「おーい霊夢ーーー!! パチュリーんとこに行こうぜーー」
博麗神社、この幻想卿の基点で私の悪友の根城である。ちなみに人里の人間からは妖怪神社として恐れられている。本人は妖怪退治を生業にしているくせにだ。
「おーい? 霊夢ー?」
返事がない。いつもならこの辺で機嫌がよければぶちギレ気味の怒声が、機嫌が悪いと霊弾が飛んでくる。そんなことしてるから人間の友人が殆どいないんだアイツは
しかしそのどちらもないのは珍しい。いまは正午を少し過ぎたくらい。なんやかんやで早寝早起きが基本なあいつがこの時間まで寝てるなんて事は考えにくい。だがまぁもしかしたらってことはある。てなわけで
「じゃまするぞー。霊夢ーーー」
もしも寝てたとしてもそれはそれで反応が面白そうだと思って、神社へと上がり込んだ。
「ってあれ?」
しかしそこに霊夢の姿はなかった。私が見つけたのは赤と白で彩られた陰陽玉。そして
その日を境に博麗霊夢は幻想卿から姿を消した
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「はぁ? 記憶喪失だと!!??」
「まぁそういう反応になるわよねぇ。普通」
私こと博麗霊夢はイーストブルーと呼ばれる海の小さな島で自身の身の上を箱のオッサンに話していた。
箱のオッサンの名前はガイモン。なんでも20年もの間、この島の変な動物を守り続けてきたらしい。変なオッサンが変な動物の守護者ってなんの喜劇だと笑ったら、すごい目で見られたので自重する。でも面白いオッサンが悪い
「しかし記憶喪失とは難儀な話だな。本当になにも覚えてねぇのか?」
「うーん………なんかを守るためにひたすらに掃除をしながら茶を煤って箱の中のお金を探す日々だったような気がするんだけどなぁ……」
「何をいってるのか全く解らねぇよ」
「大丈夫。私も解らないから」
そういって、ガイモンが出してくれた酒を飲む。保存の関係でそれしかないらしいから仕方ない。中々に強い酒だが、甘くて飲みやすい
「お? なかなか行ける口だな? それ結構きつい酒なんだがな」
「甘くて美味しいわよ。まだあるなら飲みたいんだけど」
「あぁ待ってろ取ってくる」
ガイモンは立ち上がって(起き上がって?)、酒を置いてあるであろう場所から瓶をいくつか取り出した。
それを何本か空けたところで彼はおもむろに口を開いた
「それで? これからどうするんだ?」
「そうね…………。どうしようかしら。全く当てがないわ」
「まぁ記憶喪失だって言ってんだからそりゃそうだろな…………。まぁなんだ?しばらくはこの島にいねぇか?」
「この島に? そりゃ居させてくれるなら、そりゃありがたいけども、迷惑じゃないの?」
「正直な話、この島には人が全く寄り付かなくてな。少しばかり人恋しいんだよ。話し相手になってくれるだけでいい。いちゃくれないか?」
オッサンは怯えるような、そんな顔をする。私としてはその話は願ったりかなったりなので、そんな顔をする必要がないって笑ってやろうと思ったんだが、まぁ止めておくことにした。わたしはその言葉に少しばかり考えるふりをしてから、頷く
「えぇ、お願いするわ」
それを告げたガイモンの顔は、人好きするようないい笑顔だった
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海
目の前に広がる水平線。潮の臭い。何故か解らないが、無性に心引かれる物がある
この島に来てから一月がたった、最近は果物集めや動物の世話が終われば海を眺めてる様な気がする
「はぁ………全くなにも思い出せない」
流石に一月もなにも思い出せないと心労が溜まる。自分が海に心引かれている事を考えると、もしかしたら私は漁師かなにかだったのかもしれない。そう思ってはみるけども、まったくしっくり来ない
『起こせ!! 起こしやがれ!!』
そんなことを考えていたらガイモンのそんな叫びが聞こえてきた。あのオッサン、一度こけると自力では立ち上がることが出来ないって、だいぶん間抜けな性質を持っている。私が来るまではどうしていたかと聞くと、この島の動物たちに助けてもらっていたらしい。面白すぎて十分くらい爆笑してた。
そんなことを思い出しながら声がした方に向かうと、麦わら帽子を被った惚けたような面の男とオレンジ色の髪をした女が立っていた
「えーと、あんた誰? うちの面白オッサンになんかした?」
「俺はルフィ、海賊王になる男だ!! オッサンは勝手に転けたぞ?」
「そう。私は霊夢、ちなみに海賊王って何よ?」
「世界で一番自由な海の王様だ!!」
「ふーん……偉いの?」
「偉くはねぇんじゃねぇか?」
