それはともかく本編
ローグタウン。始まりと終わりの町。そんな風に呼ばれた町に降り立った私達。そこには見渡す限り人人人、人だらけ。私が目を覚ましてからこれほどの人だかりをみたのは、それこそ戦闘の時に見たくらいのものだ。いや、それよりは多いな
「…………………なに? 今日って祭りか何かなの?」
そう思ってしまうくらいには人間に溢れていた。別に人が嫌いとかそう言う訳じゃ無いのだけれど、これだけ目の前にいたら辟易するわね
「なに? レイム人混みは苦手?」
「…………なんでちょっと嬉しそうなのよ」
「いや別にそんなつもりないわよ。ただ、あなたにも苦手なものって有ったのねって思って」
「趣味悪いわよ」
これだけの広い町だ。各々やりたいことが有るようなので自由行動となった。ルフィは件の死刑台の見物、ナミは新しい服が欲しいらしく服屋に、ウソップは装備を整える為に雑貨屋やスーパーに、ゾロは折られた刀の代用品を手に入れるために武器屋へと向かっていった
さて、私はどうしようかしらね。ナミが一緒に行こう何て言ってくるが、めんどう事の気配がするのでパス、取り敢えず茶屋でも探してのんびりするかと思って散歩することにした。
「あっ」
「ん?」
そんなとき、どこかでみたことのある髪の赤い大女とバッタリ出くわした。その女は口に大量に物を詰め込んでいて、手には大きな紙袋を持っている。その女は不味いところを見られたっ!!?? みたいな顔をして、固まっている。
特に私からなにか言うこともないので、そいつの顔をじっと見ていると、なにを勘違いしたのか、苦虫を噛み潰した様な顔で
「た、食べますか?」
と、手の中の肉を差し出してきた
「いらないわよ」
「く、賄賂では屈しませんかッ……。仕方ない、かくなる上は……」
と、何やら拳を握り始めたので逃げることにした。めんどう事はごめんだ
「わー!! ちょっと待ってください!! なにが望みですか!! 出来ることならするんでサボりをバラさないでください!! 肉が嫌なら甘いものとかどうですか!!? そこに美味しいお団子出す店が有るんです!!」
「……………」
その言葉に足が止まる。そして大女に詰めよって
「奢りなら。手加減しないけど」
と言った。大女は冷や汗をかいていたが
✳
さて、紅美鈴の財布の中身を食い荒らし、隣で半べそかきながら財布を見ている美鈴。今は店内でお茶を啜っている所だ
「本当に手加減なしなんですね……えーっと……」
「霊夢よ、ご馳走さま。美味しかったわ美鈴」
「あ、ははー。ならよかったです霊夢さん。はぁ……」
意気消沈中の美鈴を横にそ知らぬ顔でお茶をもう一口。いい茶葉つかっているわね。
さて、いったい何を勘違いしたのか、海軍であるこの女が私にお茶を奢ってくれる理由なんか無い筈なのに。
「こ、これでどうにかスモーカーさんにチクるのだけは勘弁してくれませんかね? これ以上サボってるのバレたら今度は3等兵からやり直させる何て言われてまして………」
「なんでその事を海賊の私に言うのよ」
「…………………………え?……………………………え?」
なんか凄い顔をしている美鈴。随分と顔に考えが出るのね。言葉にすると『いやいやそりゃねーよジョニー』だ。ジョニーって誰よ
「いやいや、そりゃね無いですよジョニー。ってジョニーって誰ですか!!!」
「最近までうちにいた紙一重の片割れかしらねぇ」
美鈴は頭を振り回して、自らの過ちに気が付いたみたいだ。本当に何を勘違いしてたのだろう
「うぅ、そう言えばそうでした。私の交遊関係って海軍の上官か同僚か部下しか居ないんで、なんか勘違いしてましたよ…………。どうにも貴女は他人な気がしないもので………」
「奇遇ね、私もよ」
お茶を飲み干して小さく息を吐く。それなりに盛況しているみたいだし外に出た方がいいだろう。店に迷惑だ
そう思って立ち上がり、外に出ようと歩き出す。外に出ると少し肌寒く感じた。お茶で暖まったからかしら?
「待ってください!! 今のは演技、つまりお茶とお菓子で油断させ、不意を打つ為の演技です!! そうそれだ!! てなわけで覚悟!!!」
そんな悲鳴にも似た声が聞こえてきて、後ろを見ながら仰け反ると、目の前に拳が通過する。ってあぶな!!
