ソードアート・オンライン 閃光の弟は鬼の剣士 修正中 作:狂骨
回復部隊を斬ったムゲンに無数の火玉が炸裂する。
「ムゲンッ!!!」
キリトは炎で包まれたその場所へ向かって叫ぶ。後ろではリーファも涙を流していた。
「そんな……」
すると相手のリーダーらしき男が再び魔法を唱え今度はキリト達へ向かって火属性呪文を放とうとした。
その時
「いてぇじゃねぇか……」
燃え盛る火の中から声が聞こえた。相手は呪文を中断するとその場へ目を向けた。見るとそこには目を血走らせ怒りの表情を浮かべたムゲンが立っていた。
ムゲンは血管が湧き立つ手で刀を握り締めるとその血眼を敵へ向ける。
「マジでぶち殺す…!」
地から響くような声と共にムゲンは刀を持つと前にいる敵目掛けて飛び出した。
「ゔぁぁぁッ!!!」
「!?」
呪文を唱えようとするが、ムゲンの怒りに満ちた表情に圧倒され上手く呂律が回らず唱える事が出来なかった。
そして、ムゲンに捕らえられた最初のプレイヤーは身体を左右に真っ二つに切断された。
「な…何だコイツ……!?」
「あ…アイツの情報だとまだ新入りだろ…!?」
作斗は刀を持ち直すとリーダー格の男へ目を向けた。
「ひ…!?じ…呪文を早く…!!「しね」
グシャァ
言い終わる前に相手のリーダー格の男の首が飛ぶ。そしてその体制から横にいる相手の胴体を右から左下に掛けて斜めに振り下ろす。
「ヒィ…!?」
2人を始末したムゲンは3人目の男へと目を向ける。その時 向こう側からキリト達が静止の声を掛けてきた。
「待ってムゲン! ソイツ生かしといて!いろいろ聞き出したいから!」
そう言われたムゲンは刀をしまう。
その後 相手から情報を聞き出すとキリトがいやらしい目でいろいろとアイテムを相手に送った。つまり交換という形で穏便に済ませた。
ーーーーーーー
「あ〜疲れた…」
その後 3人は街へと入るとベンチに座る形で休んでいた。
「いやぁ〜さっきは凄かったな」
「そうか?」
ムゲンはキリトへ目を向ける。リーファも頷く。
「というかムゲンって剣さばき上手いよね!現では何してるの?」
「剣道と陸上を少々。剣道は身体の殆どの筋肉を使うのでそれを鍛えるために陸上をしていました」
そう言い買ってきた飲み物を口にする。今は少し落ち着いており表情も穏やかさを取り戻していた。
するとリーファが一旦ログアウトするといい。電子の肉体から意識を離した。
「さぁて、少し休憩してリーファが来たらまた出発しようぜ」
「あぁ」
ムゲンは立ち上がると容器を投げ捨てる。
その数分後 突然リーファが目覚めすぐさま行かなきゃと叫ぶ。
「どうした!?」
「ごめん2人とも…私…急いで行かなきゃいけない用事ができちゃった…説明する時間もないしここにも帰ってこれないかもしれない…」
「じゃあ、移動しながら話すとするか」
「え?」
キリトはムゲンへと目を向けるムゲンはため息をつきながらも頷く。
「どっちにしても、ここからは足を使わなきゃ出ていけねぇんだろ?行くぞ」
そして3人はその場から走り街を出た。
先程の橋を走っている中 リーファは事情を伝えた。
「40分後に蝶の谷でシルフとケットシーの領主の会談が始まるの」
「成る程。1つ聞きますが…それで何のメリットが?」
「領主を撃てば情報が漏れて最悪の場合 シルフとケットシーの間で戦争。しかも領主を撃てばその領に蓄積されている資金の三割を奪う事ができるの」
そう言うとリーファは2人へ目を向ける。
「だからねキリト君 そしてムゲン。これはシルフ族の問題なのスプリガンである君や初心者である君がこれ以上付き合ってくれる理由はないわ」
「んん?それは聞き捨てならないねぇ」
そう言いキリトは立ち止まるとリーファへ目を向けた。
