ソードアート・オンライン 閃光の弟は鬼の剣士 修正中   作:狂骨

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覚醒そして帰還

俺は…何をやっているんだ。

 

床に押し付けられながら俺は目の前に燃え盛る炎をただ見つめる事しか出来なかった。

「あははは!!見事に命中したよ!しかも当たったと同時にあの爆発のエフェクト!綺麗だね!正に人間花火!あははは!」

「須郷…!お前…よくも作斗をッ…!」

怒りが抑えられなかった。ここまで来れたのは作斗のお陰でもある。そして何度も作斗のお陰で窮地を脱せた。口調は荒かったが作斗はこの世界でスグと同じ最高の仲間だった。だが、目の前でその存在が打ちのめされるのをただ見ている事しか出来なかったのが凄く悔しい。

 

その時 目の前にある燃え盛る炎が突然消え、その場所に

 

 

 

“何か”が立っていた。

 

 

「…!!」

「作斗……?」

皆は目を見開いた。

 

そこには 和服を身にまとい 漆黒のポニーテールをたなびかせている作斗の姿があった。

だが 俺たちが1番驚いたのはその顔だった。

 

「何だおまえ…!その顔は…!」

 

その顔には

赤く染まった目玉の中に黒く輝く鋭い瞳をした目があった。だがそれだけでない。なんとその目が6つに増えており右頬の殆どに黒い炎のような痣が浮き出ていた。妖精としての性質がまったくなくなっており妖精というより……もはや化け物だった。

鼻を中心に3対となっている鋭い瞳は俺たちを見つめていた。

「何だその姿!そんな姿はプログラムに入れてないぞ…!?」

須郷は汗を流しながら目の前にいる作斗へ剣を向ける。

 

「作斗……作斗…なの…?」

「……」

明日奈はゆっくりと作斗へ話しかけた。だが、頷こうとも首を横に振ろうともしなかった。

作斗は六つの目玉を須郷に全て向けると腰に下げてある刀の鞘へゆっくりと手を掛け抜いた。すると同時に刀にドス黒い渦が巻き始め刀身を包み込んだ。

 

「何だ…?やるのか?ならさっさとこい!」

須郷は相手が戦闘態勢を取ったと思い俺から奪った大剣を構えた。

 

「……」

 

その時

 

 

 

作斗の姿が突然消え須郷の背後から刀を振り下ろそうとした姿勢で現れた。

「ッ!後ろかぁ!」

須郷はスピードを生かし作斗の一太刀を受け止める。だが、作斗は止めることなく次々と須郷へ刀を振った。

 

それはまるで6本の腕があるようだった。

 

「何だこのパワーとスピードは!?さっきとは桁違いじゃないかぁ!?」

見る限り 作斗が押していた。だが途中から須郷も応戦をし始めた。

 

2人の戦いを見ていた俺はある感情に襲われた。

 

悔しい。

 

年下のアイツに任せるしかできない自分が悔しかった。

本来ならば俺が守るべきなのに…。

 

何もできないのは凄く悔しい。

けど…仕方がない…奴はGM…敵う相手じゃ…。

 

 

「諦めるのかい?それはあの日の戦いを汚す事になる」

突然俺の横から誰かの声がした。聞いた事のある声だった。

 

「私にシステムを上回るような力をみせて未来を悟らせるようなあの戦いを」

「…アンタは…」

俺は声のする方に顔を向けた時 そこには誰もいなかった。

 

ただ、声だけははっきりと聞こえた。

 

 

「立ちたまえ。キリト君」

 

ーーーーーーーーー

 

一方で謎の変貌を遂げた作斗は最初は優位に立っていたものの、すぐに調子を取り戻した須郷に押されてしまった。

 

「ハハハハハ!どうしたどうした!?変貌しても大した事はないんだなぁ〜!?」

「…」

須郷は圧倒的なスピードを生かし周りから作斗へ次々と斬撃を繰り返していた。それに対し作斗はただ刀を振り回して防ぐ事しか出来なかった。

 

「作斗!もいいからやめて!これ以上やられたら貴方の命が危ういのよ!!」

明日奈は泣き叫びながら作斗へ呼びかける。作斗の体力は既にペインアブソーバーが0の状態で何度も尽きている。人間で言えば何度も死亡している事と同じだ。だが尚も作斗はそれに耳を貸す事はなかった。

 

その時

 

「弟ばっかりに任しちゃいられねぇな…」

「…!キリト君!」

倒れていたキリトがゆっくりと起き上がった。それを見ていた須郷は作斗を吹き飛ばすとこちらへゆっくりと歩いてきた。

 

