アノスは宝物庫の壁にもたれかかりながらぼんやりと宙を眺めていた、その理由は
ミーシャがサーシャにプレゼントした不死鳥の法衣を着させているから。
だが法衣は只纏うだけでいいのに何故10分もかかるんだと思って居た、
仕方ないと言ってアノスは着替えをしている部屋の扉に向けて叩いてみるが・・・
何も反応はなかった。
「・・・妙だな。」
アノスはそう呟いた、つんけんな態度をするサーシャなら未だしもミーシャ迄もが
返事しないのは可笑しいと考えたアノスは扉を開けるとそこで目にしたのは・・・
ミーシャが右胸にナイフが突き刺さった状態で膝を付いていた。
然も直ぐに治療させないようにミーシャの周りには魔法障壁が張り巡らされていたのだ。
「あら?ようやく出てきたのね??随分素直に言う事を聞いたものだわ。」
「!」
アノスは背後からの声を聴いて振り向くとそこで目にしたのは・・・王笏を手に持ち
不死鳥の法衣を身に纏ったサーシャがそこにいた。
それを見たアノスは何の真似だと聞くとサーシャは嘲笑するかのようにこう言った。
「ふん、馬鹿みたいだわ。ちょっとぐらい仲良くしてやっただけで簡単に
騙されるんだもの、この私が。本当にそんなガラクタ人形と仲良くしたいとでも思った?
全部このダンジョン試験で一位になる為のお芝居に決まってるじゃない!」
それを聞いてアノスの目つきが少し細くなるがサーシャは更にこう続けた。
「男なんて単純だわ、ちょっとキスしただけでコロッと騙されるんだもの。私が
貴方みたいな雑種・・・いいえ、不適合者を好きになるとでも思ったのかしら?」
そう言いながら笑うサーシャに対してアノスはこう返した。
「・・・随分と縁起が上手いんだなサーシャ、将来は舞台女優として間違いなく
賞賛されるだろうな。」
「・・・どういう意味なのかしら今のは?」
サーシャはアノスの言葉に対して若干怯んだ様子でアノスを睨み返すがアノスは
その視線に対してまるで意もかいさんと言わんばかりにこう返した。
「何、縁起が上手そうだとしか見えなかったからな。」
「そうよ?名演技でしょ、貴方の力を利用してダンジョン試験をクリアして
この王笏を手に入れることが目的」
「だが裏切るにしては中途半端だ、プレゼントを貰ってからミーシャをナイフで
刺しているようだが其れなら先ずミーシャを殺してその後に組成できないように体を
バラバラに引き裂いてバラバラにした箇所を一つずつ探し出せないように世界中に
ばら撒いてようやく序の口だ。だが何故それをしなかったのだナイフで胸を
撫でた程度では悪戯程度で笑えんな。」
「・・・笑えないのはあんたの方ヨ、バラバラにして世界中に撒くってそんな事を
短時間で出来ないでしょうって言うかアンタ何でそんな怖い事を平気で言えるのよ
あんたの精神マジで可笑しいわよ!!」
サーシャは顔を顰め乍ら意見するが当たり前だ、誰もがそう思うであろうが悲しいかな其れに対して指摘する人間もツッコミを入れてくれる人間もいなかった。
「其れに・・・例えお前が王笏を持っているとしてもお前が俺の班員である限りは無
駄なはずだが?」
そう言って来た、王笏を手に出来るのは班のリーダーだけでありサーシャには
それを手にしたとしても所有権はアノスだけなのだ。
するとサーシャはじゃあと言ってこう続けた。
「『ゼクト』を破棄するわ。」
そう言ったと同時にサーシャの目の前に魔法陣が浮かび上がって来た、如何やら以前ミーシャと『ゼクト』した時に交わした魔力が・・・消えたのだ。
本来だったら『ゼクト』で交わした事柄は絶対であり原則両者の合意が無ければ
破棄する事が出来ないはずなのに何故其れが破棄できたのかをアノスは瞬時にその答えを導きだした。
「成程そう言う事か、興味深いな。」
「貴方・・・本当に頭が可笑しいようね、その子を放っておいたら出血多量で
死ぬわよ。あんたにそんな余裕は無いはずよ?」
サーシャはまるで追い詰められたかのような表情をしながらそう言うとアノスは
そうだなと言ってサーシャに対してこう言った。
「少し度の過ぎた姉妹喧嘩の様だがお前は・・・何を焦っている?」
それを聞いてサーシャは・・・怒気を込めてこう言った。
「そんなガラクタを妹だとは一度も思ったことはないわ!そいつはね、私に
利用されるために生まれてきたのよ!!使うだけ使い潰して後は襤褸雑巾の様に
棄てられる哀れで惨めな魔法人形?!そいつは何時も何時も私の言葉に騙されるのよ!
許しなんて無いしアンタと私が手を取り合う未来何て欠片ほども無いわ!!
もう使い道は無いと思って居たけどそこの雑種を騙すのに役立ってくれるし
良い事尽くめよ?!私はね・・・貴方のその良い子ぶったその態度が・・・存在が・・・あんたを見るたびに私は虫唾が走る程大嫌い」
「ならば何故お前は『破邪の魔眼』を使わないのだ?」
アノスはそう言って自身の『 破邪の魔眼』を開けるとアノスはサーシャに対して
こう言った。
「お前は何を隠して何からミーシャを守っているのだ?」
次回はサーシャの答え。