IS Infinite Stratos 《炎翼》の輝き   作:クレイモア地雷

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Ver.18 戦闘と灼熱/一枚下の地獄

遂にその日が、きた。そう、かの朴念仁が罪を数える日だ。数日前に一夏に宣戦布告をして以来この日をずっと待ちわびてきた少女がいた。

 

そう、誰あろう凰鈴音である。長かった。非常に長かった。小5から中2までの3年間。中2から今日までの3年間。積もりに積もった情欲と恋慕、そしていつまで経ってもこちらを振り向かないもどかしさと腹立たしさ、それに突っ込んでゆけない自分のもどかしさの念、あるいは怨念は泰山をも上回り、長江よりも長かった。その清算が出来るという快感と試合前の興奮は彼女の目を二徹した翌朝の如くギラギラと輝かせ、口の端からはケンカ前のネコのような吐息がフシューッフシューッと漏れていた。

そう意気込んでいる彼女を客席からボーっと眺めている世界で二番目の男性IS操縦者。ベットで今日こそはのんびりしようとゴロゴロしていたのだが気づけば楯無に連れてこられ、雪村は心底迷惑そうに珈琲を啜っていた。

 

 

「悠一くんはどっちが勝つと思う?」

 

 

「さあね。未来なんて可能性は無限大だ。そんなもんは俺が知りたい。もしかしたら次の瞬間雷が降ってきて俺は焼け焦げて死ぬかもしれないな」

 

 

「そんなひねくれた答えを聞いているんじゃないのよ~」

 

 

手持ち無沙汰に雪村のほっぺをムニュムニュと動かす楯無。雪村はされるがままになっていた。————意外と柔らかいわねコレ。

 

 

「知ったこっちゃない。ま、善戦するだろうが織斑が劣勢になるだろうさ。凰の天才肌は織斑以上だ。ああ、でも意外と勝負はつかないかもね…聞けよ、ほっぺいじってないでさ」

 

 

「なるほどね…ああ、もう始まるわよ」

 

 

 

次の瞬間、けたたましいブザー音とともに試合の開始が宣言された。

 

 

 

 

 

試合開始とともに俺は真っ直ぐ突っ込んだ。ただ単にそれしかできないということもあったし、鈴に小細工は通用しない。そして鈴は第三世代のISに乗っている。もう単一仕様能力

ワンオフアビリティ

が発現しているだろうし、それが何なのかわからない以上、さっさと突っ込んで自分のテリトリーに引きずりこめ、って悠一が言ってた!…勘弁してくれ、俺の頭ではそこまで考えつかなかったんだ。

 

 

しかし鈴はそこはかとなく悠一と似た剣、双天牙月で俺と打ち合う。そのまま何合か打ち合わせる。…パワーが強いな、このままじゃ押し負ける!一度上に離して距離を取る。…取ってしまった。

鈴の非固定浮遊部位が展開する。次の瞬間凄まじい不可視の衝撃が俺を襲う!

 

 

「な…なんだこれ!」

 

 

「見えない衝撃、龍砲。さあ、これの餌食になりなさい!」

 

 

そのまま連続でそれを発射してくる。連射性能と不可視のタッグが反則すぎるほどに効いていた。なす術なく2、3発喰らってしまった。ただ咄嗟に脳裏を検索する。見えない衝撃、ならば話は簡単だ。見えるようにして仕舞えばいい。とささやくミニ悠一。いやそれができりゃ苦労しないって!……あ、成る程。地

 

 

一夏はそのまま真下に急降下する。そして鈴の衝撃砲の回避と同時に地面を這うように駆け抜ける!

衝撃砲は土埃をまき散らし、その全容がなんとなくつかめた!

 

 

「な、なによその軌道!」

 

 

「これで…決める!」

 

 

そのまま下からかちあげるように零落白夜を振るい…

 

 

 

 

 

…漆黒の侵入者が、降ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…数分前、試合開始直後。

雪村は束からの通信が入り、席を外した。

 

 

「なんだ」

 

 

「あのね、ゆーくん。そっち今いっくんが試合してるでしょ」

 

 

「ああ、それが?」

 

 

「束さんそこに無人機を送り込んだんだけどね、」

 

 

「おいちょっと待て…いや、いいや。どうせ天災のお前のことだ。俺には分からん。それで?」

 

 

「≪炎翼≫の位置がつかめたんだけどね」

 

 

「おお、朗報」

 

 

「無人機、乗っ取られちゃった♪」

 

 

 

直後、ズガン!と凄まじい音と振動が第一アリーナを揺らす。そこには不気味な格好をしたISがたたずんでいた。わぁ、きっしょ。なんだろう、この鳥肌が立つ感じ。言葉にできない不快感。

 

 

「…お前って案外、デザインセンスねえんだな」

 

 

「う、うるさいうるさい!そこはどうでもいいじゃん!」

 

