それはともかく本編
何をトチ狂ったのか、食べ過ぎで腹が凄いことになっているルフィが血相を変えて私とゾロに向かって怒りの言葉を叫んでる。凄まじく状況が読み込めないんだけれども、ゾロはこの状況を理解しているのかしら?このアホ面からして、理解してないわね。
状況を整理しよう。私達の後ろにはアラバスタの王女と呼ばれた女、この道をまっすぐ行けば海に出る事が出来る。そして私とゾロがポカンとした顔で立っていて、爆発するモジャモジャサングラスと全身をレモン一色で染めたテンションの高い女、そしてルフィが奥にいる。
そしてルフィが突然現れて私とゾロをぶっ飛ばすと言い出したのだ。全く意味が解らない
「てめェはまた何を訳のわからねぇ事を言い出すんだ!!」
「これはあれでしょ? ゾロ、あんたルフィの目の前の肉を取ったとかそんなんでしょ? バカバカしい………」
「うるせェ!!!! お前らみてェな恩知らずは俺がぶっ飛ばしてやる!!!」
おおっと? なにかよく解らない単語が出てきたぞ。恩知らずってなんのことよ。
「俺たちを歓迎してうまいもんいっぱい食わせてくれた親切な町のみんなを一人残らずお前らが斬ったんだ!!!」
あぁ、そう言う………頭いたい。取り敢えず開いた口が塞がらない。ゾロが白目をむきながら『いや、そりゃ斬ったがよ………』と小さく呟いたのがなおさら頭いたい。
「あのさルフィ。私は殆ど何にもしてないわよ?ってかアイツら全員……」
「言い訳すんなぁ!!!!!」
「ちょっ!!??」
ルフィが私の言葉を遮って突っ込んでくる。その拳はまっすぐ私の顔面に向かっていた。
舌打ちをしてからそれを辛うじて避ける。ギリギリだったそれは頬をかすめ、拳の先にあった建物は粉々に砕け散った。あれ喰らえば死ぬわね
その勢いのままゾロに向かって蹴りを放つルフィ。ゾロも避けるがやはりそれは必殺の威力を誇っている、よしふざけんな
「殺す気かぁ!!」
「あぁ、死ね!!」
「私はやってないって言ってんでしょうがこのバカが!! やるならゾロだけにしなさいよ!!」
「てめ、なに俺を売ろうとしてやが……」
「うるさーーーーい!!!」
ルフィの拳が連続して飛んでくる。一発一発がバカみたいに強い威力のそれにため息をつく暇もない。幸いな事に、ルフィは今は食べ過ぎで、体積がメチャクチャに増えてる分速度がそこまででもない。しかしこんなのいつまでも避けきれる物じゃ無いわよ。
なんだかもうムカついてきた。勘違いの元凶のゾロはともかく、私は最初に鉛玉をぶちこもうとして来た奴と、あと一人雑兵しか倒してないぞ。なのに何故こんな目に合わなければならないのか
遠くから何かを喋っている声が聞こえてくるが、そんなことより目の前のバカだ。もう怒った。全力の拘束封印でも叩き込んで大人しくさせてやる。そう思って刀に手をかけた時
「いい加減にしろてめェ!!!!!!!!」
ルフィを挟んで反対側からゾロの声が聞こえてきた。そしてそのまま巨大化したルフィに撥ね飛ばされる。轢かれると言ってもいいだろう。ついでになんか一緒に二人ほど撥ね飛ばされたが。
おそらくルフィは、キレたゾロに蹴り飛ばされでもしたのだろう。あのバカはお互いの位置を把握できないほど頭に血がのぼっていたのかしらね? 遠く方でゾロが小さく「あっ」とか言ってるのが聞こえてきたが、取り敢えず知ったことじゃない
ルフィとその他二名と一緒に建物に突っ込んで、そのまま壁に叩き付けられた私は地面に落ちた。そして寝転がりながら、なんでこんな痛い思いをしないといけないのか考えた
