IS Infinite Stratos 《炎翼》の輝き 作:クレイモア地雷
第一アリーナの中央に佇むセシリア・オルコット。無表情の裏には隠し切れない暗い感情が渦巻いていた。
彼女の脳裏に浮かぶのは二人の視線。一人は敵意を、一人は嘲笑を。彼女がこの一週間毎日事あるごとにフラッシュバックして来たことだった。
(見ていてくださいませ。お母さま。きっとこのわたくしが憎き男を打倒して、そして...
そして、どうなる?
彼女の両親は死んだ。
この事実は覆らない。
わたくしは、男を倒して、そして、それから何をしようと...
答えは、出なかった。なぜなら打倒すべき敵の一人、雪村悠一がAピットから姿を現したから。
余分な思考を消して目の前の敵に集中する。敵の顔は深くうつむいていて見えなかった。
きっと怖じ気いるのだろう。
対する雪村はゆっくりと顔を上げる。そこにはこれからの試合には、多少の興味こそあれど、本気で自分の気を引くものはない、という怠惰な顔をしていた。
「始める前に一つあやまっときゃならないんだけどさ、自分は時間を引き伸ばせ、っていう役目を仰せつかってんのね」
「だから、本気で戦えなくて悪りぃな、って話」
この試合は、本来セシリア・オルコットと織斑一夏のもの。
だから、自分は早々に御退場する、という明らかな上から目線の
それはセシリアの逆鱗を、容易く踏み抜いた。
第一アリーナのAピット。そこで織斑一夏は雪村悠一とセシリア・オルコットの試合を観戦していた。
雪村のISは黒く、紅いラインが縦横無尽に走っている。そして鴉の翼を思わせるような大型スラスターが四基、補助の小型スラスターが二基付いていた。そして最大の特徴として、スラスターの合間合間に取り付けられた、六つの何らかの
カウントダウンが切られ、試合が始まる。
額に青筋を浮かべたオルコットがひたすらかつ正確な射撃を行ってくる。しかし雪村のアクションは右上部の放出口から何かを噴出させただけだった。目にもとまらぬ高速で振り回されたそれはオルコットのレーザーを全て消滅させていた。
セシリア・オルコットは困惑していた。自分が撃ったレーザーが、相手から見て左上部のスラスター、の上部の穴から出た何かに一瞬でかき消されたのだ。ハイパーセンサーで確認したそれは、セシリアにとって全く理解が及ばないものだったからだ。
(炎...?何でその様な非効率的なものが?いえ、主武装としては確かにありますが、その場合は前面に装備が展開させるはず。そしてあんな縦横無尽にねじ曲がったりしません。あれはいったい...?)
思考している間も射撃の手は休まない。ひたすら弾幕を張るかのように引き金を引き、しかしそれは雪村の不可思議な炎に消し飛ばされていく。セシリアは次の手を切ることにした。
「お行きなさい、ブルーティアーズ!」
ブルーティアーズ。それはこの機体の由来でもあり、ビットやスラスターとしても活躍する自立兵器。
そのうち四つが自機からパージし、雪村の周囲を取り囲む。
対して雪村は茫と突っ立っているだけだ。
「その余裕、いつまで持ちますか見物ですわ!」
取り囲んだビットが同時にレーザーを発射した瞬間、雪村の炎によって同時に四つのビットが破壊された。
セシリアが息を吞む。会場が静まり返る。ありえない、と。
雪村一人がただ動く。まるでただ一人、世界で動くことが許されているかのように。
≪炎翼≫を放出しながら雪村は自信なさげに呟く。
「さっき織斑に大口叩いちゃったけど...大丈夫かこれ。四十分持つかなぁ?」
「...ま、精々かかってこい、代表候補生」
「そんな弱っちいと、ご尊父も悲しむぜ」
雪村「孤高、才能、圧勝ォォ!」
「またオレ何かやっちゃいました?」
こんな小説でも見に来て下さる皆様に感謝を。