ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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大神官「第2宇宙ハーミラさん、ビカルさん、ジーミズさん、プランさん、脱落でございます。
続いては第3宇宙……」
全王「えー、わかんないよー。もっとゆっくり言ってー」
大神官「…………。
第2宇宙ハーミラさん脱落でございます。第2宇宙ビカルさん脱落でございます。第2宇宙ジーミズさん脱落でございます。第2宇宙プランさん脱落でございます。
第3宇宙ニグリッシさん脱落でございます。第3宇宙ナリラーマさん脱落でございます。第3宇宙ザ・プリーチョさん脱落でございます。第3宇宙カトペスラさん……」
側近(頑張れ……大神官様……!)


第百二十五話 強者達の戦い

「よくも姐さんをォォォ!!」

 

 カリフラが敗れた事で怒りに覚醒したケールが気を迸らせながら襲い掛かる。

 その前にセルが立ち塞がり、ケールの拳を受け流した。

 ケールの狙いはピッコロだが、この程度ならば分身体のセルで十分あしらえるという判断だ。

 仮に負けてもこのセルは四身の拳で出した分身なので痛くも痒くもない。

 

「おい! 何か第7宇宙の奴、増えてんぞ! あれいいのかよ!? 反則じゃねーの!?」

「あれは技なので反則にはなりません」

「チクショォォォォ!」

 

 いつの間にか四人に増えていたセルにシャンパが抗議するが、無情にも大神官に切り捨てられてしまった。

 確かに選手の数は十人だ。ルールでそう決められている。

 だが十人のうちの一人が増えてはいけないとは、確かに言われていない。

 

「殺す!」

「ふん……青い奴め」

 

 ケールとセルが衝突し、衝撃波が発生する。

 伝説の超サイヤ人はパワーを増幅させ、筋肉を肥大させながらスピードも落とさないという変身だ。

 その圧倒的な力の前に、かつてリゼット達は全滅寸前まで追い込まれ、セル自身も敗北を喫している。

 そしてケールは更にそこから超サイヤ人2へ位階を上げ、しかもパワーを更に高めた変身を行っている。

 だがセルがブロリーに敗れたのは、13年も前の話。いかに伝説といえど、今となっては超サイヤ人のバリエーションの一つでしかない。

 ケールとセルが超高速の打撃戦を展開し、目まぐるしく立ち位置を変えながら火花を散らす。

 ケールの拳を受け流し、逸らし、隙を見て身体の位置を反転させて攻守交替。

 今度はセルが猛攻を仕掛けるが、ケールは多少のダメージなど気にせず強引に攻勢へと出て再びセルが守勢に回る。

 一見互角の戦い……だが、ケールは着実にダメージが積み重なっているのに対し、セルは無傷に近い。

 決してケールが戦闘力で劣っているわけではない。むしろ勝っている。

 ここにいるセルは所詮分身だ。燃費の悪い超サイヤ人3相当の変身はまだ見せていない。

 パワー、タフネス、気……その全てにおいてケールは分身セルを圧倒的に凌駕している。

 だがいかに強かろうが当たらなければ意味はなく、力を利用されてカウンターを取られては無意味を通り越して逆効果だ。

 いかに頑丈だろうが避ける事をしないのでは当て放題で、一撃ごとのダメージが少なかろうが、それが積み重なれば疲弊していく。

 肥大した筋肉のせいでスピードは殺され、体力の消耗も馬鹿に出来ない。

 理性を失っているせいで動きはひたすら直線的で、目を閉じていても当たる気がしない。

 要するに下手糞なのだ、闘い方が。

 

「パワーは凄まじい……あのブロリーよりも上かもしれん。

だが違うな。似ているが、やはり違う」

 

 ケールの無秩序な力を受け流しながら、セルは既にその攻撃パターンを見切っていた。

 単調だ……本当に、全くもって単調に過ぎる。

 これでは、ただキレているだけ。凶暴性との完全な融合が果たされていたあのブロリーの恐ろしさはない。

 ケールのは単なる暴走だ。決してこの凶暴性が素というわけではない。

 元々ああいう性格だったのを無理矢理制御していただけのブロリーとは根本的に異なっている。

 これでは残念ながら、本物には程遠い。

 セルの蹴りがケールの腹にめり込み、未成熟な伝説を跳ね上げる。

 その先に回り込み、そしてセルは肘を振り上げた。

 

