸してもらうことになった。
「それじゃ審判は私で」
「あぁ、でも何でみんな、観戦してるんだ?」
夜空、樹、ミナトたち、あと園子と風以外全員、見てるし……
「二人の全力の戦いをみんな、見たいんだよ」
「まぁそれはそれでいいけど……」
「行くよ!空くん」
「あぁ……」
僕は槍を構えた瞬間、なのはがスタートの合図をした。
合図と同時に友奈は動き出し、パンチを繰り出す。僕は槍で友奈の拳を防ぎ、距離をとった。
「重いな……強くなったな。友奈」
「大好きな人の教えがいいからだよ!」
恥ずかしいことを言いながら、蹴りを繰り出していく。僕の教えがいいって言うが……
「正直、彼女がここまで強くなってるのは本気で嬉しいよ」
僕の攻撃を友奈はギリギリで避けていく。
「えへへ、嬉しいよ」
桜SIDE
「何というか……恥ずかしくないのですかね……」
「というかこれ、ただイチャイチャを見せつけられてるだけだよね……」
僕とアリシアは呆れながらそう言うと、ひなたさんは何故か笑っていた。
「お兄ちゃんたちらしい気がしますよ。面と向かって気持ちを伝えるのは恥ずかしいみたいですが、こうして戦ってというのが一番いいと思ってるんですよ」
「まぁ聞いてるほうが恥ずかしいけどな……」
「まぁ付き合いは短いけど、はっきりわかることはあるよ」
「……あの二人らしいやり方だって言うことは」
雪花さんも棗さんも空たちのことを理解し始めてるみたいですね
「とりあえず見届けましょう」
空SIDE
互いの攻撃を防ぎ、避けている。このままだと決着が付きそうにないな。ここは動くべきだな
「切り札発動!!妖狐!」
「切り札発動!!一目連!」
お互い切り札を発動した。友奈も今の状況を覆すために切り札を発動したんだな
「空くんのことはよく分かってるよ」
「大好きだからか?」
「うん」
「僕も大好きだ!」
友奈は拳の連打を、僕はアネモネに切り替えて魔力弾を放ち続ける。僕が放つ魔力弾を友奈は殴って相殺していく。
「行くよ!勇者!」
「フルテイル!」
「パンチ!」
「バスター!」
お互いの必殺技がぶつかり合った瞬間、爆発が起き、あたりが煙に包まれた。
「満開!!」
「切り札発動!酒呑童子!」
僕は満開を発動し、煙の中から飛び出すと友奈は酒呑童子に切り替わっていた。
「フルテイル!」
「全力全開!勇者!!」
「ブレイカー!!」
「パンチ!!」
僕のブレイカーを友奈はそのまま突っ込んでいく。ダメージ覚悟でやっているんだろうけど……どんだけだよ!?
ブレイカーを喰らってもなお、友奈は突っ込んでいき、僕の目の前に出てパンチを繰り出すのであった。
パンチを食らった僕はそのまま地面に落ち、倒れるのであった。
「むちゃするな……友奈」
「空くんも無茶するよね」
お互い笑い合うのであった。こういった模擬戦はいいかもしれないな……
「そういえば友奈が勝ったときのは何なんだ?」
戦う前にそういった話になったけど……
「えっとね……」
友奈は恥ずかしそうにしながら、僕にキスをしてくれた。
「私が勝ったら、空くんとキスをするだよ」
「どっちみちキスするんだな……」
「えへへ~」
はやてSIDE
物陰に隠れながら、模擬戦の様子を見ていた私……ちゃんと任務完了やね
「さてと園子さんに報告を……」
「マスター見つけましたよ」
「サボりは駄目ですよ~はやてちゃん」
突然バインドで縛られた私、後ろを見るとリインフォースとリインの二人が怒った顔をしていた。
「えっと……堪忍……」
「さぁ戻りますよ」
「まだ仕事が溜まってるんですから」
「堪忍してぇぇぇ~」