グリフィンドールの片隅で   作:モチコ

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拙い話ですが、良ければお付き合い下さい。


トモダチ

 

ヘドウィグは最近狩に出ていることが多いから、今日はホグワーツの森ふくろう達とのんびり過ごそう。

 

 

そんな事を考えながらふくろう小屋へ向かう途中、なんとハリーがロンと共にこちらへ向かってくる姿が見えた。

 

 

 

ま、まずい…。

 

 

 

そう思い、慌てて方向転換しようとしたところで、残念なことにロン・ウィーズリーと目が合ってしまった。

 

 

「エロイーズだ」

 

 

親友の呟きにこちらへハリーも目を向ける。

 

「…あぁ、久しぶり。君もふくろう小屋?」

 

穏やかにハリーが問いかける。

 

「えっと……そのつもりだったんだけ」

 

「おいハリー、魔法薬学のレポートっていつまでだっけ?」

 

 

急に私の言葉を遮ったロンが、思い出したように立ち止まる。

 

「…はぁ、明日までだって。さっきハーマイオニーが言ってたろ?」

 

ハリーは呆れたように答え、肩をすくめている。

 

 

「嘘言うな。アイツの時間割は狂ってるぜ。正直あんなの信用出来ないだろ?」

 

「まぁね…。でも、僕も明日までってメモしてあったから、これは本当。ハーマイオニーは正しいよ。」

 

 

「それじゃあれか?二人して、僕にだけは課題の期限を黙ってたのか!!酷いぜ、おい…こんなの…裏切りだ…」

 

ブツブツ言いながら、ロンは足早に談話室の方へと戻っていく。

 

「ロンのやつ、昨日もチェスに夢中で聞こうとしなかっただけのくせに、全く…。」

 

ハリーは苦笑いでエロイーズの方を見る。

 

「…目的地は同じだし、一緒に行こうか?」

 

何気ない提案。この間眼鏡を直してもらって以来、初めての会話だった。彼はそれを、覚えているだろうか。

 

「えぇ、そうね…」

 

 

二人でふくろう小屋へ向かうこととなったのは良いが、突然のことで内心動揺が収まらない。

 

次に二人で話せるときがあれば、こんな話をしよう。どうやって声をかけよう。そんな風に悠長に考えている時間がどれだけ幸せだったか。

 

いざ憧れのハリーと並んで歩いてみると、どうやって進めばふくろう小屋へ着くのか、さっぱりわからなくなってしまうような、とにかくいつもの自分で居られない状態が続いてしまう。

 

時折彼が、何か言いたそうにしていたり、隣の私が何か言い出すのを待っているかのような気もした。

…気がしただけで、本当の所はわからないけれど。

 

ふくろう小屋への最後の階段へ向かう途中で、ようやくハリーが口を開いた。

 

「……最近、エロイーズもよく談話室に居るよね。」

 

「え、そうかな…?」

 

「そうだよ。ほら、ラベンダー達と一緒に。」

 

そう言われて、ようやく思い当たる節があることに気付いた。

 

つまり今日のような、談話室で突発的に開催される、強制参加の女子力講座を受講させられている姿について話しているらしい。

 

ハリー達は、ラベンダー達のお気に入りのソファーとはかなり遠い位置にある暖炉に居ることが多いが、そんな場所からでも視界に入るほど、私は浮いていたのだろうか。

そうだとしたらかなり落ち込む。

 

「友達とか、君は要らないのかと思ってたよ」

 

「………?」

 

下を向き、少し気まずそうにしているハリーの姿が見える。

 

「覚えてないかもしれないけど」

 

「去年、君と僕が初めて話をしたあと、本当は…」

 

少しの沈黙。

ふくろう小屋へ向かう二人の足はもう随分前から止まっている。

 

 

「君とも仲良くなれたら良かったのになって」

 

柔らかな日光とは真逆の、キンとした冷たい風。

室内とは言えない外階段の踊場。

上がればすぐに、癒しのふくろう小屋がある。

けれど、足は進まない。目の前の彼の言葉を、一つ一つ、聞き逃すまいとすることで精一杯だった。

 

「…あれから時々、思ってて」

 

「でも君は、友人を作るの…嫌がってるように見えたし」

 

「その、もし君が良ければなんだけど」

 

「僕達、友達に…なれたりする?」

 

 

友達…トモダチ…ともだち…

 

 

ハリーとこんなに長い間話したのは初めてで。

彼がこんなにそわそわしているのを見るのも初めてだった。

 

 

2年生の時、僕にはロンとハーマイオニーしか仲間が居ないと思った。

勝手に思い込んで、勝手にイライラして、周りを巻き込んだ。

あの時、君がくれた言葉が無ければ、後悔はもっと強く、苦しいものだったと思う。

 

 

黙ったままの私にも、そうして話してくれるから。

今まで知ることの無かった彼の気持ちを知った。

改めて、とても真っ直ぐな人だと思った。

 

私みたいに、変にひねくれたりしていない。

それがとても羨ましくて、眩しくて。

目の前に差し出された、この手を取りたいと強く願った。

 

 

「感謝してるってこと、いつか伝えたかったんだ」

 

私の方を見た彼が、焦ったように続ける。

 

「あー…!急に変なこと言ってごめん。困るよね。…そろそろ行こうか。」

 

少し悲しそうな表情で、階段を上っていく。

主人公だから、深く関わってはいけないとか、

脇役なのに、恋してしまったとか、

もうそんなこと、どうでもいい。

 

 

 

「…ハリー!違うのよ。色々混乱してて…」

 

「あの、私も…ハリーと友達に、なりたい」

 

「私で良ければ、だけどね…。」

 

 

 

驚いた様に振り向いた彼は、少し照れ臭そうにしてから、

 

 

「…じゃあ、今度は談話室でゆっくり話そう。…立ち話ばかりじゃ、悪いからね。」

 

 

そう言うと、ニヤッと笑って、今度こそ、目的地であるふくろう小屋の扉を開けたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 








な、長くなってもうた

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