ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第百二十六話 動き始めた最強

 戦いは今や、完全に第7宇宙とそれ以外の宇宙との対決となっていた。

 第2宇宙は残り三人。

 第3宇宙は残り六人。

 第4宇宙は残り二人。

 第6宇宙は残り三人。

 第9宇宙は崖っぷちの残り一人。

 第10宇宙は残り三人。

 そして第11宇宙は残り四人。

 七つの宇宙の残りを合わせても、もう僅か22人しか残っていない。

 そしてこれらは全て第7宇宙のみによって齎された被害であり、肝心の第7宇宙は未だ脱落者ゼロ……このままバトルロイヤルを続ければ第7宇宙が圧倒的に有利なのは誰の目から見ても明らかであった。

 こうなってしまうと、他の宇宙同士で戦っている場合ではない。

 最大の脅威である第7宇宙を排除しなければ自分達の消滅が確定してしまう。

 ならば、第7宇宙以外の宇宙が一時的に休戦し、共通の敵を倒すべく手を組むのは必然の結果であった。

 

「フン!」

 

 ピッコロがマントを翻して蹴りを放ち、第10宇宙のムリチムとナパパを同時に弾く。

 先代との融合を果たした新生ピッコロの戦闘力は高い。

 神の気を纏っているわけではなく、単純に明快に、ただシンプルに強い。

 悟空達のように変身するわけではないし、もう界王拳を使う必要すらない。

 基本戦闘力でブルーを遥かに凌駕している……これが脅威でなくて何なのだろうか。

 そして消耗がないというのは悟飯にも言える事だ。

 彼は第10宇宙のエースであるオブニと互角の攻防を繰り広げており、しかしまだ余裕を残している。

 

「フレイムフィールド!」

 

 第7宇宙の次に多くの戦士を残している第3宇宙は、四星龍が圧倒していた。

 鋼鉄をも容易く融解させる彼の高熱の前に第3宇宙の改造戦士達は迂闊に近付けない。

 その隙を狙うのは四人に分かれたうちの一人である分身セルだ。

 彼は的確に四星龍をサポートし、改造戦士達を追い詰めている。

 

 第6宇宙はエースのヒットを相手にミラが立ち塞がり、一進一退の攻防を続けている。

 同じ宇宙のナメック星人二人も何とかヒットの救援に向かいたいが、白い戦士に阻まれて近付く事すら出来ない。

 白い戦士の正体はリゼットの気で生み出された自立行動気弾だ。

 それは大会に参加出来なかった天津飯やヤムチャ、クリリン、亀仙人といった地球戦士の姿をしており、それぞれの技でサオネルとピリナを苦しめる。

 まるで彼らが本当にここに来て戦っているかのような、オリジナルと遜色ない技のキレであった。

 いや、あるいは本当にそうなのかもしれない。

 彼等もまた、宇宙を守るために戦っている。たとえ試合に出れずとも、心は仲間達と共にあるのだ。

 

「うおおおおい!? 増えてる増えてる、第7宇宙の選手増えてるって!

それ反則だろ!? ズルいだろおお!」

「いえ、あれはリゼットさん自身の技なので反則ではありません」

 

 シャンパの抗議を大神官はいつもの笑みのまま切り捨てた。

 しかし彼も気のせいか笑みが引きつっており、内心では『これはどうなんだろう』と迷っているのかもしれない。

 

 一際激しい攻防を繰り広げているのは第11宇宙の戦士であるトッポと、それに相対したターレスだ。

 既にターレスは超サイヤ人4へと変身しているが、それでも圧倒し切れていない。

 それは即ち、それだけトッポの実力が抜きんでている事を意味していた。

 トッポは赤と黒のスーツを身に纏った肥満体型の戦士だ。いや、向こうの宇宙ではこれは肥満と呼ばないのかもしれないが、とりあえずここは地球の基準に照らし合わせてそう表現しておく。

 頭は禿げ上がり、口元には立派な髭を生やしたその姿はお世辞にも強そうとは思えない。

 特に下半身など、上半身に比べて明らかにアンバランスな細さであり、見た目だけを言えば戦うまでもなく自重で潰れて勝手に倒れてしまいそうだ。

 だが強い。人は見た目によらないとはこの事か。

 パワーもスピードも決してターレスに劣るものではなく、二人の戦いは完全な互角であった。

 