「その変化を完全に物にしてから出直すといい。

そうすれば、お前はあのブロリーをも超えるかもしれん」

 

 彼女の可能性は広大だ。まるで海のように底が見えない。

 その可能性を完全に開花させたならば、あるいはこちらが負けたかもしれない。

 だがとりあえず、この場での勝利はこちらのものだ。

 

「はあっ!」

 

 セルの肘がケールの背中にめり込み、下へと叩き落す。

 しかしケールを咄嗟に受け止める影があった。

 それは気を失っていると思われたカリフラだ。

 流石にサイヤ人というべきか……打たれ強く、復帰が速い。

 

「あ、姐さん……」

「ケール、無事か!?」

 

 ケールも一応、まだ意識はあるらしい。

 変身は解けてしまっているが、第6宇宙でもサイヤ人の異常な打たれ強さは健在という事か。

 とはいえ、どちらもセルとピッコロの相手ではない。

 ただ、落ちるまでの時間がほんの少し延びたに過ぎない。

 ただしそれは、このままならば……だ。

 

「カリフラ! そのままじゃ勝ち目がねえ! 俺が渡したアレを使うんだ!」

「分かってる!」

 

 シャンパの指示に応え、カリフラは自分とケールの耳に何かを付け始めた。

 カリフラにとって幸運だったのは、ピッコロとセルがそれを知らなかった事だ。

 その道具はポタラといい、界王神の切り札とも言うべきアイテムだ。

 その効果は二人の戦士を融合させるというもので、いわば簡単に出来るフュージョンといっていい。

 しかもフュージョンのように無駄なポーズを取る必要はなく、失敗する事もない。

 更に二人の戦闘力が同じでなくても合体出来ると、いい事尽くしだ。

 この効果を知っていれば止めただろうが、しかしセルとピッコロはポタラの存在を知らなかった。

 ここにいるのがリゼットならば、たとえポタラを知らずとも『何だかよく分かりませんが喰らえ!』と攻撃に移行しただろうが、しかし二人はとりあえず様子見を選択した。

 結果、ポタラによる融合を見送ってしまい、ここにケールとカリフラの合体戦士『ケフラ』が誕生した。

 

「ヒャッハー! すげえぜ! パワーが漲ってくる!」

 

 現れたのはケールとカリフラを足して2で割ったような女戦士だ。

 いや、カリフラの要素の方がやや強めだろうか。

 しかし感じられる強さは二人の戦力の足し算ではなく、何十倍にも膨れ上がっている。

 ケフラが己のパワーに喜び、ピッコロとセルは流石にこれには驚いた。

 一方ビルスは道具の使用は反則だと怒っているが、全王が『面白いからいいのね』と言ってしまった事で沈黙した。

 

「合体か」

「これは凄まじいな。先程までとは比べものにならんパワーだ」

 

 驚きを見せつつも、ピッコロとセルに動揺はない。

 確かにパワーアップした。だがそれがどうした、という顔だ。

 流石にこれには腹が立ったのか、ケフラは超サイヤ人へと変身する。

 

「へ……その余裕面、いつまで続くかな!?」

 

 ケフラが吠え、ピッコロへと突進した。

 そしてスパークを迸らせながら拳を放ち――。

 

 あっさりと、ピッコロに受け止められていた。

 

「んなっ!?」

 

 ケフラが驚き、慌てて腕に力を込める。

 だがピッコロに掴まれた拳は微動だにせず、逃れる事が出来ない。

 それどころかピッコロが掌に力を込めるだけで、ケフラの拳に耐えがたい痛みが走った。

 

「ぐあああああっ……! この!」

 

 ケフラが痛みを堪えながら蹴りを放つ。

 だがピッコロはこれを冷静にブロックし、反撃の拳をケフラの腹へめり込ませる。

 たった一撃でケフラが崩れ、足が震えた。

 

