郡千景の日記帳   作:黒歴史ノート

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妄想を書きなぐった文章なので
原作崩壊、キャラ崩壊にご注意ください


日記編
郡千景の日記帳(20--/-/- ~ )


 二○--年-月-日

 

 私、郡千景は病院で意識を取り戻した。

 前後の記憶がいまいち曖昧なので、頭を整理する意味でも日記を書くことにした。

 医師によれば記憶の混乱は階段から落ちて頭を強打した影響らしい。

 質問したい事はあったが、医師はカルテ作りに忙しいらしい。

 看護婦さんは過労が滲んだ顔をしており、刺激しないよう注意した。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 記憶の整理がついてきた。

 どうやら、私の日付感覚と実際にはズレがあるらしい。

 二○一九年の春だと思っていたが、現在はそれより数年前だそうだ。

 こんな頭の悪い質問に答えてくれた、隣のベッドの子に感謝する。

 こちらを見ない医師にはしづらい話だったので、本当に助かった。

 問題は、奇妙な未来記憶に従えば、隣のベッドの子は看護婦が点滴する薬を間違えて死ぬ筈。

 どうしよう。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 看護婦から気に入らない患者としてロックオンされた。

 隣の子に普段点滴するのと違う薬を使おうとしていたから、指摘しただけなのに。

 それなのにストレスが溜まっているとはいえ、患者の食事を抜くなんて。

 「あの患者さん我が儘でご飯食べてくれなくて」じゃない。

 だが、この看護婦と婦長のやりとりで私は確信した。

 この未来を私は知っていた。

 予言する。明日の朝、看護婦は空腹の私の目前で、食事を床に落とす。

 そして、「あらあら、食べ物に当たっちゃダメですよ」と言うだろう。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 予言は的中した。

 記憶の私は、自分は悪くないと主張して周囲の顰蹙を買った。

 なので、私は大人しく看護婦を軽蔑するだけにした。

 むやみに体力を使っても、看護婦とのつき合いが長くなるだけだ。

 医師の説明では、入院期間は一週間だった。

 それが栄養不足で怪我の回復が遅れて、二週間になるのだ。

 長くても二週間、早く怪我が治るように大人しくしていよう。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 前言撤回。

 看護婦がまた隣の患者に違う薬を点滴しようとした。

 枕の下に隠しておいたスマホで現場をおさえてやった。

 当然、スマホを奪おうとする看護婦と取っ組み合いになった。

 廊下まで逃げるが、抵抗あえなく奪われたふりをしてSNSにアップしてやった。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 看護婦が交代した。

 勝った。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 一週間でなんとか退院できた。

 とはいえ、これからも問題は多い。

 私を階段から突き落としたクラスメイトは知らないふりをするだろう。

 私の担任教諭は、いじめや嫌がらせの事実は無いと言うだろう。

 私の父親は、私のことなど無視するだろう。

 あと、空から怪物が降ってきて人類を絶滅の危機に追いやるだろう。

 記憶では、私がなぜかその怪物と戦う事になるが、本当だろうか。

 怪物の派遣元はこの国で一番偉い神様で、人類に怒った結果だそうだから、いつか伊勢の方に命乞いしに行こうと思う。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 そんなわけで、やってきた伊勢である。

 まったく、父親が育児放棄者で助かった。

 いきなり二週間も家に帰らないと言い残しての出張だ。

 母親なんていない。間男と駆け落ちした女なんて知りもしない。

 学校も不登校の児童を見向きもしないから安心だ。

 とりあえず正宮で、二拝二拍手一拝。

 無事に伊勢まで来れたことへの感謝を。

 お願いするのは荒祭宮だそうなので、そちらでも二拝二拍手一拝。

 どうか人類を赦してください。償う機会をください。

 

 すると、うっすらとしたイメージが降ってきた。

 川で禊ぎするのだと解釈した。

 なので、最寄りの川で水垢離した。

 すると、すこし濃い感じのイメージが降ってきた。

 布団を被って寝て待てと解釈した。

 スーパー銭湯を探して、待合所で毛布を被って待つことにした。

 すると、かなり濃いイメージが降ってきた。

 十日間、毎朝水垢離し、穢れを避け、布団に籠もって待てと解釈した。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 家に帰ると、部屋にあった日用品を全て片づけた。

