ドラゴンボールad astra   作:マジカル☆さくやちゃんスター

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第38話 人の輝き

 激しい戦いが続いていた。

 白と黄金の流星が縦横無尽に空中を駆け回り、幾度も衝突しては大気を震わせる。

 悟空とハーツが高速の打撃戦を交わし、その度に二人の気の強大さに怯えるように地球が震えた。

 ハーツは心を読むが、今の悟空は身体が勝手に動いている。故に心をいくら読んでも意味はない。

 動きを封じようと重力を放ったその瞬間には既に悟空は視界内から消えており、跳躍して背後に回り込んでいた。

 

「はっ!」

「でやっ!」

 

 振り向きながらハーツが回し蹴りを放ち、悟空も蹴りで応戦する。

 二人の足が交差して衝撃波が発生し、一度距離が空いた。

 だが両者共にすぐに飛び出し、すぐに打撃戦が始まる。

 何度も高速移動をしてその場から消え、別の場所でまた戦う。

 放たれる気弾の弾幕の中を悟空が突っ切り、僅かしかない安全圏に身体を潜り込ませて接近、ハーツを蹴り飛ばした。

 重力操作で吹き飛ぶ身体を無理矢理制止して今度はハーツが悟空を殴り飛ばし、悟空もすぐに体勢を戻して接近する。

 迎撃の拳を残像拳で避けて上から急襲。踏みつけるような蹴りでハーツを地面に叩き落とすも、ハーツはすぐに浮上して今度は悟空を上空へ殴り飛ばす。

 同時に前に出て拳同士を衝突させ、接近した状態でハーツは両手を広げて気を溜め、悟空は両手を腰に合わせて気を溜める。

 ――解放。ハーツの気功波と悟空のかめはめ波が至近距離でぶつかり合い、爆煙が晴れると両者共に健在のまま向かい合っていた。

 

「身体が勝手に動くというのは思ったより厄介だな。君の心と違う攻撃が来る。

しかし力も速さも、純粋なスペックならば俺の方が圧倒的に上だ。既に勝負は見えた」

「そうかな? やってみなきゃ分からねえぞ」

「分かるさ……すぐにな!」

 

 ハーツが腕を振り下ろし、自身を中心とした広範囲に重圧をかけた。

 身勝手の極意といえど、避ける隙間がなければ流石にどうしようもない。

 悟空の身体に重さがのしかかり、彼の動きを封じた。

 地面に足がつき、地面にマス目が現れる。

 

「終わりだ! グラビティ・フィナー……」

 

 先程リゼット達に多大なダメージを与えたハーツの技が再び炸裂する……その瞬間。

 悟空はニッ、と笑うと額に指先を当てた。

 瞬間移動でハーツの頭上に出現し、重力を利用して急降下――踵落としをハーツの脳天にめり込ませた。

 

「がっ!?」

 

 衝撃でハーツの重力場が解けて身体が軽くなった。

 その軽さを活かすように今度はハーツの前で横回転。

 狙いは首筋! しかしハーツはここまでの戦いで、既に悟空の心の声は当てにならないと学んでいる。

 ならば勝手に動く身体は別の場所を狙うはずだ。そう考えて首のガードを逆に下げ……そのまま悟空の蹴りがハーツの首元に叩き込まれた。

 

「なっ……にぃ!?」

 

 悟空がやった事は単純だ。

 勝手に別の場所を攻撃しようとする身体を無理矢理抑え込んで、思った通りの場所を攻撃した。それだけの事に過ぎない。

 ハーツは何とか距離を取ろうと後ろに飛ぶが、悟空もその後を追う。

 迎撃しようとハーツが手を翳す。重力が悟空を襲い、しかし悟空はそのまま構わずに突っ切った。

 

「馬鹿な!」

 

 ハーツの重力を突破した悟空にハーツが驚き、攻防が始まる。

 悟空の放つ拳打、その一撃一撃が先程よりも重く、速い。

 ハーツはここにきて、悟空の力がどんどん上昇している事に気が付いた。

 そしてその理由もまた、悟空の心を読んで理解する。

 

「そうか……身勝手の極意は身体も勝手に強くする……!

