IS Infinite Stratos 《炎翼》の輝き   作:クレイモア地雷

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夏休み。超ヒマ。


Ver.28 求道と求道/憎悪の果て

剣戟、剣戟、またまた剣戟。銃声が響き轟音が客席を揺らし、プラズマが空気を焼き大剣が大地を割る。

 

 試合が始まってまだ数分しかたっていないというのにもかかわらず、試合は見るものを引き寄せるような展開へと移り変わっている。強大な力をもつ代表候補生を前に一人目こと織斑一夏は果敢に食らいつき、その間を縫うかのようにフランスの三人目は相対する二人に銃撃を放っている。そしてそれをものともしないドイツの冷水。シャルル・デュノアの銃撃をAICで留め、突っ込んでくる織斑一夏を留め、退避する二人にワイヤーブレードで痛烈な一撃を放ってくる。彼彼女ら3人の熾烈な競争は見る者の心を大いに踊らさせていた。いや、一人忘れていた。奴は早々に自分の得物「靭葉(ゆぎのは)」をしまい、二丁のアサルトライフルで応戦していた。

 と、言っても雪村は今回開始直前にラウラ・ボーデウィッヒから、何もするな。貴様は一歩たりとも動くな。というより私の視界に入るなうざったらしい。とのご高説を賜ったため、拗ねてその辺を漂い、時に思い出したかのように弾を撃ち、流れ弾に見せかけて生徒会長のいるほうに撃つ。そんな事をずっと繰り返している。彼女からは後で覚えてなさいよ、という顔で睨まれた。 

彼は大変申し訳なさそうな顔を取り繕っていたがもちろん反省はしていない。後悔もしていない。このような人物を日本語では最低と呼称する。

 そんな閑人はいざ知らず、三人の戦闘は更に苛烈なものとなっていた。

 

 

 

 舞台は中盤へと移ろい変わりゆき、ラウラ・ボーデヴィッヒの内心は焦りを感じていた。というのも二人の連携が意外と攻めがたく、ここ一番のところで逃げられてしまっていたからだ。それは目の前を飛ぶ煩わしい蚊に寸前で逃げられてしまうと同義であり、彼女を烈火の如き憤怒へと導いていた。

 怒りは視野を狭窄させる。その間隙を突かれデュノア…といったか、フランスの代表候補生の連射が直撃してしまう。

 

 

「やった、シャル!」

 

 

…あああああッツ!!うざい汚い煩わしいッ!何故、何故この様な雑魚が、弱者が、貴様なんぞ教官の汚点に過ぎないというのに、この、この、この—————

 

 

「雪村ァァァァァァッッッ!!!」

 

 

「へい?」

 

 

「貴様も、貴様も手伝え、この害虫どもを捻り潰す…!」

 

 

「ああ、それは別にいいんだけど前方注意ね?」

 

 

その言葉を聞き、反射的に振り向くと、飛んでくるのは織村一夏とその手に掲げた二つの手榴弾。

ISの視野は確かに360°だ。しかしながら普段の、通常の生活で使っている視界なんて、たかが知れている。

 

 

だから、だからこそ彼女は自身の恥部であり、汚点であり、切り札をここで使う。

 

 

「なぁぁめぇぇるなあああぁぁぁぁ!!」

 

 

雄叫びとともに左目の眼帯が取れ落ちる。その下にあったのは黄金の瞳、人を超越するもの。

 

 

単品なら息を呑む程に美しいはずのそれは、彼女の銀髪赤目には致命的なまでに似合ってはいなく、むしろ彼女の肉体美を演出するのには邪魔ですらあった。

 

越界の瞳(ヴォータン・オージェ)。それは、脳への視覚信号伝達の爆発的な速度向上と、超高速戦闘状況下における動体反射の強化を目的とした肉眼へのナノマシン移植処理であり、もはや疑似ハイパーセンサーとも呼ぶべきそれは脳への途方もない負担と引き換えにもはや時間停止とも見間違うかの様な視界を手に入れる。そして彼女はそれをもって織斑一夏と手の内の手榴弾を同時に制止させようとして————

 

 

全身を、稲妻のような悪寒が駆け巡る。

 

 

背中に回っていたフランス候補生。その盾がはじけ飛び、第二世代中最凶の攻撃力を持つ兵装が飛び出してくる。

パイルバンカー「灰色の鱗殻(グレー・スケール)」。その威力は二つ名が保障している。

 

 

盾殺し(シールド・ピアーズ)……!!」

 

 

その一瞬が仇となる。一瞬目を話した隙に彼は離脱を終えていた。ご丁寧にレールカノン二丁を破壊するように置かれた二つの手榴弾によって。

 

 

 それは正に手術台の上にのし上げられた俎板の鯉に他ならなかった。無論この状態を逃す二人ではない。彼の白剣が割れ、中から澄んだ湖のような蒼白い光が漏れ出す。それ等が寄り集まり剣を形づくる。

 

 

「これで…終わりだッ……!」

 

 

――――――――終わる?この私が?

 

 

ふざけるな、ふざけるな。ふざけるな! 私が、私の、私のことを貶めた貴様を生かしておく理由などありはすまい!貴様をこの手で教官の前で無様に首をねじ切った後、なめ腐った根性をしている旧型のフランス候補生も必ずや縊り殺す!

この学園にたかるハエどもも同じだ。全員全くもって力を持つのに相応しくない。私自ら土からやり直させてやろう。まだだ。まだ足りん。教育もなっていない。教員どもの四肢を割いたうえで本国に送り返してやろう。最後に、最後に最も、最も最も最も憎き雪村悠一。貴様だけは早々に殺させん。指先から足先からじっくりじっくり燃やしつくしてやろう。全身の痛覚を同時に「起動」させるのも良い。生きるのに必要な器官のみを「回復」させつつ永遠に殺し続けるのも良い。そして教官の前で…!前で? 

 

 

 私は…私は何を言っているのだ?何故…何故ここまでの殺意を?

なんだ…なんなのだこの沸き起こる力は!嫌だ嫌だ嫌だこんなものは望んでいない!私が欲しいものは闇のどん底にいた私に、誰もが見捨てた私にたった一人手を伸ばしてくれた我が恩師に報いる為だというのに!私が望んだ力は教員を変えてしまった忌々しい織斑一夏と雪村悠一を殺す程度の力だというのに!誰か

 

 

誰か 助けて たすけ

 

 

 

 

 

『汝、自らの変革を望むか?』

 

 

 

 

私に力を。本体をも超える力を。

 

 

 

この時点で彼女の意識は消滅した。それに呼応して仕込まれていた二つのシステムが起動を始める。一つは彼女を道具として効率よく使い捨てるシステム。もう一つは

 

 

……ある人物への殺意のみで造られた、悪魔のシステム。

 

 

 

 

 

【Valkyrie Trace System】......boot.

 

 

 

 

≪炎翼≫ 起動。

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