霊夢ちゃんのワンピース世界冒険録   作:壁の苔寺

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ジャンプフォース買うかどうか悩んでる………。お金無いからなぁ

それはともかく本編


リトルガーデン

 

 

「唐突だけどウソップ、この前にあんたにあげた針を量産出来ないかしら?」

 

「本当に唐突だなオイ」

 

 ウソップ工房。いつの間にかメリー号に出来ていたウソップが毒にも薬にもならない物を作る場所だ。よく爆発したり自分の発明で飛んでいったりしている。この前は感電していたっけ

 

「もう在庫がないのよ。あそこまで固くなくていいから、長さが同じくらいの針が欲しいの」

 

「あの針か。俺もあれを色々な弾に使いたかったから調べたんだがよ……」

 

 ウソップはガラクタ入れの中を漁って私がウソップにあげた針を取り出す。別に構わないけど、人から貰ったものを雑に扱わないで欲しいんだけど……

 

「っと、あったあった……。調べた結論を言えば、明らかに既存の技術で作られたもんじゃないな。と言うか技術かどうかすらわからねェってのが本音だ。これ、材質を色々調べてみたんだけど、たぶん紙なんだよ」

 

「紙?」

 

「あぁ、紙を何重にも折っていけば固くなるだろ?たぶんそれを万力でも使ってやったのがこれじゃねェか?水に濡れても溶けねェし、鉄より固い理由はわからねェけど」

 

「ふーん…………で?結局作れそうなの?」

 

 私の質問にウソップは目をそらす。うん、まぁ知ってた

 

「使えないわねぇ……」

 

「うるせェな!!!」

 

 仕方ない。暫くは『染雪』一本で行くしかないか。遠距離が無いのは辛いわねぇ……。私って、これだけだとしっかり強い奴には勝てない気がするのよねぇ

 

「まぁ待て」

 

 仕方ないからお茶でも飲むかと食堂に向かおうとしたところでウソップに呼び止められる

 

「何よ?」

 

「この針そのものを量産は無理だが、劣化品や代用品なら作ってやれないことも無いぞ」

 

「本当?」

 

 ウソップは腕を私の前に上げて人差し指と中指を立ててピースの形を作る。

 

「代案の一つはこれと同じように紙で作ることだ。だが正直お前の使用に耐えうる物が作れるとは思えない。と言うわけでこれだ」

 

 ウソップが取り出したのは銀色に光る、先端の尖ったそれ。形は私の持っていた針にそっくりだが材質がまるで違う。明らかに金属だ

 

「アルミで作ったもんだが、割りとうまく出来たと思ってる。これなら量産も簡単だし、軽くて使いやすいんじゃねェか?」

 

 ウソップから受け取った針を手に取る。私がいつも使っている針よりも倍以上重たい。そして折り曲げたら曲がってしまった。うん、使えない

 

「やり直しね」

 

「オイ!!」

 

 と言うわけで、補充の目処は立たなかったわ。残念ね

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ミス・オールサンデーが海の向こうに消えて、船の進路はログポースに従って次の島へ。ウイスキーピークで寝てたサンジとウソップは騒動を完全に無視してしまい、サンジは残念がってウソップは安堵していた。

 相変わらずサンジはナミと私に絡みに来て騒がしいし、ウソップはルフィの手配書をビビに見せて悦に浸っている。ルフィは呑気に雪が降らないかなーなんて言ってるし、ゾロは眠そうだ

 

「本当にこの船の面子は緊張感が足らないのよねぇ……ズズ」

 

「いやお茶のんでリラックスの真っ最中のあなたが言う!!??」

 

 ビビの悲鳴のようなツッコミが入り、気を抜きまくっている船員に対してこの偉大なる航路をナメてはいけないと注意を促す

 だがまぁそんなものを聞く様な殊勝な奴がこの船にいるわけがない。サンジはいつ作ったのか、美味しそうなドリンクを船の皆に配っている。スーパーリラックスタイムだ。うん、美味しい

 

「いいの!!?? こんなんで!!!」

 