「俺はここまで案内してくれたし喜んで手を貸すよ。ムゲンもそうだろ?」
するとムゲンは頬をかきながら答える。ムゲンはこう見えて義理堅いのだ。恩は恩で返す。
「まぁ…そうだな。いろいろと教えてくれたから…」
「…!2人とも…ありがとう…!」
涙を流しながら礼を言うリーファにキリトは微笑むと2人の腕を掴んだ。
「ちょっと急ぐぞ」
一気に駆け出した。
「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ぶべびばばべび」
早すぎるその速度にリーファは悲鳴をあげムゲンは風圧で顔が変形していた。
周りに潜むモンスターの軍団をすり抜けながらキリト達は外へと出た。
「よっしゃ脱出!」
「死ぬかと思った……」
そして3人は羽を展開させるとすぐさま会談の場所へと急いだ。
ーーーーーー
一方 会談の場所では緊迫した空気が流れていた。
「おやおや、サラマンダーがここへ何の用だ?」
「ふん。状況を見ればわかるだろう?シルフの領主殿」
シルフの領主である和服を纏った美女プレイヤー『サクヤ』が相手へ問い掛ける。
「要するに会談を機に私達を倒そって訳ね。どうやって知ったのかしら?一般のシルフやケットシーにも伝えてないのに」
「勘というやつだよ」
ケットシーの領主である『アリシャ』は推測を立て質問をする。
状況は既に遅し 今まさに3つの勢力がぶつかろうとしていた。
その時
空から何かが飛来してきた。それは飛来すると同時に両者の間に砂煙を発生させ視界を遮った。
「双方 剣を下ろせ」
その言葉と共に砂煙がはれた。そこにはサラマンダーに向かって対峙するキリトの姿があった。
「誰だ…?あのスプリガンは…」
突然の出来事にサクヤやアリシャは理解できなかった。すると横からリーファが姿を現わす。
「どうしてここに?それに誰だ横にいるシルフは…」
「簡単には説明できないけど…私達の運命はあの人次第ってことよ…あ、因みにこの子は初心者のムゲン」
「どうも。初心者プレイヤーのムゲンです。よろしくお願いしますサクヤさん」
「あ…いやどうも初めまして…」
唐突な挨拶にサクヤは戸惑いつつも自分の名を名乗った。そうしている間に相手の大将が姿を現した。
それは巨大な体躯に強面 そしてなにより背中に背負っている異形な大剣が特徴的なプレイヤーであった。
「スプリガンが何の用だ?」
「俺の名はキリト スプリガンウンディーネ同盟の大使だ!この場を襲うからには我らスプリガンウンディーネ同盟とも決裂したという事になる。つまりサラマンダーと他の4種族同士での戦争となるぞ」
「大使?はっ。護衛1人つけていない奴が大使だと?まぁいい」
するとその男性は背中にある剣を抜く。
「俺の剣を30秒耐えたら大使として信じてやろう」
「分かった…随分な自信だな」
そう言いキリトも剣を抜く。SAO生還者でありながらも目の前の敵に少し圧倒されていた。
一方でサクヤ達は汗を流していた。
「マズイな…あの両手剣は恐らく『魔剣 グラム』…それを装備しているとなるとアイツは『ユージーン』将軍で間違いない…」
「嘘でしょ!?」
横にいるリーファは驚く。サクヤ曰く ユージーン将軍はサラマンダー領主の『モーティマー』の弟でありパワーだけならALO最強と言わしめる程の実力者だった。
すると戦いが始まったと同時にキリトが近くの岩盤へと吹き飛ばされた。
その一部始終を見ていたリーファは訳が分からなかった。
「何で!?今すり抜けてなかった!?」
「グラムにはオフェンス時に非実体化してすり抜けるエクストラ効果が付与されているんだよ」
「そんなメチャクチャな!?」
アリシャの説明にリーファは更に驚きキリトを見る。もうそろそろ30秒たつ頃だった。
