ソードアート・オンライン 閃光の弟は鬼の剣士 修正中 作:狂骨
何故だか分からない。
アイツといるとあの日の自分を思い返してしまう。
作斗は帰りのバス停で雪が降る中 直葉の顔を思い浮かべていた。同じ剣道をやっているのが原因なのか忌々しいあの日の出来事が頭に入ってきた。
“お前の所為だ!”
“お前が俺たちの剣道を汚した!”
“お前なんかさっさと退学しちまえ!”
脳内に響き渡るあの日の声。それを思い出すだけで少量の涙が流れてきた。
“大丈夫だよ。作斗は何も悪くない”
それと同時に、あの日 自分が涙を流した時 明日奈が掛けてくれた暖かい言葉が頭の中を駆け巡った。それと同時に恨みの声が掻き消されすこしだが頭の中がスッキリした。そして作斗は姉に今すぐ会いたい 話したいという欲が再び芽生え始めた。
「予定変更だ」
そう言い突然作斗は携帯を取り出すと母親へ連絡した。コール音が数回鳴るとガチャリと音が鳴った。
『あら、作斗じゃない。どうしたの?』
「母さん…今日だけでいいから病院で明日奈と一緒にいてもいいかな…」
『……いいわ。今回だけよ。病院の人に迷惑はかけないようにね』
母親から許可が下りると同時に作斗は病院に戻り和人や直葉に遭遇しないように遠回りだが明日奈の部屋へと向かった。
「…もういないな」
和人達がいない事を確認した作斗はカバンからアミュスフィアを取り出した。母親には内緒で勝ったので電源を落とした場合はずっとカバンの中にしまってあるのだ。
「あとは看護婦さんに許可を取るだけだな。明日奈、今日中にお前を絶対助けてやるからな」
そう言い作斗は未だ目を覚まさない明日奈へ顔を向ける。
その後 特別な許可を得た作斗は明日奈の病室の壁に寄りかかるとコンセントをさしアミュスフィアを起動させた。
「リンクスタート」
ーーーーーー
「……よし。早く行くか」
作斗ことムゲンは宿から出るとアルンの街へと出た。
「(どうするか…上には行ってみたものの…何か必要な道具でもあるのか…?」
作斗はどうすればあの壁を突破できるのか考えていた。ガーディアンは何とかなる。だが、あの白い壁の向こう側に行かなければどうにもならない。ここまでの出来事に作斗はまずこのゲームはクリア不能として作られている事 を予想した。
「おーい!ムゲン!」
「ん?」
すると後方から自分の名を呼ぶ声が聞こえた。振り向くとキリトとリーファが手を振りながらこちらへ歩いてきた。
「何だお前らか」
「ったく。いきなり一人で行くなって」
「すまん。それより…キリト。壁を突破するにはどうすればいい?」
「壁…?何だそれ?」
「それがな…」
ムゲンはこれまでの経緯を話した。グランドクエストでてっぺんまで辿り着いたのは良かったのだがそこからが行き止まりだということを告げどうすればいいか聞いた。
するとリーファがプルプル震えすぐさまムゲンの肩を掴み顔を近づけた。
「うそ!?グランドクエスト突破したの!?ソロで!?どうやって!?」
リーファが肩を揺らしながら言うとムゲンはアウアウしながら「落ち着いてください」と言った。
「突破した訳ではありません。ただガーディアンの大群を抜いててっぺんまできたら壁だったんです。ですので突破までには行き届いていません」
「そうか…どうすればいいんだ…」
その時
「ママです…ママがいます…!」
キリトの胸ポケットから顔を出したユイが世界樹の上を見ながら呟いた。
「本当か!?」
「はい!このプレイヤーIDはママのものです!座標はまっすぐこの上空です!」
キリトはユイが指差す方向を見ると歯を噛み締め羽を展開させるとすぐさまその場に目掛けて飛び上がった。
「ちょ!?キリトくん!」
「…」
「ムゲンまで!?」
キリトが飛び去ったと同時にムゲンも羽を展開させ跡を追った。
ーーーーーー
一方で先に飛んだキリトは世界樹のてっぺんを目指していた。
雲を突き抜けると巨大な葉が生い茂る世界樹の頂上が見え始めキリトはあと少しと言いその場へ向かった。
その時
ギィイイインッ!