「いいんじゃない? シケでも来たらちゃんと働くわよあいつらだって……、死にたくはないもんね。はい、あんたの」

 

 いつの間にか馴染んでいた鳥と共に私達はサンジのスペシャルドリンクを飲む。ちなみにあの鳥は私の顔を見るとプルプル震え出してビビに泣きつくのだが、まぁ些事だ。うん

 ビビの様子を見ると、さっきまでの張つめた様な表情じゃなくなっていた。まぁこんな船にいたら気も緩むか。こいつらは緩みすぎだけど

 

「悩む気も失せるでしょ、こんな船じゃ」

 

「…………………………………ええ、ずいぶん楽……」

 

 ビビが笑っているのを見てホッとした。こういうのは向かないからね、私。

 イガラムが海に消えてしまって、その直後に敵の副社長の襲来だ。緊張をずっと維持していたビビだけど、このまはまじゃそのうち潰れていたかもしれない。そう思えばコイツらのバカさ加減にも使い道が有るものだと思うのだった

 

「おい、みんな見ろよ!! イルカだぜ」

 

「おお!!」

 

「わあっ可愛い…」

 

 本当だ。イルカなんて始めてみた。なくした記憶の中に有ったのかもしれないけれど、私にとってこれは始めての経験だ。

 イルカが跳ねる。それは小さなイルカが水平線上に見えて、うん? 見えて跳んでくる? うん、どんどん大きくなるわね。遠近法で遠くのものが小さく見えるあれかしら?

 

『デカイわーーーーーーーーっ!!!!!!』

 

 このメリー号を優に5倍はあるバカデカいイルカ。ってかイルカかあれは。凪の帯にいた海王類とか言う連中の仲間じゃ無いだろうな?

 

「逃げろーーーーーーーーっ!!!!」

 

 楽しそうなルフィの号令がかかり、私達は走り始める。あんなのの隣にいたら船が転覆してしまう。ってか船ごと一口で食べられてしまうだろう

 ナミが風を読んでそれに従って船を操る。あぁもう忙しないなぁもう!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 リトルガーデン。それが私達が踏み入れた偉大なる航路二番目の島の名前だ。そこは木々が生い茂り、島全体が森に覆われる密林だった。火山の噴火するような音が鳴り響き、鳥が喚き声を上げ猛獣が我が物顔で闊歩している。そしてなによりも特筆するべきは恐竜だ。偉大なる航路の島々は、その航海の困難さゆえにそれぞれ独自の文明を築いている。そしてこの島はまさに今、恐竜時代の島なのだ。………………ってナミが言ってた

 

 ルフィがそんな島を前に耐えられる筈もなく、弁当片手に行ってしまい、護衛対象であるビビまでついていってしまった、例の鳥と一緒に。本当にアグレッシブな王女様ねぇ。

 ゾロとサンジはいつものように喧嘩して、売り言葉に買い言葉で狩り勝負に出掛けてしまった。別に仲良くしろとは言わないけれど、周りに迷惑かけるのだけはやめて欲しい

 まぁ何が言いたいのかと言うと、今この船には私とナミとウソップしかいないと言うことだ。

 

 ミス・オールサンデーが私達はこの島から出ることが出来ないと言っていたのは、島の過酷な環境が原因なのかしら? 正直この程度の困難ならばさして問題にはならないのだけれども

 

「レイム、お茶のおかわりはいかが!?」

 

「そそそそ、それに煎餅も饅頭もあるぞ!!あ、後はあれだ!!サンジが作りおきしてくれてるカレーとかもあるぞ!!」

 

「それにあれよ!!お酒!!美味しいお酒もあるわ!!」

 

 それはともかく、なぜか甲斐甲斐しく世話を焼いてくるナミとウソップ。入れ替わり立ち替わりで色んな物を目の前に置いてくるのでうっとおしい

 

「……………………………………あんたら、何のつもりよ」

 

『レイムにまで行かれたらこの船に取り残される!!!』

 

 うん、まぁそんなことだろうと思ってた。私は小さくため息をついて、二人に声をかける

 