「偉くはないの? 王様なのに?」
「そりゃ……なんせ海賊王だぞ?」
「そっか……」
「いや、あんたらなんの話よ」
海賊王……海賊ねぇ。
最後に入ったオレンジ髪女の言葉を軽く流して考える。その言葉に聞き覚えはない。でもなぜだか少し心引かれる物があった。記憶をなくす前は海賊でもしていたのかも知れないわね。そう思いながらじたばたしているガイモンを助け起こす。
ルフィとナミ………ナミは協力者らしいが、二人は海賊をやっているらしい。自由な海を旅する冒険者。それがルフィの海賊だった
この島には補給とあわよくば新しい仲間をっと思い立ち寄ったらしい。どう見ても無人島なこの島によく来るものだ
「何て言うか、随分と楽しそうねぇ……」
そんな言葉が口から出る。ニコニコしてる惚けた麦わら帽子を見ながら面白い奴だなと思った
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それから、ガイモンがこの島にこだわり続けるもうひとつの理由が明かになり、ガイモンが涙を流すなんて一幕があった。出会ったばかりのこいつらには宝箱の話をするのかー。私は一ヶ月もいてなんの話もしてくれなかったのになー。なんて思うが、確かに私はこいつら以上に胡散臭いなと思い直して納得しておくことにした。ガイモンの『なんかお前は金にがめつそうな臭いがするから言えなかった』なんて言葉は、精神衛生上聞き流しておくことにする
ルフィがガイモンと私を仲間に誘って、ガイモンが本当に嬉しそうにしながら断った。やっぱりこの島の動物が気になるらしい。相変わらず優しい男だなぁと思いながらなら私も断ろうと思って口を開いたとき
「なぁ麦わら。断っておいて難だけどよ、こいつは……霊夢は連れていってやってくれないか?」
「…………え? いやオッサン。アンタが行かないなら私は行くつもりは」
ガイモンは私の言葉を遮るように続ける
「こいつは記憶喪失なんだ。少なくとも、この島の生まれじゃねぇ。もしかしたらこの島に流れ着いたのかもしれないし?何が理由でこいつがここにいるのか解らねぇ。でも、この島にいたらこいつはずっと記憶は戻らねぇ。それだけは解る」
「…………」
「それにこいつ、海が好きみたいだしな。暇があればいっつも海を眺めてやがるんだ。頼む麦わら!! こいつを海に連れていってやってくれ!!」
ルフィはガイモンのその言葉に満面の笑みを浮かべ、大きく頷いた
「あぁ、いいぞ!!」
ルフィは一瞬の躊躇いもなく答える。ナミはというと、こっちを心配そうに見ているが私にはそんな余裕はない。ガイモンの奴は私の事をしっかり見て、しっかり心配してやがったんだ。私が二十年ぶりに話す人間だってことも有るだろう。でも、彼はなんにせよ、見ず知らずの、記憶喪失なんて胡散臭さ塊みたいな女の事を真剣に心配していたんだ
ルフィはガイモンのその思いを知ってか知らずか、こっちを向く。そして手を私の方に向けて大声で叫んだ
「行こうぜ!! 霊夢!!」
あぁ、なんて気持ちのいい奴なんだか。この‘世界’の男ってみんなこんなやつばっかりなのかなぁ。それもとこいつらが特別なのか、解らない。それでも私は
「ここまで言われたら、行かないわけにはいかないじゃない。ありがとうガイモン
よろしくね、ルフィ」
そう答える事に躊躇いは無かった
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幻想卿に存在する洋館。この世界の町並みにそぐわないそれは、巨大な湖のそばに存在していた
「由々しき事態よ。異変がどうだ、スペルカードがなんだ、なんて話じゃない位にはね」
その紅魔館に引っ付くように存在している巨大な図書館。そこに集まっている面子をこの世界の住人が見れば、それだけで恐慌状態に陥ってもおかしくない。
フランドール・スカーレット、西行寺幽々子 八雲紫、八意永林、山の大天狗、古明地さとり、八坂神奈子など、幻想卿の有力者達が集まっていた
「私としては、あんたが招集をかけたことに驚きなんだけどね。神隠しだの行方不明だのはあんたの領分だろ?なぁ八雲紫?」
神奈子のその言葉に同調するように、周りのもの他達が頷く。そんな周りの態度に中心の紫は涙を流しながら否定する
「なんでもかんでも私が悪いと思われては堪りませんわ。ゆかりん悲しい、ぐすん…………………。」
「そうやってすぐに泣き真似だのなんだのするから胡散臭さが際立つんだけどね。あんたの場合」
そんなことをいっている時に、フランドールが声をあげる
「ねぇ咲夜? 私は八雲紫をドッカンすれば美鈴が帰ってくると思ってたんだけど? 違うの?」
