霊夢ちゃんのワンピース世界冒険録   作:壁の苔寺

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 パチェの説明回で彼女が剪定事象と言っている描写がありました。何の気なしに使ってしまいましたが、あれって型月の専門用語だったのですね。誤字報告で教えていただきました。ありがとうございます。修正しました。月姫リメイク、死ぬまでにはやりたいなぁ。あと、ps4版でメルブラやりたい……。FGOが売れてる内は無理か。


 ワンピース関係無さすぎるので、本編


伝説は始まった

 追い掛けてくる海兵達。逃げる私とルフィとゾロとサンジ。さっき雷が落ちる寸前くらいまでは晴れていたのに、今や雨粒に重さを感じるほどのどしゃ降りだ。風も強い

 包囲を突破したのはいいが、振り返ればとんでもない数の敵が押し寄せてきている。10や20じゃきかないわね。

 

「しつこいなあいつら。止まって戦うか?」

 

 ルフィの言葉に頷きたくなる衝動に耐える。雑兵を相手にする分には問題ないが、もしもあの中に紅美鈴が居ると面倒だ。戦って負けるとは思わないけど、確実に逃げれるかと聞かれれば頷きかねる

 

「向こうに手練れが混じっていたら面倒よ。ここに来るまでに戦った美鈴って奴はかなり出来るわ。あれと戦った後に包囲された雑兵を相手にしてたらいつまでたっても逃げきれないわよ」

 

「レイムちゃんの言う通りだぜ、キリがねェ。それにナミさんが早く船に戻れっつったんだ」

 

 あのナミが何もないのにそんなことを言うはずがない。私も早くこの島を出ないとまずいと何かが警鐘を鳴らしている。ますます強まる雨足と風と雷。それが予‘勘‘を裏付けている様だ

 

 隣でナミの姿を思い出したのか、突如としてクネクネし始めるサンジに軽蔑の眼差しを向けながらため息をつく。ふと、嫌な気を感じて前を見たら二人組の女がそこに立っていた

 

「ロロノア・ゾロ!!!!!!」

 

「霊夢さん!!!!」

 

 げ、あの女。待ち伏せしてやがった。頭に巨大なたんこぶをこさえているが、さっきの大女、紅美鈴だ。それに横にいるのは美鈴を追いかけていた女海兵じゃないか?

 

「あなたがロロノアで!!海賊だったとは!!! 私をからかってたんですね!!許せないっ!!!!」

 

「そーです!!許しません!!!あなたのせいで私は3ヵ月減俸ですよ!!! 絶対に許しませんからね!!!」

 

 なんかしょーもない恨みを買ったみたいね……。隣にたっている黒髪メガネの女は静かに刀を構えているのに、美鈴は鼻息荒く口から煙を吐いている

 

「ご指名よ? ゾロ」

 

「あぁ、みてェだな。どうする?」

 

「私的には逃げたい」

 

 あれを相手にするのは精神的にも肉体的にもめんどくさい。しかし逃げ込める路地も無いこの一本道、後が詰まっている以上、倒して進むかかわして進むかの2択だ

 

「お前!! あの娘達に何をした!! 事と次第によっては…………」

 

 サンジがゾロに対して怒りを向ける。ってか達って、片方は明らかに私の名前を呼んでただろうに

 

 敵は二人、片方はゾロをもう片方は私が目当てだ。仕方ない

 メガネの女と軽口を叩いているゾロに目配せ。ゾロは頷いてメガネの剣士に斬りかかった

 

 私は私で美鈴に刀を構えて突っ込む。なにやら喚いているサンジはルフィに任せて、すれ違いざまに腹部に刀を叩き込んだ。しかし腹筋だけで止められる

 

「私のお給金の敵です!! 二度と朝日を拝めると思わない事ですね」

 

「私怨にまみれ過ぎでしょあんた………っ」

 

 なんつー腹筋してんだこの女。鉄板でも仕込んでるって言われた方がまだ納得出来るぞ

 

