「…………………どこ? ここ」「暗い場所、なにもないわね。真っ暗で目の前も見えない………………」「ん? なにかしら、あれ。光?」
「あなたはだれ?」
「……………………………………???」「私?」「なんで私が突然目の前に現れるのよ」
「私は博麗霊夢。あなたはだれよ?」
「奇遇ね」「私も霊夢よ」「なんで私と同じ格好してるのよ」
「お前は……………違う。お前が博麗霊夢の筈がない」
「はぁ」「?」
「記憶を無くした程度で、力を無くした程度で、そんなにも弱くなるなどありえないわ」
「……………………」「…………ッ!?」「あんた、空を飛んで…………!?」
「思い出せ」
「ガッ…………首を……くそ、」「なんで体が………」「動かな…………」
「思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ」
「ぐぅ…………く………」「はな………せ………」
「思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ。思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い出せ思い思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思思」「思思思思思思思思思思」「いいいいいいいいいいいい」「思思思思思」「思い」「出せ」
「くそ……お前、邪………魔だぁあ!!!!!!!!!!」
飛び起きると、目の前にはすっかり見慣れてしまった天井。メリー号のナミとビビと私の部屋だ
「はっ!!?? はぁ………はぁ………夢?」
側には呼吸の荒いナミが眠っている。部屋の床には心配してやって来たルフィとウソップとサンジとビビ。ゾロは見張りだろうか、そこにはいなかった
………………眠ってしまっていたらしい。随分と嫌な夢を見た。とても暗い場所で自分と全く同じ姿の人間に首を絞められるとかどんな悪夢よ。いや、悪夢なんて総じてそんなものか
「んん……………、レイムさん……?」
「あ、ビビ。起こしちゃった?」
「ううん、私もナミさんの看病してて寝ちゃってたみたいだから………………。あれ? レイムさん、それどうしたの?」
ビビは私の首を指差す。あいにくと自分の首は鏡を見ないと見ることは出来ないから、何を言っているのか解らない。
「首のところ、手みたいな痕がついているわよ?」
✳
さて、ビビがナミの為に医者のいる島を探す決意をしたところで一日が過ぎてしまった。ナミの容態はなんとか安定しているように見える。しかし熱は相変わらず下がらないし、呼吸も荒い。このままじゃろくなことに成らないのは目に見えている
私とサンジとビビは船室でナミの看病している。冷たい布を絞ってナミの額にのせてやると少しだけ寝顔が安らかになるから調子にのって替えまくっていると、ビビに体温を下げすぎてもいけないと怒られてしまった……
「はぁ………、私あんまり看病とか向いてないわ。お茶いれてくる、二人はいる?」
「ええ、お願い」
「レイムちゃんがお茶を淹れてくれる…………ッ!!??」
サンジがまた過剰反応をするのを無視して私は甲板に出た。
首のところに違和感を感じてそこを撫でると、少しピリピリとした痺れを感じる。夢の中で首を絞められた所と寸分たがわぬ場所についた痣は、あれから半日以上たった今でも消えていなかった
多分この痣、ろくなものじゃない。ビビが島と医者を見つけたらナミと一緒に見てもらうべきだと言うが、この痣はきっとそういうものじゃない。どちらかと言うと私の専門分野だろう。と言ってもこれがなんなのか、いまいち良く解らないけれど
外に出た瞬間、船を大きな揺れが襲った。船の上で地震は有り得ないから、誰かが舵を急激にきったとか海王類が水中から浮上して大きな波が襲ってきたとかかと思ったのだか、そういうわけじゃないらしい。
船だ。バカでかい船。なんでこの世界の人間は船を大きくしたがるのよ。威嚇のつもりか?