「……おい。ポタラって二人の強さを単純に足したんじゃなくて、比べものにならないくらい凄い強くなるんじゃなかったのか?」

「そのはずですわ、シャンパ様」

「じゃあ何で全然勝てねーんだよ。まるで相手になってねーじゃねーか……」

「簡単ですわ、シャンパ様。あのナメック星人が更に比べ物にならないくらい強いのです」

「…………もうやだ、あの宇宙」

 

 絶望するシャンパの見ている前でピッコロが再度拳をケフラの腹に叩き込み、失神させてしまった。

 それから無造作に武舞台の外へ放り投げ、合体戦士を無情に脱落させてしまう。

 融合戦士など、こちらは最初から用意しているのだ。

 二度と戻らぬ覚悟で融合した今のピッコロに、半端な融合戦士が勝てるものか。

 少しだけ心配そうにこちらを見ていたリゼットに気付き、ピッコロは茶目っ気の感じられる笑みを向ける。

 リゼットはそこに、居なくなってしまった先代の姿を見た気がした。

 

 

「戦士達ー! 注目!」

 

 戦いの最中、武舞台に少女の声が響いた。

 全員がそちらへ視線を向ければ、高台の上に立つ少女三人の姿が目に入る。

 中央に立つのは桃色の服を着た緑髪の少女。

 左に立つのは青いドレスの茶髪の少女。

 右に立つのは黄色のコートを羽織ったベレー帽が似合う青髪の少女。

 いずれも美少女と呼んで間違いのない容姿だ。

 

「ん~! 時は来た!」

 

 第2宇宙の界王神であるペルが拳を握って興奮する。

 更に同じく第2宇宙の破壊神であり、クレオパトラを思わせる姿のヘレスが大仰な動作で手を振り上げた。

 

「今こそ戦場に可憐な花が咲く!」

 

 ヘレスとペルはこれから行われる、己の宇宙の戦士の晴れ舞台を心待ちにしていた。

 故にこそ彼女達は気付かない。

 この時、既に何人かが攻撃の準備へ移行していた事を。

 

「咲かせましょう、響かせましょう、愛と勝利の歌を!」

 

 三人の少女達がキラキラとした光を纏い、まるで躍るかのようにポーズを決める。

 まるで魔法少女物の変身シーンを思わせる姿に、戦士達も呆気にとられた。

 

「ブリアンブリアンブリブリアン! ブリブリブリ……」

 

 華麗なる変身シーンの最中――白い戦乙女が十体、同時に少女達へと突撃した。

 爆炎があがり、そこに畳み掛けるように複数の気功波が炸裂。変身すらさせずに少女達を観客席へ直送した。

 まさかのお約束無視に破壊神ヘレスが「無粋な!」と叫び、少女達のリーダーであるブリアンデシャトーが立ちあがって武舞台へと文句を飛ばした。

 

「ちょっと何すんのよ第7宇宙! 変身にはプロセスの全部に意味があるのよ!

邪魔するとかありえない!」

 

 文句の矛先は真っ先に攻撃した存在……リゼットへと向けられた。

 初手の先制攻撃はともかくとして、その服装から同好の士だと思っていたのに、とんだ裏切りだ。

 しかしリゼットはその外見とは裏腹に、戦闘においては割とガチな方である。相手の顔の皮を剥いだり股間を蹴り潰したり、目玉を潰したり、耳を千切ったり、喉仏を切断したりとかなりえぐい攻撃も行うタイプであり、魔法少女からはある意味最も縁遠い外見詐欺だ。

 見た目は魔法少女の最終ドレスフォーム、中身はグラップラー。リゼットとはそういう存在であった。

 

「いや、それは邪魔するでしょう。敵が強くなるのを待つとか、ちょっと意味が分かりません」

 

 リゼットにとって、ここで攻撃をしないという選択肢こそなかった。

 1、敵は隙だらけ。

 2、敵は変身中。

 3、変身が終われば多分パワーアップする。

 4、この戦いは負けたら宇宙が消える

 改めて考えても、やはり攻撃しない理由が何処にもない。むしろ何故攻撃されないと思ったのか……。

 そして、それは他の攻撃した面子も同様であった。

 