 寒々しくなった部屋を拭き掃除し、入念に水垢離してから、四隅に塩を盛り、伊勢で買ってきた注連縄を張り、部屋には新品の布団を置いた。

 途中で排泄したくなると嫌だったので、食事は抜いた。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 我慢の限界で、三日で二回、トイレに行ってしまった。

 入念に水垢離したが、服は穢れた気がしたので脱いでしまった。

 いろんな意味で布団から出られない。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 五日目から尿意も便意も感じなくなってきた。

 食欲も無くて、とても穏やかな気持ちになってきた。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 十日目、夜明け前に、妙に明るい星が見えた。

 その星には、この世のあらゆる真理が詰まっているように見えた。

 星が飛んできて、私の体に入った。

 何をすれば良いのか、すぐに理解できたので布団を出た。

 お腹が空いたので、うどんを柔らかく煮て食べた。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 また学校に通い始めた。

 机の上に花が置かれていたが、教壇の上に移しておいた。

 何事もなかったように授業は始まり、花は教諭が持って行った。

 休み時間にはクラスメイトが絡んで来たが、じっくりと相手の言い分に耳を傾けてあげたらそれだけで休み時間が終わった。

 次の休み時間には、私を校舎裏へ連れ出す流れになった。

 私を階段から突き落としたクラスメイトが怪我を慮ってくれたので、その流れで少々ズルいが傷の縫い跡を見せていびりを勘弁してもらった。

 その後は平和な一日になった。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 クラスメイトらの優しい心根に感謝だ。

 クラスメイトは、とても素直な子供が多いようだった。

 時間をかけて相手の痛みを思いやる優しさを褒めてあげれば、少なからぬクラスメイトが、たったそれだけで私のいじめをやめてくれた。

 もちろん彼女らを盾になどせず、私はクラスメイト達と向き合った。

 私を生意気だと言う子からは、たくさんの話を聞いた。

 私をあばずれの娘だという子には、悪口を慎む大切さを説いた。

 なんとなく面白いからでいじめを続ける子もいたが、仲間の数が減るとだんだん面白さが減って、別の遊びをするようになった。

 いじめは、気づけばクラスから無くなっていた。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 私の書道作品が、なぜか大臣の賞を貰えることになった。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 最近、私に対する教諭の当たりが妙に優しくなった。

 田舎の小学校においては、賞状一枚でも価値があったらしい。

 俗な大人というのはそういうものなので、温かく見守る。

 あと、校長先生が卒業証書の代筆を頼んできた。

 金釘な文字しか書けなくて恥ずかしいらしい。

 しかし、証書は校長先生が書くことに意味があるのだからと固辞した。

 その代わり、卒業式に来る偉い人への手紙の代筆は請け負った。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 空から怪物が降ってきたとニュースで流れていた。

 はて、奇妙だと思うと、ひさしぶりに神様のイメージが降ってきた。

 人類の間引きをするからその後を治めなさいというニュアンスを感じた。

 偉い神様というのは、独特な感性を持っているらしい。

 私はノアの箱船のリーダーになりたかったわけではないのに、困った神様だ。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 天空恐怖症候群、通称で天恐という病気が流行っているらしい。

 空からの怪物に襲われて生じる一種のPTSDらしい。

 クラスメイトの一人が、夏休みに天恐にかかったと聞いた。

 お見舞いに行くと、カーテンを閉ざした部屋で帽子を被っていた。

 昼間の屋外を歩けないのは、子供には辛いことだろうに。

 しかし、私に出来るのは背中を撫でつつ、励ましの言葉を贈る程度だ。

 早く良くなってほしいと願って、その日は部屋を辞した。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 良い知らせがあった。