「どりゃりゃりゃりゃりゃあ!」

「ジャスティス!」

 

 ターレスとトッポが目まぐるしく攻防を入れ替えながら互角の戦いを繰り広げる。

 砂塵が巻き起こり、余波は鎌鼬のように吹き荒れ、景色が後ろへと流れていく。

 瞬間移動の如き速度で動いて互いの隙を窺い、殴り飛ばされたと思えばすぐに戻って来て相手を殴り飛ばす。

 まさに一進一退。互いに最高に近いレベルであるが故に決め手がない。

 ターレスの蹴りがトッポの膨れた腹を蹴り、トッポの不自然に大きい拳がターレスの顔を打つ。

 だが両者共に殴られながらも攻撃を続行している。一歩も引いていない。

 

 その混戦の中、一際巨大な気の持ち主がリゼットへと向かって動き出した。

 第11宇宙のジレンだ。

 その外見は、昔のインチキな宇宙人特集などに登場したグレイという宇宙人を筋肉質にしてトッポと同じ服を着せたような見た目であり、あまり脅威を感じさせるものではない。

 しかしその気の圧力はどうだ。これが一人の戦士が放つ気なのか。

 

「さあ行け、ジレンよ……第7宇宙のリーダーであるあの女を落とすのだ。

お前の願いの為にも、この戦いは勝たねばならん」

「第7宇宙……まさかこれだけの実力者を揃えてくるとは……」

 

 観客席で第11宇宙の破壊神であるベルモッドがジレンへ指令を下し、同じく第11宇宙の界王神であるカイは第7宇宙の平均戦闘力の高さに冷や汗を流していた。

 しかし二柱にはまだ余裕があった。第11宇宙に残された戦士は僅かに四人、トッポとジレン、カーセラルとココットのみ。

 だがそのうちの二人こそは第11宇宙最強の二人だ。

 数など問題ではない。その数を圧倒する最強の質が二人いれば勝利は揺るがない。

 いや、極論ジレンさえいれば優勝出来ると確信している。それほどにジレンは強い。

 

「わたくし、何だか少し不安になってきたですますよ」

 

 第11宇宙の天使マルカリータだけは二柱と違い、少しばかり第11宇宙の負けを不安に思っているようだ。

 ジレンの強さは彼女も知っている。

 だがいかにジレンといえど、あれだけの実力者を揃えた第7宇宙に勝てるのだろうか。

 実際、ジレンの次に強いはずのトッポでさえ第7宇宙のターレス一人に抑え込まれてしまっている。

 その次に強いディスポは、第7宇宙の選手の一人である四星龍によって呆気なく落とされてしまった。

 だがそれでも、ベルモッドの勝利への確信は変わらない。

 

「問題ない。ジレンは何者にも負けぬ存在だ」

「……単純な勝ち負けで済めばいいですますが……」

 

 神々が見守る中、ジレンはゆっくりとリゼットへと近付いていく。

 それにリゼットも反応し、二人は互いを……否、互いだけを視界へと入れた。

 まるで時が停まったような緊張感が場を満たし、激戦の予感に周囲も戦いを止めて注目する。

 

「……来ますか」

「リゼット」

「まずは私一人で迎え撃ちます。セルは万一に備えて待機を」

 

 リゼットの口から出た言葉にセルは僅かに驚きを見せた。

 彼女の言う万一とは……自分が負けた時に、武舞台から落ちる前に即座に回収出来るように準備してくれという事だ。

 つまりリゼットはこの戦い、負ける可能性を考慮して挑む気でいる。

 リゼットですら、負けを覚悟する程の実力をジレンに感じているのだ。

 ジレンの歩みに合わせるようにリゼットが歩み、その全身が白く輝いた。

 背中には光輪が出現し、バーストリミット特有の白い光の粒子が舞い散る。

 白い気は空中で固形化してリゼットの足に絡みつき、枷となって荒れ狂う神の気を制御した。

 いきなりのゼノバース+バーストリミット・マイナスの本気モードだ。倍率は二分の一倍でまだ余裕を残しているが、それでも今の悟空のフルパワーを凌駕している。つまりそれだけリゼットがジレンを認め、警戒しているという事だ。

 戦闘態勢へと移行したリゼットの姿に第2宇宙の破壊神ヘレスは「う、美しい……ハッ!」などと言っているが、これはまあどうでもいいだろう。

 やがて二人は手を伸ばせば届くほどにまで近づき、そこで足を止めた。

 二人の静かな戦意に呼応するように場の空気が張り詰め、瓦礫が宙に浮きあがっては砕け散る。

 

