「・・・・・・・・・・・・・・・」
病室も整理し終わり、支給された海軍の軍服に袖を通す。自衛隊とほぼほぼ同じであり違いも見受けられない。
「大佐・・・ね・・・」
軍服を着て荷物をまとめ、制帽を持ち待っていると
「コンコン」
ノック音が聞こえ
「どうぞ」
言い
「失礼しま・・・・す」
俺の制服姿に見とれている真霜さんがいた。
「何処か変ですか?」
尋ねると
「いえ、とてもよく似合っています。」
真霜さんは言ってくれ
「お荷物をお持ちしましょうか?」
俺のバックを持とうとするが
「女性に荷物を持たせて楽するなんてそんなの海軍士官の礼儀に反するよ、自分で持つ」
そう言ってバックを持つ。病院の方々にお礼を言い真霜さんの車のトランクに荷物をほうりこみ
「助手席で寝ていても構いませんよ?如月大佐」
彼女は言ったが
「いや、いい外の風景をみたい此処数週間病院に缶詰で気が狂いそうだった。」
答え
「そっちの上層部はまだ発狂中かな?」
ジョークを言うと
「ええ、そんなとこです。今だから言えますけどあの時、あなた方200名が不慮の事故で死んだ事にでもすれば・・・なんて言う案があったとか」
トーンを落として真霜さんは言ったが
「呆れても物も言えん、同じ海を護る者同士がなにかんがえてるんだか・・・」
俺は言うと
「私も同感です、大佐の仰る通り同じ海を護る者同士なのに上は海軍を敵視する。装備も確かに海軍は優れているイージス駆逐艦・巡洋艦やヘリといった航空機まで揃えている。潜水艦も私達よりも遥かに高性能。私達はその補助機関にすぎないのかもしれない。それでもこの仕事に誇りを持ってる、如月大佐はどうですか?」
尋ねられ
「そうだね、各々が袖の印に誇りと覚悟を持つことは大事だね。俺が梅津大佐や角松中佐らが来た世界と同じ所の人間だと言うのは知ってるよね」
聞き
「はい、身元の確認を行った際に最後の不明だった貴方を確認してくれたのは角松中佐でしたから。」
真霜さんは答え
「自分の世界ではこの世界で海軍にあたる海上自衛隊もそしてブルーマーメイドにあたる海上保安庁も共に手を取って日本の海を守ってきた。なぜそれがこの世界ではできないのかが不思議だがな」
答え
「君達はある意味では幸せなのかもしれないな・・・大規模な実戦を経験した事がないのだから・・・」
俺は窓から外を見て言った。
「実戦・・・・」
真霜さんはいい
そうこうしているうちに真霜さん達の家に付き
「また後でゆっくり話せますか?」
聞かれ
「ええ」
一言言った。
「真霜姉さんお帰りなさい・・・この人誰ですか?」
中学生?とも高校生とも言えないような年齢の女の子に言われ
「真白、前話したでしょ?お母さんの知り合いで訳あってしばらく家で居候することになった海軍の士官さんよ」
真霜さんが説明してくれ
「初めまして、如月優也ですよろしくね」
努めて笑顔で話しかける。
「よ、よろしく」
真霜さんの妹真白さんと家の中に入り、一室に案内してもらう。
「えっと、お母さんから言われてる部屋よ。好きに使っていいって、荷解きが終わりましたら声をかけて下さい、」
真霜さんは言ってしまった。とりあえず俺は自分の荷物を解きこっちに送られていた艦内にあった私物も一緒に整理し
「本当にもう帰れないんだな・・・平成に・・・」
俺は呟き荷解きを終えた頃
「ボンッ」
音が聞こえ
「なんだ?!」
外に出ると
「あわわわ」
慌ててる真白さんがいた
「何かあったの?!」
聞くと
「えっと・・・真霜姉さんが・・・台所で・・」
それを聞いてなんとなく察した。プライベート用の私服に着替え
キッチンに二人で向かうと
「どうして料理ってこんなに難しいのかしらね」
鍋を黒焦げにしている真霜さんがいた
「oh・・・・sit」
俺は言ってしまい
「姉さん・・・お願いですからいい加減・・・はぁ・・・」
真白さんがため息をついていた。台所に入り
「何を作ろうとしていたんですか?」
そこに落ちている料理の教本を拾い
「・・・・カレー・・・なるほどな」
大体を理解し
「真霜さん交代」
台所の後片付けを行い、冷蔵庫を確認し
「よし・・・はぐろ特性カレー作れそうだな」