その時
「遅い…もういい俺が行く」
そう言い1人のプレイヤーがリーファ達の前を通り過ぎて目の前で闘っている2人へと向かっていった。
「お…おい!初心者である君がどうこうできるようでは!「邪魔です」
サクヤが止めようと肩を掴んだがムゲンは乱暴に振り払う。そしてムゲンは目の前の2人目掛けて飛んだ。
ーーーーー
一方でキリトは今 ユージーンから距離を取っていた。
「おい!もう30秒経ったんじゃねぇか!?」
「悪いな。気が変わって斬りたくなってきた…!」
そう言いユージーンが武器を構えた時 キリトの肩を誰かが叩く。
「どけ。俺がやる」
「はぁ!?いや、アイツメチャクチャ強いぞ!?今のお前でもさすがに無理があるって!」
キリトがそう言い拒否した瞬間 ムゲンの目が変わった。
「“どけ”」
ただ発せられたその言葉にはとてつもない威圧感が込められていた。キリトは分かったと言い譲る。
「何だ?選手交代か?ま、別にいいがな。今度の相手はシルフか」
そう言いユージーンは武器を構える。その時 ムゲンの両手に赤い血管が湧きだった。
「どいつもコイツも……そんなに俺の邪魔が楽しいか…?そこまでして邪魔したいのか…?」
ムゲンの顔にはいつもの面影は無かった。ユージーンは一瞬 身体を震わした。
今まで見たことも無いような血走った目そして顔中に首から湧きだつ筋 そして感じたことも無いような殺気 目の前にいるのは本当にシルフなのかと思う程であった。
ムゲンは多大なるサラマンダーの妨害に値する行為に激怒していた。ムゲンは血走らせた目を見せると地の底から響くような声で言った。
「お前ら全員…ただじゃ済まさねェゾ…!!」
「面白い。ではいくぞ!」
ユージーンは剣を構えて振り下ろした。だがその振りをムゲンは躱す。
それで終わる訳ではなくユージーンは何回もムゲンに向かって剣を振るった。
だが、全て躱されていた。
「なぜだ…なぜ当たらん…!」
ユージーンはイラつき始め振る度に少しずつボロが現れ始めた。
するとムゲンは刀の柄に手をかけた。
「さっきから見てれば…随分とバカにしてるな…そんなハエが止まるような速度で俺を倒せるとでも…?ハッ!最強と呼ばれてるわりには大したことないんだなァ!」
「黙れ!」
ユージーンは更に剣を振るう。だがそれも避けられる。
「防御した際にすり抜けるといったがそんなものただ剣で受け止めず体で避ければいいだけの話だ。お前のようなワンパターンのような動きは今まで目が腐るほど見てきたよ」
「ほざけッ!!」
そう言い立て続けに放たれる振りを全て躱す。作斗にとって、ユージーンの動きは素人同然なので避けるのは容易い事だった。
ーーーーーー
一方で初めて見るムゲンの戦闘にサクヤ達は目を丸くしていた。
「すごい…あのムゲンという少年は何者なんだ?ユージーンの剣を全て避けている…」
「ほ…本当に初心者なの!?いくらなんでもルーキーの動きじゃないよ!?」
「私も驚いてるわよ…回廊の時なんか比べものになんない…それにムゲンの顔……」
リーファや周りの皆はもちろん 先程の表情の面影がどこにもない怒りに満ちた表情を見て汗を流していた。
「凄く…怒ってる……」
「あんな表情…今まで見たことねぇな…」
この場にいる誰よりもムゲンと付き合いが長いキリトでさえも彼の表情に驚きを隠せなかった。
特にキリトが驚いている点は適応能力だった。キリトはSAOで複雑な動きへ対しての感覚などを身につけているが、ALOの飛行には未だに慣れていない。だというのに、VRMMOは今回が初めて かつ飛行経験が少ないであろうムゲンがあそこまで華麗な動きをしている事に驚きを隠せなかった。
ーーーーーー
「はぁッ!」