「二人の戦いに全員が注目しています……この一戦は重要ですよ」

「リゼットならば問題ない。一年前にあいつはルール有りの戦いとはいえシャンパに勝っている。

そしてそれからも研鑽を続けたあいつの実力は……今や破壊神クラスだ。

今のリゼットと本気でやり合えば僕ですら手こずる……勝てる人間がいるものか」

 

 ビルスはリゼットの勝利を確信していた。

 負けるはずがない。第7宇宙は十人全員が他の宇宙ならばエースを張れるだけの実力者のみで構成されている。実際、一番力の劣るヒルデガーンですら他の宇宙から見れば脅威だろう。

 そして、そんなオールエースの中でも最も強いのがリゼットだ。爆発力ならば孫悟空も捨てがたいが現状ではまだ彼女が勝る。

 

「どちらも動きませんですますね……互いに強敵と認めているようです」

「ジレンを警戒させるか……だが、それでもジレンの勝ちは揺るがん。

ジレンに勝てる人間など存在しない。誰であろうとだ」

 

 ベルモッドもまたジレンの勝利を疑ってはいなかった。

 いくら相手側が強力な戦士を揃えようと関係ない。

 真の最強とは、それ一人がいれば全てが片付く者を言う。

 ジレンがいる限り、第11宇宙の負けは絶対に有り得ない。そう確信している。

 

「隙だらけだ!」

「貰ったわよ!」

 

 睨み合うリゼットとジレンを、それぞれの背後から戦士が急襲した。

 ジレンの背後からは第3宇宙のマジ=カーヨが。リゼットの背後からは第4宇宙のモンナが襲撃をかける。

 しかし二人は振り返る事すらせずに、それどころか動いてすらいないのにマジ=カーヨとモンナが弾かれたように吹き飛んでしまった。

 否、動いていないのではない。動いた瞬間すらほとんど視認させずに殴り飛ばしたのだ。

 そのままモンナはあっさりと脱落し、マジ=カーヨはかろうじて踏み止まった。

 

「しっ!」

 

 全員の視線が集中する中――リゼットが先に仕掛けた。

 常人どころか、この大会に参加している選手の大半が視認出来ない程の速度でジレンへ牽制の打撃を放つ。

 だが牽制といえど、ゼノバースを発動しての牽制だ。その威力は、第2宇宙のエースであったブリアンが変身するはずだったリブリアン如きでは何をされたかすら分からず四散するだけの破壊力がある。

 しかしジレンには当たらない。避けられたわけでも防御されたわけでもない。

 圧倒的な気の圧力によって形成される気の壁に阻まれ、拳が届かないのだ。

 

「フン!」

 

 今度はジレンが仕掛けた。

 風を切り裂き唸る豪腕。しかし今度はジレンの攻撃が止められる番であった。

 リゼットの全身を覆うように展開されたバリアは生半可な攻撃では突破出来ない。

 無論これも弱い攻撃ではない。

 第10宇宙のエースであるオブニならば、これだけで死んでいただろう。

 しかしそれも、リゼットの前ではまるで無意味だ。加減した様子見の攻撃など通じない。

 続いて今度はリゼットが先程よりも鋭く手刀を突き出し、ジレンも力を込めて打撃を放つ。

 交差――両者の腕がクロスし、互いの目の先で止まった。

 ジレンは眼力でリゼットの手刀を静止させ、リゼットは念動力でジレンの拳を止めている。

 二人は一瞬の膠着の後に一歩下がり、目の前の敵が容易ならぬ相手であると改めて理解した。

 そして睨み合い……そこから何故か動きを見せない。

 

「ど、どうしたのよ? 何で両方とも動かないの?」

 

 第2宇宙のブリアンは不思議そうに言うが、その問いにヘレスは答えなかった。

 まるで、今行われている何かを見逃すまいとしているかのように武舞台を凝視している。

 いや、彼女だけではない。破壊神や天使は全員がリゼットとジレンから目を離せずにいる。

 

「あ、あの、何故二人は睨み合ったまま動かないのでしょうか……」

「お前そんな事も分からんのかい。達人同士の戦いというものは、ああして静かに構えている時でも相手を観察しておるのじゃ。

互いに隙がないからこそ、攻める機会を見付けられない。両方が強いからこそ起こる膠着じゃな」

「な、なるほど」

 