「もはや欠片の慈悲もありません。本気です!!」

 

「ッ!!!!???」

 

 突如として美鈴の体から赤い蒸気の様なものが沸き上がる。ルフィやさっきのバギーってやつと同じ様な能力者かと思って距離を取る。しかし美鈴は離されてたまるかとでも言うように近付いて来た。くそ、離せない

 

「っの、」

 

「貰いました!!」『紅砲ッ!!!!』

 

 ミシリ、と骨が軋む音が自分の中から聞こえてきた。内蔵を揺らされ、肋骨に大きなダメージが入る。だけど大丈夫だ、折れていない

 隙の少ないショートアッパーで助かった。体は少し浮くような威力の一撃だが、見た目ほどのダメージはない

 

「舐めん…………なっ!!!」

 

「んな!!??」

 

 意識を刈り取ったつもりだったのか、私の肘は美鈴の脳天に直撃する。地面に降りて、足払いを仕掛けるが転ばせる所か仕掛けたこっちの足が痛んだくらいだ

 

「そんなもの………ッ!!??」

 

 ならもういい、肉弾戦はやめだ。手に持った刀に力を込めて、それを美鈴に向ける

 美鈴の腹部に紋章が浮かび上がり、それが美鈴の体を拘束する。くそ、全身の動きを止めるのはキツいわね………

 

「そんな、能力者……っ!!?」

 

「おかしな実は食べてないけどね………ッ!!!!」

 

 アーロンの時と違って、私の体調は万全に近い。それが関係あるのか解らないが、あの時より長い時間止めることが出来ている。これなら………

 

『刀劇、二重結界!!』

 

 一発目で相手を拘束し隙を作り、本気の二発目で相手を沈める。二発目に全開の封印を施すことで相手を完全に封じ込める技だ。相手を拘束する力は込めた力に依存する

 

 二発目の必殺を喰らった美鈴の周囲に、彼女の腹部に浮かんでいるのと同じ様な紋章が浮かび上がり、美鈴を拘束する。よし、これでなんとかなるだろう。とっとと勝ち逃げしたい

 

 その時、ギィンと何かが弾かれるような音がした。メガネの剣士の刀が吹っ飛ばされ、ゾロに刀を突きつけられている。向こうも決着ね

 

「終わった? なら早く行くわよ」

 

「あぁ、随分と苦戦してたみたいだが大丈夫か?」

 

「してないわよ。どこ見てんのよ」

 

 周りにいる海兵はざわついているだけで向かってこない。この二人は向こうにとってかなりの戦力なのだろう。『たしぎ曹長が……負けた!!??』とか『美鈴軍曹が負けるなんて…………抜けてるから結構逃げられはしてるけど、あの人』とか言われてる。結構言われたい放題ねあいつ

 

「なぜ斬らない!!! 私が女だからですか………女が男よりも腕力がないからって、真剣勝負に手を抜かれるなんて屈辱です。いっそ男に生まれたかったなんて気持ち、あなたには解らないでしょうけど

 私は遊びで刀を持ってる訳じゃない!!!!」

 

 そこまで聞いたところでゾロが切れた。うんまぁ正直泣き言にしか聞こえない。そんなのどうでもいいって言い切れるくらい強ければいいんだから。

 

「てめェの存在が気に食わねェ!!!」

 

「なっ!!??」

 

 二人して子供みたいなことを言い合って喧嘩している。傍から聞いているとゾロの言い掛かりも甚だしいわね。

 

 さて、ぐだぐたしてる暇もないだろう。いつまでもこんな所にいたら本当に捕まってしまう。そうゾロに言おうと口を開いたとき、地響きの様な音が聞こえてきた

 

「………………………ォ………ォォ………」

 

 違う、声だ。その声はさっき封印したばかりの美鈴から聞こえてくる。そちらの方を見ると、地面に膝をついた状態で唸り声を上げている。口から息吹を吐き出しながら、彼女は四肢を黒く染めていった