……………………………………………………………………ブチ
そして、私の中から何かがキレる音が聞こえてきた。轟音と爆音と共に飛んでいった女と、ボコボコに殴られまくっている男。その死に体を引き摺って、私に止めのつもりなのか、大きく拳を振り上げたルフィの腹に向かっておもっきり蹴りを叩き込んだ
『昇天脚ゥ!!!!』
「うおぉ!!!」
取り敢えず、ルフィに打撃が効かないとかこの先の事とか知ったことか。蹴りで怯んでる間に全身のバネを使って体をカチ上げる。その勢いのままルフィの顎めがけてサマーソルトキックを叩き込んだ
空中に大きく吹っ飛ばされたルフィは建物の天上をぶち抜いて飛んでいく。その衝撃で捨てられたモジャモジャ男を苛立ちのままに殴り飛ばした
そいつから潰された蛙みたいな悲鳴が上がり、元いたと思わしき場所に戻っていく。辺りには土煙が舞っていた
怒りが収まらないので、ルフィが開けた大穴から戻ってゾロを見据える。ゾロは私の姿を見つけると、顔面を強張らせながら小さく口を開いた
「わ、わりィ」
「殺す」
針を両手に構えて、6本の針を投擲する。それと同時にゾロに向かって走り始めた
ゾロは手に持った刀を器用に操って針を叩き落とすが、その間に接敵に成功する。間合いまで後2歩、届いた。
振り下ろした『染雪』をゾロは2本の刀で受け止め、つばぜり合いが発生する。取り敢えず怒りのままに力を込めた
「待て待て待て待て!!!これ以上話をややこしくするなって、な!!」
「煩い。黙って死んどきなさい」
金属が擦れる音がして、私とゾロは距離をとった。片手に『染雪』、片手に針を構えて間髪いれずに走り始める。ゾロが苛ついた様子で口に刀をくわえたところで手数の勝負が始まった
二刀流に口の刀を加えた三刀流。歯が折れるとしか思えないバカげた行為のそれも、ここまで旅をしてゾロの武器の1つだと理解している。しかしまともにぶつかってみてこんなにも面倒だとは思わなかった
まず、意識していない所からいきなり刃物が飛んでくる。右と左の刀を『染雪』と針で受け止めても上段から叩き付けられるそれのせいで攻勢に移りづらい。かといってそれに注意を向けすぎれば両手の刀の餌食だ
針を投擲したところで、叩き落とされて陽動にも使えない。仕方ないので超近接武器として使うが握りもなにもないこれじゃあ単純に力負けしてしまう。
『ゴムゴムの銃乱打!!!!!』
何度目かのつばぜり合いをしていると、上からいつもの体型に戻ったルフィが飛んでくる。そう言えばさっき蹴り飛ばした時にはもう痩せていたわね。本当に人間と同じ仕組みの生物なのかアイツ
目の錯覚で手が何十本にも見えるそれの範囲から逃れる。避ける拍子に建物が2棟くらい崩壊していたが些事だ
「くそ!! レイムだけでもめんどくせェってのに!!もぅ手加減出来ねェ、殺す気で行くぞてめェら!!!」
「上等だぁーーー!!!」
「こっちは最初からそのつもりよ」
『染雪』を背中に背負い直して、両手に針を構える。片手に3本、計六本だ。そして私が走り始めたタイミングは奇しくも他の二人と同時だった
『ゴムゴムのバズーカ!!!』『鬼・斬り!!!』『封魔陣!!!』
針6本をカギヅメに見立てて、目の前の空間を指定し、その場所を切り刻む。私が今使える技のなかでは殺傷能力極高のそれは、片手をゾロに刀で止められ、もう片方の手はルフィに手首を捕まれて止められた。全くもって忌々しい
「ちょうどいい、この際この中で誰が一番強ェのか……」