 第7宇宙の界王神の言葉に老界王神が自分は分かっているというように語る。

 だがそれを否定したのはビルスであった。

 

「違う……もう開始(はじ)まっている」

「「え?」」

「お前達には見えないだろうが、あの二人は今この瞬間にも超高速で攻防を繰り広げているんだ」

 

 ……どうやら老界王神の言葉は全くの的外れだったらしい。

 老界王神は誤魔化すように口笛を吹き、その姿を界王神が呆れたように見ている。

 そうしている間にも、ビルスが語った通りにリゼットとジレンの戦闘は続いていた。

 攻撃している瞬間すら傍目では分からない程の超高速の領域に立ち、既に何万何億と攻防を繰り返している。

 ジレンの目が赤く輝き、リゼットの表情が険しく歪む。

 僅かではあるがドレスの端が破れ、頬に傷が付き、均衡が崩れつつある事をビルスは感じた。

 

「……ぐっ!」

 

 そして遂に均衡が破れた。

 リゼットの身体が突然後方へと弾かれ、咄嗟にリゼットの後ろに移動して受け止めたセル諸共10mほど後ろへと押しやられたのだ。

 

「不味い! 直撃(あた)った!」

「いえ、直撃はしていません。咄嗟に腕を挟んでガードしています」

 

 リゼットが押し負けるというまさかの事態にビルスが仰天するが、ウイスは流石に冷静なものだ。

 リゼットがギリギリで直撃を避けているのをしっかり見ている。

 しかし直撃は避けてもダメージがないわけではない。

 腕は赤く腫れ、更に腕を割り込ませたというのにリゼットの額からは一筋の血が流れていた。

 それを見てビルスは焦燥を、ベルモッドは余裕を見せる。

 

「決まりだな……やはりジレンに勝てる奴など存在しない」

 

 まだジレンはリゼットを倒したわけではない。一度の攻防で勝利しただけだ。

 しかしその一度の攻防が全てだ。これで格付けはもう終わっている。

 ベルモッドは勝利をより強く確信し、笑みを深めた。




【戦闘力】
・ジレン:110兆~???
アニメ版と漫画版でキャラの戦闘力差の激しい『超』では割と安定している方。
漫画版ではハッキリとベルモッド以上と断言されたが、破壊神最強クラスのビルスより強いかどうかは不明。
このSSでは本気を出せばビルスより強い事にしておく。

・トッポ:2兆
破壊神トッポ:30兆
アニメ版ではブルー相手にやや劣勢程度の実力だが、漫画版では完成ブルークラスに強い。
しかし漫画では破壊神化がないので最終的にはアニメ版の方が圧倒的に上。
破壊神とはいってもキュアベジータに負けるレベルなので本物の破壊神にはまだ及ばない。
シドラの破壊玉に耐えたフリーザを吹き飛ばしたのは……そもそもアレ、ビルスの吐息で消えるレベルの弱い破壊玉だし……。
ちなみにブルーのベジータと同数値だが、実際は同じではなく数千万単位での差はある。
しかし誤差なので弾いているだけ。

・マジ=カーヨ:1000億
ただならぬ肉体とただならぬ精神を持つ。
ディスポを圧倒したが、単純に相性がよかっただけと思われる。
とはいえそれなりに実力もあると思われるので魔人ブウと同じ1000億としておく。

・モンナ:700億
超サイヤ人のキャベ以上、超2のキャベ未満。
リゼットの攻撃に耐えたのは重量のおかげ。

・キャウェイ:100~10000
亀仙人にも歯が立たない子。
1000歩くらい譲って、欲望パワーを制御した亀仙人が10000くらいまで戦闘力が上がっていたと考えてもやはり力の大会に出れるレベルではない。
可愛い。

【残り選手】
第2宇宙
ザーロイン
ザーブト
ラバンラ

第3宇宙
ビアラ
ボラレータ
コイツカイ
パンチア
パパロニ
マジ=カーヨ

第4宇宙
キャウェイ

第6宇宙
ヒット
サオネル
ピリナ

第9宇宙
ベルガモ

第10宇宙
ムリチム
ナパパ
オブニ

第11宇宙
ジレン
トッポ
カーセラル
ココット

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