「はぁ。君もまだ起き上がるんだ。まぁいいさ。どんなに抗おうとも僕に勝てないよ?GMである僕にはね?」

「……」

キリトは須郷の言葉に耳を貸すことなく口を開いた。

 

「システムログイン…ID『ヒースクリフ』…」

するとキリトの周りにウィンドウが表示された。

「…!何だ!そのIDは!?」

「システムコマンド…管理者権限変更…ID『オベイロン』をレベル1かつ全ステータスを標準値に!」

その言葉とともに周りから光が消え去った。

 

「な!?僕より高位のIDだと!?ありえない!僕はこの世界の王であり創造主だぞ!つまり神だ!」

「そうじゃないだろ。お前は盗んだんだ。その世界を。住人を。そしてその玉座の上で1人勝手に踊ってたのさ」

「なんだと…!?このガキが!システムコマンド!オブジェクトID『エクスキャリバー』をジェネレイトッ!」

須郷は叫び武器を召喚しようとした。だがその叫びに答えることは無かった。

「言うことをきけ!このポンコツが!」

するとキリトは叫んだ。

 

「システムコマンド!オブジェクトID『エクスキャリバー』をジェネレイト!」

その叫びに答えるかのように目の前の空間が歪みそこから黄金に輝く劔が現れた。

「言葉一つで伝説の武器を召喚か…」

キリトは後ろで倒れ伏している作斗へ目を向けた。

「よく頑張ったな。あとは任せろ」

次に明日奈の方へと顔を向ける。

「すぐに終わらせる。もう少し待っててくれ」

「うん…!」

明日奈が頷くとキリトはその剣を手に取り須郷へ向けて投げた。

 

「さぁ。勝負と行こうか。アンタにはその高性能の剣を譲ってやるよ」

「ッチ!ガキが!ぶっ殺してやる!」

須郷はエクスキャリバーを手に取りキリトの持っていた大剣を投げ捨てた。

キリトはオブジェクトIDによって自分の大剣を召喚すると構えた。

 

「決着をつける時だ。泥棒の王と鍍金の勇者とな!オベイロンのペインアブソーバをレベル0!」

「な…!?なんだと!?レ…レベル0だと!?」

須郷は冷や汗を流す。これから来る本格的な痛覚に恐れたのだ。

 

「逃げるなよ…あの男はどんな場面でも臆した事はなかったぞ!『茅場晶彦』は!」

「なんだと…!?茅場だと!?何故だ!貴方はなぜ死んでまで僕の邪魔をするんだ!なぜ僕の欲しいものを奪っていくんだ!!」

「須郷。お前の気持ちは分からなくもないが…俺はアイツのようになりたいとおもった。お前と違ってな」

「く…このクソガキがぁぁぁぁ!!!!!」

その言葉に須郷は激昂し剣を振った。

だが、キリトはその剣を受け流し須郷の頬へ傷をいれた。

そして本格的な痛みが須郷の身体を襲った。

「痛い…!痛いよぉ!!」

『痛い』その言葉に反応しキリトの額から筋が立った。

「痛いだと…?お前が明日奈に与えた苦しみは…作斗に与えた苦痛は…こんなもんじゃねぇッ!!!!!」

そう叫びキリトは激昂しながら剣を横に振るい須郷の胴体を上半身と下半身とで切り離した。

 

「うぎぁぁぁぁぁぁ!!!!」

須郷は襲いかかってくる痛覚に耐えることが出来ず泣き叫んだ。

そしてキリトは上半身にある頭を鷲掴みにすると上へと投げた。

 

「あとはお前に譲る…やれ!作斗!」

その言葉に須郷は目を動かした。見ると目の前に倒れていた筈の作斗が六つの目を向けながら刀の柄に手を掛けていた。

 

そして

 

作斗の 須郷に対する膨大な恨みの込められた一閃が須郷の頭部を両断した。

 

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

須郷は激しい断末魔をあげると嘆きながらデジタル化し消えていった。

 

その様子をキリトは微笑みながら見ていた。

全てが終わるとキリトは明日奈の鎖を解き抱きしめた。

 

その様子を変貌した作斗は見届けるとウィンドウを開く。

 

「作斗…!?待ってよ!」

「おい!」

2人の止める声に耳を貸すことなく作斗は姿を消してしまった。

 

「行っちゃった…」

「あぁ…でも、すぐに会えるさ」

キリトの言葉に明日奈は頷いた。そしてキリトは「俺も戻ったらすぐ会いにいくよ」とだけ言い残し明日奈をログアウトさせた。

 

ーーーーーーーー

 

目が覚めると 美しい月の光が病室を照らしていた。

懐かしい外の景色に目は釘付けだった。

見ると花が供えてあった。とても美しかった。キリト君や作斗が何度も来てくれたんだ。

 