「おォ!! ハッキリさせとこうじゃねェか!!」
「上等ォ………」
いったん距離を取り、六本の針を投擲。ゾロはそれを弾き‘返し’て来て、ルフィは避けながらカウンターを合わせるように拳を伸ばして殴ってきた。
返ってきた針を掴んで捨てて、ルフィの拳を薄皮一枚で避けながら背中の『染雪』を引き抜く。銀髪の辻斬りの時から布を巻き直してないそれは鈍く輝いた。
そうしている間にルフィの拳が戻り、そのままゾロに殴りかかる。ゾロが対応している間に接近して横凪ぎに二人まとめて斬りつけた
二人は空中に逃れながらゾロはルフィに向けて刀を振り、ルフィは後ろに腕伸ばしている。私は地面に『染雪』を突き立てて、ゾロに向かって『昇天脚』、つまりサマーソルトキックを叩き込んだ
「ぐぁ、!!」「がぁ!!」「ゴフッ!!」
蹴りはゾロの脇腹に突き刺ったが、避けきれなかったルフィの拳が私の鳩尾にめり込んだ。呼吸が止まり目の前が暗くなる。吹き飛ばされながらルフィがゾロの斬撃を受けてぶっ飛ばされているのが見て取れた
建物を破壊しながら突っ込んで、中で辛うじて止まる。ダメージはそれなりだ、戦闘続行は可能。呼吸を整えてから立ち上がり1拍おいてから再びさっき殴りあっていた地点に向かって走り始めた
『どおりゃあああああああああ!!!!!』
中心で再び激突する。拳が、刀が、針が、突き刺さり、切り刻み、叩き付ける。服の白いところが赤く染まり、打撲で内出血で赤黒く皮膚が染まり、痛みと腫れで目の前が見えにくい。
知ったことかと拳を握ってゾロを殴り付け、そのゾロの刀が皮膚を切り裂く。ルフィに『染雪』の封印を施して針を突き刺すが、力業で解除されて彼の拳が私の顔面を捉える。
自分の血と相手の血がどれがどれだか解らなくなってきた頃、なんか文句を言ってくる二人組がこちらに突っ込んできた。余裕も無いし、鬱陶しい。今は違う何かを相手にするつもりなんか全くない。
『ゴチャゴチャうるせェな………ッ!!』
勝負に水を差されて血管がキレそうだ。ちらっと見えたルフィとゾロの顔面に青筋が浮かび上がっていた事から、きっと思いは同じだろう。と言うか私も同じような顔をしている自覚がある
「はッ……!?」「ひ……」『勝負の…………』
構えたままの『染雪』を片手で持ち、悲鳴を上げる二人組を見る。なんだこいつらは、何の用があって私達の間合いに入っていやがる。ぶち殺す
『邪魔だア!!!!!!!』
ゾロの刀が、ルフィの拳が、私の『染雪』が二人組を捉える。よく見たらさっきのモジャモジャとレモン女か。どうでもいい
3人分の攻撃を受けた二人は悲鳴すら上げることなく見えないほど遠くに飛んでいってしまい、凄まじい轟音と大量の土煙を撒き散らしながら撃沈した。
「何だあいつら」
「うざってェ…」
「知るか」
羽虫のせいで邪魔が入ったが、そんなことはどうでもいい。今は目の前のバカ共に集中だ、気を抜いたら一瞬でやられる
「さあ決着をつけようか」
「おお……」
「……………」
『染雪』を握り直して二人を睨み付ける。動きがしたのは同時だった
ルフィとゾロと私の武器と拳が唸りをあげて相手にぶつかる。体も限界に近い、この一撃がラストだ。そう思って渾身の力を込めて『染雪』を振り下ろした
「やめろっ!!!」
そして突然現れたナミに、ルフィとゾロは吹き飛ばされたのを見て、私は攻撃を途中で止めた。いやいったい何処から現れたのよ。
そのナミは今は手をチョップの形に変えて私の頭に向かって叩きつけた。痛い
