ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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※今回リゼットはぷんすこモードに入ります。


第百五話 不死身の末路

「皆で囲んで倒しましょう」

 

 ブラックを見て、リゼットが発した第一声がこれであった。これにはブラックもぎょっとしている。

 倒すべき敵が折角向こうから来てくれたのだから、この機を逃す手はない。

 先手必勝、見敵必殺、サーチアンドデストロイ。

 敵がどんな札を隠しているか分からないのだから、ならばその札を切る暇も与えずに叩きのめす。それが最善手で最速の手だ。

 戦いはスポーツではない、戦争である。

 そこに卑怯卑劣などなく、使えるものは全て使えばいい。

 武器、暗器は勿論として爆薬だろうがアラミド繊維のワイヤーだろうが銃だろうがミサイルだろうが、あるなら使う。それがリゼットの考えだ。

 そして勿論数の暴力も例外ではなく、これで倒せるなら何を躊躇う必要があるのだろう。

 孫子曰く、『戦争は戦う前に勝敗が決まっている』。

 戦いとは何も向かい合ってヨーイドンから始まるわけではない。それは試合(スポーツ)だ。

 本当の戦いとは、始まる前にいかに勝てる状況を作れるかであり、そこから始まっている。

 勝てる状況を作れなかったのならば、それは作れない方が悪いのだ。

 つまりは、一人でノコノコと出てきてしまったブラックの方に問題がある。

 よく戦隊ヒーローやウル〇ラマンがたった一人の怪人や怪獣を一方的に取り囲んで容赦なく数に物を言わせてボコボコにし、『敵は一人なのにこっちは大勢でリンチしてズルい』と言われるが、リゼットはそうは思わない。

 むしろ子供向けのヒーローなのに戦いの本質をよく分かっていると評価していた。

 つまり囲んでリンチするのは正義のヒーローも行う立派な戦術である。

 いいではないか、ウルトラリンチ。それで平和を守れて一人でも多くの日常を守れるならば率先して行うべきだ。

 

「いや、神様……そりゃあいくらなんでも……」

「そんなものはサイヤ人の戦いではない!」

 

 しかしリゼットがいかに効率優先な思考でも、他はそうではない。

 あのブロリーのように相手の方が強いならばチームプレイも止む無しと受け入れるだけの機転はあるが、彼ら……特に悟空は基本的には武術家ではなく武道家である。

 相手の方が弱いか、互角程度ならば皆で一斉にかかりたいとはあまり思わない。

 弱い者苛めをしたいわけではないのだ。

 悟空が難色を示し、ベジータはハッキリとリゼットのやり方に不満を見せた。

 そもそも一人を相手に大勢でかかるのは、相手よりこちらが劣っていると認めているようなものである。

 本当に相手の方が強いならばともかく、ブラックからは特にそういう印象も受けない。

 

 

 結局、あれこれ話し合った末に未来から襲来したブラックとの戦闘を引き受けたのは悟空だった。ブラックはほっとしている。

 リゼットの袋叩き戦法は残念ながら没だ。

 しかしリゼットはあえて悟空の行動に異を挟まずに状況の推移を見守る事とした。

 悟空の気持ちの問題もあるが、実際問題ブラックとやらの実力が未知数である以上、どんな切り札を隠し持っているか分からない。

 ならばまずは悟空と戦わせて手札を晒させるのは悪くない選択肢に思えたのだ。

 それに大勢でかかれば瞬間移動で逃げられてしまう可能性もある。

 悟空はまずブルーを温存しての超サイヤ人2で挑み、対するブラックも同じく超サイヤ人2へと変身。互角の格闘戦を繰り広げている。

 経験と技術の差で若干悟空が有利だが、ブラックも負けてはいない。

 それを見てリゼットは素直にブラックの実力を評価した。

 今の悟空と互角とは、どうやら見た目だけではないらしい。

 悟空はまだ本気を出していないが、基礎戦闘力はほぼ互角と見て間違いないだろう。

 ベジータは本気を出さない悟空にイラついているが、実の所超サイヤ人2は様子見としては決して悪い選択ではない。

 3は消耗が激しく、ブルーは神の気を消費し過ぎると弱体化を起こす。

 3はもう、そういう変身として割り切るしかないが、ブルーは……恐らくあれは、まだ未完成の変身だ。だから現状ではゴッドとほとんど強さに差がない。

 つまり今のブルーはゴッドより少しだけ強くて、消耗だけは桁外れという割に合わない変身なのだ。

 つまり2こそが最もバランスに優れた変身であり、相手の出方を窺うのに最適であると言える。

 とはいえ、それは悟空一人だけの時の話。

 まだこちらにはベジータ、ターレス、ピッコロ、セル、そして自分が控えている。

 ならばいっそ悟空には全力で相手を追い詰めて貰いたいくらいだ。

 リゼットはそう考え、悟空へと念話を発する事にした。

 

