……翌日……
「大体分かったぞ」
「ホント!?」
分かったことをちひろに説明しなきゃならんのだが……一体どこから説明すればいいのやら……
「とりあえず結論を言おう。
歩美は僕との恋愛の記憶を丸々失っている」
「記憶…喪失って事……?」
「まあ、そんな所だな」
「元に……戻るの……?」
「……いや、戻らないだろうな」
女神が居ればなんとかなるのかもしれないが、少なくとも現時点で女神の封印を解くわけにもいかんからな。
「……ねぇ、桂木……
歩美に一体何があったの……?」
「歩美に一体何があったの……?」
桂木には何か事情がある。
私がその事情に立ち入り過ぎてる事も分かってる。
でも、どうしても聞かなきゃならない。
よく分からない何かに負けて、よく分からない何かのせいで諦めるなんて納得できないから。
「……そうだな。お前になら話してもいいかもな」
「……?」
「少し長い話になる。放課後に僕の家に来てくれないか?」
「…………分かった」
……放課後……
「来たか」
「ええ。聞かせてもらうわよ!」
「そうだな。どこから話すかなぁ……
まずは駆け魂狩りの所からかな」
「かけたま?」
「そう。女子の心の隙間に入り込み悪事を働く悪魔の事だ」
「あくまぁ?」
何を言ってるんだろう、こいつは?
ゲームのやりすぎで現実とゲームがごっちゃになってるんだろうか?
「急には信じられないだろうな。
だが質問は後にしてくれ。全部話してからだ」
「う~ん……とりあえず聞くよ」
流石にこんな時に嘘を吐くようなやつではない……と信じたい。
「駆け魂は負の感情を糧に成長し、やがて隠れた女の子供として転生する。
だから、すぐに捕まえなければならない。
その為には心の隙間を埋め、駆け魂を追い出す必要がある。
その手段は色々あるが……僕が使うのは『恋愛』だ」
「ちょっと待って!! 『恋愛』を使ったって……」
「……15人。
僕が攻略した
「!!!!」
信じられなかった……と言うより、信じたくなかったのかもしれない。
だって……
仲間だと思ってた
「……どうしてさ……」
「ん?」
「どうして!! 他にもっと方法は無かったの!?」
「無い訳ではない。だが……」
「何人とも恋愛してたなんて!! 最低だよ!!」
「悪いが僕にはこれしか出来ない。
それに、これは僕の命も掛かってる」
首筋のチョーカーを指差しながら続ける。
「駆け魂を逃すと契約違反と見なされ首が飛ぶ」
「なっ!! そんなのっ!!」
「理不尽なルールさ。
地味なメールを寄越してきたと思ったらいきなり契約成立。
おかげでのんびりゲームもできやしない」
「……それでもさ……
何又もかけるなんて、やっぱり間違ってる……」
「勘違いするな。駆け魂狩りで一度に2人以上攻略した事は無い」
「じゃあ何? その、かけたま? が出てくる度に女の子を振ってるの!?」
「違う。むしろ振られているのはこっちの方なのかもな。
簡潔に言うと、攻略した女子は攻略中の記憶を失う」
「!!!!」
記憶を失う? それは正に今の歩美の状態なのではないか?
「ようやく話の核心に近付いてきたな。
僕が数か月前に歩美を攻略した後はあんな感じだった」
「数か月前!?」
「初めての駆け魂攻略だった。
ほら、歩美が大会を仮病で休もうとしたの覚えてるか?」
「あ、うん……」
確かに数か月前にそんな事があったような気がする。
それほどまでに根詰めてたのかと心配したけれど、大会ではのびのびと走っていたと聞いて安心した。
「丁度その大会の前日に僕が歩美を落として駆け魂を出した。
心の隙間を埋めた歩美は万全の状態で大会に臨みぶっちぎりで優勝した、というわけだ」
「……そんな事が……」
……あれ? じゃあ、舞高祭の時のアレは……?
「とまあ、普通は記憶を失って終わりだったはずなんだが……
ある理由で記憶を持ち続ける、あるいは思い出す女子が出始めた。
駆け魂とは逆の存在、女神を体に宿す女子達は記憶消去を免れた」
「女神?」
また新しい言葉……
「駆け魂は負の感情を糧に成長する。
女神は逆に正の感情……すなわち愛情を糧に成長する」
愛情? ということは……?
「その後、急遽女神の力が必要になってな。
記憶を失っていなかった女子たちを急いで攻略し直した。
それがお前が見た攻略だ」
「じゃあ、歩美の中の力っていうのは……」
「愛情を糧にする女神。
そいつを目覚めさせた」
「って事は、今も歩美の中には女神は居るの?」
「いや、元々人柱になって悪魔を封印していた女神だ。
そのまま再び人柱に。
今の歩美の中に女神は居ない。
そして……女神が居た事によって守られてた記憶もな……」
「……なるほどね。それが今の状態……」
「そうだ。
女神が居ない以上、記憶は戻らないだろうな」
……筋は通っている。
桂木の話はゲームみたいな単語が多く、どこか胡散臭いけど……
わざわざここまで盛大な嘘を吐くとは思えない。
そして事実として歩美は記憶を失っている。
「……でもさ……」
この話が本当だとしても、どうしても確かめなければならない事がある。
「……アンタは……それで良いの?」
「……愚問だな。僕はゲームさえできればいい。
「どうしてよ!! そんなの……酷すぎる!!
歩美が可哀想じゃないか!!」
「……前にも言ったはずだ。
僕が
「!!」
前に、屋上で言われた言葉が蘇ってくる。
『僕が、
『
「……本当に、本当に現実なんて興味ないの?」
「当然だ」
「でも、だったら……
バタン
「に~さま~!! 新しい駆け魂の反応が!!」
「お前はもう少し空気を読んで部屋に入れよ!!」
「え、エリー!?」
び、ビックリした……
「あ、ちひろさんも居たんですか~」
「え? うん……」
「それよりに~さま、新しい駆け魂です!!」
「もう聞いた。
ったく、やっとのんびりゲームが出来ると思ったのに、これだから
駆け魂って言うと……例の悪魔の事……だっけ?
ということは……
「まさか、こんな時に他の女子を口説き落とすっての!?」
「そうなるな」
「どうしてそんな冷静でいられるのさ!!」
「何度もやってる事だからな。
……丁度いい。見れば納得するだろう。
僕が今まで何をしてきたのかを……な」
「え? ちひろさんも連れていくんですか?」
「できるか?」
「多分大丈夫だと思いますけど……」
「よし、じゃあ行くぞ」
「え? ちょっ!!」