 

「っ、なんかヤバイわね………。ゾロ、早く逃げるわよ」

 

「ったく……」

 

 美鈴の拘束が弱まっていっているのを感じる。もう、十秒も押さえてられないわね。今のうちに倒せばいいのだろうが、いまここにいる全員とやりあうのは不味い。具体的には遅れてナミに怒られる的な意味で

 

「あっ!! 待て!!!ロロノア!! そこの剣士も!!」

 

「待てと言って待つ奴がいるかっ!!」

 

 私とゾロは、動けない美鈴がいて動くに動けない女剣士を放って走り始める

 

「……ォ…オオオオォオオオオオりゃぁあアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」

 

 そんな美鈴の叫び声と、地面が砕ける様な音がしたのはもう、彼女たちが見えなくなった時だった

 

 

 うわ、怖。一瞬地震でも来たのかと思ったぞ

 

 それはともかく、ルフィと合流できた。風も雨もとんでもなくなってきている。このままだと港は封鎖されてしまう

 

 ようやくルフィ達の姿が見えたところで、凄まじい突風が吹き荒れる。追いかけてきていた兵士や、白い煙、あと私やルフィも吹き飛ばされてしまう

 

「うわわわわ!!!」

 

「レイム!! ったくしかたねェな!!」

 

 体重が軽い私じゃこの風には対応できない。バランスが取れなくて転げそうに成ったところをゾロに担がれる。ちなみに肩にだ。荷物みたい

 

「もうちょっと丁寧に運びなさいよ!!」

 

「うるせぇよ!!」

 

「このくそ野郎!!! レディーの扱いが成ってねぇよ!!」

 

 転がっているルフィも回収して港まで走り抜ける。見えた、ゴーイングメリー号だ。

 船の上にはウソップとナミの姿がある。出港の準備は出来ているみたいだ

 

「急げ急げ!!!! ロープが持たねェ!!!」

 

 ウソップの叫び声。ナミの怒声。転がり込む私達。息つく暇もないとはこの事だ。

 全員が乗ったのを確認して、帆を開く

 

「出港ォーーーーーーー!!!!!」

 

 ルフィの叫び声と共に、私達はローグタウンを、後にした

 

 

 

 

 

 

 

 

 どしゃ降りの雨と凄まじい風、島を抜けてもいっさい手加減してくれない天候に、空を仰ぐ

 

「うっひゃーっ船がひっくり返りそうだ」

 

 まさしくだ。こんな雨の中じゃお茶も飲めやしない。しかし海軍に捕まると言う、取り敢えずの危機は去った。そしてなんやかんや言いながら、次の目的地である偉大なる航路。その入り口がもう目の前まで来ていた

 

 その時、ナミが口を開いてある場所を指す。ナミが指差す方向に光が見えた。そこには灯台があって、その名前を‘導きの灯’と言うらしい

 

「あの光の先に偉大なる航路の入り口がある。どうする?」

 

 答えなんか決まっている。ウソップは少し足を震わせていたが、それでも笑顔を浮かべていた

 

「よっしゃ!! 偉大なる海に船を浮かべる進水式でもやろうか!!」

 

「進水式ってそういうのだっけ? よく知らないけど」

 

 いつものようにウソップがひよってなにか言っているが、まぁアイツはやるときはやる男だ。いざってときには震えてなんかいないだろう

 

 サンジが持ってきた大きな酒樽。それを甲板の上において、彼は雨で火が消えてしまったタバコをくわえながら、その上に脚を乗せた

 

「おれはオールブルーを見つけるために」

 

 ルフィはその横で、サンダルをはいた脚を乗せる

 

「おれは海賊王!!!」

 

 ゾロは笑みを浮かべて堂々と

 

「おれァ大剣豪に」

 

 ナミは普段見せないような挑発的な笑みで

 

「私は世界地図を描くために!!!」

 

 ウソップは震えながら、それでもしっかりとした足取りで

 