『悟空君。聞こえますか?』

『神様? ああ、聞こえてる』

『とうに気付いているでしょうが、ブラックはまだ全然本気ではありません。

このまま小手調べを続けていても埒があかない……向こうがその気にならないならば、まずはこちらからギアを上げて相手の本気を誘うのも手です。

ブルーに変身して一気にブラックの全力を引き出して下さい』

『本気か……ブラックのロゼっちゅう変身を引っ張り出そうって事か』

『そうです』

 

 今なら……戦いの場が現代である今ならば確実にブラックに勝てる。

 こちらには現状考えられる最強メンバーがおり、やる気こそ感じられないが破壊神とその従者までもがいるのだ。まず負けはないと考えていい。

 しかし気がかりなのは先程から時空の穴が閉じようとしている事であり、恐らくブラックはすぐにこの時代から居なくなってしまうだろう。

 これは曲がりなりにも空間操作の力を持つリゼットだからこそ気付いた事であり、彼女以外には恐らくビルスとウイスしか気づいていまい。

 そうなると止めを刺す前に逃げられてしまう可能性が高く、ここでの決着は恐らく望めない。

 ならばせめて、この時代にいる間に敵の手札を晒させてしまうべきだ。

 今ならば向こうの全力がこちらの想定を上回っていたとしてもどうにか出来る。

 

『わかった! オラもそろそろ身体あったまってきた頃だ!』

 

 悟空はリゼットの判断に従い、超サイヤ人3とゴッドを飛ばしてブルーへと変身した。

 幼年期からここまで、リゼットの判断が外れていた事は余りない。

 たまにうっかりする事もあるが、それでも判断自体はいつも正解だった。

 細かい作戦やら全体を見ての行動などを決めるのはリゼットだったし、悟空も自分はそういうのに向いていないという自覚がある。

 少なくとも、彼女の判断ならば大丈夫だと思うだけの信頼がそこにあり、仮にそれで状況が悪化しても、取った行動は最善であったと思う事が出来る。

 その悟空らしからぬ行動に全員の視線がリゼットへと向かった。

 どうやら彼等も今のギアチェンジがリゼットの指示である事を察したようだ。

 最初は全力を出さない悟空のやり方は周知の事実であり、それを咎めて軌道修正出来るのなどリゼットくらいしかいない。そう全員が分かっているのだ。

 

「神の気を纏ったサイヤ人の超サイヤ人か!」

「そういう事だ。いくぞブラック!」

 

 悟空の変身により一気に形勢は傾く。

 先程まで互角だったのが嘘のように戦いは一方的なものへと変わり、悟空の打撃が次々とブラックに炸裂した。

 蹴り飛ばして岩山へとぶつけ、更に追い打ちで拳のラッシュを仕掛ける。

 拳と岩とでブラックを挟んだのも束の間、衝撃に耐えきれなくなった岩山が崩れてブラックが吹き飛んだ。

 悟空は額に指を当てて即座にブラックの後ろへと回り、蹴り上げてまた消える。

 今度は上空からのダブルスレッジハンマー! ブラックを地上へと叩き落し、気弾の連射で追い打ちをかけた。

 

(さあ、本気を出さなければ勝負になりませんよ。

それとも、このまま本領も発揮せずに死にますか?)

 

 リゼットはブラックの次の行動を見守りつつ、一挙一動も見逃すまいと神経を集中させる。

 悟空達は実力は申し分ないのだが、基本的には皆が脳筋だ。

 そうである以上、リゼットだけは常に冷静に全体を見渡して次の手を考える必要がある。

 時空の裂け目は更に小さくなり、ブラックのタイムリミットが迫っている。

 だがリゼットの思惑は成功した。

 ブルーに追い詰められたブラックはこのままでは勝てないと理解したのだろう。

 赤黒いオーラが地面を砕いて立ち昇り、ブラックの髪が逆立つ。

 纏うそれは紛れもない神の気で、だが何処か歪で禍々しい。

 透き通るようなリゼットの純白の神気や悟空達の青い気とは対極に位置しており、どちらかといえば破壊神のそれに近い。

 

