それはともかく本編
雪崩。雪が崩れると書いて雪崩。自然災害の中では小規模な物であるが、やはり人を殺すには十分すぎる力を持っている。つまり何が言いたいのかと言うとだ
「あれに潰されたら流石に死ぬわね」
「おれ、ゴムだからたぶん平気だ」
「寒さで死ぬでしょ。あと背中のナミも死ぬ」
「あっ!!そうか!! やべェ!!」
大量のラパーンが引き起こした雪崩はその速度を加速させながら私達の背中を追ってきている。
頑張って逃げてはいるものの、明らかに雪崩の方が速度は早い。どう考えても麓につくまで逃げ切れるわけがない
「どうしたらいい!!?? どうしたらいいんだサンジ!!レイム!!」
「知るかよ!!とにかく1にナミさん2にナミさん。3にナミさん4にナミさん5にナミさんだ!!! 解ったか!!死んでも守れ!!」
「その方法を考えてんでしょーーーが!!!! マジでこれ詰んだんじゃないの!!?? あーもーー!! どうすんのよこれぇーー!!」
その後すぐにサンジが切り立った崖を見つけ、取り敢えずそこに避難することになった。少しでも高ければ生存の確率も上がるしなによりも考えてる余裕がない。私たちはなんとかそこに間に合うがその崖も高さが足りずに結局巻き込まれてしまった
「うわあぁああーーー!!!」
雪崩に弾き飛ばされた私達。ルフィの方を見ると、なんとかナミを死守しているのが見えた。そしてそのまま雪崩に巻き込まれて滑っている木に乗ってスノボーみたいに滑り出している所だった
ルフィのを視て私もと思い、すぐそばに流れてきた木をつかんで乗る。よし、これで沈まない
「雪には沈まねェけど………………このままじゃ一直線に山を降りちまうんだ!!!」
「それで済むのならまた登ればいいだけなんだけど………そうは問屋が卸さないらしいしいわよ」
雪崩を起こしたラパーンが追ってきている。彼らも雪崩によって折れた木々に乗りながら雄叫びを上げて迫ってきていた。
「仕方ない。私がなんとか足止めする!! 二人は麓まで逃げて、それからもっかい登ってこい」
そう言いながら『染雪』を抜いて、乗っている木を操ってブレーキをかけようとしたとき、横からサンジが飛び出してくるのが見えた。
「サンジ!!??」
「わりィなレイムちゃん。その役はおれに任せてくれ」
空中のサンジは先頭を滑っていたラパーンに蹴りを当てる。そのままラパーン共はドミノ倒しのように倒れていった。しかし雪崩のなか躍り出たサンジも一緒に雪崩の中に沈んでいく。
『サンジィイーー!!!』
私とルフィの叫びに、サンジは右腕だけ出してサムズアップをして答えた。そう言うことじゃねぇよバカが!!
ラパーンの追撃を逃れることは出来た。しかしこのままだと雪崩に飲まれたサンジはあの大量の質量で潰されて死んでしまう。それでなくても雪の中で窒息死だ。
「ルフィはナミをしっかり守ってて!! サンジは私が……」
「レイム!! ナミと帽子を頼む!!」
「ちょっ!!?? あぁもぅ、どいつもこいつも人の話を聞かねぇ!!!」
並走する様に滑っている私達。ルフィは背負っているナミに自分の麦わら帽子を被せてを私に向かって放り投げてくる。衝撃を与えんなって言ってるのに……っ。
ナミと帽子をキャッチした頃にはもうルフィの姿は見えなかった。あぁもう……。くそったれめ。
「絶対すぐにまた登るから!!! あのえんとつ山をサンジ連れて登ってなさい!! いいわね!!!」
聞こえたかどうかは定かではない。しかしそうと信じるしかない。私とナミはせっかく登ってきた山をすさまじい勢いで滑り落ちるはめになってしまった
✳
結局、登り始めた地点まで戻されてしまった。怒りと焦りで頭をガリガリとかくが、そんな事してても状況は好転しない。ナミの様子を見ると、苦しそうに呼吸を荒げていた。
「ナミ。悪いけれど、ちょっと無茶するわよ」
『染雪』を手に持ち、ルフィの麦わら帽子を頭に被って紐で固定する。意識を集中させ、体の力を集めて奥に眠っている力を無理矢理起こす
「よし、」
そして私は、ナミに負担をかけないギリギリの速度で走り始めた。
雪崩の影響で、踏む場所全てが深雪になっており、雪が必ず膝したまで来てしまう。寒くて冷たいが、背中で苦しんでいるナミの事を考えたら多少の冷たさは何のそのだ
ルフィは無事にサンジを見つけて、山をあのえんとつ山を登ることが出来ただろうか? 凍死なんてしていないだろうな?