潜水していたらしいそれは、よく見ると海賊旗を掲げている。海賊船かよ、今にもナミが死んじゃいそうなこの面倒なときに………
海賊船から何十人もの兵隊がメリー号に流れ込んでくる。そして最後にとても偉そうなカバのような見た目をした大男がのっそりとやって来た。そいつはナイフについた肉を頬張りながら私達に話しかけてくる。っておい、あいつナイフごといったわよ。すごい音させながら食ってるんだけど
「おれ達は‘ドラム王国’へ行きたいのだ。エターナルポース、もしくはログポースを持ってないか?」
豪華な装飾の施されたナイフの柄を彼はバリバリと噛み砕く。ルフィでもあそこまで悪食じゃないわよ。骨付き肉の骨くらいは食いそうだけど
「持ってねェし……。そういう国の名を聞いたこともねェ」
「ほら、用済んだら帰れおまえら」
騒ぎを聞き付けていつの間にかやって来たサンジと、最初から普通にいたルフィが諭すように言う。ナミの為に急がなくちゃならないときに面倒だ。
「もう面倒だしぶっ倒しちゃわない?」
「まてまてまて!!騒ぎが起きて、万が一ナミに戦闘の余波が飛んでいったらどうする!!?? 穏便に帰っていただく方がいいに決まっているだろ!!」
「…………足震えて無かったら納得できた台詞なんだけれどねぇ」
そんな会話をしている後ろで、ナイフを食った大男は全く意に介す事なく動き出す。ルフィ並みに自由なやつね。
そいつはそのまま大口を開けて船にかぶりつき、そのままムシャムシャと食べ始めた。木造の船だからすなわち木を食べてる。そのまま錨を船にくくりつけるための錨つなをうどんのようにズルズルと飲み込んでいく。…………………はぁ?
そこまでカバ男がやったところで、ルフィがキレた。敵の戦闘員相手に殴りかかったのだ。うん、まぁルフィがやらなかったら私がやってた。背中の『染雪』に手をかけ、それを構える。サンジやゾロも戦闘態勢だ
「ウソップはどうする………っていないわね」
遠目に這うように逃げ出してるのを見つけて軽くため息。まぁいつもの事か
飛んでくる銃弾を半身で避けて、撃ってきた奴に接近して『染雪』で殴り飛ばす。飛ばされたそいつは二、三人巻き込んで海に落ちた。ウソップ特製の針を取り出して左手に構え、投擲。いつのもに比べれば重いし柔らかいが、投げるだけなら使えるだろうと貰っておいたものだ。それは敵の手首や足首を貫いて相手を戦闘不能に追い込んでいく。投げた数は6本で、倒した相手は4人だ。合計多分七人目
他の連中も調子よく敵の数を減らしていく。ルフィは敵の親玉のワポル様と呼ばれた男と戦い始めようとしていて、そしてそのまま食われてる。何やってんのよあいつ。
よく見ると、ルフィは食われた口から両手を伸ばしているわね。あれはよく見るルフィの大技かしら?
あら? ビビがタイミングよく顔を出したわね……。ワポルとか言うやつの顔を見て驚いたような表情を浮かべてる。
「吹き飛べェーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!!」
ルフィはワポルに伸ばして反動をつけた腕を叩き付ける。マトモに喰らったワポルは哀れにも水平線の彼方へ飛んでいってしまった。おー、よく飛んだわね
「ワ、ワポル様ぁあーーーーーーーーーーーーっ!!!!」
飛んでいってしまったワポルに、彼の部下は悲鳴を上げる。数十秒とかからずに彼等は自分の船に帰っていき、速攻で船を出した。その時にアフロの奴がワポルを『おカナヅチ』だと言っていたが、普通にカナヅチの事でいいのかしら? ってことはやっぱりあいつも能力者か。当たり前と言えば当たり前だけど、偉大なる航路に入ってからその手の連中と会いすぎじゃないかしら? 体がゴムになるとか、超雑食になるとか変な能力ばかりね……悪魔の実。腹へって死ぬ寸前とかにならない限り私は絶対に食べないわよ。
「貴様ら憶えていろ!!! 必ず報復してやる!!!」
「リメンバー・アス!!!!!」
「憶えていろーーーーーー……………………っ」
「プリーズ・リメンバー・アス……」
「憶えて……ろ………プリ………バー……ス……」「ろー…………………アス………………」「…………………………………バー……………………ー……」
そのまま船はフェードアウトしていった。ワポルが飛んでいったと思わしき方向へ消えていくわね。あのまま沈んでしまえば楽なのになぁ……
「………………………なにあれ?」
「さぁ?」
✳