「悪い、悪い。あんまり隙だらけだったもんだからつい……どうでもいいけど、おめえら油断しすぎなんじゃねえか?」

 

 とは悟空。

 

「下らん。防げない方が悪い」

 

 とベジータが吐き捨てる。

 

「貴様等、武闘会と舞踏会を間違えてるんじゃねえか? ここは戦場であって、躍る場所じゃねえ」

 

 ターレスはむしろ乙女達のふざけた態度にこそ苛立っているようだ。

 

「いや、すまない。私はてっきりわざと隙を見せる事で攻撃を誘っていると思い、あえて乗ってみたのだがね……いや誤算だった。わざわざ注目まで集めておいて、まさか本当に攻撃されないと思って隙を晒す気楽な輩がいるなどと思いもしなかったのだ。許してくれ。

ところでこれは、余計なアドバイスかもしれないが変身するなら、せめてバリアくらい張っておく事をお勧めしよう」

 

 セルは完全に分かってやっているのか、挑発するように皮肉交じりで謝罪をする。

 攻撃を仕掛けたのは以上の五名、リゼット、悟空、ベジータ、ターレス、セルであった。

 この五人からの一斉砲撃などを受けては、それは変身前の少女達が耐えきれるはずがない。

 脱落は必然の事だったと言えるだろう。

 

「くう~……! あ、貴女は! 貴女だけは分かってくれると思ってたのに!」

「あの、何で私は同類扱いされてるんですかね……」

「ククク……外見のせいではないか?」

 

 ブリアンデシャトーから謎の同類扱いを受けている事にリゼットが困惑し、セルが可笑しそうに笑う。

 ここで改めてリゼットの外見を再確認するが、彼女は白金の髪を膝まで伸ばした外見年齢14歳の美少女である。

 服装は白いケープ付きのドレスで、頭には天使の羽を模した髪飾り。

 なるほど、向こう側と間違われても仕方がない。

 

「……っ」

 

 げんなりしつつも、リゼットの意識は決して戦闘から離れてはいない。

 何かに気付いたように頭上へ視線を向ける。

 そこでは二つの影が超高速で衝突しながら駆け回っていた。

 空を飛べないルールだが、思えば『彼』にはセルやヒルデガーン同様に翼がある。

 驚くべきはむしろ、宙を蹴りながらそれと互角に戦っているもう片方の方だろう。

 

 リゼットの頭上を飛び越え、二つの影が交差した。

 片方は第11宇宙、プライドトルーパーズの『超速』のディスポ。

 片方は第7宇宙、邪悪龍の一人である四星龍。

 共にスピードを信条とする戦士同士、相手に何か感じるものがあったのだろう。

 二人はまるで最初から示し合わせていたかのように、互いを倒すべき敵と見なし、ぶつかっていた。

 紅と紫の影が武舞台の上を縦横無尽に駆け回り、弱者には残像すら捉えさせない。

 尻もちをついて戦意喪失しているキャウェイでは目で追う事も出来ないだろう。

 

「やるな! この俺のスピードについてくるとは!」

「ふっ……そちらこそ! 超速と名乗っているのは伊達ではないようだな!」

 

 常人では反応すら出来ない超速の世界で男が二人、互いを認めて笑い合う。

 ほとんど瞬間移動にも等しい速度でぶつかり合い、武舞台のあちこちで砂塵が舞う。

 戦闘はほぼ互角……その光景に第11宇宙の界王神であるカイと破壊神のベルモッドは息を呑んだ。

 

「信じられない。ディスポとスピードで渡り合う戦士がいるなんて……」

「負けるな、ディスポ! 第11宇宙一のスピードを見せてやれ!」

 

 ディスポと四星龍の戦いはいわば、第11宇宙と第7宇宙のスピードスター対決だ。

 両者共に宇宙一のスピードを誇る者同士の戦いであり、ならばこの戦いは全宇宙最速決定戦と言っても過言ではない。

 だがスピードが互角ならばパワーの差が物を言う。

 四星龍とディスポの拳が衝突し、ディスポが一方的に弾き飛ばされた。

 

「な、何だこいつのパワーは!?」

 