「あ、あいつ変身したぞ!」

「あれは……超サイヤ人なのか?」

 

 クリリンとピッコロがその変身に瞠目し、しかし疑問を感じる。

 その理由は一つ、色だ。

 超サイヤ人にはいくつものバリエーションがあるが色は基本的に黄金で、その例外としてゴッドの赤やブルーの青。そして超サイヤ人4の大猿との融合がある。

 だがブラックのそれは今までのどれとも異なる、薔薇色の気だ。

 その神気の総量は……ほぼブルーと互角。だが単純な戦闘力で僅かにブラックが悟空を上回っている。

 悟空やベジータならば1対1ではかなり厳しい相手だが、自分ならば押し切れる相手だとリゼットは考えた。

 ……だが妙だ。先程までブラックは悟空と完全に互角だと思っていたのだが……読み違えてしまったか?

 

「どうだ、この色……美しいだろう?

お前達のセンスに合わせて名付けるならばロゼ。超サイヤ人ロゼといったところか。

喜べ孫悟空。お前は俺の手によって美しさの頂点へと至ったのだ」

「……何かおめえ、気持ち悪いな」

「所詮は人間。俺の奏でる言葉の気高さを理解出来るはずもない。

俺の存在……その全てがひたすらに……孤高」

 

 ロゼへと変身したブラックは何やら己に酔っているようで、妙に気持ち悪い。

 悟空の見た目でナルシストとはまた随分新しいキャラだ。

 だがその実力は本物だ。超サイヤ人ブルーの悟空と互角に戦い、渡り合っている。

 単純な実力でブラックが上回り、それを悟空が技巧で補う事で互角の戦いが成立しているのだ。

 

(間違いない……あのブラックという男、戦いながら強さを増している……。

極限以上に鍛えた悟空君と違い、まだ伸び代が残されているという事ですか)

 

 悟空との戦いを見ながら、リゼットはブラックの事を成長する敵であると見抜いていた。

 やはり自分の読み違いなどではない。ブラックは最初は間違いなく悟空と互角だった。

 だが驚異的な事にブラックは戦っている間も実力を増しているのだ。

 これはそろそろ自分が出るべきか。そう冷静に考えてリゼットはいつでも飛び出せるように準備した。

 だがその必要はどうやらないらしい。

 時空の穴がいよいよ完全に閉じ、ブラックを強制的に吸い込んで未来へと戻してしまったからだ。

 

「ふむ……実力は今の悟空君よりもやや上ですか。しかし倒せない相手でもなさそうですね……今の所は」

 

 ブラックを見送り、リゼットはブラックの脅威度をヒットと同程度と位置付けた。

 もう一人、ザマスという相手もいるらしいがこちらは実力は大した事がないと言われているので気にしなくてもいいだろう。

 不死身だというが、それとてリゼットにとってはさほど脅威ではない。

 まあ、悟空やベジータでは不死身の相手を倒す手段がないから自分も同行せざるを得ないだろう。

 

 

 まず未来世界へはトランクスの持っている時間移動装置を用いて悟空、ベジータ、トランクスの3人が向かう事となった。

 バーダックの時間移動装置は壊れてしまっているので、何とかブルマが修理するようだ。

 この女、メカ関係ならば最早何でもありである。

 トランクスと一緒にリゼット達全員で乗り込むという手もあったのだが、一度に移動する人数が多すぎると時の穴――ワームホールを通り切れず誤作動を起こす危険性もあるとの事で3人だけでの出撃となったわけだ。

 リゼット達の出撃はそれから30分後。ブルマが驚きの速度で修理を終えた後の事となった。

 第二陣のメンバーはバーダックとリゼット、それからターレスだ。

 リゼットとしては正直、顔の問題でターレスには余り来てほしくなかったというのが本音だ。

 ブラックと悟空、ターレスとバーダックで同じ顔が四人集まって一体どうしようというのか。

 あと一人同じ顔がいれば悟空特戦隊が結成出来てしまう。

 しかしこれだとブラックポジションがターレスとブラックで被ってしまうのでブラックはピンクでいいだろう。

 ゴクウピンク(ゴクウブラック)だ。実にややこしい。

 