「お、お……おれは勇敢なる海の戦士になるため!!!」

 

 私はその横に立って、足袋をはいた足を酒樽の上に乗せる。きっと私は笑顔を浮かべているんだろう

 

「私は記憶を取り戻すために!!」

 

 全員の脚が乗ったところで、一瞬顔を見合わせる。そして

 

 

『いくぞ!!!偉大なる航路(グランドライン)!!!!!!!』

 

 

 全員の脚が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 山に突撃するらしい。この船きっての常識人であるナミが言うんだからきっとそうなのだろう。うん

 

「ナミ、疲れてるのね。仕方ないわ。いつもいつもこの常識はずれのアホ共の相手をしてるものね。大丈夫、私がついているわ」

 

「常識はずれの度合いで言えば、あなたもわりとどっこいどっこいな事理解してて言ってるのよね」

 

「っ!!??!!??!!!??!!!!????!!!!????」

 

 この連中と一緒にされた………ッ!!?? あまりの事態に半ば放心しているが、ナミの説明は続く。なぜわざわざ入り口から入らなければならないのかとか、どうやったら山に船で上れるのかとか

 

 何時ものようにルフィがボケはじめてコントが始まった時、ウソップが声をあげる

 

「おい!! 嵐が突然やんだぞ!!!」

 

 そのセリフに血相を変えたナミ。今すぐに嵐が吹き荒ぶ場所に戻せとの事だ。

 

「嫌よ、せっかく船も揺れなくなってお茶も落ち着いて飲めるのに」

 

「なんでアンタはこの一瞬でそこまで落ち着けるのよ!!!」

 

 最近、船で見つけた座布団に正座して、淹れたお茶を一口。はぁ、ここしばらく忙しかったから染みるわー……

 

 他の皆も、いやサンジだけはナミの言う通りさっきの場所に戻そうとしてるわね。それ以外の全員はなにもしていない。人の事言えないけど協調性の欠片もないわねぇ

 

「偉大なる航路はその海域を、さらにその2本の海域に挟み込まれて流れてるの。それがいま私達がいるこの無風の海域、凪の帯!!」

 

(カーム)ね、どうりで風がねェ。で? それが一体………?」

 

「要するにこの海は………ッ」

 

 その時、船が大きく揺れる。それはさっきまでの嵐で転覆しそうなものではなく、そこからさらわれている様な………

 

 

「海王類の…………巣なの………大型の………」 

 

 

 ‘なにか’の上に乗っていた。私達の船はその意味のわからないサイズの海王類とやらの頭の上に乗っている。その海王類のサイズたるや、私たちの船はそいつの小指程度しか無いだろう

 自分でも状況が全く意味がわからない。ウソップなんか泡吹いて倒れてるし、私も開いた口が塞がらない。なに食べたらこんな巨大な生物になるんだよ。

 

 私たちは帆船でオールもち、この船を持ち上げている海王類が海へ帰る瞬間を待った。あぁ確かにナミの言う通りだ。こんなところ命がいくらあっても足りない

 

 突如、その海王類は私たちを振り落とし、転覆の危機にさらされる。そしてなによりヤバイのがその衝撃でウソップが船から放り出されてしまったことだ。

 そのウソップを食べようとしてるのかなんなのか、これまた意味のわからないサイズのカエルが跳んでくる。お前のサイズだとウソップ一人食っても何の栄養にも成らないだろうに

 

「ウソップ!!!」

 

 ルフィが腕を伸ばしてウソップを救出する。私は針を構えてカエルの目玉に向けて投げつけた。どれだけ大きな生物でも、目玉なら効くだろう。

 針が突き刺さった瞬間、カエルは大暴れを始める。そのカエルのサイズはこの船の数十倍だ。それと同時にゴーイングメリー号は海へと着水する。幸いなことに誰も死なずに生きている

 

 さて、船の数十倍ものサイズのものが大暴れをすればどうなるか、そんなもの風呂に入ったことがある人間なら誰でも解る。

 