俺は素早くカレーに必要な食材の確認を行い素早く野菜の皮をむき、肉を切りなどこなしていく。そして完成し
「完成・・」
そう言ってると
「えっと、如月さんは給仕長か何かですか?」
真白さんに言われ
「とんでもない、ただのイージス巡洋艦の艦長だよ」
答えると
「!か・・・艦長・・・という事は・・・」
「あはははは・・・一応海軍大佐かな階級は」
答え
「すごいです・・・失礼ですけれどもご年齢は」
真白さんにも聞かれ
「はは、29歳だよ」
答える
「相当なエリート士官ってことなんじゃ・・・」
言われるも
「何処にでも転がってる普通の人間だよ」
俺は言った。自分をエリートと思った事はない。それよりも
「真霜さん、失礼ですが料理の勉強したほうがいいのでは・・・」
俺は言うと
「そうします・・・・」
しゅんとうなだれ答えた。その後も付け合せのサラダやスープなどを作り夕食の準備は完了となった。
「如月さんごめんなさい、姉さんがこんなばっかりに・・・・」
真白さんは申し訳なさそうに言ったが
「働かざる者食うべからず、でしょ。俺居候の身だし」
と答えた。夕食の支度を終え、軽く打ち解けた真白さんの勉強を真霜さんと見てあげたりしていると
「ただいま」
「ただいま」
どうやらお二人共戻ってきたようだ。だが
「あれ、美味しそうな匂いが・・」
真冬さんがいい
「そうねぇ、何か作ったの?」
俺達を見て真雪さんが言い、そこで
「えっと、真霜姉さんが料理しようとして・・・まぁ・・・何時も通りで、如月さんが代わりにはぐろ特性カレーとサラダ、スープと一式」
真白さんが言い
「だははハハハハ、真霜姉また鍋吹っ飛ばしたのかよウケるくくくく」
真冬さんが豪快に爆笑し
「はぁー・・・・・真霜、あなたねぇ・・・・」
真雪さんが頭を抱えている。そんな中、両名ともオードブルやお寿司など結構買ってきていた。夕食の支度が整い
「では、如月海軍大佐の歓迎会を始めます!!」
真冬さんがノリノリに言い
「あははは・・・はぁ」
苦笑しつつ俺はグラスを掲げ和やかな時間が過ぎていき
「このカレー美味い」
真冬さんはすごい勢いでカレーを食べ
「確かに美味しいわね」
真雪さんも絶賛
「すごく美味しい・・・故に悔しい・・・」
真霜さんも言っている。そして夕食後、真白さんが勉強為に自室に引っ込んだのを確認し居間のテーブルを俺を含み四人で囲んでいる。
「さて、如月さん。いきなり迷惑かけたみたいでごめんなさい」
真雪さんが言い
「先程も真白さんに言いましたが「働かざる者食うべからず」ですからタダ飯を食べるなんて嫌ですし」
答え
「そう言ってくれて助かるわ」
真雪さんは言い
「間違っていたならごめんなさい。如月大佐、貴方の軍歴で実戦の経験はおありかしら」
真雪さんは言い
「そうですね、どちらの実戦経験でしょうか?海軍特殊作戦要員としての実戦経験なのか艦艇の艦長になってからの実戦経験なのかによりますが、まぁ艦艇勤務になってからの実戦出動すなわち「防衛出動」の経験ならば二回ほど」
完結に答え
「詳しく聞いても?」
真霜さんが横から言い
「ええ、一度目は韓国との戦闘でしたね、対馬に侵攻した韓国軍を殲滅すべく艦隊は出動しました。私の艦の戦果としては敵駆逐艦4・潜水艦2ををそれぞれハープン対艦ミサイル・アスロックで撃沈、陸上部隊の上陸時の艦砲射撃による上陸支援ですね」
説明すると
「ハープーン対艦ミサイル?、アスロック?」
真霜さんと真冬さんが首をかしげる中
「私も存じています、先のイージス艦「みらい」を保護した際の装備に既存の技術に当てはまらない装備があったのを覚えています。」
真雪さんは言い
「はい、ハープーンはさっきも言ったように艦船を攻撃するための対艦ミサイルです。そしてアスロックは対潜戦闘用いわば艦対潜用の攻撃手段です。」
説明し
「イージス艦「みらい」の技術は海軍を飛躍的に能力向上を図ることに一役買った。そして今度は「みらい」を上回る技術を詰め込んだ「イージス艦」が現れた。」
真雪さんは語り、そして俺は話を続ける。
