ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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~一方その頃~
ビルス「破壊☆」
現代ザマス「ウワアアァァァッ!!」


第百六話 超サイヤ人4VS超サイヤ人ロゼ

 リゼットがザマスを処分していた頃。

 ターレスとバーダック、ブラックの同じ顔三人は空中で激しい攻防を繰り広げていた。

 ターレスは超サイヤ人4へと既に変身しており、バーダックは潜在能力を解放している。

 だがそれでも二人は攻め切れずにいた。

 実力的にはそこまで大差はなかった。多少劣ってはいたが十分に勝てるレベルだった。

 だがこのゴクウブラックという男、ダメージを受ければ受けるほどに強くなっているのだ。

 それはまるで、サイヤ人が死から立ち直るたびに強くなるのと同じように。

 サイヤ人のそれには限界があるはずだが、しかし時に例外というものが現れる。

 最たるものは、やはり伝説の超サイヤ人ブロリーだろう。

 流石にブロリーほどの急上昇ではないが、強くなり続けるブラックはブロリーを彷彿とさせて嫌な気分にさせられる。

 

「はああッ!」

 

 ターレスとブラックの拳が衝突し、超サイヤ人4と超サイヤ人ロゼが激しい攻防戦を交わす。

 神の気を纏ったロゼと、それに頼らない暴力方面に特化した4の強さは総合的にはほぼ互角だ。

 しかし互角ならば、基礎戦闘力の差が物を言う。

 今はまだ戦えるが、ブラックがこのまま強くなり続ければどうなるかは火を見るより明らかだ。

 故にターレスは、この膠着を崩す手を早急に打つ必要があった。

 

「おいバーダック、少し手を貸せ」

「あ?」

「このままじゃジリ貧だ。少しばかり勝率を増やしてえ」

「……何か考えがあるようだな。いいぜ、付き合ってやる」

 

 小声で打ち合わせをし、ターレスが気弾を放った。

 その気弾にバーダックが気弾をぶつけ、空中で爆破させる。

 ダメージを与えるのが目的ではない。ほんの僅か数秒、敵の目を晦ませる為のものだ。

 その隙に二人は地上へと降下し、悟空、トランクス、それから倒れているベジータを回収して岩陰へと飛び込んだ。

 

「それで、どうするんだ?」

「なあに、そう難しい話じゃねえ。お前等のサイヤパワーをありったけ俺に注ぎ込んでくれ」

 

 ターレスの考え。それは超サイヤ人4の限界を超えるというものであった。

 超サイヤ人4は確かに純粋な戦闘力という面で見れば最強の変身だ。

 だがまだ、限界ではない。

 自分で何となく分かるのだ……まだ上がある、と。

 ならばこそ、ここから更にサイヤパワーを伸ばす。

 

「気を注ぎ込む? まさかゴッドにでもなるつもりか?」

「へっ、よしてくれ。善のサイヤ人なんざ、なりたくもねえよ。

あくまでパワーを高めるだけだ」

 

 ベジータの疑問を一笑に付す。

 サイヤ人の強さとは、あくまで暴力。純粋なパワーとスピードにこそあるというのがターレスの考えであった。

 神の気だのクリアな気だの、そういうのはリゼットにでもやらせておけばいい。心を静かに保ちながら戦うなど、どう考えても自分達の分野ではなくあの女の分野だ。

 自分達の強みとは……サイヤ人の強さとは闘争心! 飽くなき戦いへの渇望!

 静かな心で戦うなど最初からガラではない。

 野生――それこそが戦闘種族サイヤ人が身を委ねるべきものだ。

 

「確かにバラバラにやり合うよりは集めた方がよさそうだが……耐えられるのか?」

「さあな。だがこの際だ、自分の限界に挑んでみるさ」

 

 一歩間違えれば取り込んだ気が身体の許容量を超えて自滅してしまう。

 バーダック達はその事を心配したが、しかし今は時間がない。

 今すぐにでも上空で自分達を探しているブラックがこちらへ来てもおかしくないのだ。

 悟空達は頷き、一斉に手を繋いで掌をターレスへと向けた。

 全員のサイヤパワーがターレスへと注ぎ込まれ、筋肉が膨れ上がる。

 手を繋いでサイヤ人のパワーを注ぎ込むというゴッドと同じ過程。だがそこにゴッドのようなクリアな気などはなく、純粋に暴力的に、サイヤ人本来のパワーのみが上昇していく。