ヒュン
ユージーンの力のこもった一撃をムゲンはやはり容易く避けた。ユージーンはスタミナを消費したのか少量の汗を流していた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「どうした?もう終わりか…?」
「貴様…先程から避けてばかり…つまらん!つまらなすぎるぞ!お前も剣を振ったらどうなんだッ!」
ユージーンは避けてばかりでいるムゲンに対し怒りをぶつけた。だが、その言葉によってムゲンの今まで溜まっていた怒りがドス黒い感情と共に爆発した。
ピキ
「つまらない……だと…?」
その瞬間 目がもう人間ではない程 血走ると同時に首だけでなく顔の周りから筋が隆起した。
そして、
「ふざけてんじゃねぇぞッ!!!!」
その場にいる皆が驚く程の怒声を上げた。
「俺は大事な用事があるっつうのに…テメェらときたら行く先々で悉く邪魔ばかりしやがって……うぜぇ…本当にうぜぇ…。目障りなんだよッ!!ワザワザお前のチャンバラごっこにも付き合ってやってんのにつまらない?ハッ!笑えねぇなッ!!俺はこんな茶番に付き合ってる暇なんざねぇんだよッ!!」
腹の底から吐き出されるような怒声と罵声。口調が完全に変わっていた。キリト達にとってはまるで別人のような感覚であった。だが、目の前にいるのはいつものムゲンであるがもう声を掛けても止まらない程にまで怒りが溜まった誰にも手がつけられない状態であった。恐らく キリトやリーファが止めようとしても容赦なく攻撃してくるだろう。
すると、ムゲンの怒りに後ろにいるサラマンダー達が次々と反論し始めた。
「お…俺たちは『アルフ』に転生したいが為にやってるんだぞ!?」
「そうだ!それが醍醐味だろ!?」
「そんな事も理解できねぇのかよ!?」
ユージーンの後方から大量の反論の声がムゲンへ降りかかってきた。
“なんだ…俺は…そんなくだらない理由で妨害されていたのか…”
その瞬間
ムゲンの顔から何もかもが消え去った。
だが、一つ残った感情がある。
それは …『目の前にいる相手全員を確実に葬る』という怒りの感情だった。
「くだらねぇ。もういい。お前らを全力で斬り刻む…!!」
ムゲンはもう止まらない。目の前の自分にとって障害物であるユージーン、そして烏合の衆であるサラマンダーの団体全員を完膚無きまでに叩き潰すまでは。
ユージーンは先程とは全く雰囲気が変わった事に驚き、その薄気味悪さに冷や汗を流していた。
「二度と邪魔できない様に…してやるよ…!トカゲがぁ…!!」
ムゲンは今まで納刀していた刀を抜いた。
刀身が柄が擦れ合う音とともにその姿を露わにした。
現れたのは 血のようにドス黒い色の刀身だった。
ムゲンはその刀身をもつ刀をこびりついた汚れを落とすように縦に払うと、その刀をまるでペン回しをするかのように軽く指先で回すとその切先を向けた。
「“消えろ”」
「!?」
そう言い放った瞬間。ムゲンはその場から一気に飛び立ち、殺意が込められた一振りをユージーンに向かって放つ。だがユージーンはそれを間一髪で受け止めた。
「は!惜しかったな!」
ユージーンは受け止めた事により微量な勝機を確認した。だが、次の瞬間 恐ろしい斬撃の嵐がユージーンを襲った。
「ぬぉ…!?」
その斬撃は吹き荒れる嵐のように次々とユージーンの剣へと襲いかかってきた。
何とか攻撃に移ろうとするも、その隙は無い。攻撃に移ろうとした瞬間、その斬撃が襲い掛かってくるからだ。
「(な…何だこの動きは…!?コイツ…初心者じゃねぇのか!?だとしたらこの剣捌き…リアルでも刀を握っていた事になるじゃねぇか!?)」
荒れ狂う斬撃を受けたユージーンは推測を立てながらも防御していた。
ガンッ!
