転生モブ女子がハリーに恋しちゃうと大変だよねって話。いつかは幸せにしてあげたい。
私の中でハリーは、面食いだけど差別はしない、無自覚紳士君なので。
グリフィンドール。勇気ある者が過ごす寮。
名誉あるこの寮へ組分けられた。正直、前世でこの世界の物語を読んだことがある…なんて言ったら、今まで以上に浮いてしまう気がする。
そもそも私は多分、この物語にはほとんど登場していないはずだ。物語の中心となる人々とは、幼少期からも一切関わりがなかった。聞き覚えがあるのはダンブルドア校長やホグワーツについてのみ。
ハリーポッターという少年が、例のあの人を倒してから10年。私にもホグワーツから手紙が届いた。
しかし、前世で読んだ物語に登場する私は、どの寮だったのかすらわからなかったのだ。恐らくその程度の人物。物語にはほとんど関わっていないモブキャラクターというわけだ。
あれよあれよと準備は進み、私は遂にホグワーツへ入学することになった。
元々私の家は純血家系だった。だが母親は既に亡くなっており、魔法省の癒学管轄部で働く父と二人暮らし。特別裕福なわけでも、貧乏なわけでもない。
髪色はダークブラウン、普段はストレートのロングヘア。しかし髪が細い分痛みやすく、最近ではダメージが目立っている。瞳も同じダークブラウン、目鼻立ちは整っているが、視力が悪いため分厚い眼鏡が手離せない。
色白だった肌も、母譲りらしいデリケートな肌の影響で、昔からなんというか…「肌荒れしやすい女の子」だった。ニキビが顔に広がり始めてからは、広がりやすい髪の毛も常に垂らし、顔周りを隠そうと躍起になった。
清潔感を保つ為の努力は人一倍したし、スキンケアも10歳の子にしては異常なくらい熱心に取り組んだ。
それでも消えないニキビ達に対して、一定の諦めを持った私は、人と関わることが減っていった。
前世では日本という割と穏やかな人間社会に居たためか、外国の人々がどれだけ意思を主張するものなのか…つまり、どれだけ無神経に指摘してくるかということを理解できていなかった。
入学して早々に、グリフィンドールを始め多くの学生達から、「あのニキビ面はなんだ」「お気の毒な容姿」なとと後ろ指や陰口、揶揄の対象になってしまったのだ。
オブラートに包む表現とやらを知らない彼らの態度や言葉は、私にとって劇薬のような役割を果たした。
あんなにも憧れていた世界、行きたくて堪らなかった学校だったのに、まるで暗くて深い闇に閉じ込められたような感覚に陥るほど、私の心を蝕んでいった。
「おい、エロイーズ・ミジョンのニキビ面なんてお昼前に見るもんじゃないな。」
「全くだ、お陰で食欲減退さ…」
そう、見知らぬ学生達からの言葉は日常茶飯事なのだから。