 凶悪さを前面に出した超サイヤ人4の顔が更に好戦的に歪み、犬歯を剥き出しにする。

 やがて目も開けていられないほどに光が溢れ――そして、その中からターレスが歩みだした。

 

「ありがとよ、お前等。おかげで、届いたぜ……更に上によ。

超フルパワーサイヤ人4の完成だ」

 

 外見は今までと変わらない。

 だが放出される気は炎のように激しく、黄金の粒子が舞い散っていた。

 超サイヤ人4の限界を超え、最早超サイヤ人5と呼んでもおかしくない更なる進化。

 それを終えたターレスの前にブラックが着地し、しかし不気味なものを感じているのか迂闊に攻める事は出来ないでいる。

 そんな彼に、ターレスは凶暴に笑いかけた。

 

「どうした、ブラックさんよ……怖いのか? たかが人間が」

「……ほざけ!」

 

 ブラックが挑発に乗り、ターレスへ渾身の拳を叩き込んだ。

 それにターレスは一切反応せず、防御も回避もしない。

 ブラックの拳がジャストミートし……だが、ターレスは動いていなかった。

 後ずさりすらせず、愉快そうに口の端を釣り上げている。

 その光景に驚愕したブラックが後ずさり、ターレスが笑い声をあげる。

 

「ククク……」

「何が可笑しい……人間!」

「いや……可笑しいんじゃねえ。俺も驚いているのさ。

……自分の、あまりの強さによ」

 

 ここに力関係は逆転した。

 ブラックがいくらパワーアップしたとしても追いつけないだけの絶対的な差が今の二人の間にはある。

 故にターレスは勝利を確信した声で宣言した。

 

「――俺の勝ちだな」

 

 言うなり、一瞬で距離を潰して右フック!

 ブラックを殴り飛ばして即座にダッシュし、追いついて蹴り上げた。

 今度は上空へ先回りして蹴り落し、自身も急降下。

 落ちる直前のブラックを蹴りあげ、振り下ろしの右腕で地面に落とす。

 立ち上がろうとした所で頭を踏みつけ、掌を向けた。

 

「死ねえ!」

 

 気弾発射!

 避ける事も不可能な体勢へ容赦なく追撃をし、だがブラックは直撃を浴びながらも気を全開にする事で強引にターレスの足を振り払って顔をあげた。

 そこからターレスの顔へ蹴りを直撃させるが、ターレスは僅かにのけぞっただけで大きなダメージを受けてはいなかった。

 元々、超サイヤ人4は単純な耐久力という面ではブルーやロゼを凌駕している変身だ。

 それが更にパワーアップした今、ブラックの攻撃すらターレスには通らない。

 

「そらあ!」

 

 ターレスの蹴りがブラックの顔を捉え、ブラックは鼻血を吹き出しながら倒れ込んだ。

 神の気というのは通常の気よりも強く、それ自体が強力な武具のようなものだ。

 だがいかに強い武具があろうと、それより強い攻撃を受けてしまえば倒れるのは考えるまでもない。

 ブルーと4の差というのは、気を高めるか肉体を高めるかの違いである。

 超サイヤ人ブルーは気の操作を極めた形態であり、実の所肉体的には通常の超サイヤ人と大差がない。

 だから油断して気を抑えてしまえば格下の攻撃だって通るし、不覚も取る。

 気の出力を抑えて戦うならば、その戦闘力は超サイヤ人2よりはマシという程度でしかない。

 完全に気を抜いてしまえばそこらのレーザー銃にすら撃ち抜かれる可能性があるほどだ。

 一方で4は肉体を純粋に極め、強固な筋肉を手に入れている。

 ブルーのように精密な制御など出来ないし、界王拳との併用など不可能だ。

 だがその肉体は強靭無敵。たとえ寝ていたとしてもそこらの雑魚の攻撃などビクともしない。

 仮に寝ている超サイヤ人4のターレスにフリーザ軍最新のレーザー銃を四方八方から乱射したとしても起こす事すら出来ないだろう。

 気の操作を極めて戦士として高みに到達したのが超サイヤ人ブルーであるならば、生物として高みに至ったのが超サイヤ人4である。

 