この速度でナミは大丈夫だろうか? 負担はかかっていないか、たどり着くまでに死んだりなんかしないだろうか……? そんな後ろ向きな事ばかりが頭のなかをぐるぐると駆け巡る。あぁもぅ……、こんなの私らしくない!!
偉大なる航路に入ったばかりの頃、私は風邪を引いて寝込んでしまった。その時に看病してくたのはナミだ。別に頼んだ訳じゃないし、放っておかれても治っただろう。それでもあったかくてポカポカして、熱で頭がやられる中でその存在が心強かったのを覚えている。
なら今度は私の番だ。あの時の借りを返す為にも私はナミを守り抜いてあの山のてっぺんへ行かなくちゃならないんだ。
十分も走っただろうか? 後ろから凄い速度で何かが迫ってくるのを感じる。またラパーンが喧嘩を売りに来たのかと思って辟易した。後少しでえんとつ山の麓までたどり着けたのに……。この山を登るやつには邪魔が入るみたいな呪いでも掛けられてるんじゃ無いだろうな?
「見つけたぞ麦わらぁ~!!!」
嫌な予感がして、横っ飛びでその場から飛び退く。すると、私がいた場所に、正確には頭があった場所に矢が飛んできた。マジかアイツら
「ワポル様!! よく見てください!! あれは麦わらを被っている女です!!」
「いえ、しかし見覚えが有ります!! こいつもあの麦わらの一味のひとり!! こいつを半殺しにすれば麦わらの居場所も聞き出せるというものです!!」
飛び退いた隙に回り込まれ、行く道を塞がれた。そこにいたのはラパーンではなく、ワポルとか言う海の上で出会って、メリー号を食べやがったカバみたいな見た目の大男だ。横に変な格好をした男が二人、そしてそいつはなにやら大きなカバに乗っていた。カバに乗るカバとはこれいかに。
「………………なんのつもりよあんたら」
「ん~? なんだその口の聞き方は。王に向かって無礼だぞ?」
「…………………」
こんなのに関わっている暇はない。無視して進むことにした。
「新しい法律を思い付いたぞ!! 『王を無視した人惨殺』
その一番無視してやがるその背中の女から殺してやれ!!! お前たち!!」
ふざけた台詞が後ろから聞こえてきた。舌打ちと共に振り返ると、目の前にはトゲ付きのグローブを構えたアフロの男が拳を振りかぶっているのが見えた
とっさにそれを避けて戦闘体勢を取ろうとするが、背中の重みがそれを引き止める。こんな状態のナミを背負っているのに戦いなんて出来るか!! ナミに戦闘の影響が少なそうな針での攻撃も後一回しか出来ないし
「ふざけんなくそが!!! お前らいつか絶対殴る倒してやる!!!」
捨て台詞を吐いて逃亡なんて、そんな経験するはめになるとは思ってもみなかった。しかしそれでも逃げる意外の選択肢は存在しない。なぜなら仮にナミを雪の上に置いて戦ったとしてもそっちを守りながら戦える自信なんかなかったからだ。
しかし敵は非情にも後ろから矢を射ってきた。逃げる敵の背中を射つとか糞にも程があるだろうが!!