「……………………てへ?」

 

「てへじゃね………うわあぉあああああああ!!!!」

 

 船が流された。正直そんなことまで頭回ってなかった。大波に飲まれそうになるのを必死に堪えるゴーイングメリー号。今日のMVPは間違いなくお前だ

 

 しかし運が良かった。その流された方向がもとの嵐が吹き荒れる場所。あれが反対側とかだったりしたら命がなかった。マジで

 

「レイム………お願いだから後と先を考えて行動して………死んじゃう」

 

「今、身をもって体験したところよ……。あぁどしゃ降りの大嵐最高……」

 

 さて、戻ってきた以上遮るものは無い。あの海域を抜けるくらいなら山でも何でも登ってやる。

 

 

 ナミは偉大なる航路の入り口であるリヴァース・マウンテンを登る理屈について話している

 つまりはあの不思議山はなんかイロイロ難しい理屈があって、不思議な冬島だから失敗すれば海の藻屑らしい。うん解った

 

「ははーん、要するに‘不思議山’なんだな?」

 

「ねぇナミ。自分の理解度がルフィと同レベルなことに危機感を感じた方がいいと思う?」

 

「そうね、レイムは今度暇なときに勉強でもしましょうか」

 

 少し落ち込んでナミに教えを請うことにした。くそぅ

 取り敢えず今は、上手いこと海流に乗って山に登らないと死ぬってことだ。さすがは世界で、もっとも偉大な海。入り口からふるい落としに来るわね

 

 その時、それが見える。あきれるほど巨大な大地の壁。雲をぶち抜くほどとんでもなく高い壁だ

 そしてもうひとつ。ナミが言っていることは正しかった。海が山を登ってる。不思議で不可思議で、それでもそんな光景に心を奪われている自分がいる。はは、面白い!!

 

「お、おい!! ずれてるぞ!! もうちょっと右、右!!」 

 

 もうこの船は海流に乗ってしまっている。船が出る速度ではあり得ない様な速度でゴーイングメリー号は疾走している

 ルフィが叫んだ声を聞いて、私とサンジで舵を取る。右ってことはこっちね。

 

「お、おいレイムちゃん!! 面舵だ面舵!! それだと左に……」

 

「え?」

 

 だって私から見て右じゃないの。サンジは手前に、私も手前に力を込めていた。

 ちなみにこの船は結構古い。そして私はあの『雪染』を手に入れてから自分の身体能力をある程度強化できる。バカ力だ。サンジは言わずもがな。そんな二人が反対方向に古びた木で出来た舵を引っ張りあったらどうなるか、

 

 折れた

 

「あっ………」

 

 今日の私ダメだ。もう止まれない。ゴーイングメリー号はその速度のまま支柱に向かって突っ込んでいく!!

 

『ゴムゴムの風船っ!!!』

 

 ルフィが膨らんだ。

 膨らんだ、ルフィは船と支柱の間にはさまってクッションの役割をする。それでゴーイングメリー号は正規のルートに戻ることが出来た。

 

「ルフィ!!! 手を!!!」

 

 私のせいでルフィに面倒をかけた。せめて引っ張りあげないと気がすまない。空中で置き去りにされたルフィは腕を伸ばす。その手を私は掴むことが出来た

 

 もう障害はない。この船は偉大なる海路へと突き進む。そして山の頂上を越えて、偉大なる海路に飛び込んだ

 

 

 

 

 私はそれを確認して、倒れてしまった。あれ? 力が入らない………………?