「いったい何をそんなにビビってるのよ。こんなのうるさいだけでなんともないじゃない。

 ……………………あぁ、もう解ったからその情けない顔をやめなさい。はなっから何処にも行く気なんて無いわよ。めんどくさい」

 

 その言葉を聞いてあからさまにホッとしたような表情になる二人。この前のナミの頼れるお姉さん感は何処に行ったんだ、全く

 二人ともいざという時はカッコいいし頼りになるのに普段はどうしてこうなのかしら

 

 さて、そんなどうしようもない二人の相手をしていると、にわかに森が騒がしくなる。木々がメリメリと音をたて、鳥が色んな所から飛び立つ。まるで何か巨大なものが近付いてくるみたいだ。

 訂正だ。まるで、ではなくそのものだ。巨人がそこにいた

 

「おおぅ………デカイ……」

 

「いやぁあああああああああああああっ!!!!」

 

「ギャぁあああああああああああ!!!!!」

 

 巨大、大きい、デカイ。人の形をした巨大な生命体が私達の前に姿を現した。

 いやにしても本当にデカイわね。こんなのがいるなんて世界は広いわ。顔だけてメリー号くらいあるんじゃないかしら?

 

「ここに人間が来るのは久し振りだな!!ガババババババババ!!!!

 お前達、酒を持っていないか? 久し振りに飲みたくてな!!」

 

「あるにはあるけど、その体型で酔おうと思ったら樽じゃ足らないでしょ?」

 

「そうか、持っているか。なぁに問題はない、酒は味だけでも楽しめるものだ。ガバババババババババババババ!!!」

 

「っ……。うっさいわねぇ。大声で叫ぶなっての」

 

「おぉ!! すまんすまん!! ガババババババババ!!」

 

 だからうるさいっての。そしてそこのびびり二人、自分よりちっちゃい女の背中に隠れて恥ずかしくないのか。

 非難の意を込めて二人を睨み付けるが、二人とも泣きながら首を横に振っていた。まったく……

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、巨人の名前はブロギー。彼と酒と肉を物々交換して、今はそのブロギーに家に招待されたので行くことにした。二人は泣きながら拒否していたが、私が行くと言い張ったら渋々といった感じで着いてきた。そんなに嫌なら大人しく船にいればいいのに

 さて、招待された家についたのだけれど、その家はとんでもなく大きな骨を家と言い張ってるだけみたいだ。まぁ雨風は凌げそうね

 

「さァ焼けたぞ!!食え!!」

 

「アホか。自分より大きな骨付き肉とか食いきれる訳ないじゃない」

 

「ちょっとレイム!!あんまり刺激しないで!!本当にやめて!!!」

 

 肉を焼いて塩を振っただけの簡単な料理を私は千切って食べる。素手で行儀が悪いが、まぁとやかく言う奴は誰もいないので良いだろう。あ、意外と美味しい

 ナミとウソップがこの世の終わりみたいな顔をしながら泣いている。意外と美味しいから食べれば?と進めたが断られてしまった。

 

「ブロギーさん………1つ、質問してもいいですか………?」

 

「ん?どうした娘」

 

 ブロギーは私10人分くらいの肉にかぶり付きながら答える。今の一口だけで私なら一週間は持つわね、ルフィなら……………あいつならこの肉1食で食べきるか? いやいくらルフィでもそんな事はないか

 

「こ、……この島のログは……どのくらいでたまるんでしょうか?」

 

「一年だ」

 

 それを聞いてショックでずっこけてしまう二人。そうか、1年か、……………………ヤバイわね。具体的には国が

 

「何とかする方法とか無いかしら?」

 

「ログを何とかする方法は知らんなァ……。一応エルバフと言う村へのエターナルポースならあるが、それは俺達のものでな。奪いに来るなら返り討ちにしなけりゃならん」

 

「負けやしないけど、要らないわよ。私達は次の島に行きたいのよ………………達?」

 