だから俺が重力をかければかけるほど、適応しようと……」

「ああ! お前の重さに合わせてオラも強くなるんだ!」

 

 これは決してリゼットには引き出せない身勝手の極意の強みだ。

 身勝手の極意は勝手に身体が動く。

 そしてそれでも届かない場合は、届くまで身体を強化する。

 この強化に耐えられるだけのタフさがなければ自滅してしまうが、悟空には十分耐えうるだけの下地が備わっていた。

 

「だが完全ではない! 君の身勝手の極意は、長続きしないと君の心が教えてくれる! そしてもう、維持するのも限界だとな!」

 

 悟空は何とか身勝手の極意を完成させた。

 しかしまだ完璧に使いこなしているとは言い難い。

 当たり前だ。破壊神ビルスすら未だ習得出来ていない神の御業を人間が使えるだけで既に異常なのだ。

 その上、こんな短い期間で使いこなされては神の立つ瀬がない。

 悟空は汗をかきながら苦笑する。

 

「バレたか」

 

 一度戦いは膠着状態に陥り、悟空とハーツは空中で向かい合う形となった。

 ハーツの指摘は図星である。悟空はもう身勝手の極意を維持出来ない。

 ならば後はこのまま、変身が解けると同時に決着だ。

 しかし悟空はこんな時だというのに笑みを抑えられず、不思議な高揚感に包まれていた。

 

「お前の言う通り、もうオラは身勝手の極意を使えねえ」

 

 悟空の変身が解除され、髪が黒髪に戻ってしまった。

 この瞬間ハーツの勝利が決定した……はずだ。

 しかしハーツは、全く安心出来なかった。

 何故なら、悟空から感じられる威圧感が……感じられる力強さが、変わっていないのだ。

 

「けどよ、身勝手の極意が言ってるのさ」

 

 悟空の髪が逆立った。

 黒髪が金色に点滅し、少しずつ気が膨れ上がっていく。

 全身に力が漲り、眼の色が緑色へと変わる。

 

「――もっと先へ行けってな!」

 

 髪が金色に染まり、全身が黄金のオーラに包まれた。

 ここにきて、まさかの普通の超サイヤ人だ。

 だが感じられる力の波動は、ただの超サイヤ人を遥かに超えている。

 

『あれは……あの時と同じ……! けど、こんな事が』

 

 戦いを観戦していたリゼットが驚いたように身を乗り出した。

 一体何にそんなに驚いているのか分からず、ブウが目を丸くする。

 

「どうした? 何にそんなに驚いている?」

『そりゃ驚きますって。とんでもない事やってますよ、悟空君……いやはや、天才というべきか、鬼才というべきか……一周回ってもうただの馬鹿と言うべきか……』

 

 悟空が『この状態』になるのはこれで二度目だ。

 力の大会でジレンと戦った時も悟空はこの奇跡のような技を使っていた。

 しかしあの時と違い、リゼットも身勝手の極意を身に着けたからこそ改めて分かる出鱈目さがある。

 リゼットは引き攣った笑みを浮かべ、今悟空が行っているとんでもない事を説明した。

 

『……悟空君……身勝手の極意で上昇した力を維持したまま、超サイヤ人になってます』

「……は?」

 

 思わずその場の全員が間の抜けた声を出してしまったのも無理はない。

 身勝手の極意は身体を勝手に強くする。

 当然その強さは変身解除時に失われるものなのだが、悟空は何と変身を解除しつつも上昇した強さを留めているのだ。

 初めて超サイヤ人ゴッドになった時に悟空は神の力を取り込んだ普通の超サイヤ人になった事があった。

 そして今回は、身勝手の極意の力を取り込んだ超サイヤ人になったのだ。

 

「行くぞハーツ! 戦いは、ここからだ!」

「本当に……本当にとんでもない奴だな君は! 限界を超えて、尚も輝くというのか!」

 

 悟空とハーツが楽しそうな笑みを張り付けたまま衝突した。

 ハーツは元々、人の輝きと自由を愛する男だ。

 そんな彼から見て孫悟空という男は何よりも眩しく、そして自由に見えた。

 何にも囚われず、神の奥義にすら囚われずに己の道を突き進む。

 これが人の可能性、人の煌めき!

 ハーツは戦いの最中でありながら、敵のはずの孫悟空という光に心を焼かれ、引き上げられるように高揚する。

 悟空の拳がめり込み、ハーツの拳が悟空の頬を打つ。

 蹴り、蹴られ、拳を組み合って膝蹴りをぶつけ合う。

 痛みはある。だがその痛みが不思議と心地よかった。

 もっと戦いたいと柄にもなく思ってしまう。もっとこの男の可能性を見たいと願ってしまう。

 ああ、なんだこれは、とハーツは思う。

 

 この孫悟空という男は敵だろう? 目的を果たす為の障害だろう?