反応が一瞬でも遅れれば直撃していたであろう拳、それを間一髪でかわせて、その勢いのまま後ろにバックステップ。見えたのは茶屋の入り口で拳を構える美鈴の姿だった
「っと、危ないわね。何すんのよ」
「うるさーーーーーい!!! 散々賄賂を渡しておいて、その相手が海賊だった時の私の気持ちがわかりますかーーーー!!!! もうこうなりゃ自棄ですヤケクソですよ!! ブタ箱突っ込んでやりますから覚悟してください!!!」
「んな滅茶苦茶な……………ッ!!!!」
速い。
かなりの距離を取っていた筈なのに一瞬で距離を詰められた。知覚できない速度じゃなかった筈なのに
「ハッ!! セィ!!! チョアッ!!!」
「く、この野郎……」
思ったよりも鋭い拳打が飛んでくる。一撃でも良いのを貰えば意識を刈り取られるぞ
いなし、かわし、受け流す。ほんの少し出来た隙に1歩半距離を取って、背中の『雪染』を引き抜きながら叩き付けた
しかし美鈴はその降り下ろしに対して拳で迎え撃つ。完全に合わせられ、刀の腹を横殴りにされて弾かれてしまった
「は、ハァ!!??」
『崩拳』
がら空きの胴に入り込まれ、腰だめに構えた拳を腹部に打ち付けられる。肉体を内から破壊するような衝撃を喰らい、私は吹き飛ばされる
内蔵をシェイクされるような感覚に口から乙女が出してはいけないものが出そうになるが耐え、刀を持つ反対の手で針を投げつけた。一息に6本、狙いはあの凶悪な拳だ
「そんなもの!!!」
投げつけた針を完全に見切り、その側面を殴って撃ち落とす。それを確認して、舌打ちをしながら受け身を取った。
「ケホ、ったいわね。…………あんたあの時、軍曹とか言われてなかった? 海軍の軍曹ってこんな強いの?」
正直、あの鉄拳とかネズミとか言うやつが大佐をやっている組織がそんなに強くないと思っていた。しかしどうにもそんなことはないらしい。階級と戦闘力は関係ないのね
「ふ、自慢じゃないですが、こう見えて私は戦闘力だけで中尉まで行った、全海兵の憧れ的な存在なのですよ!!」
「……………いや、もっかい聞くけど軍曹とか言われてなかった?」
「なのですよ!!!!!!!」
あぁ、聞くなって事らしい。この世界ってアホなやつほど強いのかしら?
「にしても私の『崩拳』を喰らって立ち上がるとは………これは私も本気を見せるしか有りませんね」
美鈴は大きくゆっくり息を吐くと、今までとはまるで違う目付きでこちらを睨み付けてきた。っ、凄い殺気ね
彼女の体から真っ赤な蒸気の様なものが沸き上がり、重心を低くして、いつでも飛び込んでこれる姿勢を取っている。これは迂闊に隙を見せたらヤバイわね
仕方ない。相手がその気ならこっちもやるまでだ。刀を正眼に構え、いつでも迎え撃てる様に相手に意識を集中する。
刀に巻かれた布は多分さっき弾かれた時にだろう破れ散ってしまっている、むしろちょうどいい
相手との距離は1メートル弱だ。間合い的にはこちらが有利だが、安心できる要素には成りはしない。チリチリと肌を焼くような殺気に身を焦がしながらその時を待った。
「あ、美鈴さ………」
その声がどこから聞こえてきたのか、誰の声だったのか、そんなことを気にする余裕はなかった
美鈴は黙視できる限界速度で移動し、私の間合いに入ろうとする。刀を合わせられなけれず、拳の間合いに入られたら手数で負けてしまう。私が刀を振り下ろしたその時
「スモーカーさんが怒ってましたよ。次はねェって」
ガチン、なんて音がした。いや、気がしただけだ。あれだけ滑らかに動いていた美鈴は、私の間合いに入るギリギリで動きを完全に止めていた。
そしてたっぷり10秒ほどかけて、ギリギリと首を声がした方に向ける
「……………た、タシギチャン?」
「はい。私的にもサボりすぎだと思ってましたし、そろそろ1回本格的にスモーカーさんに絞られてください」
その言葉を聞いた瞬間、美鈴は私の方なんか見向きもせずに走り出す。無論、たしぎと呼ばれた女と逆方向にだ
「あっ!!! ちょっと美鈴さん!!! 普通ここで逃げますか!!?? 逃げてもどうしようも有りませんよ!!!」
「嫌だーーーーー!!! あのモクモクで窒息はいやーーーーー!!!」
「美鈴さん!!! ちょっと本気で逃げないでください!! 減俸じゃ済みませんよ!! スモーカーさん本気で3等兵からやり直させるって言ってますよーーーー!!」
「減俸もいやーだーーーーーーー!!!!!」
さっきまでのあの殺気と存在感は何だったのか、彼女は耳を両手で押さえて首をいやいやと振りながら走っていってしまう。凄いな、ウソップとタメはれるぞあの逃げ足
「美鈴さん!!!!」
「いーーーーーやーーーーーーーー!!!!!!」
そしてそのまま二人は走っていってしまう。あの様子だとたしぎって子は追い付けそうにないわね………。
