転生したらゾンビだった件   作:らのあ

4 / 5
第2章 授けたもの、手に入れたもの

「ぎゃあああああああああ!!!!!!」

 

「ちょ!とめて!!!ぶつかるって!!!ああああああああああぁぁぁ!!!!!!」

 

「ガハハハハハ!!!気持ち良いだろう!!!レミアよ!」

 

やあ!俺の名前はレミア!今俺は友達でドラゴンのレジーナさんの背中に乗って超高速で、なおかつ全裸で木々の隙間を縫うように飛び回っている

 

なぜこんなことになっているのかと言うと

 

 

*

 

 

「レジーナ、少し相談なんだけど、いいかな?」

 

「ふむ、言ってみるが良い」

 

「ちょっとこの森から出られなくてさ…、レジーナさんの力で1度空を飛んで抜けたいんだけど…」

 

既に何日も歩き続けて、その上まだ出られる気配のないこの森を抜けるチャンスがようやく訪れたのだ、縋らない理由はない!それにレジーナならこの辺りの地理も把握しているだろうし

 

「なに、その程度のことか、ガハハハハ!容易いことよ!我が背に乗るが良い、レミアよ!」

 

さすがレジーナさん!あの速度で飛んでいけばあっという間に森を抜けられるだろう

 

「ありがとう…。本当にありがとう…。俺、このまま永遠に森をさまよい続けることになるかと…」

 

そうしてレジーナさんの背中に乗せてもらい

 

「しかし、初めて背に乗せる者が全裸というのも格好がつかんな…」

 

「それはほんとごめん…」

 

森を抜けたら衣服をどうにかしないとな…。そんなことを思いながら

 

「よし、ではゆくぞレミア!しっかりつかまるのだ!」

 

レジーナは、そう言葉を発すると同時に、巨大な翼を羽ばたかせ、大空へ___

 

「うわぁぁぁぁぁ!!!」

 

「ぬおぉぉぉぉぉ!!!」

 

飛び立つことは出来なかった。

 

「ちょ!レジーナ!なんで落ちるんだよ!」

 

そうレジーナに問うと、少し考えた後

 

「ガハハハハハ!どうやら何者かによってこの森の中に閉じこめられてしまったようだな!」

 

と答えてくれた。って閉じこめられた?マジで?

 

「閉じこめられたってどういうことなんだ?」

 

「なに、簡単なことよ、この森のどこかを中心に結界が張られているのだ、どうやら結界に触れると強制的に方向転換させられてしまうようだな、しかし我の『魔力感知』で認識できない結界を張るとは、困ったものだ!ガハハハハハ!」

 

いやいや、笑い事じゃないんだけど、しかしどういうことだ?どのタイミングで結界を…?まさか初めから…

 

《警告。エクストラスキル『超感覚』の一部能力が一時的に使用不可になります。》

 

っとぉ!これはやばいんじゃないか!?『勉学者』先生、一部能力とは…?

 

《解。広域俯瞰能力が使用不能になっています。》

 

ふむ、それだけならまだマシか…。おそらくある程度の高さから結界に邪魔されて広域俯瞰が出来ないんだろうな、自分の体を中心とした各五感強化は問題なく使えそうだ、しかし参ったな、やっとこの森から出られると思ったのに…、とにかく、結界とやらをどうにかしないとダメなようだ…

 

「えーっと、その結界を解除するにはどうすればいいんだ?」

 

だいたい予測はついてるけど聞いてみよう…

 

「結界を発生させている者を見つけて結界を解除させればよい、簡単な話よ」

 

《解。結界を発生させている術者を行動不能にする、もしくは能力を解除させることで結界は消失します》

 

ふむ、だいたい同じような回答だな…。『勉学者』先生の方は実力行使も提案してくれたけど、これは状況次第として…

 

「なら術者を見つけに行こうか、話せばどうにかなるかもしれないし」

 

一応『勉学者』に術者の位置を捕捉できるか聞いてみて…

 

《解。随所に結界が展開されているため広域での捕捉は不可能です》

 

ですよねー、だがやはりそうか、結界は上空だけじゃなく森の中の至る所に展開されてるみたいだしな。さっきから視覚強化で遠距離を見てみようとすると、鏡に反射するように見ている方向が変化してしまっている。まるで鏡に囲まれた迷路…。厄介だなぁ…と思った

 

「レジーナ、結界が上だけじゃなくて周りにもあるのに気づいてるか?」

 

一応レジーナにも伝えておこう

 

「うむ、まるで鏡に囲まれてるような状況だな、試しに攻撃してみるか?おそらく跳ね返ってくるだろうが」

 

ガハハハハハ、と笑っているが、割と困った状況らしい、そうだよな、反射だもんな…。反射…反射………。うーん、思考加速して反射してる場所を判別してそれを避けるように歩いていけばなんとかなるかな…、面倒だけど

 

《結界を視認可能にしますか? YES/NO》

 

うっそまじで?!YES!でもどうやって?