 なのに何でこんな――こんなにワクワクする!!

 

「ハーツゥゥゥゥゥ!!」

「孫悟空ううううう!!」

 

 既に服はボロボロで、両者共に上半身を曝け出した痛々しい姿だ。

 全身は血に塗れ、無事な箇所はない。

 しかしその顔だけは場違いなほどに明るく、笑みが零れていた。

 

「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!」

「うおおおおおおおおーーーーッ!!」

 

 互角の攻防が続き、打撃音が休む事なく響き続ける。

 姿を消して別の場所で打撃戦――また移動して打撃戦を続ける。

 ハーツが重力で悟空を高く跳ね上げ、先に回り込んで殴り落とす。

 更にその先に移動して蹴り上げ、三度先回りして殴り飛ばした。

 悟空がいくつものビルを突き破って地面に突き刺さり、ハーツがすぐに後を追う。

 立ち上がった悟空が連続で気弾を打ち、ハーツが手刀で弾く。

 その一瞬の隙を逃さず瞬間移動で接近した悟空がハーツの顎を殴り、上空へ飛ばした。

 そこに追い打ちの気弾連打。咄嗟にガードしたハーツを爆煙が覆い、直後に背後に回り込んだ悟空が肘打ちを放った。

 しかしハーツの姿が消えて逆に背後から攻撃される。

 これを悟空も高速移動で避けて背後を取るが、ハーツもすぐに背後を取り返す。

 高速のバックアタックの応酬。それを制したのは悟空で、遂にハーツに炸裂した拳打が彼を地面へ向けて殴り飛ばした。

 流星となって地面に激突したハーツは、しかし楽しそうに立ち上がる。

 

「まだだ孫悟空! もっと俺に魅せてみろ……人の可能性を!」

 

 ハーツの腕の周囲に重力を伴った気が渦巻き、高速回転を始めた。

 それはまるで腕に竜巻を纏わせたようであり、ハーツの腕を中心に大気が吸い寄せられていく。

 宇宙の種の力で回復するはずのハーツだが、悟空から与えられたダメージがそのままだ。

 それはつまり、本来回復に回すはずの力すら攻撃に転化している事を意味する。

 

「すげえ気だ……全部の力を腕一本に集めたんだな。だったらオラも!」

 

 黄金の気が右腕一本に集約され、ハーツはそこに解放される直前の龍を見た。

 ハーツと悟空が引かれ合うように飛び出し、最大の大技を同時に放つ。

 

「ぶっ潰れろォォォ! グラビティフィストォォォォ!!」

「貫けええええ! 龍拳……爆発!!」

 

 重力の拳と黄金の龍が衝突し、凄まじい衝撃波が吹き荒れた。

 激突は数秒続き、どちらも負けじと押し合う。

 やがて臨界を迎えて爆発を起こし、悟空とハーツが吹き飛ばされて離れた場所に墜落した。

 しかしまだどちらも闘志は折れていない。

 よろめきながらも立ち上がり、ハーツが空高く浮上した。

 

「素晴らしい力だ、孫悟空……君は本当に大した奴だ。

だが俺には負けられない理由がある。今更止まるわけにはいかないんだよ。

だから……」

 

 ハーツが残るありったけの力を吐き出した。

 瞬間、空が割れた。

 ハーツが最後の攻撃として選択したのは、超重量による圧殺。

 即ち、隕石であった。

 このレベルの戦いになれば隕石など、本来大した脅威ではない。

 軽く気功波の一発も当ててやれば簡単に砕けてしまう程度のものだ。

 だが今、ハーツが呼び出した隕石にはハーツと、宇宙の種の気が宿り守っている。

 生半可な攻撃で砕く事は出来ない。

 

「俺を止めたいならば……この一撃、防いでみせろおお!」

 

 ハーツが腕を振り下ろし、隕石が地球へ降下を始めた。

 これに対し悟空はかめはめ波による迎撃を選択して構える。

 だが、その肩をジレンが掴んだ。

 

「孫悟空、それではアレは防げん。俺との戦いで使った元気玉という技を使え」

「ジレン……けど、元気玉は作るまでに時間が」

「稼いでやる」

 

 ジレンが悟空の前に出て、その隣にヒットとブウ、そしてリゼットが並ぶ。

 

「元気玉を作るまでの時間を俺達が稼ぐ! 奴に見せてやれ……宇宙に生きる人間達の力を!」

「……ああ! すまねえ、ジレン!」

 