 ディスポはスピードに全てを懸けている分、速さが通じなくなった時に弱さを露呈してしまう。

 気付けば次第に均衡が崩れ、四星龍の拳が命中するようになっていた。

 しかしディスポもここで退くわけにはいかない。

 彼等プライドトルーパーズは宇宙の命運を背負ってここに立っているのだ。

 ならばこの身体が塵になろうとも、足を止めるわけにはいかないのだ。

 

「まだだ! まだ俺のスピードはこんなもんじゃない!」

 

 ディスポの全身を紫のオーラが包み、更に速度が上がった。

 『最高速モード』――気の全てを速度の上昇に充てる事で実現するディスポの切り札だ。

 そのスピードは超サイヤ人ブルーの悟空やゴールデンフリーザでさえも見切る事は出来ないだろう。

 紫の影が駆け回り、四星龍を四方八方から打ちのめす。

 一撃ごとに四星龍の体表が砕け、割れ、破片が地面に散らばっていく。

 

「よし、いいぞ……いけ! いけえ!」

 

 ディスポの優勢にベルモッドが拳を握って声援を送る。

 だがカイは素直に喜ぶ事が出来なかった。

 あれだけ打ちのめされているというのに第7宇宙の選手が誰も四星龍の心配をしていない。

 そればかりかビルスに至っては腕組みをしたまま、余裕の笑みを浮かべているではないか。

 何よりおかしいのは、四星龍の気がまるで減っておらず……いや、これはむしろ増えている?

 四星龍の紅の体表が次々と剥がれ、中から黄金の身体が姿を現していく。

 それを見てカイはようやく、敵がまだ本気ではなかった事を悟った。

 

「見事な強さだ……ならば俺もここから先は本気で行くぞ!」

 

 四星龍が吠え、その全身を灼熱の気が覆いつくした。

 今まで皮膚と思われていた紅の外郭が剥がれ落ち、黄金に輝く本体がそのベールを脱ぐ。

 ディスポが今まで必死で剥がしていたものは四星龍の身体ではない。

 彼の溢れ出る熱エネルギーを抑え込むための制御膜に過ぎなかった。

 いよいよ本気を出した四星龍の放つ熱だけで景色が揺らめき、あまりの熱さにディスポは思わず後ずさる。

 それでも意を決して拳を顔面に叩き込んだ――が。

 

「ぐあああっ、あああああああ!」

 

 悲鳴を上げたのは、攻撃をしたディスポであった。

 それも仕方のない事だ。

 何故なら、四星龍に打ち込んだ拳があろう事か焼けてしまっているのだから。

 むしろ焼けただけで済んでいる辺り、彼の並外れた耐久力が窺えるというものだ。

 

「俺に拳で挑むのは無謀だぞ、第11宇宙の戦士よ。

俺の身体は太陽の表面温度と同じ6000度まで上げる事が出来る。

お前がいかに速くとも、俺に触れるだけでお前の身体は焼け、崩れていく」

「な、なんだと……そんなふざけた事が……」

 

 相性最悪……そう言う他ないだろう。

 ディスポは気の全てを速度上昇に充てており、故に彼の攻撃はスピードを活かした打撃が主だ。

 気弾系も使えないわけではないが、悲しいほどに威力が低い。

 追いつめられたディスポは一瞬、無意識のうちにジレンを見ていた。

 ジレンは……動く気配がない。

 ただ静かに佇んでおり、その視線は第7宇宙の中心と思われる女と、孫悟空という武道家へ向けられている。

 初めから仲間に頼る気がない。頼らせる気もない。

 共に舞台に上がっていてもジレンはずっと一人だ。一人で戦っているつもりだし、実際に一人でも彼は戦える。

 同じプライドトルーパーズであっても本質的な部分でジレンは誰も信じていない。

 

(俺達が……弱いからだ……ッ!)

