ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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✪ あまりにも同じ感想が続くので、新規読者の方が同じ疑問を抱かないように2話の後書きに少しだけ追加しておきました。
サイヤ人オリ主は……高性能すぎて逆に使いにくいんですよ……。


第十二話 オラの悟飯をかえせッ!!(前)

 悟空とピッコロの戦いは無事、悟空の勝利に終わった。

 途中何度かハラハラさせられる場面もあったが、終わってみれば勝つべくして勝ったと言える。

 ピッコロが苦し紛れに放った口からビームもしっかり避け、文句のない完勝であった。

 将来発症し、GTで悪化の一途を辿る悟空の舐めプ癖を今のうちに矯正出来ないかと、最後まで油断しないように言い聞かせておいたのがよかったのかもしれない。

 そして皆が解散し、ひとまず地球の危機は去った。

 それはいい……それはいいのだが……。

 

「リゼットよ。儂はこれから先代として隠居する。ドラゴンボールは残しておくから心配はするな」

「あの、ちょっと待ってください。無事に助かったんですから、無理に私に譲らずとも……」

「いや、儂は今回の件で力不足を痛感したのだ。これからの地球にはお前のような強き神が必要だ」

 

 結局リゼットは、神の後任にされてしまう事は避けられなかった。

 これに伴い、神様――いや、先代は今までリゼットが住んでいた聖堂に移り住み、逆にリゼットが神殿に住む事となってしまった。

 やけに豪華な建物を作るなとは思っていたが、もしかして最初から自分が暮らす気だったのだろうか。

 だがそれだけでは終わらず、先代が更に言葉を重ねる。

 

「まず、神としての権限をお前に譲る。これにより、お前は地球上であればどこでも転移出来るようになり、あの世とこの世を自由に往き来可能にもなるだろう。更に、地球上であれば自分以外の他者をも運ぶ事が可能だ」

 

 結構便利な能力である。

 そういえばこの人、悟空をあの世に運んだりしてたな、などと思いつつ続きを促す。

 

「それから、就任の挨拶だな。まずは儂と一緒にあの世に向かい、閻魔様に顔見せをせねばならん。そこで正式に地球の神として認められるのだ」

 

 さあ行くぞ。

 そう言う先代を後ろから蹴り飛ばしたい衝動に駆られつつ、リゼットは彼の後に続く。

 後でどうせデンデに譲る事になるだろう立場だが、とりあえずここで閻魔様と知り合っておくのは決して損ではないはずだ。

 あの世に行くと閻魔から「お前地球の神にしては戦力ありすぎじゃね?」と文句を言われたり、「界王様より強い辺境の星の神とかないわー」とか言われたりしながらも初顔見せを終え、その後は引越しだ。

 聖堂から重力室と私物を移動させ、ついでに兎人参化とその部下達も神殿の小間使いとして移動させる。

 普通の兎達はそのまま聖堂に残したが、先代はまんざらでもなさそうに面倒を見ているので問題はないだろう。

 ミスターポポには何か言われるかと思ったが、彼はあっさりと神の代替わりを受け入れた。

 

「新しい神様来てポポ嬉しい」

 

 彼はもしかして神様なら誰でもいいんだろうか、と少し思ってしまった。

 ついでにカリンにもこの事を伝え、まさかの立場逆転にカリンは何とも言えない顔をした。

 とりあえず挨拶としてマタタビをプレゼントしたらゴロニャンしながら床を転がっていたので、そのまま放置し神殿へと戻った。

 

 

 

 神殿暮らしを始めて、まずリゼットが行ったのは神殿の奥に安置されていた地球破壊爆弾……もとい究極のドラゴンボールの処分だった。

 これは大魔王と分離する以前の先代が作り出したものであり、通常のドラゴンボールとは比較にならないパワーを持つ。

 GT時点での悟空すら子供に変えてしまうのだから、そのパワーははっきり言ってリゼットに制御し切れるものではない。

 ましてや願いを叶えれば、その惑星を1年後に破壊する上に宇宙中に散らばるという嫌がらせとしか思えない特性まで秘めており、遠慮なく言ってしまえばこの世に不要としか言えない物体だった。