二人の姿が見えなくなって、いつのまにか集まっていた野次馬も解散し始めた頃、刀を背中に背負い直しながら小さくため息をついた
「なんだったのよ」
✳
茶屋の一件で他の海兵とかに囲まれる恐れが有りそうだ。そう思ってフラフラと歩いていると、迷った。まぁ適当に歩いていればボスの所につくだろう。
そう思って歩いていると、大通りにも関わらず少しずつ人が減ってきた。どこか嫌な予感がして、歩みを進めると、大きな広場に出て
「お」「あ」「ん」「ありゃ」
ルフィを除く他の連中とバッタリ出くわした。全員、目当てのものは買えたらしいわね
そしてその場にいない奴の話になって、死刑台を見に行くと言っていた話を思い出す。そして騒ぎになっている広場の中心にはその死刑台だ。そしてそこには体を固定されて殺されかかっているルフィの姿があった。あっはっはっはふざけんな
「あの赤っ鼻だれよ。なんかめっちゃ騒いでんだけど」
「道化のバギーって海賊よ。アンタに出会う前にちょっと揉めたの
あぁ、もうどうしてアイツは……………。いちいち騒ぎを起こさないと気がすまないわけ?」
「ごめん、今回はルフィに文句言えない」
ここに来る前に海兵と一戦やらかした私は、あの状況のルフィに文句を言うに言えない。いや、殺されそうには成ってないからやっぱルフィの方が悪い
私の言葉に訝しげな顔をしながらもツッコミを入れてる暇はないと思ったのだろう。彼女は焦った顔を浮かべて言う
「取り敢えず、戦闘出来るゾロとサンジくんとレイムはあのバカの救出。流石にあの状況じゃ殺されてもおかしくないわ。私とウソップは船の確保。説明してる暇はないけど、急がないと危ないの」
「危ない?」
「説明してる暇はないって言ってるでしょ!! 急ぎなさい!!」
そう言うとナミは走り始める。冗談半分な事態じゃ無いみたいね
「ゾロ、サンジ」
「あぁ」
「ったくしかたねぇなあのくそ船長は」
私達が走り始めたタイミングで死刑台で動きがある。赤っ鼻がなにやら呟いた後、ルフィが大声で叫んだんだ
『おれは!!!! 海賊王になる男だ!!!!!!』
周りがどよめき始める。なにかのショーだと思っていたのだろう、その台詞には野次馬達からも失笑が漏れる
そんなことは知っているんだ。なのになんでそんなところで捕まってるんだよあのバカは
「その死刑待て!!!」
私達の姿を認めたバギーとやらの手下たちが襲い掛かってくる。くそ、邪魔だ!!
針でサーベルを振り下ろそうとしているバギーを狙って投げる。距離が遠いが狙えないことはない。
投げた針は寸分たがわずバギーの脳天を捉えた
「よし、これで………」
そう口に出した時、嫌な予感がした。何故か解らない、だけど今の攻撃は効かない、そんな確信だ
「ダメだ!!! 死刑台を狙え!!」
ゾロの叫びにハッとする。突き刺さった筈の針はバギーを素通りして、彼はそれを全く気にせずに笑みを深くしていた。くそったれが!!!
「くそ野郎!!! 勝負しろォ!!!!」
「………………………………!!!!!」
雑兵に足止めされ、近付けない私達。針じゃ死刑台を崩せない………ッ!!!! なんとか近付いて殴り倒せば……………!!!
その時、喧騒が一瞬消える。そして何故かルフィの声だけが嫌にハッキリと聞こえてきた
『ゾロ!! サンジ!! レイム!! ウソップ!!! ナミ!!!
わりぃ、おれ死んだ』
っ、ざけんな!!!!!
バギーのサーベルが振り下ろされる。
なにを綺麗な顔して笑ってやがる。お前はこんなところで死ぬ男じゃないだろうが!! 海賊王になるんだろうが!!!!
✳
光が満ちた。その時、なにが起きたか私には理解できなかった。気が付いたら死刑台は崩れ落ちていた。その残骸の中心でルフィは落ちた麦わら帽子をかぶり直して口を開く
「なははは、やっぱ生きてた。もうけっ。あーよかった」
そこでようやく私は、どしゃ降りの雨に気が付いた。雷があの死刑台に落ちたのだ。
「おい、お前。神を信じるか?」
「バカ言ってねェでさっさとこの町から出るぞ。もう一騒動ありそうだ」
「同感。取り敢えずの障害は消えたんだから走るわよ」
海軍の連中が包囲しているのを感じる。まだ穴はあるわね。今なら逃げられる
勘で道を選ぶ。この道なら多分敵は少ないだろう
「逃げろォ!!!」
皆を先導しながら走り始める。さっきの光景を見て、何となく理解した。ルフィの道にはきっと困難が満ちているだろう。険しい旅になるだろう
だけどきっと、ルフィは海賊王になる男なんだ
今回はうどんげのターンだったのですが、ルフィが死にそうだったのと、美鈴出したしいいやと思って飛ばすことにしました
あれ? 今回で山越えるつもりだったのに。まだローグタウンだ