 

《解。視覚強化にて反射している位置を認識しユニークスキル『勉学者』が自動的に位置の計算を行います。情報は脳内でのみ表示することが可能になります》

 

なるほど、優秀すぎるぞ…、『勉学者』先生…!。ほどなくして言葉の通り結界の位置が一目でわかるようになった。どういう原理か分からないが結界らしいそれに色がついているのだ、いや、おそらく脳内で情報を書き換えて視覚情報として処理できるように先生がうまいことやってくれてるんだろう。完全に理解なんかできないし、『勉学者』大先生にお任せすることにした。

 

「とりあえず結界の位置は分かるようになったからそれを避けるように移動しようか」

 

レジーナには口頭で説明しながらゆっくり歩いていけばいいだろう…。そう思っていたのだが

 

「なに、本当か?やるではないかレミアよ、しかし説明しながらというのも時間がかかってしまうな、レミアよ、『思念伝達』は使えるか?」

 

『思念伝達』?なんだそれ

 

「なんだよその、『思念伝達』ってのは」

 

(こういうものだ)

 

「うわっ!!!?」

 

《告。個体名『レジーナ』の行動を解析……成功しました。スキル『思念伝達』を獲得しました》

 

突如レジーナさんの声が頭に響いたと思ったら次の瞬間にはスキルを獲得していた。何を言っているかわからねーと思うが俺もわからん。『勉学者』先生まじチートです…。しかしレジーナめ…、驚かされた仕返しに思念伝達で返事してやろうか

 

(なるほどこういうものか)

 

するとレジーナさんはそのおっかない目をまん丸にしていた。どうやらかなり驚いたらしい

 

「さすがは我の見込んだ者よ!!たった一度の念話にてスキルを物にするとは!!」

 

おーおー喜んでらっしゃる…。まあ当然だ、なんたって俺には『勉学者』大先生がついてるからな

 

「でも、念話ができるようになったからって、普通に言葉を交わすのと差があるのか?」

 

この程度なら口で説明するのと大差ないとおもうんだが…

 

「うむ、これは文字通り『思念伝達』なのだ。お前の見えている光景を思念として我に見せてくれれば説明など不要であろう?」

 

ほう、そんなことも出来るのか…、まあ使い方とかよくわかんないし《勉学者》先生。よろしくお願いします

 

《了。視覚情報を個体名『レジーナ』と『思念伝達』にて共有します。》

 

いやぁ、先生が優秀すぎてやばいなぁこれ…

 

「うむ、これで我にも結界が見えるぞ、しかしレミアよ、便利な能力を持っているのだな」

 

「まあね!」

 

さて、と。レジーナさんも結界が見えるようになったし、

 

「レジーナ、この結界を避けるように低空飛行できるかな?」

 

森の中をくまなく探す為にもレジーナさんに乗せてもらおう

 

「容易いことよ!さあもう一度我の背に乗るがいい!」

 

そうして再びレジーナの背中に乗り、レジーナの尋常ではない速度にビビり倒して今に至る

 

*

 

「レジーナ!ストップ!!ストーーップ!!!!」

 

あかん、死んでまう、いや死んでも蘇るけどそういう問題じゃない。甘かった。ジェットコースターとかとはわけが違う。そもそも200kmくらい出てるんじゃなかろうか、《186.45kmです》そんなんどっちでもいいわ!!!だいたいそんな速度で飛んでるのに俺はしがみついてるだけなんだけど!!!

 

「ガハハハハハ!安心しろ!我は何かにぶつかるようなヘマはせんわ!(お前が落ちたら知らんが)」

 

それだよ!お前が小声で言ったことだよ!落ちそうなの!そろそろ限界なの!