 今はただの石だが、ピッコロと先代が融合すればこれは必ず復活する。

 故にリゼットは、7つ存在する玉のうち3つを持って精神と時の部屋に入り、力の限り全力投球してこれを放逐した。

 精神と時の部屋は地球と同じ広さを持ち、それでいて変わり映えのしない白い空間のみがどこまでも続く。

 そこに放り投げてしまえば、もうリゼットすらどこにあるか分からない、という寸法だ。

 もしピラフ一味が入り込んでも、発見すら出来ずこの部屋の過酷な環境に耐えれず死ぬか、生き延びても帰れず部屋に閉じ込められるだろう。

 要するにこれで、誰も究極のドラゴンボールを使えないというわけだ。

 あえて3つしか放逐しなかったのは、万一、億が一にも誰かが偶然中で揃えてしまうのを阻止する為だ。

 精神と時の部屋に3つ、外に4つ。これを揃えるのは限りなく至難だろう。

 

 それから1年。

 以前から研磨していた元気玉モドキをようやく完成させる事に成功した。

 地球中のあらゆる生物、植物からほんの少しずつ気を分けてもらい、己へと蓄積していくこの技を使えば不思議と腹も空かず、試しに何日か食事を摂らずに不眠不休で行動してみたが、まるで疲労する事がなかった。

 ほとんど植物と同じと言っていい。

 何も地球に限定せず、太陽の気を少しわけてもらうだけで活力を得る事が出来る。

 流石に水くらいは飲むが、この力を得てからというもの食事も不要になり、トイレに行く事もほとんどなくなったのは得といってよいだろう。

 

 ……いや、うん。これ元気玉じゃないじゃん。

 

 リゼットは途方に暮れた。

 やはり実物を見もしないで記憶だけで真似るのは無理があった。

 界王拳の時もそうだったが、今回も同じ失敗をしてしまったわけだ。

 懲りない少女(260歳)である。

 一応自分に気を集める事は出来るので、劇場版で悟空がやったみたいに己に気を取りこんで自分を強くするドーピング的な使い方は可能だ。

 というかそれしか出来ない。玉として発射とかどうやればいいのか、皆目見当もつかない。

 もういっその事あの世経路で界王星に行く事も検討に入れるべきだろうか。

 そのような事を考えながら、リゼットはこの新しい技の錬度をとりあえず上げる事にした。

 

 

 神として神殿に暮らすようになって4年目。

 時々訪れる悟空に修行をつけたりして生活しつつ、案外ここも悪くないんじゃないかとリゼットは考えていた。

 重力室はこちらに持ってきたから修行環境は悪くなっていないし、むしろこの神殿だからこそ可能な修行というものがある。

 その一つが『時の部屋』だ。

 名前こそ似ているものの精神と時の部屋とは異なり、この部屋で出来るのは精神のみの時間跳躍である。

 己の精神を過去へと飛ばし、そこで過去の人物達と戦う事が出来るのだ。

 一体どうやって精神のみの移動で過去に肉体を出しているのかは分からないが、恐らくは肉体の強さを再現した質量を持った幻のようなものなのだろう。

 これを使い、リゼットは己の精神を過去に飛ばす事で擬似的な実戦経験を積んでいた。

 修行抜きにしても、過去への旅は魅力的だ。

 何よりこれは、惑星間すら越えた旅も可能としてくれる。

 いつか宇宙を旅したいと願うリゼットにとって、この時の部屋はまさに最高の娯楽施設であった。

 目を閉じ、時の流れに心を委ねる。

 時の旅は一瞬の間に起こる出来事で、実際には時間の経過がない。

 そして仮に向こうで死んでしまったとしても実際には傷一つ負わないと、いい事尽くしだ。

 

 一方で精神と時の部屋は未だほとんど使っていない。

 究極のドラゴンボール(地球破壊爆弾)を放逐する際に一度訪れたが、それは部屋の時間にして僅か30秒の出来事。

 中に入って、玉を投げて、部屋を出て。本当にそれだけだ。

 これはほとんど使用していないも同然の事であり、外から見ればリゼットが入ったと同時に外に出てきたようにしか見えなかっただろう。

 いつかはリゼットもこの部屋を使う事になるのだろう。

 しかしそれは今ではない。

 少なくとも今、リゼットが精神と時の部屋を使うほどの脅威はこの地球に存在していなかった。

 

 ――もっとも、使うまでもない程度の脅威ならばいるようだが。

 

「リ、リゼット……」

「先代様? 一体どうしたんです?」

 

