……3時限目 屋上……
「やあ、月は見えるかい?」
「……いきなり何ですか?」
……昼休み 図書館……
「貸出お願いしま~す」
「返却期限は2週間後です。ポストもご利用下さい」
間違いない。月夜と栞も僕の事を完全に忘れてる。
今思えば天理の様子もおかしかった。
あの場面はディアナが勝手に出てきて僕を怒鳴りつけるのが自然な流れだったはずだ。
残るは結とかのんか……
結は放課後に軽音部へ行けば自然な形で会えるだろう。
かのんは……かなり厄介だな……
かのんも僕の事を忘れてるとしたら話すどころか会うだけでも困難になる。
……とりあえずは……
……放課後 軽音部部室……
「あれ? に~さまどうしたんですか~?」
「たまにはお前の部活での様子を見ておこうとおもってな」
「え? そ、そんな! まだにーさまにお聞かせできるようなものでは……」
「お前な、舞高祭ではあれだけ上手にやってたじゃないか……」
「そ、そうでした!! 見てて下さい神様! 私はいつまでもダメな悪魔じゃないですよ!!」
ベースの腕が駆け魂狩りに役に立つとは思えんがな……
でも、かのんの替え玉をやっていてブランクがあったのに本番で上手くできたという事はこいつなりに頑張っているんだろうな。
「え? 桂木が聴きにくるの?」
「ああ」
「例の件はどうなったのさ?」
「原因はまだ分からんが……何が起きているのかは大体分かった。
あと一人……確かめさせてくれ」
「なんかよう分からんけど……ウチらの演奏聴けば分かるの?」
「いや、重要なのは僕が部室内に居ることだけだ」
「はぁ?」
結の性格なら僕を見るや否や声を掛けてくるだろう。
少なくとも、僕が部活動の始まりから終わりまで部屋にいて何のアクションも起こさないという事はないはずだ。
おそらく、結も僕を忘れているだろうがな……
………………
「じゃ、今日はこんなもんか~!」
「お疲れ~」
最後まで部屋の隅で演奏を聞いていたが……
歩美はもちろん、結も僕に対して特別な反応を示さなかった。
「に~さま~、どうでしたかぁ~?」
「ああ、お前にしてはなかなか上手かったんじゃないか?」
「えへへ~」
「それで、何か分かったの?」
「ああ」
間違いなく、記憶消去かそれに近い事が行われている。
「……エルシィ」
「はい、何ですか?」
「お前、今回の女神の件、上に報告したか?」
「え? 特にはしてませんが……それがどうかしたんですか?」
ならハクア? いや、この件の手柄は全部ノーラに譲る事になっていたから報告は多分ノーラがやった。
だがあのノーラが女神の宿主について細かく上に通達するだろうか?
となると……
「……そうか、あいつが居たな」
「え?」
「エルシィ、先に帰っててくれ」
「え? ちょ、どこいくんですかぁ!? 神様ぁ!!」
……生物部部室……
「む、来たか」
「やはりここに居たか」
倉川灯。以前に僕が攻略した(?)少女の一人。
そして、おそらくは駆け魂隊の悪魔だ。
「何が起こってるんだ?」
「何とも言えぬが……一つだけ確かなのは今回の件で地獄は記憶を操作していないということじゃ」
「地獄は関わってない……か」
「驚いてはおらんの」
「普通に考えるとちひろの記憶が真っ先に消されるだろうからな。
だが違ったという事は地獄は関わっていない」
「ふむ」
「そもそも、地獄の記憶消去は女神の宿主には効かない……」
……あれ? じゃあなんで宿主
地獄が関わっていなくても、女神の記憶で宿主の記憶は補完されるはずだ。
「……そういえば、女神はどうなったんだ?」
「女神か……再び人柱となり封印されたようじゃ」
「なるほど。それが原因か……」
「どういうことじゃ?」
「宿主の娘は記憶を消されても女神の記憶で補完する。
なら、その女神が消えたら……?」
「……なるほど。確かにありえるのう」
「しかしまだ足りない。
この理屈だと初めの攻略の記憶が消えるだけで再攻略の記憶は残っているはずだ。
そこら辺はどう思う?」
「ふぅむ……前例が無いので確信は無いのじゃが……
「全ての……愛?」
「そうじゃ。その愛の記憶まで根こそぎ持っていってしまったとしたら……」
「……そうか。助かった」
「良いのじゃ。お主には女神の件で助けられたからのう」
「フン、別に地獄の為に助けた訳じゃない」
「ではお主は何のために動いたのじゃ?」
「愚問だな。のんびりゲームをするためだ!!」
「……なるほど、お主らしいのぅ……」