頭を押さえてうずくまる私。バランスを崩されてひっくり返るルフィとゾロ。怒り心頭のナミと困惑する青髪の王女さま。
ナミがゴチャゴチャ言っているが、そんなことよりバカ二人と決着をつけなくちゃならない。そう思って二人と素手で取っ組み合いを始めると、もう一発頭にいいのを貰ってしまい、続きをやる感じじゃ無くなってしまった。解せぬ
✳
その後、大笑いしながら自分の勘違いを認め、それを踵落とし一発でチャラにした。全く堪えてないのが腹立つけど
「それはムリ、助けてくれた事にはお礼をいうわ、ありがとう」
アラバスタ王国の王女、ビビ。それが私達が結果的に助けることになってしまった女の名前だ。ゾロはともかく、私とルフィはそこにいたことすらちゃんと認識していなかったけれど。
その女に10億べりーと言う大金を吹っ掛けるも、正面から切って捨てられてしまったナミは怪訝な表情を見せた。
「なんで?王女なんでしょ?10億くらい……」
「10億を‘くらい’って言えるナミが凄いわ。うちの家計簿はいつも真っ赤っかなのに」
「うるさい!! それでどうなのよ?」
まだ若干イライラが残ってて、取り敢えず噛みついてみるが煩いの一言でスルーされた。解せぬ
「アラバスタという国を?偉大なる航路有数の文明大国と称される平和な王国だったの。昔はね」
「昔は?」
王女様…………ビビは小さく頷いて続ける
「ここ数年、民衆の間に‘革命’の動きが現れ始めたの。民衆は暴動をおこし、国は今乱れてる
だけどある日、私の耳に飛び込んできた組織の名前が‘バロックワークス’」
ふぅん? そこに繋がるわけだ。だからと言って王女様がここにいる理由には成らないと思うけど
「どうやらその集団の工作によって民衆がそそのかされている事がわかった。でもそれ以外の情報は一切閉ざされていて、その組織に手を出すこともできない。
そこで小さい頃から何かと私の世話をやいてくれているイガラムに頼んだの」
イガラムと言うと、この町の町長を名乗ったイガラッポイの事ね。ルフィがちくわのおっさんと言っているが、どの辺がちくわなのか解らない。あの巻き毛か?
そしてビビはその‘バロックワークス’に潜入して情報を探っていたらしい。ゾロが威勢のいい王女だと称したが、まったくその通りだ。王女自ら潜入捜査とは中々に肝が座ってる
ナミは何処から仕入れた情報なのか、‘理想国家’建国と言うバロックワークスの目的を話すが、それは違うとビビは言った
「
そこまで話してビビは一息ついた。ナミも内乱中の国には金はないかと納得している。ゾロは一応話は聞いてる風で、ルフィはアホ面だ。話を理解しているんだろうか?
「おい、黒幕って誰なんだ?」
「社長の正体!!??それは聞かない方がいいわ!! 聞かないで!!それだけは言えない!!」
「はは、それはごめんだわ。なんたって国を乗っ取ろうなんて奴だもん。きっととんでもなくヤバイ奴に違いないわ!!」
「ええそうよ。いくら貴方あなた達が強くても、王下七武海の一人‘クロコダイル’には決して敵わない!!」
「言ってんじゃねぇか……」
うん、言ったわね。ビビは口を押さえて白目を向いて、ナミは見たことも無いような顔で絶望している。ゾロは呆れた様な表情だ。ルフィだけは目を爛々とさせて喜んでいるが
そんなことを言ってると、何だろうかアレは? 鳥とラッコ? なんかそいつらが顔を見合わせて飛んでいってしまった。うん、チクられたわね。
これからやって来るであろう災難を想像して小さく息を吐いたのだった
更新遅れました。三つ巴のシーンを3回くらい書き直してまして………