少女は孤独だった
気がついた時には幾何学的な模様で彩られた床の上で倒れていた
少女は何も覚えていなかった
何故このような場所にいるのかも自分が何者なのかもわからない
ただ1人風音のみ聞こえる暗く狭い空間に存在していた
不気味で嫌な感じがしたのですぐにそこを出ることにしたが
行く宛もなければどこにいるのかすらわからないその少女が
高々と茂った木々に隠されるように建つその建物から離れたところで
ただ彷徨い歩くことしか出来ないのは明白であった
どれだけの時間を歩き続けただろうか
不思議と疲れることは無かった
空腹感に悩まされることも無かった
普通の人間であれば限界を迎え死を覚悟する状況にあっても
彼女は何も気に留めることなく
ただただ抑えきれない孤独感を取り除くため
存在するかもわからない自分以外の人間を
ただただ歩き続け探し求めていた
時折襲う尋常ではない不安感
自分以外何も存在しない世界への孤独感
それにすら慣れ始めるほどの時間を過ごした彼女はようやく
人々の住む国を見つけた
気がついてから初めて、自分以外の人間に会える喜びと期待に
彼女はその場に立ち尽くし涙を流した
そして涙を拭うと期待を胸に軽くなった足取りで
人々の住む国へと向かった
しかし彼女はまた絶望することとなる
初めて出会う人間に話しかけてもまるで相手にされない
というよりは何も居ないかのように振る舞われるのだ
1人の相手ではなくその場にいる全員に
女子供関係なくまるで初めからそこに自分など存在していないかのように
彼女は気付いた
自分は誰からも認識されていないのだと
自分の意識はあれど自分はそこに存在していないのだと
自分が何者なのか、何故このような状態になっているのか
ここはどこなのか、自分はどこから来たのか
聞こうとしても誰にも声が届かない
調べようにもどうしたらいいのか分からない
生きる術も知識も何も持たない彼女は
ただ孤独に朽ち果てるのを待ち続けるしかなかった
それからどれだけの時間が経ったのだろう
永遠とも思える永い時を
何も口にせず死を待つだけだった彼女は、死することなく
ただそこに“存在”していた
そう、彼女は召喚者
世界を渡り得た力の名は
『不在者(アラザルモノ)』
誰からも認識されず
そこにあってそこにない者
存在するのは意識のみ
形を持たず死することもない存在
永遠の孤独を約束された存在
生きる希望も行動する意味もそして存在すら失った彼女は
終わることの無い苦しみを予感し
永き時を生きる悲しみを予感して
絶望に黒く黒く心を染めてしまった
少女は孤独だった
永遠に孤独だった