 以前までリゼットが暮らしていた聖堂と、この神殿は繋がっている。

 だから先代はいつでも神殿へ訪れる事が出来るし、その逆も然りだ。

 しかしリゼットの記憶にある限りでは、彼女が神に就任して以来の四年間、先代がここまで血相を変えて神殿を訪れた事はなかった。

 彼は胸を苦しげに押さえ、激しい発汗を起こしながら、今にも倒れそうによろめいている。

 余談だが、以前は『神』だった胸のマークは『先』に変わっていた。

 

「ピ、ピッコロがやられた……過去の因縁が、牙を剥いてきたのだ……」

「ピッコロが……? その様子からするに、殺されてはいないようですが、手酷くやられたようですね……。ともかく、まずは落ち着ける場所へ行きましょう。横になった方がよさそうです。Mr.ポポ、先代様を寝室へお連れしなさい」

「はい、神様」

 

 

 先代の話を要約するとこうだ。

 今より300年前、リゼットが生まれる40年昔の事。

 かつて神の座を競い、先代に敗れた者がいた。

 名をガーリックといい、多大な野心を身に秘めた男だったらしい。

 しかし先々代の神はその野心を見抜き、先代を神へと選んだ。

 無論それで終わるわけもなく、ガーリックは先々代に反逆し、そして討たれたらしい。

 『300年後に必ず復活する』と断末魔をあげながら……。

 

「……そのガーリックという者が、復活したと?」

 

 リゼットは先代へと気を送り、治療をしながら問いかける。

 随分と気の長い復活もあったものだ。

 というか何故300年なのだろう。わざわざ時期を指定するのに何か理由でもあるのだろうか。

 

「恐らくはな。今この地球にいる者でお主と孫悟空を除けば奴しかピッコロを害し得る者など存在せん」

 

 リゼットは思わず、既に製作が開始されているであろう人造人間や、封印されたまま迷惑にも地球に放置されている魔人ブウを想像する。

 以前に戦ったDr.ウイローの件もあるし、案外今のピッコロくらいなら倒せるの沢山いるのでは? などと思ってしまったのも仕方の無い事だろう。

 というか、Dr.ウイローが造り出した量産型やられキャラのバイオマンですら戦闘力は1000を超えている。やはりあの男の科学力はおかしい。

 

「一応、探ってみましょうか」

「頼む」

 

 目を閉じ、遠視を行う。

 気を探ってみれば確かに4つ、異質で大きな気がこの地球にいる事が確認出来た。

 大きい、と言ってもそのうち3つの気はピッコロ以下だ。

 頑張れば多分天津飯でも勝てるだろう。

 残る一人は流石にピッコロや悟空を上回っている。

 そこに焦点を絞り、視界を飛ばす。

 すると確かに、魔族と思しき……というかどちらかというとピラフの親戚のような小柄な男が一人、ドラゴンボールを集めて高笑いしているのが視えた。

 

 というかあれだ。これ、かなり初期の方の劇場版の敵だ。

 

 リゼットはここにきてようやく、その存在感の薄い敵の事を思い出した。

 ああそうだ、いたいた。こんなの確かにいたよ。

 まるで敵だけ取り換えて、ラディッツ戦の焼き直しを行ったかのような敵が確かにいた。

 しかし実の所、リゼットにとってこんな敵などどうでもよかった。

 『ああ、そんなんいたね』程度の存在であり、言い方は悪いが羽虫と何ら変わらない。

 リゼットがその気になればいつでもぺチッと潰せてしまう存在だ。

 

 問題はドラゴンボールである。

 確かドラゴンボールは使い過ぎるとマイナスエネルギーが溜まり、邪悪龍が生まれてしまうはずだ。

 その浄化には100年の周期を必要とするため、以前にリゼットが叶えた願いのマイナスエネルギーなどはとっくに時効を迎えて消滅している。

 しかしこれから先は違う。悟空やその仲間や、あるいは敵が気軽にポンポン使うせいで100年の浄化どころではなくなってしまうのだ。

 確かGTはアニメオリジナルや、一部の劇場版までカウントされている歴史のはずなので、物凄い頻度で使われている事となる。

 特に劇場版は酷い。1公開で一度使われているような勢いで使われる。

 酷い時は山火事で焼けた山を元に戻す為に使用し、挙句やっぱり森は破壊されて無駄撃ちに終わりましたというパターンすらあった。

 そりゃ邪悪龍も生まれるというものである。

 一応神に就任した後にドラゴンボールを集めて、精神と時の部屋に100日間放置してマイナスエネルギーを浄化させてから地上に戻したが、それでもアホみたいな理由でポンポン使われては邪悪龍がすぐに発生してしまうだろう。

 

