友奈と共に若葉たちの所へと戻るとどうにもなのはが見知らぬ女性に絡まれたみたいだった。
「それで若葉が追い払ったのか?」
「いや、杏と珠子がその女性と話してすぐにどこかへ行ったみたいだ」
「もしかしたらこの間のあの子の知り合いなのかな?」
なのはが言うあの子って、あの金髪の子か……
千景にはその子がどういった理由でジュエルシードを集めているのか聞いてもらうことになったけど……
「とりあえず千景たちがここにいるって言うことはジュエルシードがあるっていうことだな。今晩あたりにでも探して見るか」
「うん」
「それはそうと……ユーノはのぼせたのか?」
「そうみたいですね」
僕とひなたはぐったりしているユーノを見つめた。のぼせるなんてまだまだ子供だな……
夜になり、僕らは外に出てジュエルシードを探しているとそこには金髪の少女と赤毛の女性、そして千景たちの姿があった。
「ありゃりゃ、見つかったみたいだね。フェイト」
「うん、それにその人達は……」
「私達の仲間よ。だけど……」
「タマ達はフェイトに協力するから安心しろって」
「そういうことですから……空さんたちには悪いですけど……」
千景たちは武器を構えた。まぁそうするように僕が伝えたから仕方ないけどさ……さて相手するのは……
「若葉は千景を、友奈は珠子を、僕は杏と戦う。ひなたは下がってろ」
「わかりました」
戦う相手を決めるとなのははあることを言い出した。
「あ、あの……話し合いで何とかできないかな?」
なのははフェイトという少女を見つめながらそう言うが、フェイトは……
「…私達はジュエルシードを集めなきゃいけない。それは貴女も同じ事。だったら私達はジュエルシードを求めて争う敵同士って事になるね」
「だから!そんな勝手に決めない為に話し合いって必要なんだと思う!!」
フェイトの言葉に、なのはは声を大きくして言った。
だがフェイトは目を閉じ、
「言葉だけじゃ…何も変わらない……伝わらない!」
なのはたちも戦いを始めた。そして僕らもだった。
若葉と千景の二人は互いに武器をぶつけ合い、互いに一歩も引かなかった。
「やるな!千景!」
「こういう状況下であなたと本気で戦うなんて思っても見なかったけど……」
千景は大鎌を下から大きく振り、若葉は後ろへと下がる
「こうして戦ってみるのも悪くないわね」
「あぁ!」
若葉と千景の実力はだいたい同じくらいか……いや、千景のほうが少しだけ冷静な分、若葉を押してる感じだな。
さて友奈と珠子の方は……
「ハァ!」
「ヤア!」
珠子の攻撃を友奈は拳で防いでいく。珠子自身の攻撃は強力そうに見えてスピードがそこまで早くない。友奈は少しずつだけど距離を詰めていっている。
あっちは問題はなさそうだな。
さて僕の方はと言うと……
「物陰に隠れながら遠距離からの攻撃か……それに一度撃つごとに移動している……」
「空さんから教わったことですよ」
僕はどこからともなく襲ってくる矢を槍で防いでいった。居場所がつかめないとなると結構厄介だな……
「空さんが勇者になったのは驚きましたが、距離さえ取っていれば……」
「と思ってると痛い目にあうぞ」
「分かっています!」
矢をもう一度弾く。杏は教えたことをしっかり生かしているな。さてこのままだと負けてしまうな。僕にも遠距離の攻撃方法があればいいんだけど……
そんなときだった。三本あるうちの鍵の一つが白く輝き出した。
「これは……使ってみろか……それだったら!」
僕は勇者の姿から元の姿に戻り、鍵を手にした。その瞬間、白い衣装に変わり、鍵も白い杖に変わった。
「この姿……なのはと一緒か……」
『初めまして、マスター』
杖が僕に語りかけてきた。これってなのはの持つレイジングハートと同じインテリジェント・デバイスなのか?
「お前は?」
『名はありません。私は貴方の手にした力の一つです。お好きなようにお付けください』
「それだったら……アネモネってどうだ?」
『アネモネですか……』
「僕の好きな花だし、僕が勇者のときの紋章がそうだからな」
『わかりました。よろしくマスター』
僕は杖を構えると足元にアネモネの紋章が描かれた魔法陣みたいなものが現れ、杖の先からいくつもの魔力弾が現れた
「なのはみたいに扱えるってことか。それじゃ……」
魔力弾を飛ばした。とりあえずは杏の居場所を見つけないとな……
すると魔力弾の一つが空へと上がった。
「見つけたみたいだな。魔力弾全部……杏に向けて……」
放った魔力弾が杏のところへ向かい、しばらくしてから杏の悲鳴が聞こえるのであった。
「こっちは終わったみたいだな。さて……なのはは大丈夫か?」
なのはの方を見るとレイジングハートがジュエルシードをフェイトに出していた。
ということはなのはが負けちゃったということか……
「レイジングハート…何を!?」
「きっと主人思いの良い子なんだよ」
フェイトがジュエルシードを受け取っていると僕は彼女に近づいた
「悪いけど目的は達成した。戦うって言うなら」
「いや、やめておくよ。魔導師になったばっかりだし、正直勝てる気がしないな」
「そう……できればもう、私達の前に現れないで。今度会ったら、きっと加減なんて出来ない」
振り向かずに、なのはにそう言った。
「名前…あなたの名前は!?」
「フェイト。フェイト・テスタロッサ」
「わ…私は」
ファイトは話を聞かず、赤毛の女性は杏たちを回収してどこかへ消えるのであった。
「ごめんね。ユーノくん」
「いや、なのはが無事ならいいんだ。それにしても空さん」
「ん?」
「君が魔導師になったのは驚きだけど、彼女は君よりも強いってことなのかな?」
もしかして僕が勝てる気がしないって言ったことか?
「まぁ魔導師として戦うとしたら勝てる気はしないけど、勇者としてならまだ勝ち目がある。あのままだとまた戦うことになるからそう言うしかなかっただけだ」
「そうか……」
「若葉達は?」
「すまない。追い詰めはしたものの……」
「あはは、引き分けだったよ……杏ちゃん、空くんと戦いながら援護してたから」
「ふむ」
杏も中々やるもんだな。
「まぁ気持ちを切り替えて次頑張るか……」