 

 

 

 

▼▼▼

 

 

 

 

 気が付いたら、私はテントの様な建物の中で、ベッドに寝かされていた。泣きつかれ眠ってしまったらしい。

 私は腕で自分の体を抱きしめる。寝て覚めても私は何も思い出せないでいた

 

「う、うぅ…………」

 

 視界が滲む。止めようとしても涙が止まらない。心細くて寂しくて、せめて温もりを痛みをと思って抱きしめる力を強くした

 

「あ、起きたんだ。」

 

 その時、小さな羽の生えた女の子がこのテントに入ってくる。手にはお盆だ。上には美味しそうな匂いのするお粥

 

「ミルク粥だよ。食べれる?」

 

 体は正直なもので、お腹からくぅ~と間抜けな音を立てる。私は顔を真っ赤にしてから俯いて、こくりと頷いた。恥ずかしい……

 

 

 

 空腹から解放された私は少し落ち着くことが出来た。相変わらず何も思い出せず、その事を意識してしまうと泣きそうになってしまうが

 

「あ、ありがとう。美味しかったわ……」

 

「そう、それはよかったわ。それで………やっぱり名前も思い出せない?」

 

「うん………。」

 

「名前も思い出せないんじゃ不便ね。ふふん、じゃあお姉さんが名前をつけてあげる」

 

「お姉…………さん?」

 

 口角を上げたアイサは自信満々と言った表情で自分を指差している。

 

「あなたをここに居れるように、長に掛け合ってあげたんだ!! ………………まぁ実際に交渉してくれたのはラキだけど」

 

「えっと、ありがと。嬉しいよ。アイサお姉様」

 

「え? なにその響き。堪らない」 

 

 アイサがなにやら恍惚とした表情を浮かべているが大丈夫だろうか? 取り扱い苦笑しておくことにする

 

 それにしてもお姉様か。お姉様………なんで姉さんとかおねぇちゃんとかじゃなくてお姉様なんだろう。そう思ったとき、頭の奥がズキリと痛む。何か、本当大切ななにかを忘れてる。忘れちゃいけないのに

 

『お姉様…………どうして、お姉様……………?』

 

「う、あぁあ…………」

 

 ぐちゃりと歪む顔。引き裂かれる肉の音。内側から弾ける骨。死、死、死、死。

 目の前の山のような死体を認識して、意識がここじゃないどこかに持っていかれていると理解する。でも止められない。フラッシュバックで頭が割れそうに痛い

 

「フラン………………フラン……………あぁ、アアアアアアアアアアアア!!!!!!!!」

 

 帰らなきゃ。帰らなきゃならない。なぜ? どうして? 望郷? 違う、そんなことじゃない。私は早くあの娘を止めないと…………ッ

 

 その時、体を強く抱き締められた気がした。違う、気じゃない。

 

「大丈夫だよ。落ち着いて。ここには怖い人はいない。顔が怖い奴とか性格がダメな奴とかは居ても、あなたを傷つけるものなんかいない」

 

「あっ…………」

 

 戻ってこれた。心は落ち着いている。さっきまで見えていた、金髪の女の子。でも顔は思い出せない

 特徴的な宝石のような物が吊るされた翼。全てを呪う様な笑顔。そんなものだけを漠然と思い出すことが出来た

 

「…………アイサに助けられるのは2度目だ」

 

「ううん。……………あ、お姉様って呼びたかったら呼んでいいよ!! 今みたいになられたら困るけど………

 ところでさ、名前ないのって不便だよね!! それで………それでね!! あの、セキって名前どうかな!? 可愛くない?」

 

 勢いに押されて目を丸くしてしまう。でも、名前が無いのも不自由だし、確かにかわいい気がする。うん。

 

「ありがとうアイサ。これから私は記憶が戻るまでセキだよ」

 

 そう告げた時、アイサは元喜いっぱいに跳ねたのだった

 

 

 




 セキはセキレイから。アイサが鳥の名前なんで。自分と同じ様に、鳥のから名前をとろうと、鳥図鑑を必死に眺めてるアイサを想像すると萌える



 なんかお気に入りとかUAとか評価バーとか凄いことに…………嬉しい以上に驚きが勝ってます。ですが本当に嬉しいです!! ありがとうございます!! そして誤字脱字報告の有りがたさと自分のチェックの甘さに泣きながら喜んでます。
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