 天恐だったクラスメイトが、まもなく学校へ出て来るらしい。

 一時的な症状だったようで、見舞い後にみるみる回復したそうだ。

 しかし、悪い知らせもあった。

 私の家に、大社という組織から人がやってきた。

 未来の知識によれば、私はこの組織の下で、神様と戦う事になる。

 だが、これは決して避けられない話なのだろう。

 大社は、政府から怪物との戦いの一切を任されている組織らしい。

 これを断って、私の周囲にもたらされる悪影響は大きい。

 政府機関に睨まれるのは、権威に弱い田舎の人々には恐怖だろう。

 私は大社の誘いを断らないことにする。

 それが皆のためになるのだから、是非もない。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 私は大社から、丸亀城の二の丸にある寮での生活を命ぜられた。

 朝起きて、訓練をこなし、朝食、座学を受け、昼食、午後も訓練し、夕食後に自由時間が多少あって就寝の、スケジュール表を渡された。

 未来知識通りだが、思わず嘆息もした。

 あまりに生温く、これでは神様には勝てないだろうと。

 大人が子供を中途半端に思いやった結果がこれなのだろう。

 私は自分なりにスケジュール表へ書き足して、こなすことを決めた。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 大社の支援を受けて訓練に集中するのは、意外なほど快適だった。

 大社は、私の求めるような物忌みへの理解もあり、次清まで徹底した支援をしてくれ、修行方法についての知見も豊かであった。

 

 日の出より前に水垢離を済ませ、朝日に向かい長い呼吸法で体の奥深くまで陽気を取り込み、そのまま一呼吸でなるべく長距離を走る訓練を開始する。これは大祓における息吹を意識した修行で、体内から一切の穢れを吹き飛ばす呼吸法を会得するものだ。

 大社が戦う怪物は神の領域の存在であり、それに対抗するには同じく神を宿して戦うことが求められる。

 体内の穢れを祓い、神を宿す器を広げれば有利になるのは自明の理だ。

 全ての前準備ともいえる修行だった。

 

 朝食は、肉食を避ける以外はいたって普通。

 

 座学には、私以外に五名の仲間がいた。

 未来知識で知った顔ばかりで、少し不思議な気持ちになる。

 しかし、隣の高嶋友奈さんを見た瞬間、私の心は驚くほど高鳴った。

 

 「はじめまして。よろしくね、ぐんちゃん!」

 

 声のかけ方に迷っていると、彼女は向こうから話しかけてくれた。

 それに、うっかり「ただいま」と返してしまったのは一生の不覚だ。

 まったく会話の流れが繋がっていなくて、恥ずかしい。

 慌てて挨拶し直したが、高嶋さんは笑って流してくれた。

 最近の私はめったに取り乱すことが無かったのに、不思議だ。

 

 昼食は、座学の五人と一緒に取った。

 しかし、ここでも私はダメだった。

 雑談ついでに自己紹介をするとき、妙に緊張してしまった。

 なんだか呼吸も乱れて、その時の私はどこかおかしかった。

 乃木若葉、土居球子、伊予島杏、高嶋友奈、上里ひなた。

 この五人を前にすると、私の胸の中で誰かが叫ぶのだ。

 未来知識なんて上辺の話ではなく、深い部分から声が聞こえるのだ。

 

 「ずっと会いたかった。会えて嬉しい」

 

 昼食後の午後の訓練は、ろくな内容にならなかった。

 恥ずかしいやら、嫌われたくないやら、私はがむしゃらにグラウンドを走り続けた。

 夕食も取らずに走り続けて、それでも胸中の感情が冷めず、最後は水垢離とがむしゃらな息吹で無理矢理に心を落ち着かせて、就寝する。

 私は、どうにかなってしまったのかもしれない。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 五人の仲間と会って、おかしくなるのが続いている。

 午前と午後の訓練は一時は順調に進み、型を意識した格闘技の練習へと移行した。

 しかし、そのせいで高嶋さんと一緒にいることが増えて、ダメだった。

 未来も何も見えず、高嶋さんしか見えなくなってしまう。

 何の神も宿さずに風の拳は打てるようになったが、心が定まらない。

 いや、一度だけ感情任せに「高嶋さん!」と叫びながら拳を突き出したら、手応えと共に雲が消し飛んだが、それはあまりに恥ずかしい。

 私は、いったいどこへ行こうとしているのだろう。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 大社の人から、勇者アプリというものが入ったスマホを渡された。