 悟空が超化を解除して上空に両手を挙げ、ジレンが身体の奥底からありったけの力を引き出した。

 彼の全身を揺らめくような紅蓮の気が覆い、迫る隕石を相手に正面から立ち向かう。

 

「はああああああッ!!!」

 

 ジレンの全てを込めた気功波が隕石に衝突し、隕石の接近を止めた。

 ヒットとブウもジレンを援護するように気功波を発射し、混ざりあった三つのエネルギーが隕石と押し合う。

 ぶつかり合う二つの力を前に、悟空はあの一撃を破壊出来る力を求めた。

 一つの惑星のエネルギーだけでは、宇宙の種には及ばない。

 だから悟空はこの第7宇宙……いや、その外の12宇宙にまで規模を広げ、元気を分けてくれるように念じた。

 しかし界王もいない今……いや、いたとしてもそこまで悟空の声を届ける事は出来なかっただろう。

 だがこの世界にはまだ、唯一残った神であるリゼットがいる。

 

『悟空君、貴方の声を私が中継して何とか他の宇宙にまで送ってみます』

「そんな事出来るのか!?」

『分かりません。流石に第7宇宙の外にまで思念を飛ばした経験はないので……けど、何とかやってみます』

 

 分身のリゼットが悟空の背に手を置き、神殿で休んでいる本体へ悟空の思念を送った。

 そして本体のリゼットが、全力で思念を飛ばして各宇宙へ悟空の声を届ける。

 今まで一度もやった事がないし、クウラとの戦いの後遺症が残るリゼットには困難な作業だ。

 だがそんな泣き言を言っている余裕などない。

 元々この戦いは、神に対する不満が表面化したものであり、本来ハーツ達の怒りを受けて戦うべきは神々のはずである。

 しかもここまで宇宙が追い詰められたのは肝心の神々が不在だったせいだ。

 いわば積み重ねた神の失敗、神への不満。そうしたものが牙を剥いたに過ぎず、その代償を人間に支払わせてしまっている。

 ならばせめて、この宇宙に残された唯一の神として……限界を超えて戦ってくれている悟空達の為に無理の一つも出来ずして何の為の星の神か。

 

「よし……! 全宇宙の皆! オラに元気を分けてくれ!」

 

 悟空の呼びかけに、第7宇宙の星々が応えた。

 あらゆる星、あらゆる生物から元気を少しずつ分けてもらう。

 ナメック星人や『永遠の美』の構成員達、そしてザーボンは少しと言わず全部持って行けとばかりに手を上げて気を送り込み、神殿に残っていたバーダック達も気を放出する。

 

「この声は……悟空さん!? ケールさん、カリフラさん!」

「ああ! この手で直接ぶちのめせねえのは悔しいが……頼むぜ孫悟空! あいつらにきつい一発かましてやれ!」

「この戦いが終わった時、何故私がドクターと呼ばれているか教えようではないか!」

 

 第6宇宙の戦士達も手を挙げて悟空の勝利を願い、気が悟空へ送り込まれていく。

 キャベ、カリフラ、ケールは勿論の事、ドクターロタやサオネル、ピリナ、マゲッタ、ボタモ、そしてフロストも渋々と言った様子で両手を上げる。

 

「よし、我等の力も持って行け!」

 

 第10宇宙からも気が流れ込み、元気玉がどんどん大きくなっていく。

 マッチョな宇宙の戦士達はそれぞれが思い思いのポージングを決め、倒れるまでその姿勢を維持し続けた。

 

「よーしお前達! 我等第3宇宙の力も届けるのだ! 合体だ!」

 

 第3宇宙ではドクターパパロニの号令でアニラーザに合体し、全ての改造戦士が気を送り込む。

 

「何でもいいからとにかく勝ってー!」

 

 第4宇宙ではキャウェイが両手を挙げて悟空を援護し、他の面々も続いた。

 更にベジータによって解放された第11宇宙、第2宇宙、第9宇宙の戦士達も悟空に望みを託す。

 だが元気玉が完成に近づく中、状況が変わった。

 ジレン達の気功波が押し負け、隕石が迫って来たのだ。

 最早これまで……そう思われた中、ジレンが目を見開き、隕石へ飛び込むと両手を広げて受け止めた。

 

「まだだ!」

 

 両手が焼ける。この隕石はただの隕石ではない。

 ハーツの力を全て込めた一撃であり、いわば宇宙の種のエネルギー全て……一つの宇宙を生み出すほどの莫大なエネルギーが秘められているのだ。

 宇宙を消してしまえる全王の対極に位置する宇宙を生み出すエネルギー。それは本来、一人の人間の力でどうこうなるものではない。

 