「うぅ!?」
そして、最後の一振りでユージーンは大きく後退されるも何とか斬撃の嵐を防いだ。
「つ…強いな…お前。現実でも刀を扱っているのか?」
その質問にムゲンは答える様子は見せなかった。それどころか、次の攻撃へと移ろうとしていた。
「テメェに教える義理はねぇ」
「!?」
あれ程の動きをしたというのに、未だ疲れを見せてはいない様子にユージーンは驚く。
そして、その言葉と共に新しい一撃が放たれた。
「ぐぅ!?」
ユージーンはすぐさまガードをする。またあの斬撃の嵐が来るのか?そう思い防御体制を取る。
だが、これが命取りとなった。
「ガハァッ!?」
ユージーンの右胴体が貫かれた。フェイント。いや、先程の攻撃ではないものがくるのは気付いていた。
だから剣を振ろうとした。だが、それよりも早くムゲンはユージーンの身体へと攻撃をあてたのだ。
つまり、ムゲンはユージーンの反応速度を上回る程のスピードで剣を振り回したということだ。
「ぬんッ!!」
一撃を見舞われたとしても、ユージーンは怯まなかった。咄嗟に剣を水平に振る。だが、それをムゲンは状態を後ろにそらし、まるでバク宙するかのような動きで避けた。
「うぉおおお!!」
ユージーンは離れたムゲンへ向け 雄叫びを上げながら剣を振るう。それも右肩から入るようにだ。これだと流石に避けるのは難しくなる。だが、こんな技など、ムゲンにとってはただの子犬だ。
「ゴォォォォ…」
嵐のような呼吸音と共に、ゆっくりと肺に酸素を溜め込むと呼吸を止め腕に筋肉を集中させた。
その瞬間
ガンッ!
「なに!?」
ユージーンの持つグラムが弾かれた。これは予想外の展開だ。グラムは本来 剣をすり抜ける効果を持つ。これはシステムであるので必ず起こる事だ。だが弾かれた。周りから見ている者達は目をまさぐっていた。
ーーーーーー
「な…何が起きたんだ!?グラムが弾かれたぞ!?」
「もしかして…バグ!?」
もちろん 大抵の人は皆 バグだと思うだろう。だが、そんな中でSAO生還者のキリトと、速さで動体視力が高いリーファは一瞬だが見えていたのだ。
「サクヤ…これはバグなんかじゃない…ムゲンは…グラムに二回触れたんだ…!」
「ど…どういう事だ!?」
「一瞬だけだけど…ムゲンの刀が突然 グラムに触れてすり抜けたの…けど…ムゲンはその体制のまま…一気にまたグラムへ向かって剣を振った…」
「なんだって!?あの距離で剣が届く前に2回も触れるなんて…どれだけの早業が必要だと思っているんだ!?」
皆も信じられないようだが、現にその現象は目の前で起きているのだ。信じるしかないだろう。
確かにグラムは連続ですり抜ける事はない。だからと言って2回もグラムへ刀身を当てる事を考える者はまずいないだろう。ましてや相手が攻撃してくる時に。
皆の目は再び二人へと向いた。
ーーーーーーー
「…!」
ユージーンは戦慄していた。目の前の敵は確実に自分の何倍も強い。ただでさえ攻撃力が高いグラムの剣をいとも簡単に躱した上に 相手の剣をすり抜ける反則級の効果を持つ透過でさえ、通じない。『化け物』だ。コイツには確実に勝てない。
ユージーンの戦意がほぼ落ちてきていた。
だが、それでも相手はまだまだ余裕だった。
「もうそろそろ終わりにするか…お前にはもう飽きた」
刀をまたもやペンのように振り回すとムゲンは刀を鞘へと戻す。
そして
「…!」
「グァァァァァァァッ!!!!」
ムゲンの目が太陽に照らされ光ると同時に 気づけばユージーンの手足の指そして手首足首が全て切り刻まれていた。
見ると作斗は状態を比較しながら刀をまるで抜刀するかのような姿勢を取っていた。
「“終わり”だ…!」
「ぐぁぁぁ!!!!」
ドォンッ!!