カタッ

 

すると突然 横から音がした。見るとナーブギアに少し似ているハードが落ちていた。

 

「作斗……ずっと一緒にいてくれたんだ……」

私はすぐそこに作斗がいた事を悟った。

けれども…なぜ姿が見えないんだろう…。

 

そう思うアスナから死角にある病室の入り口には吐き捨てられた血があった。

 

ーーーーーーー

 

一方 その病院の暗い廊下では脚を引きづりながら壁に手をつけながらゆっくりと階段を降りている少年がいた。

 

「(アイツの性格からすると……必ず報復にくる……早く行かねぇと…)」

自分の姉が目覚める前に病室を去った作斗は激痛が走る身体を引きづりながら下へと降りていった。

「(く…確実に…フルで動けば大量出血だな…)」

 

ーーーーーーー

 

 

目が覚めると 妹の顔があった。

 

「スグ…?」

「お兄ちゃん!」

抱き着いてくる妹を俺は受け止めた。

「やっと…終わったんだね…!」

「あぁ…俺…行ってくるよ」

「うん!きっと明日奈さんも待ってるよ!えっと……私も…行っていいかな…?」

「あぁ。行こう」

俺たちは自転車を漕ぎながら急いで所沢へと向かっていった。

 

そして一時間ぐらい経った頃 ようやく所沢の病院へと着いた俺達は裏口から侵入し病室へと向かった。

 

「お兄ちゃんこんな事していいの…?」

「取り敢えずあとで……院長に土下座すれば大丈夫だろ…」

「大丈夫なの!?」

そんな会話をしながら入り口を目指した。

 

すると 車のドアが開く音が聞こえ 俺たちの目の前に誰か知らない人の影があった。暗闇でよく見えなかった為 俺はぶつからないように横に避けた。

その時 その影が俺に向かって何かを振り回してきた。

 

 

それはペナントナイフだった。

 

俺の腕から何か生暖かいものが流れ出し俺はその場に尻餅をついてしまった。

 

「お兄ちゃん!大丈夫!?」

その時 光に照らされその影の正体が露わになった。

 

「遅いよ…キリト君…僕が風邪ひいたらどうするんだい?」

 

『須郷』だった。

顔中に筋が立ち目が血走っていて狂暴な表情を浮かべていた。

 

「あの人が…」

「あぁ…アイツが明日奈を苦しめていたヤツだ…!」

 

「酷いことするよねぇ。まだ痛覚が消えないよ」

「須郷…お前はもう終わりだ…大人しく法の裁きを受けろ!」

「終わり?何が?僕を欲しいっていう企業は山のようにあるんだよ?研究を重ね完成させれば僕は真の王に…神になれるのさ。だから…」

「っ!」

須郷の血走った目が俺達を捉えナイフを向けてきた。

 

「君は殺すよ!」

「スグ危ない!」

一緒にいたスグを俺は突き飛ばし何とか須郷のナイフを避けた。

 

「なんだ?一緒にいるのは妹か?ハハハハ!!好都合だ!まず僕から全てを奪った罰として妹を目の前で惨殺してやろう!」

「…!やめろ須郷!スグに近づくな!スグ!逃げろ!」

俺は腹の底から声を出した。だが須郷は止まらず 尻餅をついているスグへゆっくりと近づいていった。

 

「スグ!」

俺は何とか立とうとした。だが筋肉運動をしなかった為か疲労が出て上手く立ち上がる事が出来なかった。

 

「ハハハハハ!!死ねぇ!」

「…ッ!」

 

須郷のナイフが振り下ろされた時

 

そのナイフが誰かの手によって止められた。

須郷は汗を流し震えながら自分の目の前にいる影を見た。

 

「な……何でお前がここに…!」

「……!」

そこには髪を解き目を血走らせた作斗が立っていた。それに加えてスグに向かって振り下ろされたナイフを手で受け止めていた。

 

いや

受け止めれていない。自分の手を代わりに刺して止めていたんだ。

 

「何でここまで来れた!?あれだけの痛みならば数日は動けなくなる筈だぞ!?」

「く…くくくかかか…ハハハハハ!!」

その顔からは正気が失われていた。血走った目を剥き狂うように笑っているその表情は不気味だった。

作斗は何も言わず狂うように笑いながら須郷の手を掴むとナイフを抜いた。傷口からは大量の血が流れ次々と足場を赤く染めていた。

 

「ヒィ!?ぼ…僕に触るなぁぁ!!」

バンッ!