「ま……まだだ……まだ……! 俺は……俺は……!」

 

 自らの汗すら蒸発するほどの熱い気を噴き出し、宇宙最強が意地を見せた。

 宇宙一つを生み出す程のエネルギーに後押しされた隕石を、たった一人の人間の身で受け止めて耐え凌ぐ。

 ずっと、過去から逃げるように強さを追い求めてきた。強さの果てにあるものを知りたかった。

 強さこそが全て。力は全てを許してくれる……過去さえも。そう信じて闇雲に強さに逃げてきた。

 だが今は違う。かつては分からなかった答えが今なら分かる。

 何故ここまで強くなったのか。

 それはきっと、この時の為に。

 どれだけ小さく儚くとも、決して踏みにじってはならぬものを守るために。その為に俺は強くなったのだ、と今ならば誇りを持って言える。

 

「俺は――プライドトルーパーズ、灰色のジレン!! 俺がいる限り、これ以上何一つとして踏みにじらせはせん!!」

 

 それを教えてくれたのが後ろにいる孫悟空(おとこ)だ。

 だからこそ、こいつの前で無様は晒せない。

 彼は己を信頼して元気玉を作っている。ならばその信頼に応えるまで!

 

「うぅおおおおおおおおおおおぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおーーーーーッ!!!!」

 

 ジレンが吠え、あろう事か隕石を僅かに押し返した。

 掌が焼け、血が溢れ、それでも尚宇宙を守る正義の守護者としての誇りでこれ以上の前進を許さない。

 ジレンの奮闘は決して無駄ではない。

 彼が止めているその間に、他の宇宙からも続々と気が集まり、そして悟空は完成を確信した。

 

「出来た! 待たせたなジレン!」

「いけええええええ! 孫悟空!」

 

 悟空は大きく身を逸らし、元気玉を投げつける姿勢に入る。

 

「受けてみろハーツ! こいつは宇宙に暮らす皆の願いだ! 滅茶苦茶にぶっ壊された宇宙の叫びだ!」

 

 そして発射。超巨大元気玉が解き放たれ、隕石に衝突――砕きながらハーツ目掛けて飛翔した。

 その眩い輝きを前にハーツは驚愕に顔を歪め、しかしどこか嬉しそうな表情をした。

 

「ああ……」

 

 感極まったような声が自然と漏れる。

 不思議と悔しさはなかった。むしろ、こうなる事を望んでいたような……ずっと見たかった宝物を見付けたような喜びさえあった。

 敗北を悟りながらハーツは己の心を不思議に思い……そして理解した。

 もしも神の力によって捻じ伏せられたならばきっと、こんな穏やかに敗北を受け入れる事は出来なかっただろう。

 だがこれは神の力ではない。人の力……人の意思だ。

 ハーツが何よりも愛し、尊んだ人の光そのものなのだ。

 自分が負けたのは忌まわしい神ではない。

 神よりも強く、そして何より自由な人間に敗れた……そう理解し、ハーツは力を抜いた。

 

「なんて美しい……俺はやっぱり……人間が、好きだ…………この世界に生きる、全ての人々が、俺は……」

 

 どこまでも眩しく、愛おしい人の光。

 それを抱きしめるようにハーツは両腕を広げ……。

 

 ――そのまま元気玉に飲み込まれた。




ピエロ「……………………この戦いを生で見る事の出来なかった俺の哀しみは計り知れない…………計り知れない…………」
ビルス「しつこいぞ! リアルタイムで観戦するジレンの活躍! アーカイブで観戦するジレンの活躍! そこに何の違いもありゃしないだろうが!!」
ピエロ「違うのだ!!(血涙)」

【身勝手の極意+超サイヤ人】
Q、前章第百三十三話で「多分もうならない」と言わなかったっけ?
A、た、多分は多分だから……。
まあジレン戦のは身勝手と超サイヤ人の同時発動だったのに対し、今回は身勝手→身勝手解除→超サイヤ人なので微妙に違うという事で……。

【元気玉フィニッシュ】
折角全宇宙を巻き込んだ争乱なので力の大会に参加したほぼ全員の力を込めた超元気玉フィニッシュを決め技に選んだ。
やっぱ元気玉フィニッシュも一度くらいはやっておかないと。

Q、ピエロに何か救いはないんですか?
A、そんなもの……うちにはないよ。

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