ありえたかもしれないもう一つの擬史〜GOD EATER〜   作:ミスターX

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遅かったじゃないか………


フルトン

 振り向くと神機を構えた集団が居た。ジョニーは内心毒づいた。その顔ぶれは第一部隊の隊員たちだった。まんまと嵌められたのだ。

 

 観念して両手を上げ降伏の意を示した。と、ひそひそと話し声がした。常人なら聞き逃す音量だが、ジョニーは聞き取れる。

 

 ジョニーの祖父はある作戦によってソルジャー遺伝子という戦闘に最も特化した遺伝子を導入されていた。個人差はあるが、その遺伝子により通常の兵士より視覚と聴覚が優れている。

 

 しかし、遺伝子はそのままの形で受け継がれるわけではない。子孫であるジョニーが受け継いだソルジャー遺伝子は祖父と比べれば残りカスのようなものだ。それでもジョニーの視覚と聴覚は優れていた。

 

「意外と普通の人…ですね」

「結構歳いってるんだな。30くらいか?」

「まさか、こんなやつが……」

 

 随分な言われようだ。

 視線が途切れた一瞬のうちにジョニーは目の前の銃身を思い切りナイフで叩きつけた。銃口が少し逸れるが、ナイフの片刃が潰れて腕が痺れた。細腕の女だというのに、どんな腕力をしているんだ!?

 

 姿勢を崩した女を引き寄せて首元にナイフを当てた。92Fをそいつの肩越しに構えて男の頭に命中させた。倒れる男を見て巨大な剣を構えた色黒の男が迫った。目を血走らせて迫るそいつに女を突き飛ばして、受け止めた隙に麻酔弾を撃ち込んで沈黙させる。

 

 床に崩れ落ちるサクヤとソーマの背後から、もう1人の男が飛びかかってきた。

 

「博士! 2人は大丈夫なんですか!?」

 

 ジョニーに馬乗りになって拘束しながら、神薙ユウは叫んだ。一切力を緩めることなく目の前の下手人を睨みつけながら返答を待った。

 

「眠っているね…どうやら麻酔銃だ……」

 

 サカキ博士の言葉にホッとするユウだったが、その緩和した瞬間をジョニーは逃さなかった。

 

 ゴッドイーターはアラガミとずっと戦い続けているわけじゃない。人間である限り疲れは溜まっていく。だが、アラガミは休息を許してくれない。

 その場を離脱して体制を整える為に考案されたのがスタングレネードだった。改良され威力を抑えて瞬時に使えるそれはゴッドイーターにとって必需品だ。

 

 対してジョニーの装備は対アラガミではなく対人のものが殆どだった。スタングレネードも例外じゃない。

 床に転がったスチール缶のような見た目のそれは、ユウにとっては初めて見るものだった。

 

 防御が間に合わず、グレネードが爆発して強烈な閃光と音を発生させた。目を閉じているにも関わらずまぶたの上から焼かれるような強い光とつんざく音は拘束を無理やり解かせた。

 

 耳は聞こえない。目も閉じて何も見えない。ジョニーはこの部屋の間取りを頭に浮かべ、自分の空間把握能力のみを信じて駆け出した。

 

 無線が繋がりオタコンの焦る声がした。

 

〈ジョニー! すぐにそこから離れるんだッ!〉

「嵌められた…罠だった。くそっ! オタコン、今からヘリポートに向かう。回収してくれ」

〈回収って…まさか!〉

「これが罠なら、陸路で突破は無理だ。頼んだぞ!」

 

 視界は少しぼやけていた。エレベーターに到着しボタンを押すが、やはり動かない。エレベーターは止められていた。

 非常階段を駆け上がり、最上部の扉にたどり着く頃には警報が鳴っていた。強行突破するしかない。

 

 非常口をわざと音を立てて開けた。その場にいた何人かと目が合った瞬間、時間が伸ばされたようにゆっくりに感じる。

 精神を集中させて麻酔銃の照準を合わせた。腕輪をしているのは三名いた。

 

 1人目、頭に命中した。

 

 2人目も頭に命中した。

 

 3人目は体制を低くされてかわされた。

 

 時間の流れが元に戻る前にジョニーは駆け出した。強烈な右ストレートがゴッドイーターの意識を奪う。

 

「そこまでだ!」

 

 後ろだ。振り向くと、先ほどのゴッドイーターたちが、神機を構えていた。エレベーターで上がってきたのだろう。持っているのは剣、剣、銃。

 くそっ、銃形態の神機では撃ち落とされるかもしれん。一か八か、ジョニーは銃形態の神機を装備するゴッドイーターに向かって言った。

 

「人に銃を向けるのは初めてか? 銃口が震えているぞ」

「バカにしやがって…! こちとら覚悟はできてるよ!」

「コウタっ! 挑発に乗るな!」

 

 勘付いたユウが諌めようとするが、その声に被せて更に大きな声で煽る。

 

「嘘をつくなッ! 視線が定まらず自信が感じられない目つき、新兵特有の目だ」

「言ってるだろ、覚悟は決めてきてるんだよ!」

「セーフティーがかかってるぞ、ルーキー(新米)

 

 銃口が大きく外れ、コウタが挑発に乗って声を上げようとした。

 

 ここだ!

 

 スイッチを入れ、一瞬にして風船が膨らんだ。内臓が揺らされるような気持ち悪さを感じながら、ゴッドイーターたちを見下ろす。巨大な風船に吊り上げられるという突然の出来事に皆あっけにとられていた。

 

 いちはやく我に返ったユウが、神機を銃形態にして撃つが一手遅かった。

 

 とんでもない勢いでジョニーは上空へと消えていってしまった。

 

「まさか空へ逃げるなんてね……」

 

 サカキ博士がつり目を見開いて感心するように言った言葉は、ジョニーの消えたはるか空へととけていった。


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