辛うじてかわすが、その先には大口を開けたワポルの姿が見えた。彼が口を閉じる寸前に気が付いて、『染雪』をつっかえ棒にする形でなんとかその口撃も逃れることに成功する。しかしつっかえ棒にした『染雪』は手元から離れてしまった
体勢は崩れ、武器も手元にない。その隙を見逃してくれるほど甘い相手ではなかった。雪の中からワポルの部下二人が現れ、それぞれ拳と弓を構えている。狙いは背中のナミの様だ。
「く……そ……ぉおおおおおお……ッ!!」
なんとかナミだけは守らなくちゃと、背負っているナミを無理矢理手前に引き戻して庇う。今のナミがマトモに攻撃なんて受けたら即死だ。少しでも彼女への衝撃が和らぐならと体を盾にする
『ゴムゴムのォ……バズーーーーカァアーーーーー!!!!!!!』
背中に走る何かが突き刺さる様な痛み。貫通はしていないが、矢が刺さったのだろう
そして聞き覚えのある声。目線を前に向けると、そこには激怒と言う表情が相応しいルフィがアフロの男を叩き潰していた所だった
「麦わらァあああああああああ!!!!」
ワポルの奴が何やら激昂している。取り敢えずピンチは凌いだか
「ルフィ!!」
「レイム!! 大丈夫か!!??」
「ちょっと痛いけど、ナミは無事…………ではないけれど、まぁ傷は無いわ」
「お前がだよ!!」
矢はわき腹辺りに刺さっており、多分肋骨で止まっている。くっそ痛いけど、死にはしないだろう。まだ無茶は効く
「ってかサンジはどうしたのよ。アイツ生きてんの?」
「あぁ!! あのえんとつ山のてっぺんにいた魔女の婆さんに渡してきた。そのまま飛び降りて、お前を迎えに走っていたら、戦ってるのが見えたんだ」
「あの山往復したの!? どんな運動能力してんのよ」
取り敢えずこれでなんとかなるか。痛いは痛いけれどなんとかなる範囲。こっちの戦力はルフィだけだけど、足留めに徹してもらえれば大丈夫だろう
「ルフィ、足留めお願いできる? 私は、急いであの山登るから」
「あぁ!!任せろ!! でもその背中のやつ抜かなくて平気か?」
「抜けば今度は血が足らなく成りそうだからね……。取り敢えずこのままで行くわ」
「そうか…………死ぬなよ!!」
「うっさい」
力強いルフィの言葉に背を向けて走り始める。後ろでワポル達の怒声や戦闘音が聞こえてくるが、私はいっさい振り返らずに、えんとつ山へ向かって走った
✳
ルフィに足留めを任せている間に、ついにえんとつ山の麓に到着した。しかしこれからが本番だ。この傾斜角度90度に近い、ほとんど円柱型の山をよじ登らなければ成らない。
背中に受けた傷がジクジクと痛み始める。矢が突き刺さったままにしていると、ナミを背負う事が出来ないと思い、仕方なく鏃から少し出たところまで残して、矢をへし折った。下手なやり方をすると、出血で体力が失われて死んでしまう
「ぐっ……」
結果、今の私の背中には小さな折れた木の枝が生えている様な状態になる。相変わらず激痛だが、これでナミを背負えるようになった
ナミを抱っこしている状態からおんぶの状態に背負い直す。背中に回した時に、ナミの体が残った矢に触れて痛むが、取り敢えず無視だ。自分が着ていたジャンバーで、ナミの体をしっかりと固定する。これならちょっとやそっとで落ちはしないだろう。寒いけど
「ふぅ…………行くか」
そう言ってえんとつ山を登り始める。意外と壁は持つところが多く、技能と体力さえ有れば登るのに苦労はしないだろう。問題は先が見えないほどこの山が高いことだが
足袋と手袋が邪魔で捨てたのは何時間前だっただろうか? 一時間? 二時間? それとも数十分も経っていないのだろうか? 体を動かしているから暖かいかと思っていたが、体の外から蝕むように寒さが浸透してくる。発熱するにも限界があるわ