目の前の空間が歪むと同時にキリトの体が弾かれた。つまりこの先は侵入が不可能という事だった。
だが止める事なくキリトは何度もその場へ体当たりを繰り返した。
何度も何度も
その時
「キリト君!そこから先はいけないんだよ!」
そう叫び跡を追ってきたリーファがキリトの腕を掴み制止を呼びかけた。
「く……」
だがキリトは止めようとはせずまた体当たりを繰り出そうとした。
「ヴォオオオオオ!!!!」
ムゲンも雄叫びをあげると何度も何度も拳や蹴りを壁に目掛けて繰り出していた。
だが、いくらやっても目の前の壁が壊れる事は無かった。
「ムゲンもやめて!いくらやっても無理だよ!」
「ッ…」
ムゲンは舌打ちをするとラッシュを中止し下がる。
そんな中 ユイはその壁へと手を当て頂上に目掛けて叫んだ。
「ママ…私です…気付いてください…ママぁぁ!!!!」
ーーーーーーー
その声がすると同時に 世界樹の鳥籠に囚われていたアスナは突然響いた声に目を覚まし眠っていた身体を起こすとすぐさま籠の間から雲海を見た。
「今の声…ユイちゃん…」
アスナは何度も響く声を頼りに辺りを見回し声の主であるユイを探した。
「私は…私はここにいるよ!」
アスナは雲海の下へ自分がここにいることを念じ叫んだ。だが返事は返ってこなかった。
「…そうだ!何か落とすものがあれば!」
アスナは自分がここにいることを教えるため何か落とすものはないかと辺りを見回した。
「あった…!」
アスナは隅に落ちていたカードキーらしきものを拾うと籠の隙間から雲海の下目掛けて投げた。
「お願い…気付いて…!」
ーーーーーーー
そして下ではキリトは何度もその壁へ攻撃を繰り返していた。
「くそ…何なんだよこの壁は!」
「私も…警告モードで呼びかけてみたのですが…返事がありませんでした…」
「うぅ…」
キリトは攻撃をやめ世界樹の頂上を見上げた。
その時
木々の間から何かが太陽に照らされ光りながら落ちてきた。
その落ちてきたものをキリトは受け止めると見た。
「これは…」
落ちてきたものはどこでもある一般のカードキーだった。
「何だこのカード…リーファ、何だか分かるか?」
「いや…そんなアイテム見たことないよ」
リーファも知らないとなるとキリトには何も分からない。キリトはそのカードキーをタップしてみたが画面が表示されず何も起きる事は無かった。
するとユイがカードを掴むと同時に目を大きく見開く。
「これは!システム管理用のアクセスコードです…!」
「てことは!これがあればGM権限が行使できるのか!?」
「いいえ…ゲーム内からシステムへアクセスするには…対応するコンソールが必要です…私にもシステムメニューは呼び出せないです」
「そうか…でも、何の前振りもなくこのカードが落ちるわけないもんな…」
「はい!恐らくですが…ママが私達に気付いて落としたんだよ思います!」
「気付いてはくれたが…どうすれば……」
キリトはどうすればいいのか分からず歯を噛み締めた。
その時 ムゲンが二人の間に入り謎のカードへ目を向けた。
「……行くぞキリト」
「どこにだ…?」
「グランドクエストだ。そのカードなら使えるかもな」
「何で分かるんだ…?」
キリトは落ち込みながらもムゲンに問う。
「さっき俺が話しただろ。グランドクエストとやらのてっぺんまで行った時に白い壁があったって。もしかしてそのカードキーがキーアイテムじゃないのか?」
「……そうか…?……いや、そうかもしれない!ムゲン!案内してくれ!」
「あぁ」
キリトは表情を一変させるとカードをしまいムゲンと共にすぐさま地上へと戻った。
ーーーーーー
地上へと戻ったキリトはムゲンの案内の元 グランドクエストの入り口である世界樹の根元へと辿り着いた。
着いた二人は門へと近づくとウィンドウ画面が表示される。
『グランドクエスト〈〈世界樹の守護者〉〉へ挑戦しますか?』
キリトとムゲンは何の迷いもなく『YES』を選ぶ。
「言っておくが…ガーディアンの数は尋常じゃない。倒すんじゃなく突破する事だけを考えろ」
「あぁ」
ムゲンの忠告にキリトは頷くと二人は開いた門から中へと進む。
ーーーーーーーーー
目の前は真っ暗だった。
その中を二人の足音が響く。
「取り敢えず助ける事出来ねぇから囲まれたら自分で何とかしろよ」
「あいよ」
すると辺りに光が差し内部が明らかとなった。そこは広場のように広く周りには無数の鏡がはられていた。そして上を見上げると天井のような壁が見えた。
ムゲンは天井を指差すとキリトへ伝えた。
「あそこだ。そのカードを使えばあそこを突破出来るかもしれねぇ。まぁ予想だがな」
「了解。行こうぜ!アスナに逢いに!」
「鼻からそのつもりさ…!」
二人は同時に飛び上がった。
その瞬間 目の前に広がる無数の鏡のうち 数十枚が光り出しそこから巨大なガーディアンが姿を現した。
「 邪魔だぁぁぁぁー!!!」
キリトは叫びながらそのうちの一体へ剣を振るい首を斬り飛ばし瞬殺した。
「ハッ!ストレス発散には丁度いい…!!」
ムゲンは得意の抜刀術で自分の目の前にいるガーディアン4体を一網打尽にした。
だが相手は待つ事なく次々と現れて始めた。気づけば天井が見えない程にまで上空が敵に覆い尽くされていた。
「ッチ…敵がもうあんなに…行くしかねぇ!」
キリトは飛び上がるとガーディアンの軍隊目掛けて突進した。
その時 キリトは動きを止めた。
ガーディアンの群れが一斉に槍をこちらに目掛けて投げてきたからだ。無数の槍がキリトに目掛けて放たれ避けようしたものの避けきれぬ数だった。
「うぐ……ヤバイどうすれば…」
その時
「退けッ!!」
誰かが目の前に現れ自分を下へと突き飛ばした。
「…!ムゲン!」
自分を突き飛ばしたのはムゲンだった。そして放たれた大量の槍は全てムゲンへと流れていった。
「ヴォオオオオオ!!!!!!!!!」
ムゲンは雄叫びを上げ刀を抜くと迫り来る槍目掛けて刀を振るった。
刀は赤い線を生み出し美しい弧を描きながら次々と槍を弾いていった。
だが
「うぐ…!」
流石のムゲンでもこの量は捌ききれず攻撃の雨が止んだ頃には体力の9割を持っていかれた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
ムゲンゲームで一度も感じた事がない『疲れ』に襲われた。それはムゲンの身体を次々と蝕み機能を低下させていった。
気づけば目はもう閉じかけ向かってくるガーディアンの姿は捉えることはできなかった。
そして数人のガーディアンの槍がムゲンの身体を貫いた。
「ムゲェェェェンッ!!!!!」