須郷は腕を震い作斗の手を無理やり引き離した。引き離された作斗はダメージが残っているのか、一瞬状態がよろめいていた。

「お前さえいなければ…お前のようなゴミがいなければぁぁ!!!」

「!」

須郷は悲鳴を上げながら作斗の脇腹に向けてナイフを刺した。

「作斗!」「作斗さん!」

そのナイフは深く入り込み 切り口から大量の血液が溢れ出てきた。その血液は手から流れている血液も含めて大量に流れ落ち、足元を血の海に変えていった。

 

「…!」

見ると作斗の目から光が消えていた。

 

「はぁ…はぁ…ようやく死んだか…!」

 

 

そ…そんな……

 

「さ…作斗…さん…」

 

 

諦めかけていた。だが、その時、俺達の目の前には衝撃の光景が広がった。

 

 

「……!?」

須郷の表情が今まで見せたこともない程まで恐怖に埋め尽くされた。

 

「な…何で動けるんだよ!!」

泣き叫びながら後退ろうとする須郷の腕には血で真っ赤に染まった作斗の腕が力強く絡み付いていた。その掴む手はあれだけの大量出血をものともしないかのように握力が弱まることは無かった。

 

「こ…これだけ出血すれば!普通の奴からすれば致死量にいたるんだぞ!?なぜだ!?」

その瞬間

 

 

 

「ふふ……フフフフ…ハハハハハハ!!!」

作斗が笑い出した。だが、決して良い笑いなどではない。目は血走らせ、血が湧き出ているというのに悲痛の声すら出さない。

確実に『発狂』していた。

 

「ハハハハハハ!!!!」

作斗は笑いながら須郷へ向かって拳を振った。

「がばぁ!?」

その拳は顔面に命中し須郷の身体を吹っ飛ばした。

だがそれだけでは終わらず作斗は血だらけになりながらもゆっくりと須郷へ近づいていった。

 

「やめろ作斗!それ以上動けば出血多量でホントに死んじまうぞ!!」

だが俺達の声は届くことなく血を垂れ流しながら首と顔中から筋が立ち怒りの込もった血走った目を須郷へ向けながら近づいていった。

「ヒィ!?く…来るな!僕に近づくな化け物め!」

「ヴァァァァァ!!!」

その叫びに耳を貸すことなく作斗は地の底から響くような唸り声をあげ須郷の顔を掴み出し車体へと叩きつけた。

 

ガンッ!

 

「がぁ…ご…ごめんなさい…!ゆ…ゆるじでくだざ…い!ち…調子にのっでずいまぜ…」

 

ガンッ!

泣き崩れた須郷の謝罪に耳を貸すことなく作斗は何度も叩きつけた。何度も何度も。

そして須郷は遂に耐えきれなく限界がきたのかその場で気絶した。だが作斗は止める意思を見せず気絶した後も尚須郷の頭を車体へと叩きつけた。

 

「(まずい…このままじゃ須郷が死ぬ…そうとなりゃ作斗は殺人罪だ…!)」

俺は状態を起こし作斗を止める方法を考えた。今の作斗は恐らく数人の大人でも抑えられない…筋力が大幅に下がった俺なら尚更だ…。

 

 

その時だった。

「もうやめて!」

「ッ!」

スグが涙を流しながら作斗へ手を回ししがみついた。それと同時に作斗の動きも止まった。

 

「お願いです作斗さん……戻ってきてください…!」

「……」

スグの訴えが届いたのかどうか分からない。だが、その直後に作斗の動きが急に止まり須郷への攻撃が止んだ。すると顔や首筋から隆起していた筋が消え血走った目も落ち着きを取り戻したようにゆっくりと閉じた。

 

「ふぅ……よかった…」

「お兄ちゃん!作斗さんの意識が!」

「…!?」

 

その後 作斗は駆けつけた複数の看護婦達に緊急治療室へと運ばれていった。

ーーーーーーーーー

 

 

 

何故だろう……身体中が痛い……まるで本物の刃物で切り裂かれた痛さだ…。

 

須郷の頭を車に叩きつけた後の記憶がない…。

 

俺は真っ暗の中 何も思い出せずただただ彷徨っていた。

 

死んだのか…?俺は……。

 

____と…! ___くと…!作斗!!

 

誰だ?誰かが俺を呼んでる…。

声のする方を見ると凄く明るい場所があり声はそこから聞こえてきた。

 

それにつられるように俺の脚はゆっくりとその場所へと動いた。

 

作斗…!作斗…!!

 

「あぁ……すぐ行く……」

誰の声なのか分からないが…聞いたことのあるような声だった。すると違う声も聞こえてきた。

 

作斗…! 作斗さん!

 

俺はその声が聞こえる場所へゆっくりと進んだ。すると 目の前がまた暗闇に包まれた。

 

 

 




因みに今回の作斗の顔は黒死牟だと思ってください。

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