その一言と共にムゲンは全身の筋肉を集中させた一閃を放つ。身体を真っ二つにされたユージーンは炎となりリタイアとなった。
「ま…まじかよ…将軍が…」
ALO最強とされる将軍が撃破された事により、サラマンダー達は冷や汗を流した。すると、 ユージーンを葬ったムゲンの血眼が残りのサラマンダー達を捉えた。
「さて…次はテメェらの番だ…!1人100回斬り刻むまで現実に返サねェゾ…?」
「ヒィ!?」
「な…なんだコイツ…目が人間じゃねぇ…!?」
その目を見たサラマンダー達は怯えの声をだす。確実に人間の目ではない。
例えるなら“鬼”だ。
ムゲンは殺意を解くつもりなく。それどころか更に濃い殺気を湧き上がらせた。
そして刀に筋肉を集中させるとサラマンダー達に向かおうとした。
すると、誰かがムゲンの肩に手を置いた。
「やめろ。もう目的は達成したろ?」
「あ…?」
見ると、キリトがいた。だが、ムゲンは手を退けると首筋へ刀を突きつけた。
「邪魔をするな。お前から殺すゾ?」
「これ以上やるとガチで戦争になっちまうからやめとけ」
「……ッ…」
流石にこれ以上相手側を殺すとなると本当に戦争となり兼ねない。まずいと思ったのか舌打ちをするも怒りを解きいつもの表情へと戻った。
「ふん。感謝しろよお前ら。次くだらねぇ真似してきたら殺すからな…?」
ムゲンの獣のような鋭い目にサラマンダーの誰もが反論できなかった。
その気になれば…自分達なぞいつでも葬れるという事を悟ったのだ。
ーーーーーーー
「これでユージーンは元に戻るはずだ」
そう言いサクヤは目の前にあるユージーンの炎に復活する薬を投与した。すると炎が一瞬光ると同時にユージーンは復活した。
「俺は負けたか。約束は約束だ。お前を大使である事を領主に伝えておく」
「おぅ」
「その前にいいか?」
そう言いキリトへ面を向ける。キリトは頷く。するとリーファに抱き抱えられ着地してきたムゲンは刀をしまうとユージーンへと歩み寄ると忠告した。
「モーティマーとかいう領主であるお前の兄に伝えとけ。次邪魔したら殺すってな。勿論お前もだ」
「き…肝に命じておく…だが、お前とはまた闘いたいものだ」
「俺の目的が果たされたならいつでも。現実でもいいがな」
「フッそれもいいかもな。さらばだ」
そう言うとユージーンは部下を引き連れ領地へと引き返していった。
サラマンダー達の姿が見えなくなるとサクヤ達はキリトへと礼を述べた。ムゲンにも礼を述べようとしたが先程の言動に一同は沈黙していた。
するとムゲンは振り返りリーファへと話しかける。
「リーファさん。世界樹というのは先程見えたあれですか?」
「え…うん…」
リーファは頷く。するとムゲンは何も言わずに羽を展開するとその場から飛び去っていった。
その姿を誰も追う事はなかった。
その後 奇襲を仕掛けてきた犯人が『シグルド』であることをリーファから明かされサクヤによってシグルドは追放となった。