 未来世界を訪れたリゼット達が見たのは荒廃した世界であった。

 その光景を見た瞬間、リゼットの中からザマスという神への敬意が完全に消滅した。

 一応は自分よりも上の神という事でほんの僅かな敬意もあったのだが、もうそれはない。

 こんな光景を平然と作り出すような奴など神でも何でもない、神を名乗っているだけの害悪でしかないからだ。

 悟空達の気を感知して少し飛ぶと、どうやら相当危ない所だったらしく悟空は地面に膝を突いていた。

 ベジータは完全にダウンしており、胸に剣で貫かれたような傷跡が残っている。記憶を読んでみたところ、『前菜』扱いされた挙句あっさりやられたらしい。ブルーになってもお約束からは逃れられないのだろうか。

 ブラックは確かに強敵には違いないが、それでも二人でかかれば勝てない相手ではない。

 だがベジータが先行して一人ずつ挑んだ結果がこれである。二人の悪い癖だ。

 

「まずは私がザマスを始末します。バーダックとターレスはブラックをお願いします」

「おい、お前がそっちに行くのかよ。あいつとターレスじゃあ顔が同じでどっち攻撃していいか分からねえじゃねえか」

「そうだぜ。間違えてバーダックに攻撃しちまいそうだ」

「お二人共、鏡という物をご存知ですか?」

 

 ブラックは悟空フェイス二人に押しつけ、リゼットは一瞬にしてザマスの頭上へと転移した。同じ顔同士、仲良く戦って下さい。

 潜在能力を解放し、反応すら出来ていない鈍間のモヒカンを掴んで急降下。ブラックと分断する。

 慌てて追おうとしたブラックの前にはバーダックとターレスが立ち塞がり、これでまずは分断完了。

 リゼットは速度を落とさずに地面スレスレまで飛び、それからザマスを地面に思い切り投げた。

 頭皮ごと千切れたモヒカンが彼女の手の中へと残ったが、無論そんな物に用などないので即座に気で消して、地面に倒れているザマスへと肉薄する。

 

「ぐっ……無礼な。たかが星の神風情が」

 

 何やら言っているが無視して頬肉に指を突き刺した。

 彼の言葉など何の価値もないし聞く必要もない。話し合いなど通用しない相手もいるのだ。

 頬に指を刺したまま投げ、顔の肉を剥ぎ取る。

 ザマスという男は不死身だとトランクスから聞いた。ならばよし。今後の参考にその不死身度を試させてもらうとしよう。

 まるでお面のように綺麗に剥がれた顔の皮を魔法で焼いて、リゼットが飛ぶ。

 顔のなくなってしまったザマスも何とか反応しようとするが戦闘力の差がありすぎた。

 隙だらけの眼球へ指突! 目玉を抉り出し、続いて喉を刺して喉仏を引き千切る。

 それから胸! これも貫手で貫通し、抜く際についでに肋骨を抉り取った。

 股関節! 足を支える骨を破壊し、今度は耳に指を突き入れて指先からデスビームのように細めたレーザー状の気を連射。脳を貫通し破壊する。

 抜き取る際についでに耳を千切り、ポタラを没収。もしかしたらブラックと融合されるかもしれないので、その可能性を排除する。

 股間を蹴り上げて急所を潰し、奇声を上げながらザマスが殴りかかって来ればその腕を掴んで手際よく関節を外す。

 更に指を獲って投げ、超能力をかけてザマスを大回転。指を根元から引き千切って時の指輪も没収した。

 ポタラと時の指輪は界王神の持ち物だ。もう彼には要らないだろう。

 

「少し痛いですよ」

 

 手の中に自律気弾を生み出し、ザマスの口に当てた。

 それと同時に自律気弾がザマスの体内に侵入し、主要臓器を手あたり次第に破壊し始める。

 小型の戦乙女達が心臓を槍で刺し、大腸を千切り、肺を蹴って圧迫し、肝臓や腎臓を再生するそばから切り裂く。

 頭部へ侵入した戦乙女が脳に電気を流して身体を麻痺させ、神経や血管が次から次へと切断されていく。

 時折ザマスの身体のあちこちから槍が飛び出しては引っ込み、戦乙女が破壊の限りを尽くしていた。

 

「ミギャアアアアアアアアアッ!!」

 

 ザマスの悲痛な叫びが木霊するが、死ぬ気配がまるでない。

 だがこれでほぼ無力化は成った。

 後は何とか止めを刺すだけだ。

 

「HEROES・GOD MISSION」

 