「妹様、気持ちは解りますし、今すぐそのふざけた嘘泣きをめった刺しにしたい所ですが、少し落ち着きましょう。そしてお嬢様も消えています。名前を出して差し上げませんとお嬢様はまた拗ねてしまいますよ?」
「ぶーぶー。どうでもいいよあんな奴は。あいつが帰ってこないなら私が紅魔館の主でいいじゃん。クーデター成功? きゃっほう!!」
そんな様子のフランドールを、頭が痛いといった様子で咲夜は見て、取り敢えず無視することに決めたらしい
「妹様………。紅魔館からはお嬢様と門番の美鈴が姿を消しました。取り敢えず皆様も、状況整理の為にも誰が消えたか教えていただけませんか?」
紅魔館のメイドがそう言うと、各々の陣営の消えたメンバーを言っていく。
今確認されているだけで、博麗霊夢、レミリアスカーレット、紅美鈴、魂魄妖夢、鈴仙・優曇華院・イナバ、洩矢諏訪子、火焔猫燐、その他妖精や、あまり人と行動しないような者達が姿を消していると報告された
「もしもこの中で、誰もこの事件を起こしていないのならば、一番の問題は洩矢のカエルが消えていることよ。神性を保持していても抵抗できない神隠しなんてふざけているわ」
そして、どの陣営からも人が消えてる。それはまるで、‘どの陣営からも人が消えているから、どこも疑わないでくださいとでも言うように’
「このままもしも神隠しが起こり続けるなら洩矢の神様だけじゃない。私たちレベルでさえどうにかできる化け物が幻想卿を‘侵攻している’可能性がある……」
「ちょっといいかしら?」
そこで声をあげたのはパチュリー・ノーレッジ。知識の名を持つ魔女だった
「茶番はいいわ。正直な話、答えなんて解りきっているようなものだから。それをほじくりかえすのも面倒だし、今すぐどうにかなる問題でもない。消えた連中に関しても軽く手を打ってるからそこまですぐにどうにかなる訳でもないわ。そんなことはすぐの問題じゃない。今すぐに必要なのは‘これ’よ」
パチュリーは腕を軽く振ると、大きな木箱が何処からともなく飛んできた。それは机の上に乗ると、パチンと音をたてて開く
中には、真っ紅な光る玉が二つ入っていた
「それは………」
「レミィの妖力と記憶よ。うちの玉座に浮いていたのを咲夜が発見したわ。博麗霊夢のも見付かったんでしょ? これが見つかったって事はすなわちこの幻想卿から消えているって事でいいと思うわ」
それを見て、ハッとしたような顔をするのがほぼ全員。きっと覚えがあるのだろう。
そしてその顔を見渡して、パチュリーは言う
「いい? これが無いってことは、消えた連中にとって最悪の事態に陥りかねないわ。この件の黒幕がすぐに誰かを殺すとは思えないけど、不慮の事故は起こりかねない。特に生まれながらの妖怪連中はそれが顕著よ。連中は力がない状態に成ったことは無いんだから」
その言葉に黙る賢者達。その手の者達を発生から知っている訳じゃないが、この面子は力がなかった時の方が珍しいだろう。そう思えるような化け物達なのだから
「だから、と言っては難だけど、提案が有るわ。」
魔女はレミリアの力と呼ばれた玉に手をかざす。するとそれは光を帯びて行き、どこかに向かって進もうとして、何もないところにぶつかる、といった事を繰り返した
「これは力がレミィに引かれてるから起きる現象よ。でも、このままじゃ届かない、もしくは力単体じゃ行くことのできない場所に向かっている。そこにレミィ達が居ると私は推測したわ。なによその顔は? あなた達が来る前に一通りの実験、検証は終わらせてるの。どうせあなたたちもそこまでは掴んでるんでしょ? 駆け引きなんて私としてはするつもりはないわ。そう言う政治ごっこは私のいない場所で勝手にやってちょうだい」
一息
「ここからが交渉よ。八雲紫の能力を貸してほしいの。あなたの力ならこの力が持ち主の場所にいけないという状況をある程度なら無視出来るかもしれない。私が出す見返りは、この本人から分離した力の塊を加工して使えるようにする事よ。すなわち、これをレミィ達がいる場所に送ることができる状態にする。心配しなくても全員分やってあげるわ。それで? 返答は?」
そこまで一気に言い切ったパチュリー・ノーレッジを見て、小悪魔は呆れたようにため息をついたのだった
東方の時系列は地霊殿までです。
かなりご都合主義な上に無理がありますが、よっぽど無理しないと連中の能力取り上げなんて出来そうにないです。そして能力取り上げないと無双して蹂躙して終わりになってしまいそうです
ちなみに霊夢が海を見ていたのは幻想卿には海が無かったから物珍しいってだけの話。それっぽく書くと伏線みたいに見える不思議
取り敢えずアーロン編まではちゃっちゃか進めます