IS Infinite Stratos 《炎翼》の輝き 作:クレイモア地雷
「ISの操縦技術について教えてほしいんだ」
と、釣りから数日たったある日の放課後、俺は突然篠ノ之に頼まれた。まぁ気持ちはわからなくもない。だけどね、
「俺に対価がないだろう?俺の放課後の貴重~な時間を割くんだ。せめて何らかの対価が欲しいんだけど」
「対価…」
「そうだ、対価だよ。それともまさか本気で…失礼、電話だ」
「もしもし、なにさ」
『受けろ』
「は?」
『だから受けろって言ってんの、箒ちゃんの話を』
「えぇ…どこから聞いてんのさ。ただの変態じゃないか」
『そんなどうでもいいことじゃなくて。これは契約だよ。君がこの世界で生きてゆく為にも。さもないとちーちゃんにバラすよ。ゆーくんが「超能力者」だって…』
「超能力者?」
雪村は携帯電話を切りつつ、片手で虚空をかき回しながら、話を必死にそらしてゆく。挙動不審なそれは、余裕がなくなっているのが一目でわかる状態だった。
「あーはいはいはいはい篠ノ之さんッ!!不承雪村悠一、この任務不本意ながら謹んでお受けさせて頂きます!」
「そ、そうか。それは良かったが…」
雪村の受難とは裏腹に、放課後はのんびりと過ぎていった。
「さて、始めんぞ」
数日後、無気力に呟かれたその言葉の発生源は誰あろう雪村悠一だった。ここトレーニングルームで雪村は篠ノ之箒の基礎的なパワーの確認から始めようと思ったのだ。篠ノ之は剣道をやっていることもあって少しばかりの筋肉はついていよう。本日は金曜日の放課後。時間はたっぷりと存在していた。
「さて篠ノ之。始める前に一つな。教えているのは俺だ。従え」
「案外雑だな…」
「どうでもいいだろ。つか、お前自身からは何の対価も貰っていない。別の人との契約だ、強くしてくれってな」
「誰が…」
「お前が嫌ってる奴だよ」
雪村のその言葉は箒に否が応でも一人の人物を思い出せさせた。世界を自分のもののように弄び、自分を一夏から話した不俱戴天の我が姉。篠ノ之束。
「雪村。それは…それは姉さん、篠ノ之束なのか?」
「そうだよ。あ、もしかして嫌ってる自分の姉がセッティングしたものだから受けないとでもいうつもりか?」
「ああ、そうだ。いくらこれがお前の指示でも…」
はあ、と雪村は息をつき
「自惚れるなめんどくさい」
と、返す。そのあまりにも適当な対応は箒の怒りに更にガソリンをぶちまけた。
「何がだ…何が自惚れるなだ!今まで散々見向きもしなかったくせに今度はお膳立てか?ふざけるな!」
「ふざけてんのはお前だ篠ノ之。何様だお前は。一体クラス対抗戦でどれほどの人間に迷惑をかけたと思っている。お前の身勝手な行動のせいでな、織斑と凰はお前が死ぬ瞬間を見せつけられたんだぞ」
「そ、それは…」
「ああ、別にお前が姉にどんな感情を抱いていても俺には関係ないしな。でもただ恨んでいても何の解決にもなんねえぞ。基本立ち止まっていても続きはない。殺す準備でもするなり姉を超える為に努力をしたりそれはお前の勝手だ。だけどな、師匠的立場の俺はお前が一応外道に堕ちないように見守る義務的なもんがあるからな、時々口出しはさせてもらうぞ。まあ得た結果はお前の自由だからな、お前ができればいい答えを得られるような努力は惜しまねえよ」
その答えはある意味では篠ノ之箒にとっての救いだったのかもしれない。この答えが姉に抱いていた劣等感から少しは解放されたのだから。この答えがこの先の未来にどう影響するのか、それは、まだ、誰にも計り知れないものだった。
再び数日後。雪村悠一が篠ノ之箒との訓練を取り付けて幾日か経った日のことだった。その日はいつも通りの一日が始まろうとしていて、クラスメイトは一部の例外を除き全員着席し、彼女たちの気品と調律を示していた。その一部の例外である雪村悠一は『ドグラ・マグラ 上巻』を枕に今日も寝こけていて、篠ノ之箒は凄まじい筋肉痛に身悶えつつ、辺りに湿布の匂いをまき散らしていた。そう、いつものように雪村は頭を叩かれ、HRが始まるという
織斑千冬と共に教室に入ってきたのは、小柄な銀髪の女子生徒とこの学校で二人しか着用していないはずの男子制服を着こんだ一人の金髪生徒だった。
「初めまして。シャルロット・デュノアといいます。よろしくお願いします。」
IS学園に降り立った金と銀。これが何を表し、「超能力者」に何を引き起こすのかは、まだ先の話。