 

 ディスポはジレンから視線を逸らし、四星龍を真っすぐに見た。

 そうだ、彼が仲間を信じられないのは誰も彼についていけないからだ。

 自分達が弱いからだ。

 だが、ジレンに知って欲しい。

 お前は一人ではないと。俺達がいるんだと。

 たとえ及ばずとも、自分達はジレンの仲間なのだ。

 だからこそ、ジレンの隣に立つ為にも、こんな所で負けるわけにはいかないのだ。

 

「舐めるなよ、第7宇宙! その程度でこのディスポ様が怯むかあああ!」

 

 ディスポが再び駆け、四星龍へ打撃の嵐を叩き込む。

 一発ごとに肉が焼け、嫌な臭いが立ち込める。

 だがディスポは止まらない。

 こんな身体の痛みなど何でもない。

 ジレンの隣に立てない自分の弱さこそが……心こそが、何よりも痛いのだ。

 

「いい覚悟だ……だが、これ以上続ければお前の命はないぞ」

「上等ォ! だったらお前を失格で巻き添えにしてやる!」

 

 攻防はほぼ互角だ。

 ディスポはスピードで圧倒しているが、四星龍も速さには自信がある。

 多少劣るなれど、防御くらいは十分に間に合う。

 そしてパワーでは四星龍が勝り、互角の攻防を繰り広げていた。

 だが互角では駄目だ。何故なら防御さえ間に合えば、それが四星龍の攻撃となるのだから。

 四星龍に触れるという事は太陽に触れるも同じだ。

 ガードに阻まれるだけでディスポの手足が焼け、炭化していく。

 

「戦士の気概、見せてもらった。だが残念ながらそれは出来ん。

何故なら、お前はこの一撃で落ちるからだ!」

 

 四星龍の身体が輝き、炎が全方位に広がった。

 己の熱エネルギーを周囲に放つ『フレイムフィールド』の前では逃げ場などない。

 ましてやダメージの深いディスポならば尚の事だろう。

 彼は四星龍の放つ熱に呑まれ、無念の叫びをあげながら吹き飛ばされた。

 

「ちくしょおおおおおおッ!!」

 

 吹き飛び、落ちる一瞬……ジレンと目が合った。

 だがジレンはまるで興味がないかのようにディスポから視線を逸らして腕を組む。

 そんな彼の背中を見ながら、ディスポは小さな声で詫びた。

 

「……すまねえな、ジレン……頼りにならねえ仲間、でよ……」

 

 そして宇宙最速の戦士は、舞台から消えた。

 残る選手は、後32名。




【戦闘力】
・ケフラ:888億
超サイヤ人2:8兆8800億

・ディスポ:2000億
最高速モード:1兆
※スピード極振りなので戦闘力の割にパワーはクッソ低い。
ただ、とにかく速いので格上相手だろうとスピードで圧倒出来る。
スピードを殺されるとマジ・カーヨとかいう変なのにも負ける。
良くも悪くも数値に左右されない。
アニメと漫画とでかなり強さが違うキャラの一人。

・孫悟空(VSケフラ時 アニメ):11億
超サイヤ人ブルー:2兆2000億
超サイヤ人ブルー(疲労):2200億
※漫画版でベジータが陥った『本来のブルーの1/10の力も発揮出来ていない』状態。
界王拳20倍:4兆4000億

・ケフラ(漫画版):444億
超サイヤ人:2兆2220億
※以下弱体化要素
・カリフラが超2に覚醒していないので通常の超サイヤ人が限度。
・ケールが暴れすぎて体力を使い果たしていた。
・伝説の超サイヤ人を制御出来ないまま融合したので両者の戦闘バランスが悪く、倍率が下がった。
(老界王神曰く『ライバル同士だからベジットは強い』らしいので、あまりに両者に開きがありすぎると倍率が下がる事とする)
・悟空相手に経験を積んでないのでパワーはあっても戦い方が下手なまま。格下にも負ける。

【残り選手】
第2宇宙
ザーロイン
ザーブト
ラバンラ

第3宇宙
ビアラ
ボラレータ
コイツカイ
パンチア
パパロニ
マジ=カーヨ

第4宇宙
モンナ
キャウェイ

第6宇宙
ヒット
サオネル
ピリナ

第9宇宙
ベルガモ

第10宇宙
ムリチム
ナパパ
オブニ

第11宇宙
ジレン
トッポ
カーセラル
ココット

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