「はあ・・・はあ・・・はあ・・・まだ・・・駄目の様ですね。」
セリスはそう呟きながら敷地内を走り回っていた、何故走っているのかと言うと・・・
この間のサニアがルクスに対して色々と準備をしたり邪魔にならないようにしながらも
ナルフ宰相と父親であるディストとの会話について恐らくは要点纏めの為に資料作成も
やっている事を知っているセリスは自分は本当にルクスの副官として相応しいのかと
考えると共にサニアがルクスと共にいる所を想像して・・・何故か胸がキュッときつく
締められるような感覚にセリスはぶんぶんと頭を振っていると仕方ないと思って
外の見回りを始めた。
現在のアカデミーは学園祭に伴って慌ただしいのだ、たった2日間程であるが外部から
男性が来るという事態に騎士団はピリピリとなっている。
前年度は着替えを覗こうとして校舎によじ登った痴漢にドラグライドを奪おうとする
盗人がいたりした事から当時の騎士団の半分以上は男性に対して忌避感を持っていたことがルクスの在学を許さない理由となったのだ。
「ふう・・・ようやく落ち着きました。」
セリスはそう言って辺りを見回していた、外壁の周りを見渡して落ち着いたと思いながらセリスは懐から小さな手帳・・・ルクスの祖父であるウエイド直筆の教えの書を見ているがその中には自分に関係ある物・・・今の自分の状態に合致するものが無いなと思ってこれが一時的な物であると良いがと思いながら角を曲がるとある少女が目に入ったのだ。
門から少し離れた場所でじっと校舎を見つめる少女がそこにいた事から
あれはと思ってセリスは少女を見てこう呟いた。
「あれは?」
見た目は中流階級の少女に見えるが何故校舎を見ているのだろうと思って声を掛けた。
「すみません、少し宜しいでしょうか?」
「あ・・・はい!」
「何か学園に御用があるのでしょうか??」
セリスがそう言って目の前にいる少女・・・いや、セリスよりも2~3年上の女性で
華やかではないが身なりがよく綺麗な女性である。
すると女性がセリスの声を聴いてあははと呟いてこう続けた。
「御免なさいね、実は私別の街区の人間なんですけど今回の学園祭で小さいながらも
唐揚げ屋を出すんです。」
「唐揚げ?」
「ああはい、実は知り合いの男の子が初めて教えてくれてそれから父が
作るようになってそこから知り合ってその男の子が・・・この学園にいるから
会えないかなあって思って・・・未練がましくここら辺を彷徨っていまして。」
それを聞いて男の子と思ってある人間を思いだしたのだ。
「男の子・・・その方はもしかして・・・ルクス?」
「うん、九十九・ルクス・アーカディア。元王子の雑用係で今じゃ
このクロスフィードで別の意味で有名になって・・・いや、ドラグナイトとしても
ある意味有名になりましたけどね。」
新聞を読みましたしねと言ってああとセリスはある事を思いだした、ここ最近・・・
3年近く前から発刊され多くの貴族たちや文字が読める市民の間では情報が
一早く見れるという意味において重宝されている新聞について書かれている事をセリスが思いだしていると実はと女性がセリスに向けてこう言った。
「いやその・・・彼がこの街に来たのって猫に盗られた私のポシェットを取り返そうとしてくれたから何だよねえ、だからちょっとその・・・中身関係で
責任感じちゃってね。」
「中身・・・何が入ってあったんですか?」
セリスがそう聞くとええとと言って・・・女性はセリスに近くに来させるように
手招きすると何だろうと思って近づくと女性はこう答えた。
「私の・・・パンツ。」
「・・・・はい?」
今この人何言ったんだと思っていると女性はこう続けた。
「私その日友達と川遊びしててね、濡れちゃったから代わりの下着を履いて
それで変えた奴を私がポシェットに入れてたのを猫が盗っちゃったからそれを彼が・・・ルクス君が取り返しに行ってしまってだからその・・・責任を感じちゃって。」
「そう・・・だったんですか。」
セリスはそれを聞いてリーズシャルテがルクスを学院に編入した経緯の事を
思いだした。
『あいつが学院に来たのは元々は学園長の雑用仕事だったんだがあいつの実力は我々や私以上だ、それにアカデミーは未だ女性だけだが何れは驚愕も視野に
入れないといけない。他国では男も入れている所があるから今後は其れを行い
国内の戦力を充実しなければいかん。』
『ですが相手は男の人、それに新王国が出来て未だ5年。アカデミーが出来たのは
3年前、リーズシャルテ様貴方は私との約束を破語するのですか?』
『そっちは・・・やば忘れてた。』
『リーズシャルテ様!』
『済まない、だがそれでも奴の人格等は学園長も太鼓判を押している。来るべき
対抗戦に遺跡探索を掛けた対外戦を視野に入れるとするならば実力者は
入れてしかるべきだろ?』
『・・・ですが彼は!』
『なあセリス、私も馬鹿ではない。だがこれだけは言える・・・奴は信じられる、
暫くは見守ってくれないか?』
その事を思いだしていると女性はセリスに向けてこう続けた。
「いやああの子は面白かったよ、私の所じゃちょっとしか働いてなかったけど
何時も忙しそうで。」
女性がそう言うのを聞いてセリスは・・・胸が締め付けられるような感じであった。
自分が知らないルクスの思い出話を聞いて何かを感じているが・・・其れを知るのは
もう少し先の事となる。
次回は・・・あの女が現れます。