 リゼットが気を集約し、指先に一枚の光のカードが現れた。

 無造作に投げたそれは光の戦士となり、繰気弾の打撃性とSGカミカゼアタックの自立性を併せ持ち、まるで生きてそこに人がいるかのように戦う事が可能となる。

 現れた戦士は孫悟飯。悟空と同じ胴着を着こなし、現代と比べて逞しく成長している。

 この時代で既に死んでしまった孫悟飯の魂をここに召喚し、リゼットの力で神の位階へと高めて実体化させたのだ。

 この時代を荒らしたザマスを自分だけが裁くのは彼等に悪い。

 今最もザマスに腹を立てているのはきっと、命を捨ててこの時代を守ったこの青年だ。

 現れた悟飯はリゼットに微笑んで一礼し、怒りの表情でザマスを睨む。

 ――連打。

 豪雨の如き速度で怒りの拳打が殺到し、ザマスを打ちのめす。

 身体中のありとあらゆる骨を砕き、壊し、潰し、片手かめはめ波で焼き焦がした。

 そうしてザマスを叩きのめしてから戦士は消え、リゼットは無表情でザマスの残骸を見下ろす。

 頭皮を千切り、顔の皮を剥ぎ、脳を破壊して耳を千切り、指も千切った。

 内部では今も小型の戦乙女達が暴れ続けている。

 その上で全身の骨を砕き、焼き焦がしたわけだが……その生命力は気持ち悪いくらいに衰えていない。

 

「なるほど、確かに不死身ですね。しかし対処法はいくらか思い付きます。

まずは一つずつ試すとしましょうか」

 

 リゼットは冷たく言い、一つの小瓶を出すとザマスへ中身をぶち撒けた。

 それは小瓶の中には到底入り切るはずもない量であり、それだけで何らかの封印術で閉じ込められていた物だと分かる。

 その紫色のスライムを即座に再封印して蓋を閉め、ザマスを見る。

 変化は顕著であった。ザマスから感じられる気が限りなくゼロへと近付き、存在感すら希薄になったのだ。

 

「な、何だこれは……何を、した……?」

「コメソンといいます。相手の力を吸い取って成り代わり、成り代わられた者はこの世から消滅してしまうのですが……流石は超ドラゴンボールによる不死身。そんな姿になっても完全消滅とはいきませんか」

 

 ザマスはこの時点で、ほぼ無力化されていた。

 戦闘力は数値にして僅か1未満。地球人の一般人にすら及ばない。

 神としての特殊な力や超能力も失われ、もはや自力では何も出来ないだろう。

 だが超ドラゴンボールの効力はコメソンを上回るらしい。

 力は失ったが消えない。やはり彼を殺す事は不可能だ。

 リゼットはふむ、と呟くと特に驚く様子もなく次の手へ移る事にした。

 

「千の剣よ、在れ」

 

 ザマスへと切っ先を向ける光の剣を創造。

 それを一斉に放ち、ザマスの全身を貫く。

 顔を、胸を、首を、腕を、足を、胴を、股を、臀部を、肩を。

 刺しては剣が消え、また次の剣が突き刺さる。

 それを執拗に繰り返し、ザマスは瞬く間にハリネズミのような有様と化してしまった。

 

「ウワァァァァァァーーーッ!!」

 

 ザマスの悲鳴が木霊するが、リゼットはただその不死身ぶりに呆れ果てていた。

 コメソンで限りなく存在を希薄にして致命傷を間髪を容れずに与え続けても駄目か。

 ならば次だ。

 リゼットは指を鳴らし、ザマスに突き刺さった光剣と内部に侵入させた戦乙女を同時に爆発させた。

 コメソンで存在を薄くした上で細胞一つも残さずに抹消する。

 魔人ブウでもここまでやればまず死ぬだろう。

 ザマスが消えた空間をしばらく凝視し、やがてリゼットは哀れみを込めて彼を見た。

 

「これも駄目ですか」

 

 消したはずのザマスが、光の粒子が結合するにしたがって復元されていく。

 これはどうしようもない。本当に不死身だ。

 地球のドラゴンボールで叶えた不死身とは次元が違う。

 こうまで殺せないとは恐れ入った。

 恐らく『破壊』でも彼を消す事は不可能だろう。

 よく分かった……彼は救えない(・・・・)

 

「……ザマス、最後に聞きます。

その不死身を解除する術はないのですか?」

「は、ははは! 残念だったな、そんなものはない! この時代の超ドラゴンボールは私が破壊した! 私の不死身は、永遠のものだ!」

「……そうですか。貴方は自分が何を叶えてしまったのかも分かっていないのですね……」

 

 心底哀れむようにリゼットが言う。

 リゼットは彼を本気で殺す気で攻撃した。だがそれは最後の慈悲だったのだ。

 何故ならどんな死に方をするにせよ、死ねないよりは遥かにマシだからだ。

 ザマスの年齢は何歳ほどだろうか。千だろうか? それとも万だろうか?