 

「で、俺はあいつの駆除?」

 

 

「そう、よろしく頼むよ。これは契約ね」

 

 

「逃がした癖によく言うよ、メタボリックシンドローム」

 

 

「…おいもっぺん言ってみ」

 

 

ブチリと回線を切った。ざまあみろ。そのまま服の下にこっそりと≪炎翼≫を現出させ、「超能力」を起動する。「傍聴」「透視」「視認」「観察」「統括」………ふんふむ、どうやらこのアリーナは完全に遮断されているのか。レベルは4とね。また、まだ完全に≪炎翼≫が無人機を乗っ取れていないことも分かった。ま、もって数分か。

よし、とりあえず扉を開けるか。俺はアリーナの外壁に≪炎翼≫を突っ込む。そしてアリーナ全体と「接続」「融合」させ、無理やり扉をこじ開ける!

 

 

 

 

その時だった。絶え間なく「視認」していた中で、全ての扉を開けたにも拘わらず、木刀片手にどっかに迷走していく篠ノ之箒を発見したのは。

 

 

…まてまてまてまてなんでこの学校はバカばっかなんだよ。ちょっとストップちょっとストップ!嗚呼、めんどくさい。実にめんどくさい。つかなんであの二人は避難しないんだよ。攻撃せずにSE保存しておきなさいよ、ああ、零落白夜出してんじゃないよ!!

 

 

「おい織斑、なんで零落白夜出した!?」

 

 

「は?だって倒さなくちゃいけないだろ!」

 

 

「分かる、分かるんだけどちげえよバカ。教職員が来るまであまりSEを減らすなっつってんの。それともお前の力だけでそれ、倒せると思った?」

 

 

「ああ、倒す。倒さなくちゃいけない!」

 

 

ああ、もう、イライラする。面倒ごとが重なりすぎだ。お前の頑張る性格は非常に理解できるがそれを今発揮する時間じゃないんだつか教師の緊急発進

スクランブル

が遅すぎる!

 

 

「ああそう、じゃ好きにしろ!死んでも知らねえぞ!」

 

 

「ああ、好きにさせてもらう」

 

 

だめだこいつは。早死にするタイプだ。力量差が全く見えてない。倒すことに集中しすぎで周りが見えてない。

 

 

「一夏ぁっ!」

 

 

次はなんだ…篠ノ之!?うっそだろおまえあのバカ何やってんだ!?

 

 

「男なら…その程度の敵に勝てなくてなんとする!」

 

 

今はそんなこと言ってる場合じゃねえだろ!

 

 

新たな熱源として放送室の篠ノ之を無人機がロックオンした。冗談だろオイ。

 

 

ハァ…しょうがない。本当にしょうがない。

 

 

バレたらそれまでだ。

 

 

 

 

 

次の瞬間、放送室は爆炎に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「箒ぃぃぃぃぃっっ!!」

 

 

まだ、箒が残ってたのに、噓だ、と脳が理解することを拒んでいた。

 

 

箒は死んでない、死んでない、死んで…

 

 

「う、うそ」

 

 

 

 

「さっさとけり付けろ、バカ」

 

 

「俺がいる。俺が来た。あとは好きにぶちかませ」

 

 

この声、いつも不機嫌そうな、というか今本気で切れてそうな声、

 

 

「いいから後ろだ!戦場で敵に背を向けるな!」

 

 

咄嗟に雪片弐式で受け止める。長い腕が俺をつぶしそうになっていた。

 

 

「私を忘れるんじゃないわよ!」

 

 

鈴がそれをはじく。そうだ、思いついた。

 

 

「鈴!俺の背中に衝撃砲を!」

 

 

「えっ!!なんで!!」

 

 

「いいから早く!」

 

 

「ああもう、どうなったって知らないわよ!」

 

 

悠一のを見て思いついた。瞬時加速(イグニッションブースト)

は取り込むエネルギーが多ければ多い程、それは速くなる!

 

 

「いっけぇ!」

 

 

超速の世界に飛び出した。フルチャージで放った零落白夜は見立て通り胴を真っ二つにぶった切り、大量の血液ではなく、部品をまき散らした。同時に限界を超えた俺と鈴のISが解除された。

 

 

「やった、勝った、おい悠一見ていてくれたか…」

 

 

 

 

 

 

 

ハイパーセンサーが何かをとらえる。不気味な音が聞こえる。噓だ、という思いが脳内を駆け巡った。

 

 

 

 

 

真っ二つになった半身から炎が噴き出す。炎が絡み合い、元に戻っていく。

 

 

 

 

 

次の瞬間、今度は紅蓮の炎が蛇のように放たれた。咄嗟に目をつぶる。

 

 

 

 

 

————————それともお前の力だけでそれ、倒せると思った?

 

 

 

 

 

悠一の声が、今更のようにフラッシュバックした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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