 曰く、神様を簡単に宿せるアイテムらしい。

 最近は神様もハイテクなのだなと、感心した。

 勇者アプリを使ってみたら、海が割れた。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 海が割れた一件から、乃木さんがよく話しかけてくるようになった。

 乃木さんは居合いを使うから、カッコいい技に憧れがあるのだろう。

 とりあえず、一時間息を吸い続ける練習から教えてあげた。

 呼吸を通じて世界と一体化すれば、そのうち切れるよと。

 最近、私は小難しいことを考えても意味が無いと思うようになった。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 最近、変な物が見えるようになった。

 薄い膜のような、一枚向こうに何かあるような空間の揺らぎだ。

 なんとなく勇者アプリを起動した状態で触ってみると、めくることができた。

 しかし、ブラックホールのような力場が渦巻いていたから、見なかった事にした。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 訓練中、高嶋さんと意見交換をしていると模擬戦を申し込まれた。

 土居さんと、伊予島さんだった。

 曰く、伊予島さんは怪物と戦うのが怖くて、土居さんに相談を持ちかけたそうだ。

 そして、私と戦えば自信がつくだろうという話になったらしい。

 なぜ自信がつくのか疑問はあったが、仲間の助けになるのは望むところだ。

 私は全力で赤ペン先生になった。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 最近、日の出と同時に仲間達と一緒に息吹をするのが習慣になった。

 仲間達は、未来の記憶よりずっと強くなっている。

 高嶋さんも手刀で海を割れるようになったし。

 乃木さんは太刀で海を切って、うきうき若葉ちゃんになったし。

 土居さんは高嶋さんの拳を受け止めるようになったし。

 伊予島さんも矢で石垣を崩して、大人に叱られても悪びれなくなったし。

 神様を宿さずこれなら、神様相手でも少しは勝負になるかなと思った。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 乃木さんから、白鳥歌野という人を紹介された。

 アマチュア無線の友達で、なんと、長野県で怪物と戦っているらしい。

 ちなみに私達のいる丸亀は、香川県だ。

 やはり乃木さんとは蕎麦とうどんのアピール合戦をする間柄らしい。

 でも、今回は私を白鳥さんに紹介したかっただけだそうだ。

 乃木さんは私をおおげさに四国の最終兵器なんて言ってくれて、恥ずかしかったけれど嬉しかった。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 最近、仲間と模擬戦をしてみてもどれだけ強くなったのかわからなくなってきた。

 なので、試しに空間の揺らぎをめくって、ブラックホールに入ってみた。

 案外平気で、拍子抜けしながら進むと、ブラックホールの奥にも揺らぎがあった。

 そちらへ出ると、どこまでも灰色の不思議な空間に繋がっていた。

 すると、久しぶりに天の神様からのイメージが降ってきた。

 

 「帰れ」

 

 どうやら灰色の空間は、神様のプライベートルームだったらしい。

 私は深々とお辞儀をしてから、ブラックホールを通って帰った。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 天の神様から、イメージが度々降ってくるようになった。

 だいたい一時間おきだった。

 次来たら容赦しない。

 もう来ないよね。

 怒ってないよね。

 怒らせたならごめん。

 そんなニュアンスだった。

 私は灰色の世界に行って、怒ってないよと大きな声で言った。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 大社の人から、空からの怪物が減っていると教えてもらった。

 曰く、長野県で白鳥さんが頑張ったおかげかもしれないらしい。

 あれだけ訓練して、初陣も無く終わるのは寂しいけれど、平和なのは良いことだと思った。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 高嶋さんに日記を見られた。

 もう書かない。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 ぐんちゃん、ごめんね。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 私こそ、怒ってごめんなさい。

 でも、もう見ないでね。

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 うん! わかった!

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 見ないでっていったのに!

 やっぱりもう書かない!

 

 

 

 二○--年-月-日

 

 (日記はここで途切れている)

 

 

 

おわり

 




ご読了ありがとうございました。
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