 そして今、その極まった生物が神の気を得たブラックへと牙を剥いていた。

 皮肉なものだ。人間ゼロ計画を掲げた果てに立ち塞がったのは、人間性からは程遠い超サイヤ人4という獣のような戦士だったのだから。

 どこまでも暴力的なターレスの攻撃がブラックを襲い、気の上から次々とダメージを刻む。

 全身を血で濡らしながら、しかしブラックの戦意も衰えない。すぐに立ち上がり、正面からターレスを殴り返した。

 しかしターレスにはやはり通じておらず、逆にブラックが拳を痛めている。

 それでも両者共に一歩も退かず、高速で拳打と蹴りを交わし合う。

 拳と拳が衝突し、僅かに距離が開いた瞬間にブラックが消えてターレスの後ろへ回り込んだ。

 だがブラックの蹴りに合わせて今度はターレスが消え、ブラックを背後から強襲する。

 それをもブラックが避け、だが続く攻撃をターレスが避ける。

 背後を高速で取り合い、同時に速度のギアを上げた二人が消えた。

 衝撃波を伴い、空が爆ぜる。

 まるで空で地震が起きたように大気が揺れ、それが幾度となく続く。

 超高速で移動しながらの格闘戦は目で追うのも困難だ。

 時折二人の姿が現れては消え、激しい戦いを繰り広げる。

 それを見上げながらトランクスはターレスの強さを素直に尊敬し、そして同時に不甲斐なさを感じていた。

 この時間軸は自分が過ごしていた時間軸で、なのに自分は一体何をしているんだ。

 ただ戦いを見ているだけで、何も出来ていない。

 ベジータが敗れた時だって、殆ど役に立ててはいなかった。

 力不足――その言葉がトランクスに重くのしかかる。

 

「俺は……何て弱いんだ」

「そう自分を責めるものではないですよ」

 

 トランクスの言葉に、後ろからよく知る声で返事が返ってきた。

 全員が振り返った先にいたのは傷一つ負っていないリゼットだ。

 彼女はザマスを相手にしていたはずだが、その彼女がここに居るという事は向こうの戦いは終わったという事だろう。

 ザマスは不死身だが、流石に今回は相性が悪すぎた。

 戦闘力で大きく差が開き、更に神の気を纏っているリゼットに勝てるわけがなく、不死身というアドバンテージすらも空間操作や封印術を得意とする彼女の前では意味がない。

 これではただの案山子。少し頑丈なだけのサンドバッグだ。

 この結果は悟空も予想出来ていたのか、特に驚きを見せる事はなかった。

 

「リゼットさん。ザマスは?」

「力を奪った上で封じました。二度と彼が戻って来る事はないでしょうし……天文学的な確率で戻ってこれたとしても、もう何も出来ません。力を奪った今、その力は地球人の子供以下です」

 

 不死身というのは絶対に死ねないという事。死にたくても死ねないという事だ。

 だからリゼットもかつてドラゴンボールに願う際、不死だけは願わなかった。

 死というのは誰もが恐れるものだが、同時に最後の救いでもあるのだ。

 それを自ら手放した者の末路はいつだって悲惨だ。死ねないが故の永劫の苦しみが待っている。

 ザマスも不死身でさえなければ今頃は楽になれただろう。だが不死身だったからこそ、リゼットも封印という手段を取るしかなかった。

 そして彼は今後、独りだけの世界で誰に観測される事もなく永遠を過ごすのだ。

 

「そ、そうですか……やはり貴女は凄いな。俺なんかとは全然違う」

「……トランクス。守る力が欲しいですか?」

「え?」

「別に何か試しているわけでも引っ掛けているわけでもありませんよ。正直に自分の気持ちを答えて下さい。私はその力になれるかもしれません」

 

 リゼットは微笑み、トランクスの力への渇望を問うた。

 彼が私欲や闘争心で力を求めているわけではない事くらいリゼットだって分かっている。

 きっと彼なら間違えないだろうという信頼もある。

 これが子供の方のトランクスだと、すぐに調子に乗るので少し悩むのだがこっちのトランクスなら問題ない。

 だからこそ、彼自身の口から聞きたいのだ。その渇望を。

 トランクスは少しばかり考え、やがて真っすぐな瞳でリゼットを見た。

 

「はい、欲しいです。俺は……この時代で必死に生きる人々やマイを守る力が欲しい」

 

 ……マイって誰? リゼットはそう思い、ついトランクスの記憶を覗いてしまった。

 そこに映ったのはピラフ一味のあの女だ。ただし若い。

 あれ? ここ未来世界ですよね? 17年後ですよね?

 何でこっちの時代より若くなってるんですか?