さて、なんとか船に積んであった木材と鉄板で船を修復して航海を続ける。昼は船を進ませるだけだからなんとかなると島を探す。道中、ルフィが『水とか……ぶっかけたら………熱、ひかねェかなぁ……………』とか、わりとマジなトーンで言ったときは殺してやろうかと思ったわね。殴る前にサンジの蹴りとビビのパンチが炸裂していたからもういいやと思って流したけれど。
「にしても寒いわね………。最近寒すぎないかしら?」
「腋を隠せ腋を。寒いのはそれが原因だ」
「…………………………えー」
「なんでそんなに不満そうなんだよ!! 見てるこっちが寒くなってくるからなんか着ろ!!」
ウソップが煩いので仕方なしにマフラーを巻いて上から赤いジャンバーを着ることにした。暖かい
「………………下、白いズボンないかしら? コレだと色のバランスが悪いわ」
「お前のその紅白に対する並々ならぬ拘りはなんなんだよ………。ナミが大量に服買ってたから借りてこいよ」
「ナミのじゃ少し大きいのよ。これも借り物だけど袖が余ってるし」
ちなみに元の服の袖は着脱式になっている。とって中に仕込んだ針をポケットに突っ込んで暫くは過ごすことにした。手持ちは4本、残りは船に置いておく。
「いや、でもレイムちゃんの言う通り、安定して寒いのは確かだぜ」
「まぁそうだな……。こういうところもまた気まぐれなんだろな。この海は……」
しかし会話に参加してきたビビが言うには違うらしい。なんでも気候が安定するのは島が近い証拠だとか。冬島があるらしい
「えーとなんか聞いたことあるわね。たしかリバーシバル・マウンテンがそれだっけ?」
「リヴァース・マウンテンね。あの山は色々特別だから参考にはならないわ。偉大なる航路の島々は4種類に分類されるの。『夏島』『春島』『秋島』『冬島』そしてそれぞれの島にはだいたい『四季』がある」
すなわち、この海の航海を続けるためには16種類の季節を克服することが最低条件と言うわけだ。ビビもそのように続けた。それ以外の特殊な気候だってたくさん存在するらしい。雷の雨でも降り注ぐ島とか有ったら恐いわね、流石にそんなのがあったら人が生きてはいけないと思うけど
つまり島の影響を受ける、周囲の海の気候が安定することは島が近いことを示すらしい。そしてその通り、サンジが島を発見する。巨大な円柱形をした山が特徴的な島だ。そして其の島に近づけば近付くほど寒くなっていく。うわ、真っ白ね。一面の雪景色
島と聞いていてもたっても居られなくなったらしいルフィが、ナミの部屋から飛び出してきていつも彼が陣取っているメリー号の船首に座る。ってかお前、ナミの看病はどうした。やりたいって言ってたのお前だろ
しかし、島が見えてテンションが上がりまくっているルフィにそんなことを言っても無駄だろう。さらに彼は雪を見て瞳を輝かせている。あの様子だと、もうナミの病気の事とか、ビビの国の事とか頭にないわね、ほんとにもうどうしてやろうかしら
ウソップが島に入ってはいけない病を発症したり、ルフィがマイナス10℃の気温に気付かないほど鈍かったり、冒険に目を輝かせたり、まぁいつもの流れをしている所でそいつらはやって来た
「そこまでだ。海賊ども」
船をつけようとしていた海岸に、何十人もの人が銃を構えて立っている。取り敢えず人がいない島という可能性が消えたのはよかったけれど、随分と殺伐とした雰囲気ね……
「おれ達、医者を探しに来たんだ!!」
「病人がいるんです!!!」
「そんな手にはのらねェぞ!!! ウス汚ねェ海賊め!!!!」
島民達は銃を構えて威嚇してくる。……………虚勢ね、声が震えているわ。それに彼等はどうにも服に統一性がない、この国の軍隊と言う訳じゃなさそうだ。そんな彼等は精一杯の大声で私達に退去するように言ってくる。さもなくば船を吹っ飛ばすとの事だ。見たところ大砲とかも見えるから、はったりじゃない可能性だって有るわけだ
サンジがボソッと文句を言ったとき、彼らの一人がその緊張に耐えかねてか銃を撃った。それはサンジの足に向かって飛んでいき、それを簡単にサンジはかわすことが出来たが、反射で彼は島民を睨み付けてしまう。そのままサンジが飛び出そうとしたとき、ビビが叫び声をあげて彼を押し留めた。流石はビビ、懸命ね。これだけ警戒されているなか、暴力沙汰を起こせば医者なんか絶対に見つからない。すぐにでもナミを医者に見せなくちゃならないのに騒ぎなんて起こせば………
ドゥん!!!!!