「あー……うん。確かにいますね。ドラゴンボールを集めてるお馬鹿さんが4人。何故か悟空君の息子さんを誘拐して、無駄に悟空君を引き寄せているようです。名前は……ええと、読めました。ガーリックJr.に、ジンジャー、ニッキ、サンショ……どうやら本人ではなく息子さんのようですね」

「息子に穢れた野心を引き継いだか……親が親なら、子も子よな」

 

 リゼットは遠視をしつつガーリックJr.達の心を読み、ついでに彼等独自の技の使い方などを盗み見していく。

 そのほとんどは魔族由来の使い物にならない技だが(肉体を剣に変化させるなど)、ガーリックJr.が使える『デッドゾーン』という技だけは中々優秀だ。

 これは一切の光が届かない虚数空間に相手を放逐するブラックホールのような技で、飲み込まれたが最後、術者本人すら脱出出来ないらしい。

 ……どう見ても不老不死になった後の自滅専用技です。本当にありがとうございます。

 前言撤回、少し改良して使う必要がありそうだ。特に自滅部分はどうにかしないと危なくて使えたものじゃない。

 

「それで、どうするのです?」

「無論、過去の決着を付けねばならん。リゼットよ、共に来てくれぬか?」

 

 先代の言葉に、『ああやっぱり巻き込まれる流れなのか』と思いつつ、リゼットはその頼みを了承した。

 とりあえずドラゴンボールの無駄な使用は防いでおくべきだろう。

 ガーリックはどうでもいいが、邪悪龍は出たら困るのだ。




ちなみに、原作ではガーリック三人衆が不意打ちの三人がかりでピッコロさんを倒しましたが、このSSの世界ではピッコロさんが三人を返り討ちにしかけたので、慌ててガーリックJr.も参戦しての4人がかりで倒しています。


【オラの悟飯をかえせッ!!】
ドラゴンボールの劇場公開作第4弾。ドラゴンボールZとしては1作目に当たる劇場版アニメ。
悟飯がおり、悟空が生きているのでラディッツ戦の前の出来事と思われるが、悟飯とクリリンに面識があるなどラディッツ戦後と思われるような描写も存在する。
この映画のボスであるガーリックJr.は後にアニメオリジナルで再登場をしたので『Z』の世界線ではパラレルではなく、がっつり本編に組み込まれている。

【ガーリックJr.】
300年前に神の座を争い敗れて封印された、ガーリックの息子で生まれ変わり。
ピラフの親戚のような外見だが関係性は不明。
アニメで再登場した時は何故か声までピラフと同じになっていた。
もしかしたらピラフはガーリックの子孫なのかもしれない。
物語序盤でピッコロを亡き者にする事で神を殺そうとしたが、神が死ぬとドラゴンボールが消えるので実はこいつの計画は最初から破綻している。
そんな穴だらけの計画でも何故か神龍で永遠の命を手に入れ不死身になる事に成功してしまった。
しかし律儀にも自滅専用技の『デッドゾーン』を習得していた事で敗北。
ただ不死身になるだけではなく、その後の対処法まで自前で用意してくれるサービス精神に溢れたナイスガイ。
そればかりか、再登場時も不死身に胡坐をかかずに前回の敗因であるデッドゾーンを惜しげもなく使ってくれた。
不死身なので勝ちは出来ずともデッドゾーンさえ発動しなければ絶対に負けないのに、それでも使ってくれる。こいつは偉い。
どこかのザマスと違ってお約束をしっかり理解した悪役の鏡。

【ジンジャー】
ガーリックの部下の一人。
生姜焼きと叫ぶ事で何故か巨大化する。
パンフレットに記された戦闘力は350。

【ニッキー】
ガーリックの部下の一人。
喉飴と叫ぶだけで何故か巨大化する。
パンフレットに記された戦闘力は350。
他の二人が生姜焼きやうな重を叫んでいる中、一人だけ喉飴で我慢している偉い奴。

【サンショ】
ガーリックの部下の一人。
うな重と叫んで巨大化する。
こいつだけやけに掛け声が贅沢。喉飴で我慢している上の奴を見習え。
マントを付けたままのピッコロにフルボッコにされたがパンフレットに記された戦闘力は350。
ちなみにマントを着ている時の当時のピッコロは322。
戦闘力で勝ってるはずなのに「1人ずつでは他愛もない奴ら」とまで言われて雑魚扱いされてしまった。
戦場でうな重などと叫ぶハングリー精神のなさが敗因と考えられる。

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