 

「『勉学者』!どうにかしてくれ!!」

 

《了。『温度操作』を使用します》

 

っと…、さすが『勉学者』先生だ。『温度操作』を使うって言った時は何をするのかヒヤヒヤしたが、俺を中心にコクピットのような形で氷を展開したみたいだ。これで当面は大丈夫だな…。心の中でめっちゃ感謝しといた

 

「ほう、やるではないかレミアよ!では我ももう少しスピードを上げるぞ!」

 

レジーナはそう言うとさっきまでの2倍くらいの速度で飛び始めた。いやいやいや、速すぎだろ!どうなってんだ!

 

「てかレジーナ!速いのはいいけど、これじゃあ術者を見つけにくくないか?」

 

実際俺は景色すら頭に入ってこない、いくらなんでも速すぎるのだ

 

「心配するな、我は『思考加速』というスキルを使って怪しいものがいないか全て確認しておる。レミアよ、お前にはまだ出来ぬだろうがな」

 

ガハハハハハ!と笑いながらそんなことを言われてしまった。いやまあ出来るんだけどね

 

「言っておくけどレジーナ、『思考加速』くらい俺にだってできるからな」

 

悔しかったのでそう言ってみたら、「ならば手伝え!」って怒られてしまった。いやだってしょうがないじゃん。そもそもそんな余裕無かったし…。そうだ!こんな時は『勉学者』先生!お願いします!

 

《了。自動索敵状態(オートサーチオペレーションモード)へ移行します》

 

おぉう、なんか凄そうな感じだ。まあ文字通り自動で索敵してくれるんだろう。これで存分にサボれ…じゃなくてレジーナの助けになれるな。そう、これはサボってるわけじゃない、スキルを駆使して術者を探そうとしているのだ。『勉学者』先生も俺のスキルなわけだしなんの問題もないもんね!

 

 

*

 

 

そんなこんなで数十分ほど飛び回った所で

 

《告。正体不明の生命体を捕捉、詳細を確認しますか? YES/NO》

 

おっ?もちろんYESっと、これは…、うん、術者で確定っぽいな、人の形をした反射結界が展開されている…って逆に隠れられてないじゃん

 

(レジーナ、この辺りにあやしい奴がいるみたいだから向かってくれ)

 

と『思念伝達』でレジーナに伝えておいた。『勉学者』先生が経路まで伝えてくれたみたいなので、あとはレジーナさんにお任せしよう

 

「ふむ、難儀するかと思ったが、すんなり解決しそうだ」

と言ってさらにスピードが上がった。もうわけがわからん

 

 

*

 

 

そうしてその場所に到着した訳だが___

 

「なんじゃあこりゃ!!」

 

というのが俺の感想

 

「ガハハハハハ!!これは骨が折れそうだ!!」

 

というのがレジーナさんの言葉である。

 

積み上がった魔物の死体。クモのような魔物、ムカデのような魔物、牛と鹿を混ぜたような魔物、大きな蛾の魔物、他にも多種多様な魔物の死体が山のように積み重なっている。恐らく死体の山に囲まれるように立つたった一人の者に命を奪われたのだろう。その者は方向を変化させる結界を、ここ一帯を囲む対応不能な結界を体の至る所に纏って立っている

 

「とんでもないな…」

 

無駄だと思うけど…

 

「おーい!そこの人ー!出来れば少しお話がしたいんだけどー!」

 

とフレンドリー感満載で話しかけてみた。交渉可能なら助かるんだけども……

 

「っ?!」

 

と、その結界まみれの恐らくは女性、いや若いな、

女子高生くらいの女の子が驚いた表情でこちらに向き直った

 

「意思疎通は出来るみたいだな!俺は……じゃなくて私の名はレミア。この森から出たいのだけれど、その結界に閉じ込められてしまって。できれば外に出してもらいたいの……?」

 

ネカマ時代に培った女性らしい言い回し、これならこの姿でも大丈夫だろう!