 どちらにせよ自分などとは比較にもならない永い時間を生きている事だけは確かだろう。

 だがそれだけだ。この先に彼を待ち受けている永遠から見ればどんな数字でも無に等しくなる。

 今からリゼットは彼を封印する。それはこの上なく残酷で救いのない手段だ。

 何故ならザマスは死なない。終わりが来ない。

 宇宙の年齢である138億年が経とうが、それを無量大数で乗じようが、それを更に不可説不可説転でかけようが、それでも終わらないのだ。

 だからせめて終わりを与えてあげたかった。

 だがそれすら出来ないならば……こちらも、覚悟を決めるしかない。

 故にリゼットはザマスを殺す(救う)事を諦めた。

 

「終わりにしましょう。

もっとも、私にとっては終わりでも貴方にとってはこれが始まりになるのでしょうけど」

 

 殺せない以上、打つ手は一つ。永遠に封じ込めるのみ。

 リゼットが手を掲げると空中に丸い扉のようなものが出現した。

 それはゆっくりと音を立てて開き、同時にザマスの身体が宙へ浮き上がる。

 

「ヘブンズゲート」

 

 自力では動く事すら出来ないザマスに術をかけ、ゲートの中へと誘う。

 その行き先はカッチン鋼で造り上げた封印の小瓶の中だ。

 気の渦によってザマスが振り回され、洗濯機の中の洗濯物のようにもみくちゃにされる。

 その最中、リゼットはこれから彼に待ち受けているだろう運命について話す。

 

「これから貴方を小瓶の中へ封印します。

その中は精神と時の部屋……と言っても分からないでしょうから別の空間とでも思ってください。

その部屋と同じように、小さなものではありますが世界が広がっています。

……人のいない世界がお望みなのでしょう?

ならばもう誰も邪魔をしません。貴方しかいない世界で一人、理想通りの世界をお楽しみ下さい」

「や、やめろ! 私を誰だと思っている! 私は神だぞ……この世全ての正義と理想を体現する真なる神こそが……」

「続きは向こうでどうぞ」

 

 何かまだ喚いていたが、そのまま呆気なくザマスはゲートの中へと封じ込められた。

 それからリゼットは別のゲートを開き、小瓶を取り出す。

 これこそがたった今ザマスを吸い込んだゲートの行き先で、この中にザマスがいる。

 リゼットはそれを創造神術でカッチン鋼で覆って開封不能にしてしまった。

 ここまでやってしまえば、リゼット本人でも彼を解放するのは難しい。

 そして胸元へと入れ、ターレス達の戦いへと意識を移した。

 とりあえずこの小瓶は、現代に戻ってから精神と時の部屋に封じればいいだろう。




悟空「悟空レッド! 孫悟空!」
ターレス「悟空ブラック! ターレス!」
バーダック「悟空グリーン! バーダック!」(戦闘服の色的に)
悟天「悟空ブルー! 孫悟天!」(超での彼の服の色は青)
ブラック(ロゼ)「悟空ピンク! ゴクウブラック!」

ピッコロ「……ピンクなのかブラックなのかハッキリしろよ」

【RTA失敗】
リゼットはウルトラリンチを提案し、最速クリアを目指したが悟空達に受け入れてもらえなかった。そんな日もある。
悟空達も多対一そのものに反対なわけではなく、危なくなれば『拘っている場合じゃない』と共闘するが基本的には一対一の方が好み。
リゼットはいきなり多対一に持ち込もうとするのが問題。

【ぷんすこリゼット】
未来の惨状を見ておこ状態となったリゼット。
戦闘力は上がらないが残虐ファイトに磨きがかかる。
ウォー〇マンスマイルのようなもの。

【ヘブンズゲート】
今まで空間移動用に用いてきた技の本来の使い方。
元々この技はデッドゾーンからの派生であり、その本来の効果は『封印空間を創造して閉じ込める』というもの。
リゼットは東京ドーム10個分ほどの面積の封印空間を小瓶(カッチン鋼製)の中に創り、その中にザマスを閉じ込めた。
その上から更に隙間なくカッチン鋼で覆ってしまったのでもう開封不可能。

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