IS Infinite Stratos 《炎翼》の輝き 作:クレイモア地雷
「……わかった」
彼の渾身の請願に対し、少年は簡潔に返答した。少年の足はがくがくと震え、もう片方は今にも死に絶えそうな満身状態だった。端から見れば誰もが即座に彼らは敗北と断ずるだろう。
だが。
だが、それが何だ。彼は助けを求め、少年はこれに答えた。ならば負ける道理などどこにもない。普段万能を謳う超越存在が欠け、そこを埋める幕引きの一撃。それはこの日この場所でしか
そして、もう一方の理由は至極単純なことだった。それこそ――
――――少女を助けるために命を張る男達が、負けるはずなどないのだから。
とはいえ、状況は相も変わらず絶望的だった。だが、二人は立ち止まれない。立ち止まらない。足に活を入れて立ち上がり、気力を以って剣を振るう。織村一夏がマシンガンのように射出された≪炎翼≫を即座に打払い、いつの間にか後ろに回っていた雪村が大剣とともに斬りかかる。しかし、ラウラの背中から再度噴き出した≪炎翼≫は容易く雪村を吹き飛ばす。立ち上がった織斑一夏の前に雪村がゴロゴロと転がってきた。
――「織斑」
その口は何も語らなかったが、その目は次に全霊をかけることを語っていた。
すなわち、殺すか、殺されるか。
――「分かった」
それに対し、完結に答える。今の二人にもはや言葉は不要だった。
次の瞬間、はじかれたように左右に別れた二人。右の雪村は≪炎翼≫を使い急上昇。そのまま≪靭葉≫を下に真っ逆さまに墜ちてきた。
左の下からは織斑。蛇のように奔った白光がかち上げるように腹部に食らいつく。
対する
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先程のように≪炎翼≫を絡ませる。圧縮した≪炎翼≫を解き放つ。
はずが。
ハイパーセンサーでコンマ数瞬意識を落とす。半壊したアリーナの天井。そのさらに上の太陽付近。
学園汎用機ラファール・リバイブに身を包み、白煙立ち昇るライフルを構えつづけるその姿。黄金に輝くその髪が、強く輝く碧い目が。決して折れぬ高嶺の花が。
そこに立っていた。
(……ありがとう、セシリア)
二人の思いが重なった瞬間、二つの
泥のような裡から抜け出す感覚があった。二人は身を起こし自身の安否を確認する。織斑一夏とラウラ・ボーテヴィッヒ。二人は今どことも知れない場所にいた。
15年間か、或いは1秒にも満たない時間だった。二人は互いに互いの人生を、汚点を、無力を、無様さを、欠点を、挫折と敗北を見た。
――そしてそこから無理矢理に歩き出せる芯の強さを見た。
互いが互いの努力を認めていた。胸に残る蟠りが消えてゆくのを共に感じていた。
「ところで、ここは……」
「私も初めての体験だ。恐らく……」
ISコアの同調。ここの異空間はそれが原因とラウラは推測する。実際、このような現象はどの教科書にも論文にも載ってなかった……気がする。いや、きっとそうだ。いや全く読んでないとかそんなんじゃないから。
ところで悠一はどうしたのだろうか。彼の姿がどこにも見当たらなかった。最後の記憶を参照にしてみても二人が同時に突っ込んでいったところで止まっていた。この現象がコアが深いところで接触したというのなら彼もこの場にいてもおかしくはないのだ。
そう思った瞬間、暗闇がひび割れ、ラウラと俺は激しい光に包まれた。
無限に続く蒼穹。そうとしか言い表せないようなところだった。いまだ現実ではないことは感覚で理解が出来る。何しろ二人が呼吸を失う程美しかったから。その不思議な空間に俺は千冬姉と昔観た映画、千と千尋の神隠しの海原電鉄のシーンをふと思い出した。
青々とした空。どこまでもどこまでも果てしなく続いている水平線。東の果てから立ち上る巨大な入道雲。水面の上に立っている俺たちの下には魚の群れが悠々と泳いでいた。
二人はしばし壮大さに圧倒され、立ち尽くしていた。
「……ここは?」
「残滓の寄せ集めだよ」
自分たちの疑問に応えるように、一本だけ生えていた木の後ろから一人の男が姿を現した。