IS Infinite Stratos 《炎翼》の輝き 作:クレイモア地雷
ごめんなさい。やっぱバイトと学校と教習所はきついわ。
俺はシャルルにつられて走っていた。なんでも鈴とセシリアがあの転校生と戦っている、と。でも二人を信じていない訳じゃないけど、あの転校生は強すぎる。もしかしたら二人でも勝てないかもしれないほどには。そうこうしている合間にも明らかに模擬戦では出ないはずの鋼鉄が拉げる音が断続的に響いていた。
「織斑先生ッ!今第一アリーナで!!」
「分かっている!今私もそちらに向かっているから早急に戦闘を止めさせろ!それとだ、織斑。いいか、お前は手を出すな!冷静な対応を心掛けろよ!!」
耳を触る千冬姉の声が今回ばかりは鬱陶しい。強引に回線を切断すると俺は更にギアを上げた。
俺は慌てて武道場と第一アリーナの手頃なドアを「接続」し、ピットに躍り出た。
「いい加減そこまでにしてもらおうか、ラウラ・ボーデヴィッヒ。それ以上はさすがに見過ごせないね」
「ほう、だれかと思ったらまともな意思疎通も不能な第二操縦者か。丁度いい。貴様もここで倒れろ腑抜け」
「嫌だね、めんどくさい。なんだってお前のエゴにつき合わされなきゃならないのさ。やるなら一人でやってなさいよ。腑抜けで結構だから――――――――」
そこで俺は一端言葉を切り、心底
「――――――――他人を巻き込むなよ間抜け。そんな態度じゃあ国力というものが知れるぞ代表候補生。
男の子の一人や二人呼び出すのによそに迷惑をかけてるんじゃ躾けた教官や国はさぞかし無能で無価値な三下なのだろうなぁ」
「…………いい覚悟だ雪村悠一。この私にそこまで吐いた罪。この世に一片の痕跡残さず消し潰す」
「やってみろよ、間抜け」
前提として雪村悠一はキレている。怒りを覆いつぶす為にいつも以上にべらべらべらべら廻る口が何よりの証拠だ。彼が嫌いなことは多々ある。神速の出席簿や一々小競り合う
その嫌いなことの一つという逆鱗にアッパーを喰らった雪村は決して顔こそ彼女への嘲りで覆い隠しているが、その実今にも≪炎翼≫を背中から顕現させて消し飛ばしたい欲に駆られていた。
そして相対するラウラ・ボーデヴィッヒもまたキレていた。ただでさえ百度殺しても殺したりない織斑一夏に加え人生そのものといっていいほどの存在である教官、織斑千冬を愚弄した雪村悠一。自分をからかっているだけなら彼女は痛い目にあわしただけで許しただろう。しかしさきほどの会話で自分の
ラウラ・ボーデヴィッヒが肩のレールカノンをぶっ放す。それが開幕の合図だった。≪炎翼≫だけを現出させた雪村は全身に「強化」をかけ、一直線にラウラへ飛びかかる。何かが飛んでくるのを第六感のみでよけたラウラはほとんど倒れこむように後ろによけた。だが≪炎翼≫六本は意思を持ったかのように、あるいは支配者の怒りを体現するようにラウラを弾き飛ばす。反対側の壁にめり込むように吹っ飛ばされたラウラは追撃してくる何かに備え、AICを発動させる。果たして飛んできたのはレールカノンの弾丸だった。雪村はいつの間にか自分のIS「プロミネンス」を起動していて、二人の傍らに立っている。
「悪いね、織斑じゃなくて」
「…い…え……すみません、雪村さん。あなた、から教わったものが、発揮できずに………」
「…………、いいから、今は寝ていなさいよ」
つつっ、と一筋のラインを目尻から引いた彼女は、ゆっくりと気絶した。それをずっと見守っていた雪村は徐に二人を抱きかかえるとスラスターに火を入れる。
「戦場で敵に背を向けるとはな。見下げ果てた精神だ。全く、私が今ここで消し潰さなくては気が済まん」
「ほーう、一々こんなことも見過ごせずにネチネチネチネチ文句を言うとはな。まるで道路にこびりついたガムの吐き捨てのようだ。どんな教育を受けてきたのかが分かるぞ。そしてそれにだ」
一呼吸置いた雪村がギロリ、とこちらをみた気がした。
「別にお前みたいなゴミカス如き、一々見なくても潰せるんだよな、俺」
めり込んで、地面に倒れ伏したラウラに全方向から何倍にも膨れ上がった≪炎翼≫が迫ってくる。
「なっ…!」
慌ててAICを発動するラウラ。しかし全くかすりもせずにそれは直撃すした。
「な、何故だ!AICの作動は問題ないはず、それなのに、なぜ!」
そのまま≪炎翼≫は纏わりつくように彼女の体をしばりあげる。何のこれしき、とばかりに振り払うラウラ。が、それは切断されず、それどころかもがけばもがくほど強く締め付ける。
「なあ羽虫。何で目立つことを嫌うこの俺がここまでキレてるかわかるかなぁ……まぁ分かるわけもないか。教えてやろうか?」
ラウラはそれには答えられなかった。≪炎翼≫がISの装甲をも融解させるだけの熱量を発しそれどころではなくなってきたからだ。
「なあ、答えろっつってんだよ、なあ」
まずい、このままでは、
「おい、答えろよ」
「おい」
「おい」
ベキベキベキベキャッッ!!と。
しかし、そのような未来は訪れなかった。
「おい…………!雪村!一端落ち着け!」
片割れが、主人公が、この状況を打破できる人間が漸く登場した。
最初は、ラウラを止め、みんなを助けるためだった。
けれど、いざこの場所についてみたら雪村が、人が変わったかのようにラウラを蹂躙している最中だった。
雪村しか使えないその際物中の際物
「やめろっ!!雪村っ!!」
と、一応は声をかけてみるものの、反応する気配すら見せなかった。ハイパーセンサーで雪村の顔を覗いてみてぞっとした。雪村は一切の感情を表に出していなかった。しかしながら顔は青筋が浮いている、など生易しい物ではなく、顔全体に張り巡らされるほどの、化け物の様な顔つきになっていた。
気づいたら体のほうが動いていた。
無論無事ではなく、機体を「貫通」した4本の≪炎翼≫がじりじりと白式を焼き焦がし、残り2本を受け止めている雪片弐型も悲鳴をあげていた。
そして、時は今に巻き戻る。現状状況は最悪と言っても過言ではなく、ラウラはISが解除され意識がぶっ飛んでおり、自分はあと少しで崩れる寸前である。 悠一は普段の飄々とした気配は全くなく、暴走状態のバーサーカーモード。どうしたら打破できる…!
と、急に通信が入る。
「束さん!?」
「いっくん!?ちょっと手伝ってもらえる!?もらうよ!?」
有無をいわさない、という強い口調の束さんの声が響いた。すると、悠一の動きが鈍くなる。今だ、と思う前に動いていた。無理矢理拘束を抜け出し、ほっと一息つく。
その一息が、命取りとなった。
悠一の背中から、
しかし、この状況で織斑一夏は雪村に≪炎翼≫を全部回せる、という大快挙を成し遂げたのだ。
その隙は暴走状態で思考力が干上がっている雪村には致命的だった。
凄まじい勢いですっ飛んできたショートブレード「葵」が装甲の解除された雪村にぶち当たる。そのまま雪村はゆっくりと倒れていった。
雪村嫌いなことリスト
言い換えれば逆鱗。
自分が価値を見出したものを第三者が壊してしまうこと
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妹の危機 必要とあらば地球吹き飛ぶ