とか考えながら話していた途中

 

ドサッと人が倒れる音とともに結界が視界から消え去るのが見えた。

 

「おい!大丈夫か!」

 

すぐに駆け寄り彼女を抱きかかえようとした手に

じっとりと血が流れた。そこだけではない。

体の至る所から血が流れでている

身につけている服もボロボロで、激しく何者かと争った形跡が見て取れた

彼女は既に事切れていた。

 

《ユニークスキル『蘇生者』を使用しますか? YES/NO》

 

これだけ傷だらけになりながらそれでも生き延びようと必死だったんだ

彼女はまだ死にたくなかったはずだ

なによりこんな若い女の子が目の前で孤独に死んでいくなんて

俺には耐えられない

彼女を救う力があるのにそれを使わない理由なんてなかった

 

「YESだ。俺の命を使って彼女を蘇らせてくれ。彼女にもう一度命を与える『生命譲与(ライフギフト)』!!」

 

そして俺の意識は闇に沈んでいった

 

 

*

 

 

目が覚めると真っ白な空間にいた

目線を横に移すと先程の女の子が隣に横たわっているのが見えた

 

「よっ…と」

 

立ち上がりその子を見る

傷は消え息もしているみたいだ

綺麗な顔をしてるな、そう思った

じっと見蕩れたように眺めていると

その少女も目を覚ました

 

「ここは…?」

 

確かにここはどこだろうか……ただただ真っ白な世界

見覚えもない世界

 

「俺もわからない、どこなんだろうなここは、」

 

正直に答えた。嘘をつく必要もないしな

 

「あなたはさっきの…えと…」

 

「レミアだ、こんな見た目だけどゾンビっていう魔物なんだ

でも君を襲ったりしないから安心して欲しい」

 

怖がられるかなーって思ったが……

 

「レミアさん、ですね。とっても可愛らしいゾンビさんなんですね。」

 

微笑んで彼女は言った。

 

「君の名前は?」

 

「名前…ですか?私は……あれ?私の名前……あれれ?」

 

なんだかつい最近もこんなやり取りをした記憶がある

立場は変わってるけど

 

「忘れたんだよね。俺もそうだったよ。

この世界では魔物が名前を持つことには特別な意味があるらしくて。

君はさっき死んで俺の力で蘇ったんだ。

厄介なことにこの力にはもう1つ能力があって

蘇らせた対象を不死者にする力があるんだよね

きっと君は俺と同じゾンビとして蘇ったんだと思う

その時に名前を失ったんじゃないかな。」

 

自分がされた説明をそのまま他の人にするのって

なんだか変な感じだな

内容が内容だけに特にそう思う。

 

「そう、なんですか。ゾンビ、私がゾンビ……ふふっ……」

 

あれ?心なしか喜んでるように見えるんだけど

 

「勝手なことしてごめん。でも放っておけなくて」

 

「何故謝るんですか?私はむしろ助けて貰えて本当に嬉しいですよ?

夢にまで見たファンタジーな世界にせっかく来れたのに、1人で死んでいくなんて

絶対にいやでしたから。」

 

そういう彼女の表情はどこか悲しげで、そしてどこか嬉しそうだった。

 

《告。生命回廊の接続を完了します。名付けを行ってください。》

 

どうやら『勉学者』先生が色々やってくれていたみたいだ

名付け、魔物に名前を授ける行為、これをすれば彼女は真の意味で人間では無くなる

 

「どうやら君に名前を付けないといけないらしい。問題ないかな?」

 

この白い世界から出るのに必要な行為なのだろう。

何故そう思ったのかわからないが確信があった。

 

「はい、どうせ前の名前は忘れてますし、この世界で名乗る名前として

私に新しい名前を下さい。レミアさん」

 

長い黒髪を可憐に流し、大きな可愛らしい目でニッコリ笑った彼女に俺は

 

「君の名前はこれから『イブ』だ、これから俺とこの世界で生きていってくれるかな?」

 

「っ!!。はい、レミアさん。これから私を、イブをよろしくお願いします!」

 

そう笑う彼女、『イブ』を見つめながら俺の意識はまた闇に沈んでいった

 

異世界から召喚された鈴谷伊吹という少女は、壮絶な最期を遂げ、

その後命と名前を1人の魔物に授かった。

『イブ』と名付けられたその少女は1人の魔物『レミア』と共に

この世界で名を上げる人物となる、しかしそれはまた少しあとの話

 

 

 

*

 

 

 

「ううん……」

 

「おお、目が覚めたかレミアよ。」

 

目を開けるとおっかないでっかい顔が至近距離にあった

 

「うおわあああああ!!!」

 

思わず声を上げてしまった。だって怖いんだもんレジーナさん。

 

「目が覚めたんですね。レミアさん」

 

そうか、そうだった。彼女も無事だったんだな。

 

「ああ、おはよう、イブ」

 

そう声をかけながら見た彼女の顔は、とても嬉しそうな最高の笑顔だった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。