指がかじかんで、足が震えて、落ちそうになったのも何度か解らない。
そしてさらに問題なのは背中の矢だ。やはり無理が祟ったのだろう、出血が激しくなってきた。矢が蓋の役目を果たして最初の方はそうでもなかった出血も、少しずつ激しくなってしており、下半身は自分の血で真っ赤だ
「もう少しだから………大丈夫……だから…」
それをナミに言っているのか、自分に言い聞かせているのか解らない。しかしそれでも止まるわけにはいかないから。止まってしまえばナミが死ぬし私も死ぬ
あぁくそ、貧乏くじを引かされたなぁ。ナミをルフィに任せて、私が足留めをすればよかった。そうすればアイツらを殴れたし、しんどい思いもせずに済んだのに。
「………ハァ…………ハァ…………ハァ……」
ふと、後ろを向くと、息の荒いナミの顔があった。すさまじい高熱と、ここまでの戦闘でナミの体はもう限界に近いのだろう。彼女に意識は無く、目をつむって病の苦しみに耐えていた
「……………………」
それを見て、四肢に力が戻るのを感じた。諦められない。諦めてたまるか。
登り続けて、いつの間にか指が切れていたのだろう、血が出ていた。それでも知ったことかと登ることが速度を緩めない。口から血を吐いて、矢が内臓に到達していたと理解するが、止まる気にならない。
苦しくても、辛くても、痛くても、しんどくても、そんな理由でナミを死なせてたまるか
そして私はえんとつ山を登りきった。とても美しいまっ白な城を目の当たりにする
「ハァ……ハァ………ハァ………。ここで、合ってるのよね………」
まだ終わっていない。私は登りきった事の安心感で座ってしまっている。立ち上がってあの城に入らないといけない。そう思って力を込めたが、そのまま倒れ込んでしまった
なぜなら見覚えのあるぐるぐる眉毛が見えたからだ。アイツも怪我してるのに待ってたのか、このくそ寒い中で。泣きそうな面をしているサンジが走ってくるのを見て、私は意識を失った
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結局、ドラム王国………いや、旧ドラム王国でティーチのめぼしい情報を手に入れることは出来なかった。強いて言うなら、アイツが‘黒ひげ’なんて名乗っている事が解ったくらいのものだ。本当にアイツは人の神経を逆撫でするのが得意な奴ね
今はストライカーを並走させながらアラバスタ王国へ向かっている所だ
「あのねぇエース、取り敢えず食い逃げしようとするのやめなさいよ。別にお金ないわけじゃ無いでしょ?」
「いや、俺だって食い逃げしたくてしてる訳じゃねェんだぜ? 何て言うかな、いっつもタイミングが悪くてよ」
「全く………まぁいいや。エースの弟くんのルフィって子、アラバスタに来ると思う? ティーチの奴を探す傍らで、色んな国に伝言を預けてきたけど可能性としては低い方よ?」
「来るさ」
「なんでそう言い切れんのよ?」
エースは一瞬ためて、人好きするいい笑顔を浮かべてこう言った
「なんせ俺の弟だからな!!」
「……………ま、いーけどね」
理由にはなっていない。ただまぁエースの弟君ならきっと運も良いだろう。なら上手く伝言を聞けるかもしれない
エースの顔をみると、もうアラバスタの料理について頭が行ってしまっているようだ。私は猫の姿のままため息と言う器用な事をしながら先を目指すのだった
本編の補足
ルフィはすぐにサンジを見つけ出して、えんとつ山に高速で登りました。その間、一時間弱。
原作は3時間ですが、ナミの消耗を考えなくていいことと、頑丈かつ、原作ほど大怪我をしていないサンジなら多少無茶をしても大丈夫とルフィは考えて大急ぎで登ったようです。その後、ドクトリーヌにサンジを投げつけて、ゴムの体をいかして飛び降りました