 それを聞いて彼は答える。エルバフと言う村とそのルール。百年にも及ぶ決闘の歴史を

 彼らは互いに引けぬ闘いを始め、その勝者がエルバフへと帰還する。エルバフの神は常に正しき者に加護を与え、正しい奴を生き残らせる。その決闘の舞台がこの島と言うわけだ。それを100年、途方もない戦いだ

 

「アホなんじゃないの?」

 

「ガババババババババ!!!!まぁ人からみたらそんな風に思うかもしれないな!!」

 

「な、なんでそんなに戦ってるのよ!! 100年も戦っていたらどんな怒りも薄れるものでしょう!! 何が理由で戦ってるのよ!!」

 

「理由か……忘れたなァ、ガババババババババ!!」

 

 復活したナミが理由を問うが、ブロギーは豪快に笑う。

 そんなときに島の中央にあると思わしき、一際巨大な火山が噴火した

 

「おっと、合図か………」

 

「合図?」

 

「あぁ、いつしかあの火山の噴火は決闘の開始の合図と成っていたんだ」

 

 噴火した火山の向こうで、ブロギーと同じくらい大きな巨人が立ち上がるのが見えた。成る程、あいつがブロギーの喧嘩相手って訳だ

 ブロギーは雄叫びを上げながら相手の巨人に向かって突っ込んでいく。その姿をウソップは感極まったように眺めていた

 

「どうしたのよ、随分と静かね」

 

 二人の巨人は地形が変わってしまうような闘いを繰り広げている。あのサイズの人間が100年も暴れてこの島、よく原形を留めているわね

 

「すげぇ……理由もねェのにこんな闘いを………」

 

「はた迷惑なケンカよね……」

 

「まぁ人に迷惑かけないならいいんじゃない?」

 

「バカ野郎!! これが真の男の闘いをってもんなんだよ!!」

 

「…………?なにそれ?」

 

「例えるならあの二人は自分の胸に‘戦士’という旗を一本ずつかかげてる……、それは命よりも大切な旗なんだ!!

 それを決して折られたくねェ、だからその旗を守るために今まで100年間もぶつかり続けてきたんだ

 わかるか!!??これは紛れもなく‘戦士達’の‘誇り高き決闘’なんだよ!!!!」

 

 ふぅん? 成る程ね、私はあの巨人二人のケンカに興味はないけれど、ウソップは違ったらしい。誇り高い決闘、誇り高い戦士、あぁウソップが好きそうな言葉だ。勇敢な海の戦士に成るために海へ出たウソップにとって、この二人はそれを体現する存在なのだろう

 事実ウソップは、二人の闘いを羨望の眼差しで見ている。全ての攻撃が急所狙いの相手を殺すための闘い、しかし二人は笑いながらそれを続けている。この1撃で終わってくれるなと、死んでくれるなと願いながら殺し合いをしている。

 

………………………よし、

 

「レイム、あんたなにしてんの?」

 

「別に何って訳じゃないわ。踊るの」

 

「ハァ!!??」

 

 ナミの叫びを聞き流して、私はゆっくりと腕をあげる。小さく息を吐いてから一つ大きく拍手を鳴らし、目を閉じる。その時、風が大きく木々と私の服を揺らした

 

「ぉ………え………?」

 

 別にこの巨人達に共感したわけじゃないし、なんだったら傍迷惑な喧嘩だと思っている。だけどそれでも1世紀もの間戦い続ける二人の喧嘩だ。エルバフとか言う知らぬ神といえ、届くように祈る位のことはしてやろう

 

『ー高天原ニ神届マス………』

 

 ゆっくりと目を開けて、体に‘おろす’。自分の体の主導権をそれに引き渡し、口から祝詞を唱えながら舞う。大きく、出来るだけ大きく、知らない神に届けるための舞なんだ。全霊を込めなければきっと届かない。だから祈りを込めて舞う

 

『…………畏ミ畏ミ白ス………』

 

 そして巫女舞が終わり、体におろしていた者に帰って貰う。体力が凄まじいくらい消耗しているが、悪い気分じゃなかった

 

 いつしか、二人の闘いは相討ちにて終わっていた

 

 




今回短め。他のキャラのエピソード入れづらくて困ってます

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