「失礼ながらあえて言わせて頂ければ、基本技術は対して変わっておりません。変わってるのはイージスシステムがバージョンアップしている事とNIFC-CA FTS(海軍統合火器管制-対空)などを搭載している事搭載ミサイルの種類に一部アップグレードがなされている事ぐらいです私が知っている範囲ですが」
答える。そして
「二度目が尖閣諸島紛争、対中国でしたがこれは酷かった・・・この世界において尖閣諸島があるか否かは別としてその領有権を巡り日中両軍は衝突しました。我が艦も艦隊の一員として参加、中国は物量が多くそして人の命を紙切れ同然に扱う国ですからこっちの攻撃を躊躇うのを読んでいたようですが、それでも先鋒を担ったのは我々「はぐろ」でした。敵駆逐艦2隻を対艦ミサイルで撃沈、敵潜に至っては味方潜水艦と協力しながらアスロックで海の底に2隻を沈めました。最終的に日本が勝ちましたがギリギリの勝利と言った所ですかね。」
コップのジュースを飲みつつ言い終えると
「真霜、真冬、実戦をそれも大規模な戦闘を二度も経験した艦長を前にして実際に話を聞いてどう思う?」
「なんというか・・・そのどれくらいの人間を殺したとか考えたことは・・・・」
真冬さんがおずおずと手を挙げるが
「殺るか、殺られるかの刹那の中でそんな事は考えた事がないな。強いて言うならば最初の戦闘は絶対に忘れられない、これは言える」
俺は答えた。近代戦闘では最初に撃ったモン勝ち。いわいるアウトレンジシュートが基本であり、イージス艦も被弾しない事を前提として作られているため一発でも貰えばダメコン次第であるが最悪は沈没・撃沈となってしまう。
「今まで一番辛かった事、堪えた事は・・・」
真霜さんは言い
「ええ、それは艦か乗組員かのどちらかしか取れない状況になった時ですね、真霜さん、真冬さん貴女方ならばどうします?」
逆に聞くと
「そりゃ、総員退艦命令発令だろ。こう見えても私も現役の艦長だ迷いはしない」
「私には選べないわね・・・如月大佐が言っているのは恐らく戦闘中と言うことでしょうし」
二人は言い
「二人共甘いですね、結論から言えば私は艦を取った。非常水密扉封鎖命令を出し一区画と別の区画を予防封鎖その結果7名の乗組員が殉職しましたが艦の沈没は避ける事ができ戦闘を継続できました。戦闘能力の喪失を避けるのが戦闘中は優先すべき事と私は心得ています。いくら周りが私を人でなしと批判しても」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・」
三人とも絶句していた。無理もないだろう。艦長が乗員を見殺しにしたのだ。だが自分はこの判断を間違ったと思っていない。だから言った。
「今でもその部下達の名前は覚えています」
そう言い
「井上 裕二 三等海曹」
「岡田 紳助 海士長」
「大元 大輔 二等海曹」
「佐藤 信二 三等海曹」
「斎藤 康史 一等海曹」
「後藤 康之 海曹長」
「榎本 大河 二等海尉」
「私の命令で犠牲になった部下達です。ひと時も忘れた事はない。もう命日に墓参りに行く事もできなくなりましたが。」
俺は皮肉めいた事を言った。しかし
「そ・・・壮絶すぎだろ・・・艦を失うか乗組員を失うか・・・で艦を取るなんて」
真冬さんは言い
「貴女も実戦においてそれくらい追い詰められればわかりますよ、あの状況でイージス艦を失う事は・・・戦闘の雌雄を決定づけるあの戦闘では。」
答えた。
「すみません、極端な話をして」
謝るが
「いや、あんたの覚悟はすごい。同じ船乗りとして艦長としても」
真冬さんは言い
「究極の決断とも言えるわね。そして貴方は優しい、自らの命令で死なせた部下達の名を一人も忘れず覚えている。うちの上層部の連中に貴方の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだわ」
真霜さんもいった。その後お開きとなり順次お風呂に入り就寝した。自室の天井で
「なぁ・・みんな俺があっちに逝くまで待っててくれよ・・非難はその時ちゃんと聞いてやるからさぁ」
独り言をつぶやいていたが
「・・・・・・・・・・・・・・」
廊下で聞かれているとも知らずに。
次回~集う仲間達~を予定しています。