一発の銃弾がビビの腕を傷つけた。数センチずれていたらビビが死んでいたかもしれない。それを見た瞬間、私の頭は真っ白になってしまった
『お前らあ!!!』
私とルフィが叫ぶのは同時だった。ルフィが走りだし、私は針を構える。他の連中もおのおの構えをとった。怒りに任せてそれを投擲しようとしたとき、ビビは走り出したルフィを体当たりで止めて、私の射線上に立ちはだかった
「ちょっと待って!! 戦えばいいってもんじゃないわ!!! 傷なら平気。腕をかすっただけよ」
「…………………ビビ、あんた……ッ」
彼女はルフィと私が止まったと理解すると、頭を床に擦り付けて土下座をする。そしてそのままの姿勢で島民に向かって上陸はしないから医者を呼んでくれと頼み込んだ。身分を隠しているとはいえ、一国の王女が銃を撃たれ、血を流し、それでもなお土下座してナミを救おうとしている
「あなたは……船長失格よルフィ。無茶をすれば全てが片付くとは限らない。このケンカを買ったら…………ナミさんはどうなるの?」
ビビの目線はルフィを見て、そして私を見る。その目に浮かぶのは怒りだ、憤怒と言ってもいい。彼女はいつも私たちの名前の最後に『さん』をつける。それを無くしてルフィの名前を呼ぶほどに、彼女は怒っているんだ
「……うん、ごめん。おれ、間違ってた。
医者を呼んでください。仲間を助けてください」
ルフィもビビを見習って、土下座の姿勢をとり、頭を地面に擦り付けて懇願する。あぁ、くそ。どいつもこいつも………
「お願い…………します。私の……私達の大切な仲間が病気で苦しんでる………います。助けて………ください………」
敬語なんて使った事なかったからこれで正しいのか解らない。いや、丁寧語だっけ? 解らないなんだったっけ? こんなの記憶を無くす前から使った事なんてきっとなかったぞ。それでも……私も正座をして、頭を下げた。ちっぽけなプライドなんかどうでもよかった。頭を下げてナミが助かるならそれで
時間が流れる。音は水面が揺れる音だけだ。数秒が何時間にも感じられて、それでも私達は頭を下げ続けた
「村へ……案内しよう。ついて来たまえ」
彼らのなかで、一際大きな男がそう言ってくれた。あぁ、よかった……………本当によかった。
「ね、わかってくれた」
ビビがこっちを見て、笑みを浮かべている。かなわないなぁ……
「うん、お前すげェな」
頭を床につけたまま、ルフィはビビに賛辞を送る。私からしてみれば、ルフィだって凄い。あの場で頭を下げれるなんて、間違いをすぐに認めて仲間の為に頭を下げれるなんて、本当にルフィは…………凄い
「あんたも凄いわよ。本当に、凄いわ」
私はビビがいなければ、ルフィが頭を下げなければ、きっとなにもしなかった。問答無用で針を投げていた。ナミの為になんて事、あの瞬間には頭から抜け落ちていたんだから。………………………………………本当にかなわないなぁ
『思い出せ』
なぜかその言葉が、頭の奥にこびりついて取れなかった
誤字報告、感想、評価、本当にありがとうございます!!!