 そう疑問に思うも残念ながらその答えはトランクスの記憶にはない。

 ……実はこの時間軸ではピラフ一味は丁度悟空が心臓病になったタイミングでドラゴンボールを使用し、若返っていたのだ。

 だがリゼット達の時間軸ではそれを行わず、そしてリゼットが暴走した際に世界中の悪人を強制浄化した事でピラフも浄化され、以降ドラゴンボールを集める事はしていない。

 故にリゼットは何故マイが若返っているかを知る事が出来ず、今後も知る事はないだろう。

 唯一分かったのは、トランクスとマイが固い絆で結ばれているという事のみだ。

 なのでリゼットはこの世界のマイを、自分の知るマイの娘か孫だと結論付けた。

 そうして気を取り直し、トランクスを真っすぐに見る。

 

「よろしい。ならば数週間ほど修行といきましょうか」

「え?」

「安心して下さい。現世での時間経過はほんの僅かですから」

 

 リゼットは語りながら亜空間を開いた。

 デッドゾーンを改良して作った技、ヘブンズゲート。

 その封印空間にトランクスを飲み込ませ、続いて自分も飛び込む。

 そこにあったのは、精神と時の部屋だ。

 この時代の神殿は破壊されたが、神殿にあったのはあくまで精神と時の部屋に続く扉だ。

 それを壊せば出入りは出来なくなるが、精神と時の部屋を構成している空間そのものが消えたわけではない。

 ならば空間を越える術さえあれば、この時代でもまだ精神と時の部屋は利用出来るのだ。

 

「あ、あの、リゼットさん。これは?」

「貴方には今からここで私の修行を受けて頂きます。

此度の件、私達が片付けてしまってもいいのですが、今後も新たな敵が現れないとは限りません。

そうなった時の為に貴方には悟空君達と同じだけの力を身に付けて頂きます。

さしあたっては……そうですね。とりあえずゴッドになって貰いましょうか」

 

 リゼットはそう爆弾発言を落とし……そして、あの世からの召喚でこの時間軸の悟空、悟飯、ナッパ、それから比較的善良な心を持つサイヤ人を二人呼び出した。




【比較的善良な二人のサイヤ人】
作中では書いてないが、ギネとターブル。

【4とブルーの違い】
※あくまでこのSSでの解釈です。

・ブルー
ブルーは例えるならば超強力なバフ。
神の気がそのバフの役目を果たしている反面、肉体的な強度や性能そのものは超サイヤ人と大して変化しておらず、あくまで『神の気というバフを纏った超サイヤ人』。
なので神の気を抑えてしまえば格下相手にも圧倒されたり、ケールにボコられたりもする。
かといってずっと放出していればどんどん神の気残量が減って漫画版ベジータVSヒットのように弱体化する。
なので同じ超サイヤ人ブルーでも強さのムラが激しく、強さが一定ではない。

・超サイヤ人4
こちらはバフではなく、単純に素のステータスを爆上げした感じ。
ブルーみたいな複雑さはなく、単純に強い、硬い、速い、HP高い、以上。という分かりやすい強さ。
ブルーと比べると格段に安定している反面、性格が荒くなる上に興奮状態になってしまうので細かい制御が出来ない。界王拳なんてもっての他。
……え? 悟空さは出来たぞ? …………ほ、本編ではやってないから……(震え声)
また変身しているだけでもサイヤパワーを消費し続ける上に、このサイヤパワーは仙豆や回復魔法でも回復出来ない。

・完成ブルー
漫画版限定変身。
神の気を完全に体内に閉じ込める事で上記のブルーの欠点を克服した。
戦闘力も格段に上昇している。
弱点を消す事でバランスがよくなった。

・超フルパワーサイヤ人4
GTにおける悟空の最終形態。
超サイヤ人4に更に悟飯、悟天、トランクスが限界までサイヤパワーを注ぐことで完成した。
上記の欠点が何一つ解消されていないが、そんなの知った事かと長所を更に伸ばしたスーパー脳筋モード。
弱点が判明する前に相手を倒せばいい。
ちなみに仲間の協力が必要なので初回ゴッドと同じく一時的なパワーアップ。

【戦闘力】
ターレス:9億
超サイヤ人4:1兆8000億
超フルパワーサイヤ人4:36兆

※超フルパワー計算式
サイヤパワーを注ぎ込んだサイヤ人の数によって変化。
人数×5倍とする。
今回は悟空、ベジータ、バーダック、トランクスの四人だったので20倍。
GTの悟空の場合は悟飯、悟天、トランクスの三人なので15倍。
ただしサイヤ人の質によっても変わり、例えばここに超サイヤ人になれないパンやブラを加えても20倍にはならない。

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